ガルマン・ガミラス帝国北部戦線、この戦線は現在天の川銀河では最大の激戦区となっている。
この戦線はガルマン・ガミラス帝国や地球連邦、ガミラス共和国を中核とする連合軍とボラー連邦軍を中核としたボラー連邦陣営はこの戦線に補助艦を含め双方合わせて1万隻を軽く超える艦艇数を投入し激戦を繰り広げている激戦区かつ重要戦線であり、ジャブローにある統合作戦本部も北部戦線が今次大戦において、勝敗の全てを決する戦線と判断しておりこの戦線を支える事を重要視していた。
ジャブロー基地内部統合作戦本部
「やはり補給がネックですな」
「ですな。数千隻いや、1万隻に匹敵する艦艇を前線に張り付けるには必要な物資と補給部隊が膨大過ぎる」
ハイス公国が大規模作戦の準備を行っている頃、南米ジャブローにある統合作戦本部では補給部門の担当者達が頭を抱えていた。
現在ガルマン・ガミラス帝国北部戦線にはガルマン・ガミラス帝国、ガミラス共和国、地球連邦の主力部隊を中心に主力を支える支援部隊及び作戦支援の為にゼニー合衆国や銀河連合構成国の各部隊が多数展開していた。勿論これらを支えるには膨大な物資が必要であり、物資輸送の為の輸送艦、輸送船そしてこれらの護衛を行う護衛艦隊が別途必要であった。
「これ以上前線の押し上げ及び部隊増強をするなら補給部隊の増強が必須です。しかしその物資輸送に必要な艦船が足りない。これが小規模な攻勢にもでられない要因も一つです」
ガルマン・ガミラス帝国の担当者はそう地図に記された北部戦線を指さしながら言った。
事実、北部戦線では大規模攻勢を行うのであれば物資輸送に必要な艦船が相当数必要でありその数が足りなかった。
「それについてですがガミラス共和国としては地球連邦からライセンス生産している移民船として転用可能なリバティ船50隻と輸送用艦艇100隻を近いうちに護衛艦隊と共に投入します」
ガミラス共和国の担当者は艦艇データをディスプレイに映しながら話した。
「地球連邦も同様に近日中にリバティ船70隻とコロンブス級250隻を追加で投入予定です。護衛艦隊については第二、第三、第四護衛隊群が近いうちに編成が完了すると統括司令部から報告されていますのでこれらを護衛戦力として投入致します」
地球連邦の担当者もまたディスプレイに艦艇データと護衛艦隊の編成を映しながら報告する。
それを聞いたガルマン・ガミラス帝国の担当者は感謝を述べた。
「了解しました。両国とも支援に感謝します。我が国も輸送用艦船を350隻近く護衛艦隊と共に投入予定ですのでこれで余裕を持って戦線を支えられますし立ち回り方によっては攻勢にも出られるかもしれません」
そう感謝を述べたガルマン・ガミラス帝国の担当者の声からはかなりの安堵の気持ちが感じれれる物だった。
「そうだ。攻勢と言えば防衛艦隊の増強が完了したレビル大将指揮の第三主力艦隊が北部戦線に投入されます。そろそろ北部戦線司令部のあるスフロー星に到着すると思われます」
地球連邦の担当者はそう言いながら第三主力艦隊の編成をディスプレイに映し出した。
それを見たガルマン・ガミラス帝国の担当者は再び感謝を述べ頭を下げた。
「これほどの戦力が投入されるのはありがたいです。感謝申し上げます」
そうガルマン・ガミラス帝国の担当者が述べると今度はガミラス共和国の担当者が口を開いた。
「増強の完了した大将艦隊を投入ということは地球連邦としては北部方面に居るボラー連邦艦隊を殲滅するおつもりですかな」
「統括司令部はその気のようです。それにまだまだ新規艦隊を編成し投入するつもりのようですよ」
地球連邦の担当者はそう述べると少し苦笑いした。
統合作戦本部内で話し合いが行われているのと同じ頃、ガルマン・ガミラス帝国北部戦線の司令部があるスフロー星に第三主力艦隊は到着しようとしていた。
スフロー星はバラン星と同じく自由浮遊惑星である。
そしてこのスフロー星宙域は惑星周辺を無数の小惑星が球体状に取り囲んであり、万が一ワープミサイルの攻撃を受けてもアステロイドベルトの様にある小惑星が攻撃を防いでくれるのである。そのためガルマン・ガミラス帝国はこの星を北部戦線における前線基地及び司令部として機能させていた。またこの惑星をガミラス共和国や地球連邦も使用しており、惑星と小惑星帯の間に浮遊大陸や艦隊基地として利用可能な大きさの小惑星を持ち込み基地として使用していた。
