地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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束の間の休息

2205年3月25日

地球連邦とボラー連邦が開戦して1週間、地球連邦はバース星を攻略しアルゼ星系をガルマン・ガミラスと合同で攻略し戦争の主導権を完全に握っていた。

 

だがアルゼ星系が地球、ガルマン・ガミラス連合軍の攻撃によって陥落した後、地球防衛軍は一時ボラー連邦に対しての軍事的行動を停止していた、それは地球連邦がボラー連邦との間に会談の場を用意した為であった。

 

この日ボラー連邦本星にあるボラー連邦外務省の一室ではボラー連邦の外相であるモートフと数名の外交官と地球連邦の大使館要員数名が会談していた。

 

「こちらが地球連邦と銀河連合が提示する講和内容です」

 

そう大使館要員が言いながらボラー連邦の外交官達に用紙を渡した。

そこには以下の内容が記されていた。

 

・ボラー連邦はシャルバート星には一切関与しない。

・バース星は独立させる。

・地球連邦はアルゼ星系より完全撤退する。

・地球連邦はガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦の戦争には直接関与しない。

・双方は賠償金を要求しない。

・地球連邦及び銀河連合構成国とボラー連邦は平和条約を結ぶ。

等々

 

以上のような内容などが用紙には記入されていた。

誰がどう見ても地球連邦有利ではあるがボラー連邦も失うものは少ない講和内容であった。

 

なおガルマン・ガミラス帝国からみれば地球や銀河連合が勝手に戦列から離脱をしようとした感じだが、地球連邦はデスラー総統に講和会談の実施を時間断層で建造したデスラー砲搭載型ガイデロール級50隻を含む200隻を超える艦艇の提供と共に事前に通達していた。またデスラー総統も地球連邦の時間断層がボラー連邦の手に渡るという万が一の可能性を放棄しておきたかったため了承していた。

 

「これが地球連邦の提示する講和内容ですか」

 

一人のボラー連邦の外交官は冷静な表情をしながら言ったがその声からは不満が読み取れた。

 

「そうです。尤も交渉次第では変わりますが、これが最低ラインの条件と考えて頂いて結構です」

 

大使館要員で交渉団の代表であるジョン・ガウワーはそう言った。すると別のボラー連邦の外交官の一人が立ち上がり大声で言った。

 

「ふざけるな!我がボラー連邦がこのような内容を飲むと思っているのか!」

「落ち着け」

 

外務大臣のモートフはそう言い、立ち上がった外交官を座らせた。

一方、地球側は冷静に答えた。

 

「飲むも何も、交渉次第で多少内容は変わります。それに此方が開戦時刻を通達したとはいえこの戦争はあなた方ボラー連邦が仕掛けてきたのですし、傷の浅い今のうちに手打ちとしようとしているのですから貴国としても飲むのが賢明ではないでしょうか」

 

ガウワーはそう言いボラー連邦の外交官を見つめた。

少しの間静寂が空間を支配したがモートフがそれを破った。

 

「傷が浅いと仰いましたが我が軍が受けた被害をあなた方はご存じで言っておられるのですかな」

「勿論です。犠牲者、遺族の方には申し訳ございませんが貴国は主力艦隊、打撃艦隊など合わせて2000隻を超える艦艇を我が軍の攻撃で損失しています。ですが貴国の総戦力から考えれば氷山の一角でしょう。それに戦争が長引けば損害が拡大します。我が国はそれを良しとしません」

「なるほど。確かに受けた損害は氷山の一角です。我々にはまだまだ戦力はありますしアルゼ星系を損失しましたが資源、工業力共に大部分は健在です。アルゼ星系はあくまで資源惑星に造船所が多くあるだけです。戦争が長引いて困るのはいずれ物量で押し潰される地球の方ではないですかな」

「更なる戦闘で犠牲が増えるのはそちらです。何度も言いますが我が国は犠牲が増えるのを良しとしません」

 

ガウワーがそう言った後、室内は再び静寂が支配した。

沈黙は数分間続いたがそれを破ったのはまたもモートフであった。

 

「貴国の言い分は分かりました。私一人では判断しかねますので、今後の交渉の有無などは後日の返答でよろしいですかな」

「勿論構いません。喜ばしい回答を期待しております」

 

ガウワーはそうモートフの言葉に答えた。

 

こうしてこの日の会談は終了した。

この時、ボラー連邦からの後日の回答に対して地球連邦は全く期待していなかった。あのベムラーゼ首相が提示した要件を飲むとは思えなかった為であった。そしてそれは事実であった。

 

回答は3月28日にあったもののその内容は提示した講和内容の拒否どころか交渉も拒否であった。代わりにボラー連邦からの講和内容の提示があったがその内容に「ボラー連邦がシャルバート星に如何なる対応をしようとも地球連邦は黙認すること」とあった為、地球連邦は即日拒否した。これにより地球連邦とボラー連邦の戦争は継続されることとなった。

だが同日に戦時条約の話し合いが行われ捕虜交換規定などや戦闘再開が地球時間2205年4月1日午前0時以降であることが決定された。また戦時条約の締結に伴い地球連邦からボラー連邦に対してアルゼ星系攻略戦で発生したボラー連邦の捕虜の引き渡しが行われた。

