逸見エリカのヒーロー   作:逃げるレッド五号 4式

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両刀怪獣 カマキラス

奇獣 ガンQ
[エラーコード No.01]

登場





第6夜 【勇気はキミの手の中に】

 

 

 

 連日、テレビ番組のニュースやワイドショーは、ウルトラマンと怪獣の話題一色であった。それは特番を設けるテレビ会社まであり、あること無いこと__と言っても、今の所は件の巨大存在群についての情報はゼロに等しいのだが__言いたい放題という始末だった。

 

『熊本に現れた二体の怪獣が巨人、ウルトラマンナハトに撃退されてから今日で6日が経ちます。新たな怪獣は日本に現れていません。国内二例目となる同特殊生物災害では民間の死傷者は奇跡の0人だったものの、出動した自衛隊員1367名が殉職したとのことです。

また、隣国の中国…上海では市街地中心部に依然として眼球状の隕石…怪獣と思われる物体が居座っており、さらにアメリカではナメクジのような新種の小型特殊生物発見が報告され合衆国政府は当特殊生物を「ペドレオン」と呼称しました。なお、上海では依然として中国軍による隕石の爆破が試み続けられていますが、一向に効果は確認できていないのが現状で、中国政府は軍の対地ミサイルによる処理を考えているとのことです。

各国政府は、隕石落下の発表を何故迅速に行わなかったのかを非難する声明を発表しています__』

 

 日本の熊本…コッヴ・ゴルザ・メルバの襲来を発端とするかの如く、世界はここ約一週間で、初の特殊生物出現("クモンガ・ショック")以来の、変容を遂げようとしていた。

 特殊生物に指定されるに足る異常性、超常性を有する、既存地球生物の枠に収まらない存在が続々と現れるようになったのである。

 ()()()に共通する遺伝的・生物学的要素は皆無で、個として独自に進化した…若しくはその進化の幹から逸脱した奇怪極まりない__正しく怪獣と呼ぶに相応しい類いのモノらであるということだけは確かであった。

 

「……あの目がついた隕石怪獣、ホントにキモいわね…」

 

 さて、黒森峰学園高等部の戦車道ガレージの横に建っている二階建ての施設は、機甲科・整備科用の部室棟だ。

 部室棟には、男女別の更衣室、個人間のヒソヒソ話から公式戦の作戦概要の説明にまで利用可能な小中大の会議室(ミーティングルーム)、戦術教本…から甘々な恋愛漫画まで豊富な種類の書籍を揃える図書室、自販機・座間・マッサージチェア・共用の携帯充電器等が置かれた休憩室、機甲科隊長事務室といった設備及び部屋が戦車道履修生徒達のためにある。どちらかと言えば、合宿所やセミナーハウスと言われた方が納得できる設備の充実ようであった。

 

 そんな部室棟の一階小会議室で上のように溢したのは機甲科副隊長、エリカだった。

 小会議室の壁に設置された大手家電メーカー__「Terasonic」の文字が綴られた液晶テレビモニターに映されていた、特殊生物特集のニュースを観ての感想だった。

 画面一杯に__開示元不明の、鮮明な衛星写真に映っている特異な隕石…通称"ガンQ"は、既に有識者達の間では特殊生物で確定だろうと囁かれている。

 

「ああ、見ていて気持ちが良いものではない…」

 

 会議室中央…エリカの斜め隣に座っていた機甲科隊長のまほが吐き捨てるように言った。

 クールフェイスの冷静沈着な鉄血隊長として学園内外に知られている西住家の長女であるまほだが、彼女も戦車を降りれば一人の女子高生であり、同い年の他の少女達と同じ一般的な感性を持っている。

 彼女もまた、見る者全てに等しく嫌悪感を与えるガンQのルックスに顔をしかめていた。滅多にお目に掛かれないやや血の気が引いた顔でエリカの呟きに同意を示している。

 

 現在、小会議室には、機甲科・整備科のいつものメンバーもといトップメンバー__まほ、エリカ、小梅、ハジメ、ヒカル、マモルと、他数名__レイラ、ユウ、ダイト、タクミがまほによって招集をかけられ集合しており、皆それぞれの席に座っていた。

 

 まほに続き、エリカの特殊生物絡みの話に小梅も加わってくる。

 

「個人的にはアメリカの…大ナメクジ(ペドレオン)の方が気持ち悪いかなって……」

 

 「ちょっとゾワっと来ちゃって…」と両肩を摩りながら苦笑していた。

 

 なお、彼女達の預かり知らぬことではあるが、ペドレオンは凶悪宇宙生命体("スペース・ビースト")の枠組みに属する特殊生物__怪獣である。

 同種族は、知性体の恐怖感情を糧に進化・増殖し、ただひたすら他生命を攻撃・捕食するサイクルを繰り返す異常な生態から"異生獣"と呼ばれることもある。

 宇宙に感情を持つ知性体が存在する限り、絶滅することは無い厄介な種族なのだ。

 

「小梅ちゃんそれ分かる! 私もああいうドロドロしたの嫌い!」

 

 そんなスペース・ビーストの末恐ろしい生態を、彼女達は生涯知ることは無いだろう。否、知る必要も無い。

 

 レイラが小梅に同調してうんうんと頷いていた。

 

「__なあなあ、中国軍は戦略ミサイル軍とかも使ったりすんのかな?」

 

 一方、男性陣6名側は、また別の話題でやいのやいのと話していた。

 

 やはりこの歳の男子…特に常日頃より、軍用車両__それも凡そ70年前の旧式とは言え、戦車を触っている、弄っている少年達はそこらの人間よりもミリタリー関連の知識や興味と言うのは人一倍ある。

