ボラー連邦艦隊の攻撃に成功した突撃部隊は全速で離脱しつつあった。
「部隊に損害は無しですがUAVを6機失いました」
「そうか。それは仕方あるまい、俺達の盾になってくれたのだからな」
艦長兼部隊司令はそう言うと戦果を確認した。
「ところで何隻食えた?」
「大破を含めると約15隻程度かと」
「この小型艦部隊でそれだけ食えたら上等だ。ゼダンの門に一報入れとけ{我が部隊は攻撃成功、大破含め約15隻撃沈破なり。部隊は全艦健在}とな」
「了解致しました」
艦長兼司令は部下にそう伝えると敵艦隊の方を向き敬礼をしたのであった。
ゼダンの門司令室
「突撃部隊攻撃成功、少なくとも約15隻程度を撃沈もしくは大破させた模様」
「監視衛星及びレーダーの情報から推測するに敵艦隊は足止めを喰らっています」
オペレーターの報告は司令室の空気を少し緩ませた。
「突撃部隊にはよくやったと伝えてくれ」
司令はそう言うとマイクを用意しゼダンの門周辺に展開している部隊に激励の言葉を伝えた。
「全将兵に達する。突撃部隊は攻撃に成功し時間稼ぎに成功した。増援部隊到着まで約10分、ここをなんとしてでも守り切るぞ。諸君の一層の奮励に期待する!」
司令の言葉は短かったが士気を上げるには十分であった。
そして司令の言葉が合図であったかのようにゼダンの門からはジェガンとリゼルが全機発進していった。中にはミサイルユニットを装備したジェガン、通称スタークジェガンやスキウレを装備したジェガンが数機存在していた。
「こちらアルファ1発進する」
「続いてアルファ2出る」
「ホテル3発進するぞ」
管制室ではひっきりなしにMS発進の合図が飛び交っていた。
「ホテル3了解、ホテル3に続いてオスカー1発進どうぞ」
「こちらオスカー1了解」
管制室で飛び交う声を聴きながら管制官達は全機が無事に帰還することを願っていた。
一方のボラー連邦側は足止めを喰らったものの機雷源を強引に突破し、艦隊の戦闘空母1隻と空母4隻から艦載機が発艦しつつあった。
「ボラー連邦艦隊から艦載機多数発艦しつつあり」
「MS隊発進完了、艦隊もダミーバルーンの展開及び砲撃準備完了」
「先行する作戦機、敵艦載機部隊と接触。交戦に入ります」
「要塞砲全砲門攻撃準備完了」
「敵艦隊、艦砲、要塞砲、戦闘衛星の射程に入ります」
オペレーターが次々に報告を伝えあげていく。
そして報告を纏めた副指令が司令に伝えた「全部隊戦闘準備完了です」と。それを聞いた司令は間髪入れずに「全部隊攻撃始め!」と言った。
戦闘の火蓋を切ったのは両軍の航空戦力であった。
「全機かかれ!1機も逃すな」
「「了解!」」
地球側は隊長の号令が掛かると一斉にボラー連邦の艦載機部隊に襲い掛かった。
ジェガンとリゼル合わせて約120機は機敏な動きでボラー連邦の艦載機に襲い掛かり次々とボラー連邦艦載機を撃墜していった。勿論ボラー連邦側も反撃を試みるがボラー連邦の艦載機はMSに機動性で負けておりMSに容易く撃墜されていった。
そして制空権を巡る戦闘が激化する中、艦隊戦も始まっていた。
「全艦撃ちまくれ!」
要塞前面に展開した突撃部隊を除く地球側の艦艇から次々とショックカノンとミサイルが撃ちだされていた。ドイッチュラント級は得意の砲門数に物を云わせる砲撃を行い、レイピア級も主砲を撃ちまくる。
そんな中でもバラクーダ級砲艦の砲撃は一撃一撃が強く、一発でボラー艦を葬り去っていた。だがバラクーダ級の波動防壁の出力は強くは無く、集中砲火を受けたバラクーダ級が3隻、戦闘開始から5分で轟沈していた。
一方ボラー連邦軍もただやられているだけではない。激しいMS隊の迎撃を突破したボラー連邦軍艦載機が駐留艦隊に襲い掛かる。
「敵艦載機約50迎撃網突破!接近してきます」
ドイッチュラント級ホーク艦橋では大声でオペレーターが報告し、すかさず艦長兼艦隊司令は命令を出した。
「突破されたか。全艦対空迎撃!」
その命令後すぐに各艦が猛烈な対空砲火を撃ち上げる。
多数の対空砲を装備するドイッチュラント級から撃ち上げられる濃密な対空砲火は次々とボラー連邦軍艦載機を撃墜するが一部の勇敢なボラー連邦軍艦載機は対空砲火を潜り抜けて攻撃を仕掛ける。
「敵ミサイル、バラクーダ級BZⅢに命中。轟沈!」
「ドイッチュラント級サイキ、パクトーラスも被弾。なお戦闘は可能な模様」
「敵艦隊距離詰めてきます」
損害報告も上がる中、艦隊司令は動揺せず命令を出す。
「全艦、ミサイル一斉発射。牽制でもいい!」
司令がそう言うと艦隊全艦がミサイルを一斉に発射し、ミサイルはボラー連邦艦隊の前衛付近で炸裂しボラー連邦艦隊にダメージを与える。