そしてここで地球連邦が幾つかの小惑星を繋げて運用しているのが地球防衛軍スフロー基地である。
スフロー基地は幾つかの小惑星とガミラス共和国から購入した浮遊大陸を繋ぎ合わせた基地であり、多数の艦艇を停泊できるだけの施設や艦艇修理用の大規模工廠が建設されていた。
そんなスフロー基地に地球防衛艦隊第三主力艦隊は入港しつつあった。
「立派な基地だな」
第三主力艦隊旗艦アナンケの艦橋では窓から見える景色を見ながらレビル大将がそう呟いた。そして入港が進む中でレビル大将の目にドックや工作艦で修理を受けている多数の艦艇が目に入った。
「どうやら、ひどくやられたようだな」
「その様です。情報によりますとブライアン・エイノー中将指揮の第二十二主力艦隊の艦艇の様です」
「そうか。あとで情報を聞いておこう」
参謀からの返答を聞いたレビル大将はそう言った。
その後、入港作業が完了するとレビル大将以下の艦隊司令部は基地司令の出迎えを受けた。
「遥々お疲れ様です。地球防衛軍スフロー基地兼地球防衛軍北部方面軍司令のアルフレッド・コナー中将です」
地球防衛軍スフロー基地兼北部方面軍司令アルフレッド・コナー中将は敬礼しながらそう言いった。
それに対して第三主力艦隊司令部も敬礼で返した。
「中将、出迎えご苦労。早速で申し訳ないのだが、あの修理を受けているのは全艦エイノー中将指揮の第二十二主力艦隊で間違いないかね」
レビル大将はそう尋ねた。
「はい。あれはエイノー中将指揮の第二十二主力艦隊です。相当無茶をしたようです。負傷者は多いですが死者が居ないのが奇跡です」
「そうか。死者が居ないのは良かった。ところでどんな無茶をしたのかね」
「はっ。エイノー中将はボラー連邦軍第3軍の攻撃を受け窮地に陥っていたガルマン・ガミラス帝国第27旅団とガミラス共和国第14遊撃艦隊の救援の為に第3軍に対して全艦で突撃、これを撃破したようです」
「なるほど。それは驚きだな。今彼は何処にいるのかね」
「現在エイノー中将は両艦隊に指揮官と熱く語りあっておられますよ。部下がそう言っておりました」
「なるほど。超タカ派だった彼がか。戦争は良くも悪くも人を変えるものだな」
レビル大将は意外だなという表情を浮かべながら言った。
ここでレビル大将が意外だなという表情を浮かべたのにはしっかりとした理由があった。
エイノー中将は地球圏艦隊時代から穏健派のレビル派閥に居ながらの超タカ派であり、異星人は信用できないというスタンスであった。その為地球連邦とガミラス共和国が軍事同盟を締結した後もそのスタンスは崩さず地球連邦自力での防衛能力整備を主張していた。
そのスタンスによりエイノー中将はガトランティス戦役では白色彗星侵攻までの間のガトランティス軍の攻撃において、ガミラス共和国の出番を不要とさせるために自らエンケラドゥス級15隻を中核とした第十二巡洋艦隊を指揮しガトランティス艦隊相手に連戦連勝していた。
それでもガトランティス軍主力及び白色彗星の直接侵攻において地球防衛の為にガミラス共和国が血を流したことにより、エイノー中将自身ガミラス共和国にある程度信用を寄せることになり彼のスタンスも少し和らいでいた。しかしそれでも超タカ派からタカ派になった程度であった。
だが今回、そのエイノー中将がボラー連邦軍第3軍の攻撃で窮地に陥っていたガルマン・ガミラス帝国とガミラス共和国の艦隊救援を自らの犠牲を顧みず行ったため、第二十二主力艦隊は殆どの艦が損傷を受けており、旗艦のアナンケ級カペラも中破していた
なおこの救援に向かう際にエイノー中将は数的劣勢に懸念を示した参謀に対して「地球防衛軍は窮地に陥っている味方を見捨てる弱小な軍隊ではない」と力強く言っており、艦隊将兵の士気を大いに上げていた。
また余談ではあるがこの日以降、エイノー中将がタカ派であることを知っている他艦隊の将兵がガルマン・ガミラス帝国やガミラス共和国、その他の友好国の指揮官達と仲良くしているエイノー中将の姿を見て驚愕したという。