ハイス公国艦隊の主力は幾つかの部隊に別れ、要塞を半包囲する陣形で次々とワープアウトすると、間を置かずに砲撃を開始しつつ、母艦機能を持つ艦はモビルスーツや航空機を続々と発艦させていった。
ハイス公国艦隊旗艦バーゼルガ
「主力隊全艦ワープアウト完了。攻撃開始します」
「先遣隊は健在です」
「よろしい。モビルスーツ隊及び航空隊は制空権を確保し、制空権確保後モビルスーツ隊は要塞に取り付き砲台を潰せ」
バーゼルガ艦橋では司令は淡々と命令を出したがその目は闘志に燃えていた。
宇宙要塞グラド司令室
「多数のハイス公国艦隊が要塞を囲むようにワープアウト」
「敵艦隊砲撃しつつ航空機を多数射出。数は100を超えています」
「第4ゲートに命中弾多数、ゲート内の被害甚大。内部の第23戦艦隊壊滅」
「敵艦隊に地球連邦のドゴス・ギア級相当の艦艇も確認!」
オペレーター達が次々と報告をするが、その間にも被害は増えていく。
「展開していた第5駆逐艦隊壊滅」
「第3戦艦隊壊滅」
「第1ゲートに敵砲撃が命中、ゲート内部も被弾」
「出撃可能な艦艇は出撃し反撃しろ!展開中の艦艇と要塞砲は艦艇の出撃を援護しつつ応戦せよ」
オペレーター達が損害報告を次々と挙げ副官は呆気に取れている中、司令は反撃指示を出しながら脳内では仮説が正しかったことを悔やんでいた。
(やはり仮説は正しかったか。地球連邦め、余計な事を)
そう考えながら司令はモニターに映る多数の艦艇を従えながら砲撃をしてくる巨大戦艦(バーゼルガ)を見つめ、「あれが旗艦か」と呟いた。
その見つめられたバーゼルガは多数の僚艦を従え猛攻撃を加えていた。
「艦長、遠慮は要らんからありったけのビームとミサイルをドンドン撃ち込め。それと各部隊は砲撃しつつ距離を詰めよ」
司令はそう言い猛攻撃を受ける要塞を凝視していた。
この時バーゼルガの周辺にはアナンケ級アリゲラとアルゴナ、マゼラン級4、機動戦艦(アイリッシュ級)2、重航空巡洋艦(アレキサンドリア級)4、巡洋艦(クラップ級)6、MS搭載型サラミス(サラミス改)6、サラミス級8、ドイッチュラント級4、ガラン級14、レパント級12が展開し猛攻を加えていた。
勿論要塞側からもミサイルやビームの反撃はあるが、ハイス公国艦隊が絶え間なく展開するビームかく乱幕でビームは無力化され、ミサイルも迎撃が激しくハイス公国艦隊に満足なダメージを与えられていなかった。またその反撃も一方に集中した反撃ではなく、散発的な反撃であった。
これはハイス公国艦隊が幾つもの部隊に分かれていた為、パラディアン皇国側が集中した反撃が出来ないのと、反撃に回せる戦力が足らない為であった。
だがパラディアン皇国側も反撃に手を抜いてはいない。
ハイス公国第5攻撃隊
「テレス撃沈されました!」
部隊旗艦のマゼラン級ケルビム艦橋に爆沈するサラミス級テレスの爆発の光が差し込む。
この第5攻撃隊はマゼラン級1、サラミス級4、クラップ級2、ガラン級12からなる部隊だがその内のサラミス級1隻が失われた瞬間であった。
「怯むな!反撃しろ。敵駆逐艦隊を叩き潰せ!」
部隊司令はそう言い部下に発破をかけていた。
ハイス公国第5攻撃隊がパラディアン皇国駆逐艦隊と激しく撃ち合っている中、ハイス公国第4攻撃隊もパラディアン皇国第17戦艦隊を中核とする艦隊と激しく撃ち合っていた。
ハイス公国第4攻撃隊旗艦アナンケ級アーストロン
「敵戦艦部隊砲撃しつつ接近してきます」
「戦艦ドラゴリー被弾、オクスター中破」
「損傷艦は応射しつつ後退し健全な艦は落ち着いて敵を狙え。焦る必要は無い」
被害報告が入る中、部隊司令はそう各艦に落ち着いて砲撃するように命令を出していた。
そして命令を受けた僚艦はお返しだと云わんばかりに撃ち返した。
こうして局地的にはハイス公国艦隊にダメージを与えているパラディアン皇国軍であったが全体的な戦局は絶望的であった。
パラディアン皇国側は奇襲を受けたに等しい状況であり、要塞外に展開していたまたは急遽展開した部隊は艦艇、航空隊を問わず連携がうまく取れずに各個撃破の憂き目にあっており、要塞から出撃する艦艇もハイス公国側がゲートの位置を知っている為、出港時に滅多打ちにされ、撃沈されゲートを使用不能にする有様であった。また運良く出撃できても、そこはビームとミサイルが飛び交う地獄であった。
宇宙要塞グラド司令室
「第10ゲート及び第2ゲートに攻撃多数命中被害甚大」
「要塞外に展開していた艦隊の8割が撃沈または大破」
「現在までに敵マゼラン級3隻及びサラミス級7隻、フリゲート24隻撃沈。他にマゼラン級数隻、サラミス級他巡洋艦、フリゲート多数を後退させました」
「航空隊形成不利。敵は一部がモビルスーツを使用している模様。既に一部のモビルスーツが要塞に取り付き要塞砲を潰しています」
司令室には悲鳴のような報告が相次いでいた。中には敵に損害を与えた報告もあるが何の慰めにもならない。おまけに副官はショックのあまり使い物にならない状態になっていた。
「やはり元々ハイス公国の持ち物だけあって攻略方法が分かっているな。これはやむを得ない」
司令はそう呟くと命令を出した。
「全部隊及び全将兵へ伝達。本要塞は放棄する。要塞に居る将兵は直ちに出港する艦艇に乗船し脱出。要塞外の残存部隊は後退しゲートを死守しつつ応戦、ゲートより出港する艦艇を援護せよ」
司令はそう言うと司令室の要員は司令の方を見た。
「何をぼさっとしている。急げ!」
司令がそう大きな声で言うと司令室の要因は慌ただしく命令の伝達を始めた。
司令の命令が要塞内に伝わると各将兵は急いで出港する艦艇に乗り始めた、それも一目散にであった。なぜならこの要塞には全将兵が脱出できるだけの艦艇が存在していないことを将兵たちは知っていた為であった。
ただ要塞内の将兵達が脱出するということは要塞からの攻撃が薄くなるということである。これをハイス公国艦隊は見逃さなかった。
ハイス公国艦隊は要塞からの攻撃が弱まると一気に大攻勢に出たのであった。まずは次々とモビルスーツ隊が要塞に取り付き砲台を無力化していく。そして砲撃が無くなった宙域に一気に揚陸艦を伴ったハイス公国艦隊がなだれ込んだ。
そして揚陸艦は破壊されたゲートに強硬着陸すると、大量の陸戦隊を要塞内に送り込み始めた。
ハイス公国艦隊旗艦バーゼルガ
「陸戦隊要塞内に突入しました」
「よくやった。各艦隊は要塞から脱出する艦艇を叩け。情けはいらん、徹底的にな」
この時、ハイス公国艦隊司令は要塞から脱出する艦艇は徹底的に叩き潰すつもりであった。
ここで見逃しても後に逃がした部隊が味方に牙を剥くのは目に見えていた為であった。