双方が激しく砲撃戦を行うが形勢は地球側の守りが堅くボラー連邦側は押し込めていくどころか被害が拡大していた。何より地球側は要塞からの援護射撃が凄まじく、要塞から放たれる無数の砲撃とミサイルはボラー連邦艦を次々と宇宙の藻屑にしていた。これに納得できないのがボラー連邦艦隊司令である。
「なぜあの程度艦隊を制圧出来んのだ!」
司令はそう吠えるが部下は正確な理由がわからず返答できない。
そもそもなぜ数的不利な地球側がここまで善戦できるのか、その理由は地球防衛軍が基幹艦隊の整備で拠点防衛戦力の整備が後回しになる中、拠点防衛部隊が少数でも多数の敵と戦えるように訓練、整備(ドイッチュラント級の優先的な配備)がされており、その成果が今回の善戦という形で発揮されていた。一方のボラー連邦は今まで数で押し続け勝利を手にしてきていた為、その結果、ボラー連邦側に地球側の善戦の理由が掴めないという形で返ってきていたのだ。
ボラー連邦側がこのような状況の中、ゼダンの門司令室は比較的落ち着ていた。
「バラクーダ級BZⅢ轟沈しました」
「レイピア級ナイフ14被弾後退させます」
「戦闘衛星ZA12、ZX5破壊されました」
「敵艦撃破数100を超えました」
「MS隊形勢優勢」
報告が次々とされる中、副指令が司令に問いかけた。
「司令、レイピア級の拡散波動砲は使用されなくてよろしいですか」
「あぁ構わん。あれは切り札として取っておく。増援が居たらたまらんからな」
「了解しました」
落ち着いている司令だが、脳内では常にボラー連邦艦隊の増援を警戒していた。確かにボラー連邦艦隊アスターテ星系攻略艦隊は250隻越えと数が多いが、揚陸艦が50隻程度しか存在せずアスターテ星系を占領するには数が足りない。その為司令はもっと大規模な戦力が居るのではないかと警戒していたのだ。だがボラー連邦艦隊アスターテ星系攻略艦隊の目的はアスターテ星系攻略艦隊とは名ばかりにゼダンの門の占領のみであった為、司令の増援の警戒は杞憂であった。
閑話休題
司令と副指令が拡散波動砲の使用について話していると一人のオペレーターが一つの報告をした。
「司令!レーダーに新たな反応確認、友軍の第八機動艦隊です!」
その報告を聞いた司令は少し口角を上げると、マイクを手に取り「待ちに待った増援が到着したぞ!反撃の時だ!」と言った。
この言葉は全軍の将兵が待ちに待っていた言葉であった。
増援として駆け付けた第八機動艦隊は星系到着後すぐに全速でゼダンの門に向かい戦闘に加勢しようとしていた。
「発艦可能な機は全て上げろ、全機発艦。急げ!」
第八機動艦隊司令の伊藤直樹中将は旗艦の長門型戦艦備後の艦橋でそう叫んでいた。
そして命令を受けた第八機動艦隊の6隻のイラストリアス級からは次々とコスモタイガー隊が発艦していく。また艦隊も全艦がボラー連邦艦隊側面に全速で接近し砲撃を仕掛けようとしていた。
増援艦隊の到着は形勢を更に地球優勢に変えた。
特に基地駐留艦隊は目に見えて艦砲射撃の勢いが増し、徐々に要塞に後退していたのが微速前進に変わっていた。
また1隻の空母を攻撃していた3機のリゼルは増援の到着を確認すると空母を撃沈し、ボラー艦隊から離脱していった。その離脱する編隊で隊長は「砲撃の巻き添えは御免だ」と呟いた。そしてその言葉を呟いて間もなくMS隊隊長が全機にボラー連邦艦隊からの離脱を命令した。
MS隊離脱後数分が経つと第八機動艦隊の艦載機と艦隊の苛烈な攻撃がボラー連邦艦隊に対して始まった。
「全艦撃ち方始め!」
伊藤中将から命令が下ると第八機動艦隊はイラストリアス級を含む全艦で砲撃をしながら突撃を開始し、ボラー連邦艦隊に凄まじい砲撃の嵐を浴びせた。その光景は原作を知っている者からしたら完結編のデスラー艦隊の突撃そのものであった。
ボラー連邦艦隊の側面を付いた第八機動艦隊の砲撃は凄まじく、ボラー連邦艦隊の陣形をズタズタに引き裂き、艦隊中央に陣取っていた旗艦の戦闘空母は瞬く間に砲撃の雨に晒されダメ押しの第八機動艦隊旗艦備後の拡大波動砲が直撃、周囲の艦艇諸共轟沈し指揮系統が麻痺した。
更に第八機動艦隊の艦載機と駐留艦隊、MS部隊も猛烈な攻撃を行いボラー連邦艦隊は猛烈な攻撃の為、指揮系統の再編が思うようにできず、激しく抵抗したものの10分後にボラー連邦艦隊は離脱できたデストロイヤー艦7隻以外は全滅したのであった。
この戦闘終結後、第八機動艦隊は星系外の偵察を行ったがゼダンの門の司令が警戒していたボラー連邦艦隊の増援は発見されなかった。これによりゼダンの門での戦闘は終結したのであった。なおこの戦闘で第八機動艦隊の損害は無かったものの、ゼダンの門駐留艦隊はバラクーダ級無人砲艦4隻、戦闘衛星18基を失いレイピア級2隻、ドイッチュラント級12隻、MS45機が中破ないし小破したのであった。