地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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通商破壊作戦

ボラー連邦領内

 

ボラー連邦領内を一隻の輸送船が航行していた。

戦地からは遥か後方の宙域を航行するこの輸送船はボラー連邦本星に属国からの資源を輸送する途中であった。

 

「船長、地球と戦争が始まったみたいですが俺達大丈夫ですかね」

「大丈夫だ。ずっとガルマンと戦争しているが俺達には何の影響も無いから今回も大丈夫だよ」

 

船員が口にした不安の言葉に対し輸送船の船長はそう返答した。

事実ボラー連邦とガルマン・ガミラス帝国の戦争でも戦禍が及んでいるのは前線もしくはその少し後方の地域だけであり、輸送船や貨物船が単独で航行するような内地の場所は戦争の「せ」の字も無い場所であった。しかし地球連邦と戦争状態に陥った今、安全な場所など無くなっていくことになるとはボラー連邦では官民問わず誰も思っていなかった。

 

 

「2時の方向、独航船です」

「よし。モビルスーツ隊で退船勧告を出しその後撃沈しろ」

「了解。ロメオ1、ロメオ2発進用意」

 

地球防衛軍ロンド・ベル隊所属機動戦艦ネェル・アーガマ艦橋ではこのような会話が行われていた。そしてネェル・アーガマから2機のモビルスーツが発艦し物質転送装置により独航船に向けて転送された。

この機動戦艦ネェル・アーガマはV作戦にて建造されたMS運用可能な戦闘艦であり非常に強力な艦である。同型艦はガランシェールとアーガマであり、アーガマは統括司令部総長がドゴス・ギア級開発の為に試作していたネェル・アーガマより小型の艦だがドゴス・ギア級が就役した為、現在は時間断層工場で魔改造を受けてネェル・アーガマ級に生まれ変わろうとしていた。

閑話休題

 

 

ボラー連邦輸送船

 

「レーダーに反応。何かがワープアウトします」

「何がってなんだ?」

 

船長はレーダー手の報告に対して疑問形で応えた。だがレーダー手が何かを言おうとした時、それは姿を表した。

 

「なんなんだ、あれは!?」

 

船長は大きな声を出した。この時、輸送船の艦橋からは2機の人型の何かが見えていたのだ。そして正体不明の人型の何かの内1機が俊敏な動きで輸送船に近づき大きな銃を艦橋に突きつけた。ここまでの間、船長や船員は呆気に取られているだけであった。

 

ネェル・アーガマ所属のリゼル、ロメオ1はボラー連邦の輸送船と思われる船に近づき艦橋にビームライフルの銃口を突きつけると退船勧告を出した。

 

「此方は地球防衛艦隊ロンド・ベル隊。貴船に勧告する、5分以内に総員退船せよ。5分後に貴船を撃沈する。ただし救難信号は脱出10分後まで出すな。もし不審な動きを感知したら即撃沈する」

 

 

一方、退船勧告を受けた輸送船の艦橋ではクルー全員が船長を見ていた。

 

「どうします船長」

「船長、俺死にたくないですよ」

「俺もです」

 

クルーは船長に次々と言葉を放った。それに対し船長は20秒ほど沈黙した後、口を開いた。

 

「総員退船だ。直ちに全乗組員脱出艇に移動しろ。5分以内だ!死にたくなければ急げ。それと通信手、返答しろ{指示に従う}とな。あと船内放送で退船を伝えろ」

「「了解」」

 

こうして船長の命令により輸送船では慌ただしく退船作業が行われ、3分で脱出艇が発進した。

そして脱出艇発進から2分後に輸送船は2機のリゼルの攻撃により轟沈した。

 

 

「船長、あれは何だったんですかね」

「分からん。だが俺達は敵に回しちゃいけないものを敵にしたのかもしれねぇな」

 

脱出艇の中で船長はそう言い、変形し帰還していく2機のリゼルを眺めていた。

 

 

ロンド・ベル隊機動戦艦ネェル・アーガマ

 

「ロメオ1、ロメオ2帰還しました」

 

ミヒロ少尉は艦長であるオットー・ミタス大佐に報告した。

 

「了解した。全艦ワープ準備、直ちにこの宙域から離脱する」

「了解」

 

オットー艦長がそう命令を出すと、レイアム副長が尋ねた。

 

