転生したらオリジムシだった件   作:みころ(鹿)

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何番煎じだよとは思いつつ初投稿です。オリジナル設定しかありません。


01 ゴミ山

―転生したらオリジムシだった件―

 

・・・

 

吾輩はオリジムシである。名前はまだない。

いや正確に言えば名前は『あった』というのが正しい。いわゆる前世の記憶というやつで、つまり吾輩は現代日本の学生として生きた記憶を持っている。とはいえ犬も当たればトラックに当たる、スナック感覚で異世界転生が行われている昨今においてそれは何ら珍しいことでもないし、吾輩がアークナイツ世界に転生したとして驚くべきことでもない。

 

(いやいやいやいやいや!)

 

オリジムシ、とはタワーディフェンスアプリゲーム『アークナイツ』に登場する最弱の生物のことである。数で押し寄せるぐらいしか能がなく、それさえも中級ドクターともなれば範囲攻撃でいくらでも対処可能、時に燃やされ、時に近接オペレーターに駆除され、時には食用にさえされてしまうザコ中のザコ。加えてこんな丸っこい身体で生きていけるほどアークナイツ世界は甘くない。世界を覆う天災と、アーツ技術を学んだ人々に対してオリジムシという害虫はあまりに弱い。

そんな存在に転生してしまったのだ、俺は。

 

・・・

 

生前の話、と言っても大したことは無い。俺はアークナイツを遊ぶただのユーザーで、ある日SCPこと異世界転生トラックに追突されて気がつけばオリジムシになっていた。

オリジムシになっていることに気がついてからはや一週間。赤いビー玉のような瞳には俺が住む巨大森林の壮大な天蓋が映しだされている。美しいこもれびが差し込む天井とは反面、地上は不法投棄されたゴミ山で溢れかえり、デコボコとしたゴミとゴミの隙間を同族であるオリジムシくんたちが思い思いに這いずり回っていた。

 

さてこれからどうしたものか。

覚醒からこれまで一週間ほどこの森で生活してきたが、今のところ仲間のオリジムシや野生動物ばかりで人間というものを見ていない。もしこの森が人も寄り付かないような秘境であるならばこのままここで平穏に暮らせるのだろうが、ゴミの不法投棄がされているということはいつかここに人間が来ることは想像に難くない。

人間、天災、巨大生物たち。アークナイツ世界で生きていくにはとにかく強くなる必要がある。範囲魔法で一蹴されるだけの存在でいるのはまっぴらごめんだ。

誰にも負けないくらい強くなりたい。そのためにはどうすればいいのか?これに対し俺は一つの希望を持っていた。

それはポンペイ、と呼ばれる溶岩地帯に適応したオリジムシ。アプリ本編ではシエスタイベントに登場した敵ボスで、めちゃくちゃではないにしろかなりの戦闘能力を持っていた。そう、オリジムシでもボスがやれるくらい強くなれるのである。少なくとも自分にもその可能性があるというだけで充分だ。まぁ具体的にどう強くなれば良いのかはまったく解らないのだが。

 

『タベモノ!タベモノ!』

 

そこまで考えたところで後ろからの聞こえてきた声に振り返ってみると何やらタベモノを見つけたらしいお仲間がぞろぞろと行進しているのが見えた。

行く先はゴミ山地帯より更に森奥。普段ならば無視しているところだがそろそろ俺もお腹が空いてきた。仕方なく展望台と名づけたゴミ山の頂上から俺はのそのそと降りると列の最後尾についていく。

暫く森の中を歩いていくとやがて山肌に大きく開いた洞窟の巨大な入り口が見えてきた。まるで竜の口のようなその中に入るとそこでは数えるのもおっくうになるほどの無数のオリジムシたちが蠢いていた。

 

『タベモノ!タベモノ!』

『コウビ!』

 

ざわざわと騒がしい、ここがこの森にすむオリジムシたちの巣だ。アプリ本編ではあまり語られない(というか興味を持たれていない…?)オリジムシたちの生態だが、ある程度は群れをなす生き物であるということが解った。

仲間の多い巣穴の中は外敵に襲われることもほとんど無いし雨風もしのげる。しかも時折産卵中のメスのために食べ物が運び込まれることもあるので、ここにいれば食べ物にも困らないわけだが…俺はあまりこの巣穴が好きではない。

というのもこの巣穴はうるさすぎるのだ。ギィギィと鳴くオリジムシたちの声はそれ自体もうるさいが、それよりも俺が彼らの声を理解することができるという事が問題だったりするのだ。その内容は主に本能に忠実な『タベモノ!』や『コウビ!』といった簡単なことを叫ぶだけであり、知性ゼロの叫びを四六時中聞かされるのはもう気が狂いそうなのだ。

 

『コウビ!』

『あ、すいませんお断りさせていただきます…』

『コウビ…』

 

声をかけてきたメスオリジムシの誘いを断ると更に巣穴の奥に進む。

今の俺は当然オリジムシなわけで交尾も可能なわけだが、誰が悲しくて虫相手に童貞を捨てなくてはならないのか。この巣穴にいるとああいう風にメスに誘われることが良くある。モテモテじゃん。やったぜ。なお前世と比べてはならない。

 

『タベモノ!』

『あーあれかぁ…』

 

ざわざわと洞窟内を行き来するオリジムシたちの人混み…じゃなくて虫混みの合間を洞窟の奥まで進むと濃い血の匂いが漂ってきた。

そこにあったのは巨大な熊の死体。息絶えて間もない熊の身体の上には何体ものオリジムシたちが這いずり回っており、その新鮮な死肉を貪っていた。

オリジムシは基本的に雑食である。口から出す溶解液でどんな物でも溶かして食事することのできるオリジムシはその気になれば岩や鉄だって食べる。この特性だけ見ると害虫だが…実際害虫である。駆除されても文句言えないね。

 

(はぁ…)

 

もそもそと身体を近づけた俺は熊の赤い生肉に口をつける。

この一週間で生肉にも随分と慣れた。幸いなことにオリジムシの嗅覚が極端に鈍い。甲殻に包まれた身体に血がかかっても嫌悪感はそこまでない。味は生肉にしてはそこそこ良い方だった。

 

・・・

 

 

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