宇宙要塞グラドはハイス公国の本星があるハイス星系とかつてはハイス公国領土であり現在はパラディアン皇国が占領している星系群へ向かう航路の中心にある小惑星で作られた要塞である。
この要塞があるとハイス公国は宇宙要塞グラドを突破しない限りかつての支配領域には手が出せず逆にハイス公国本土が常にパラディアン皇国の脅威に晒されるのであった。
そしてハイス公国艦隊が宇宙要塞グラド奪還作戦を開始した頃、ハイス公国領土の偵察に向かったものの、返り討ちにあった数隻の艦艇が宇宙要塞グラドに入港しつつあった。
宇宙要塞グラド司令室
「司令、ハイス公国領土に偵察に行った艦隊が戻りましたがデストロイヤー艦8隻の内、3隻損失で無傷なのは2隻だけです」
副官がそう報告をすると司令は少し不機嫌そうな顔をした。
「全く偵察しに行ってこの有様とはどうなっている」
司令は溜息交じりに呟くように言った。
このように司令が呟くのも無理は無かった。開戦以来今までハイス公国本土に偵察艦隊を何度かパラディアン皇国は派遣していたが、ハイス公国艦隊の迎撃を受けたのは今回が初めてであった。
「偵察艦隊からの報告によりますとどうやら待ち伏せにあったようです。因みに攻撃してきたのはハイス公国第10哨戒艦隊とのことです」
「待ち伏せだと。ハイス公国の連中どうやってこちらの動きを知ったんだ」
副官の報告を聞き、司令は少し驚いた声を出したが直ぐに冷静になった。
「まぁ良い。既にハイス公国侵攻艦隊の準備は出来ている。これで長きに渡るハイス公国との戦争も終わりだ」
司令はモニターに映る多数の艦艇を見ながら言った。
モニターに映る艦艇群はハイス公国との再開戦により集結したハイス公国本土侵攻艦隊であった。このハイス公国本土侵攻艦隊は総数約500隻、全艦がボラー連邦からの輸入艦であり地球連邦から支援を受ける前のハイス公国艦隊相手には非常に強力な戦力であった。
そしてここに集結した艦隊はあと数日もすればハイス公国本土への侵攻を開始する予定であった。
「そうですな。政府が情けで存続させてやったのに自ら滅びを選ぶとはハイス公国は気が狂ったのでしょうかね」
副官もモニターに映る艦艇群を眺めながら喋る。
そのモニターに映っている艦艇群は整然と並び、見るからに逞しい姿であった。
「あの地球連邦と同盟を組んだからだろう。だが地球連邦もボラー連邦との戦争で手が出せんはずだ」
司令はそこまで口にしたところで喋るのを辞めた。そして脳内にある仮説が浮かんだ。
(待てよ。まさか地球連邦はハイス公国に莫大な軍事援助をしたのではないか。そうすればハイス公国が強気なのも辻褄が合う)
司令はそう考えた。勿論地球連邦の恐ろしさはボラー連邦経由でパラディアン皇国にも入っていた。正に戦闘民族と言っても過言ではない存在であるということなどの地球連邦の情報をこの司令も上層部から聞いていた。
そう司令が深刻な表情でそう考えていると副官が声を掛けた。
「司令、どうかなされましたか」
「いや、何でもない。ちょっと考え事をしただけだ」
司令はそう言ったが仮説が事実なのではないかと思いつつあった。もし仮説が事実なのであればハイス公国が強力な支援を受けていることは間違いなく、そうであるならばハイス公国が強気に出ればパラディアン皇国の苦戦は必須であるからだ。
そして司令と副官が会話を終えた直後、レーダー員が叫んだ。
「何かが多数ワープアウトします!」
「なに!?」
その言葉を聞いた司令は驚きつつも反射的にモニターを見回した。
そして一つのモニターに多数の艦艇がワープアウトしてくる光景が映っているのを見つけた。
宇宙要塞グラドの司令がモニターで見つけた艦隊は宇宙要塞グラド奪還作戦に参加しているハイス公国艦隊の部隊だった。
最初にワープアウトした艦隊は宇宙要塞グラド奪還作戦の一番槍を任されたハイス公国の第1攻撃隊であった。
ハイス公国第1攻撃隊旗艦アナンケ級バキシム
「全艦ワープアウト完了」
「よし、全艦直ちに攻撃開始!ありったけの砲撃とミサイルをぶち込め!」
艦隊旗艦のアナンケ級バキシムの艦橋では「ワープアウト完了」の報告を受けた若き司令が攻撃開始の命令を出していた。
そして司令の命令を受けた第1攻撃隊のアナンケ級バキシムを筆頭にマゼラン級2、サラミス級6、ドイッチュラント級4、レパント級12、そして地球連邦との接触前からハイス公国艦隊の主力艦であるガラン級フリゲート10が一斉に攻撃を開始した。
攻撃を開始した第1攻撃隊各艦の主砲は絶え間なく発砲しミサイル発射管要塞目掛けて無数のビームやミサイルが撃ちだされた。
第1攻撃隊が放ったビームやミサイルは吸い込まれるように宇宙要塞グラドに命中し、要塞外に停泊していた艦艇を破壊し、一部のゲートを突き破り要塞内にも被害を与えた。
だがパラディアン皇国側も黙っては居ない。要塞外に展開していた艦隊で第1攻撃隊に攻撃をしようとしていた。
「戦艦ガルガム被弾、デストロイヤー艦ヘレン、ジン轟沈。戦艦フレッツ中破」
「全軍第一種戦闘配置。要塞外に展開している艦艇を迎撃に向かわせろ。損傷艦は後退し要塞内に停泊している艦艇は緊急出港だ!」
要塞司令室では司令が矢継ぎ早に命令を出していた。
そして命令は素早く伝達され出港可能な艦艇は直ちに出港し、ハイス公国艦隊の迎撃へと向かい損傷艦は後退する。
第1攻撃隊旗艦アナンケ級バキシム
「司令、要塞外の敵艦隊が本艦隊に向かいつつあります」
「要塞内からも艦艇の出撃を確認しました。数は依然増加中」
「構わん。そろそろ主力が到着する」
オペレーターの報告を聞いた司令は冷静だった。
これから艦隊が攻撃を受ける可能性が高いのだが司令はそんな事は気にしていない様子だった。
そして司令の言葉通り直ぐにハイス公国艦隊主力は次々とワープアウトし姿を現した。
旗艦バーゼルガを筆頭に多数の戦艦、巡洋艦、フリゲート等々、それらの艦艇は積年の恨みを晴らすべく今、要塞を攻め落とし奪還するために戦場に姿を現したのであった。