 

 

 

3月30日

この日、統括司令部では会議が行われていた。

 

「予想通りボラー連邦は講和を蹴りましたので戦争は継続ですな」

 

情報参謀長のジャミトフ大将はそう言った。

 

「残念だがそういうことだ」

 

統括司令部総長はそう言うと一息つき続けた。

 

「ボラー連邦が講和を蹴ったので我々は短期決戦であるプランAを破棄し長期戦であるプランBをもってボラー連邦と戦争することになった。これに伴い大統領と政府防衛政策顧問の藤堂顧問からは遠慮はいらんと言われている。また少し前に連邦議会で可決された地球本土防衛省を統括司令部に吸収、合併させる法案により防衛省とその指揮下の本土防衛軍などの部隊は全て統括司令部指揮下に異動したことを改めて伝えておく。では報告がある者は報告を」

 

総長がそう言うと補給参謀長が手を挙げた。

 

「補給部門からですが現在、コロンブス級の調達及びガミラス共和国の移民政策への支援として建造していたリバティ船(復活編移民船)を防衛艦隊の後方支援艦艇として配備させる計画を進めています。コロンブス級は時間断層でも建造しており調達は安易ですがリバティ船は南部重工やヤシマ重工などと相談しながらの調達になりますので纏まった数が揃うまでは今しばらくの時間が掛かると思われます。また交渉期間の一時停戦により補給体制の再構築の時間が得られたため補給体制は強化できそうです。その他の物資の補給作戦について現状は問題ありません。以上です」

 

「では造船部門から。現在各種艦艇の建造を急ピッチで進めさせています。既にブリストル級軽巡洋艦は一部が就役間近、バラクーダ級は大量生産体制に入っています。また造船所の新設も少しですが始まったため完成した船台で随時建造を開始していきます。造船部門からは以上です」

 

「では艦隊運用部門からです。現在戦闘艦艇の新規の就役艦は全て本国艦隊に回しており何時でも任務部隊を編成できるようにしております。また追加の主力艦隊など幾つかの艦隊の親編成も検討しております。短いですが以上です」

 

その後も幾つかの報告があり、宇宙要塞ア・バオア・クー、5thルナ、パラオ、アクシズの稼働開始などの報告が出尽くすと再び総長が口を開いた。

 

「各部門とも報告ありがとう。各部門の現状は理解したので今後もよろしく頼む。今次戦争において参謀本部はゴップ総参謀長と芹沢副参謀長の下で運用していただくので各員とも連携を密にして行動してくれ。それと先日連邦議会でレンドリース法が可決されたので各国への支援が強化される、それとジャブロー基地内に各国合同の統合作戦本部が開設された、統合作戦本部は各国軍の上位に存在する組織だが今まで通り作戦を継続してくれ。なお統合作戦本部長は高野五十六本部長となっている」

 

ここで総長が言ったレンドリース法は地球連邦があらゆる物資を同盟各国に提供する法律であり、過去にアメリカ合衆国で成立した法と同じものである。もう一つの統合作戦本部は各国の軍事活動などに関する情報を集約する組織であり、各国の軍が効率よく円滑に活動するための調整機関となっている。

そして総長の言葉は続く。

 

「また地球はボラー連邦やその傘下の国家のみならず現状、第九主力艦隊が遭遇したディンギル帝国とも戦争状態である。今次戦争は今や銀河大戦となり地球は多数の敵を抱えているが地球連邦や同盟国の勝利、未来のために各員の努力に期待する。以上だ」

 

総長が締めくくると次はゴップ総参謀長が発言した

 

「我々の責務は現場の将兵が何を望み、何を欲しているのかを正確に把握し現場にしっかりと必要なものを送り届けることだ。特に前線の将兵が飢えることはあってはならない。その為にも各部門ともしっかりと現場の声を聴いてくれ。厳しい要望でも私や総長ができる限り対応するのでよろしく頼む」

 

ゴップ総参謀長がそう言い終わると会議参加者は頷き会議は終了した。

また同じ頃、ジャブロー基地内に新設された統合作戦本部でも髙野五十六本部長が挨拶をしていた。

 

「統合作戦本部の本部長を務める髙野五十六だ。この統合作戦本部は各国が必要としているあらゆる物資の供給や補給、軍事作戦の調整、各国の状況や収集した情報の整理等々を行う組織である。その為、多くの国から多くの軍人や政府関係者なども集まっている。一応私が本部長として仕切るが此処では所属や階級も国籍も関係なく自由に動いて各々の仕事に取り組んでほしい。その仕事が我々を勝利に導いてくれると私は思っている。それでは各員よろしく頼む」

 

髙野本部長がそう言うと敬礼が返され、各々が仕事を始めていった。

 

 

それから少し時間が経ち4月1日午前0時になると、自室に居た総長は静かに口にした。

 

「大戦争の幕開けだな」と。

 

 

そして同時刻に衝撃的な内容が銀河中に発表された。

それはゼニー合衆国がガルマン・ガミラス帝国から独立し銀河連合にオブザーバーとして参加、ボラー連邦に宣戦布告するとの内容であった。

 

 

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