「しかしこれで良かったのですか艦長」

「これは司令部命令だからな。それに退船勧告を出すのは今回だけで次からは即撃沈だ。今回脱出した彼らには語り手となって恐怖を伝えて貰おうじゃないか」

「なるほど」

「いちいち退船勧告なんぞ出していたら手間がかかるしボラー側に捕捉されかねん」

 

艦長と副長がそう話している間にワープ準備が整い、ネェル・アーガマは宙域から離脱した。それと同時刻、別の宙域では5隻のボラー連邦貨物船からなる船団が攻撃を受けていた。

 

「敵輸送船3隻目撃沈」

「主砲よく狙え!後2隻だ」

 

ドイッチュラント級戦闘巡洋艦ドイッチュラント艦橋で艦長はそう大声で言った。

ドイッチュラント級は正面に13門の主砲を指向することができるため貨物船団に猛砲撃を加えていた。この猛攻を受け輸送船団は1隻また1隻と轟沈し戦闘開始3分で全滅した。

 

 

また数時間後には船団で航行していたボラー連邦輸送船3隻を次元潜航艦ヴェンチャラーが堂々と浮上攻撃を仕掛けショックカノンでこれを撃沈。別宙域では潜宙艦伊4も魚雷攻撃で2隻の輸送船を撃沈している。

 

 

この時、地球防衛軍は潜宙艦10隻と次元潜航艦3隻、ロンド・ベル隊からネェル・アーガマとドイッチュラント級6隻を通商破壊作戦に投入しボラー連邦の輸送船や貨物船、輸送艦を襲わせていた。これに対しボラー連邦は前線以外の宙域での通商破壊作戦の対策経験が皆無に近い為、開戦以来護送船団方式や護衛艦を付けるといった対策を取っておらず、通商破壊作戦は防衛軍の独壇場となり次々とボラー連邦の艦船は撃沈されていった。しかも防衛軍の攻撃は徹底しており、攻撃を受けるのはボラー連邦船籍の船だけであり、属国や戦争に参加していない親ボラー連邦国家の貿易船は傷一つ付けられることは無かった。

 

 

ボラー連邦本星ボラー連邦宇宙軍司令部

 

「これで何隻目だ」

 

そう口を尋ねたのはボラー連邦宇宙軍司令の男だった。

 

「確認できるだけでも24隻が既に撃沈されています」

「再開戦して4日目ですが損害は増えていく一方です」

「攻撃してきている敵の正体は」

 

部下からの報告を聞き司令は尋ねた。それに対して部下が答える。

 

「地球軍ということしかわかりません。唯一勧告を受け全員が助かった輸送船の乗組員が言うには人型の兵器、恐らく地球の新兵器であるモビルスーツに襲われたということです。その他の場合は生存者が少ないのですが彼らからの聞き取りによると艦艇から砲撃を受けているやいきなり船が爆発したという証言ばかりです」

「なるほど。恐らく勧告を受けた船は地球軍からのメッセージで警告と言ったところか」

「警告ですか?」

 

部下は不思議そうな声を出した。

 

「そうだ。地球軍は我が国の領土深くで通商破壊作戦を展開している。今後はもっと大規模に行うぞという警告だな」

 

「大規模な通商破壊作戦ですか…。厄介ですね」

 

「そうだ。厄介すぎる問題だよ。ガルマン・ガミラスも通商破壊作戦は行うが地球軍は恐らくガルマン・ガミラスとは比較にならん大規模な通商破壊作戦を行うぞ。ベムラーゼ首相曰く戦闘民族だからな。問題は対策だ。対策としては護送船団方式というものがあると私が地球に行った際に向こうの武官から教えて貰ったが、我が国にはノウハウが無いしそもそも護衛に回せる戦力が無い」

 

「戦力は主力艦隊や駐留艦隊から割けばよいのでは」

 

「無理だな。ゴルサコフ総参謀長が許さんよ。アルゼ星系での戦闘で主力艦隊は6個艦隊が消滅したし打撃艦隊は4つ消えた。ガルマン・ガミラスとの激戦区も地球、ガミラス共和国が参戦して膠着状態。これだと戦力の再編成が完了するまでは厳しいだろう」

 

「つまり我々は輸送船や貨物船が沈められていくことを黙って見ているだけなのですか」

 

「そういうことだ。今すぐにできるのはせいぜいパトロールの強化ぐらいだな。勿論私もなんとかなるように努力をするがね。最悪各基地の駐留艦隊の戦力を再編成して護衛に回す」

 

司令の言葉にその場に居た部下全員が悔しい表情をしていたのだった。

 

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