カンパーイっ・・・・・・・・!
おおおっ・・・・!
飲めっ・・・・! 飲めっ・・・・!
喰えっ・・・・!
ダンッ・・
そして勝とう・・! 勝とう・・!
俺たちは必ず成功するっ・・・・・・・・! おおっ・・・・・・!
ギュ・・ギュ・・ギュ・・ ギュ・・ かぁ~~~っ・・・・・・!
そうとも・・・・・・・・・・!
オレたちは放たれたっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!
未来へ・・・・・・・・・・・・!
開かれた明日へ・・・・!
欲望の沼を攻略した伊藤カイジは、地下から
宴も酣、べろんべろんに酔っぱらったカイジは、狂喜乱舞の仲間たちを残して一人トイレへ向かう。
オレは勝ったんだっ・・・!
その文句だけが頭を駆け巡り、酔いも相まって思考がまとまらない。ふらふらと個室に入り便器に顔を埋める。そのまま盛大に笑顔のまま嘔吐するカイジ。その顔は恵比寿様のようでもあり般若のようでもあった。
吐き続けること数分、胃が空になりスッキリしたところ、急に眠気が襲ってきた。
便座を下ろし体をあずけるカイジ。むにゃむにゃと便座に突っ伏す。便座が心地良い暖かさで、なんとも至福の様相である。そうして、あっという間に寝入ってしまった……。
「カイジさん遅いですね」
「そうだな・・・・確かトイレ行くって言ってたな」
「まあ、もう戻ってくるだろ」
「今日の主役だろカイジさん、あの人がいないと締まらないぞ・・・・・っ!」
「ちょっと僕、見てきますよっ・・・・!」
45組のひとり、三好はそう言い残してトイレへと向かった。
男性用のドアを開ける。無人であった。ならば個室かと、閉まっている個室をノックする。
「カイジさん!大丈夫ですか!カイジさん・・・・!」
寝ちゃってるのかな・・・・?
三好は仕方なく、閉まってはいたが鍵がかかっていないドアを開ける。
「カイジさんっ・・・・?」
開いた個室には誰もおらず、ただしわくちゃの万札が二枚便座の下に落ちているだけであった……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・・・・・
・・・
突き抜けるような青空のもと、アリシア・フローレンスは買い物に出かけていた。たまたま予約が入らなかった本日、食料品を買おうとサン・マルコ市場へ向かっているのだ。
「ぷいにゅ~!」
もちろん、アリア社長も一緒である。
「あらあら、アリア社長は今日も御機嫌ですね」
「ぷいにゅ!」
一人と一匹は美しい街並みの中を歩いていく。
ここ、ネオ・ヴェネツィアは惑星アクアの一都市である。
彼女たちはウンディーネと呼ばれ、巧みなオール捌き、
水先案内人は基本的に会社に所属し仕事を請け負う。ネオ・ヴェネツィアには会社の規模、売上、伝統・歴史などを考慮した三大水先案内店があり、「姫屋」、「オレンジぷらねっと」、「ARIAカンパニー」がそれにあたる。
そして、この「ARIAカンパニー」の唯一の社員がアリシア・フローレンスなのだ。ちなみに、社長は火星猫のアリア・ポコテンである。
「ぷぷぷいにゅ~~!」
「アリア社長! 何処行くんですか!」
「ぷいにゅ!」
突然走り出したアリア社長を追いかけるアリシア。
アリア社長は薄暗い路地の中へと入って、こちらを見ていた。
「もう、昼ごはん遅れちゃいますよ」
そういいながらも、わずかに眉を寄せてアリシアは、アリア社長についていくことにした。
アリア社長は、そのまま奥へと進んでいく。一つ橋を渡り、路地を右に折れた先に
「待ってくださいね、今行きますから」
薄暗い路地を抜け、広場へと出る。
「ぷいにゅう~!ぷいぷいぷいにゅ~!」
「アリア社長、そこでなにをしているんですか!?」
驚いたことにアリア社長は、噴水の前で誰かを舐め回している。
「ぷいにゅぷいにゅ!」
急いで噴水の前まで来たアリシアはアリア社長を抱き上げて舐め回されていた方に謝罪する。どうやら男性のようだ。
「ご、ごめんなさい! ……よかったらこれで拭いてください」
真っ白なハンカチを取り出しながら、アリア社長に顔を向ける。
「ぷいにゅ~」
「ほら、アリア社長も謝って」
「ぷいにゅ」
しかし、男性から反応はない。男性は噴水の縁に片腕を預けるようにして俯いている。
「どうしたのかしら?」
そう言って、覗き込むアリシア。男性は気持ちよさそうにいびきをかいて眠っていた。少しほっとしたアリシアであったが、このまま放っておく訳にもいかずどうしようかと頭を悩ませる。
すると、アリア社長が腕の中から飛び出してまた男性を舐め回し始めた。
「もう、アリア社長! 駄目ですよ!」
再度、アリア社長を引き離そうとすると男性がもぞもぞと動き始めた。これを機により一層激しく舐め回すアリア社長。
「ぅう~ん・・・・」
「ぷいにゅ~!」
鬱陶しそうにしているものの、なぜだか男性は満面の笑みを浮かべながら涙を流していた。
男性が目覚めそうだったので、動きが止まっていたアリシアであったが、ようやくアリア社長を引き離す。それと同時に、男性はぼんやりと瞼を開いた。
「お目覚めですか?」
「ぷいにゅっ~!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
カイジは夢をみていた。
沼を攻略し、遠藤さんと坂崎のおっちゃんと酒池肉林を謳歌する夢だ。近寄ってきた何人ものバニーガールにキスを受けるカイジ。鼻の下を伸ばし放題伸ばしている。周りを見渡せば遠藤さんや坂崎も楽しんでいるようだった。
「最高だっ・・・・!これまで散々だったけど、今、報われたっ・・・・!神様っ・・・・・!ありがとうございますっ・・・・!」
「飲めっ飲めっおまえら・・・・っ!」
酒を両手に涙を流しながら叫ぶカイジ。バニーたちはなおもキスを続ける。
至福っ・・・圧倒的至福・・・っ! 垂涎の愉悦・・・っ!
最高に顔を綻ばせるカイジ・・・・!
が、これは夢っ・・・いつまでも続かない・・・・っ! 覚めない夢はないのである・・・・・!
徐々に目の前の酒池肉林がぼやけ始めてくる。初めは
カイジはそれらを掴もうと手をのばすが、届かない。辺りは真っ暗闇になった。
・・・・・・・・・・・・・・・・!
そして、カイジは目を覚ます。ゆっくりと、だが確実に。
辺りはまばゆい光に包まれていた。その中心にこちらを覗き込む綺麗な女性と奇妙な生物がこの光景に溶け込むように佇んでいた……。
「お目覚めですか?」
「ぷいにゅっ~!」
「は・・・・?」
かくして、無頼漢伊藤カイジとアリシア・フローレンス、アリア・ポコテンは出逢ったのだった。
プロローグ 終・・・・・・・・・・・・・・・・