 

 国際情勢から一国の兵器事情まで、ネット掲示板やら新聞から拾ってくる彼らは、その手の話題の引き出しは多い。内容の真偽は別として。

 

 ニュースにあったように、中国政府はガンQに対して工兵による爆破処理から、攻撃ヘリの対地誘導弾による完全破壊に方針を転換した。

 ヘリの攻撃が同様に効果が無かった場合、何もかもすっ飛ばしてかの国は実質的な第四の軍である戦略ロケット軍___正式名称、中国人民解放軍ロケット軍を投入するか否か……ヒカルが皆に振った話はそれだった。

 

「それは向こうが考えてやることだからなぁ…何とも…」

 

 そのヒカルと並び、学園で"筋肉バカ"として有名なダイトが珍しく的を射た返答を誰よりも早く繰り出した。

 

「それに、仮にも自国領だぞ。そんな簡単にやべー暴力装置をあちらの国が……いや、あるか」

 

 ユウが話に続こうとするも、顎に手を当て黙り込んだ。

 

 …ここで、上の会話に付随した余談を一つ、挟ませていただく。

 この本史世界でも、中国の弾道ミサイル絡みの国家間トラブルと言うのはあった。

 

「あの軍って、核弾頭以外にも通常弾頭の弾道ミサイルやらも運用してるでしょ? ほら、"神海"ってヤツとか」

 

 中でも、2000年代後半にあった同軍の新型中距離対艦弾道ミサイル__タクミの口からも出た___"神海"の実戦配備は記憶に新しい出来事だ。

 

 中国側のこのミサイルについての表向きの説明としては、「対弾道ミサイル多重迎撃網を単独で突破可能かつ、理論上10km級の大型艦船さえ数発で大破轟沈に追い込む打撃力を有する新型の極超音速弾道ミサイル」…と言う触れ込みであった。

 

「あー…黒森峰レベルの、大型学園艦でも余裕で消し飛ばせる対艦…それも弾道ミサイルだっけか。アレ、おっかねーよな」

 

 だが実際のところは戦略級の巨大戦闘艦へと変貌を遂げること可能な、学園艦への攻撃を想定した代物であるというのは、世界の軍事・政治界隈に留まらず一般の人々の間でも広く知れ渡っている、ある意味有名な話である。

 1()0()k()m()()()()()()()というのは、表記こそ濁してはいるものの、それが学園艦を指しているのはどう取り繕うとも明らかだった。

 

「それを怪獣退治に使ってくれるなら、それはそれでいいけどさ」

 

 本世界では、史実世界には無い非常識な巨大艦船__学園艦が存在しているのは上でも触れたように周知の事実であるが、そんな非武装の巨船があれば、他国、特に仮想敵国による軍事転用…空母化並びに輸送艦化を警戒するのは必然の流れと言えよう。

 幸いといっていいのか、本世界の第一次並びに第二次大戦時には"学園艦の武装化"と言うタブーを犯した国家は__ギリギリのところで踏みとどまったり、一国が始めれば芋蔓式に増えることを各々が危惧して__ゼロであった。

 

 ___が、中国の"神海"配備は「いつかは必ず何処かの国がやる」という疑心暗鬼…ジレンマとも言うべき思考を各国が戦後から現代に至るまで捨てられなかったが故の出来事とも言えた。つまりは、起こるべくして起こったもの、であった。そしてそれは韓国・日本___西側諸国に属する二国にとって憂慮すべき事案であった。

「学園艦の航行の自由を阻害し、国際協調の輪を著しく乱す時代錯誤の決断だ」。

 同ミサイルの実戦配備を受けて、当時、日米韓露印の5カ国による中国への共同の批難声明の発表や、各国で反軍拡デモ・学園艦保護運動などが活発に行われた。また、韓国と日本は世論と国防上の観点から、ミサイル関連のほとぼりが冷めるまでの凡そ一年の期間、自国の学園艦に日本海西側海域の航行制限を設けることにも繋がったのである。

 

「…んまあ取り敢えず、今回のどさくさに紛れて日本にもついで感覚でブッパするのだけは勘弁だっつー話だ」

 

 なお、現在は電磁加速砲(レールガン)の登場や日本の自衛隊の規模拡大、米国の巨人兵器の躍進もあって、そのスペックこそ未だに懸念材料であれど対艦弾道ミサイル“神海”の脅威度は低下しつつある。

 

「「「それはそうだ」」」

 

 上のような出来事もあって、中国のミサイル軍の保有戦力なら怪獣___ガンQ相手にも有効だったりするのではないか、と言うのがヒカルの言い分だったが、この話題への、最終的な男子達の総意としては、「兎に角、日本(自分達)に矛先向けてこなければヨシ!」で、まとまった。

 異論が上がることは無く全会一致で、これによってガンQから派生したミサイル軍の話題は一応の終わりを見せていた。

 

「…そういえば。話は身内の方になるが…ハジメ、お前、肩の怪我はもう大丈夫なのか?」

 

 次なる話題を振ったのはユウだった。

 内容は6日前のハジメの負傷に関するものである。先の話題の時から気になっていたのだろう。その顔はハジメの身体状況を心配して、いつもの彼らしくない、やや不安気な色をしていた。

 

「大丈夫大丈夫!あまり深くなかったから全然肩は使えるよ」

 

 気に掛けてくれるユウに、ハジメは「ほら!この通り」と、笑顔で元気に肩をブンブンと回して見せる。

 ハジメの様子を見て、ユウは一先ずは__「()()()深くない」と言うワードに若干引っ掛かりはあったものの__安心できたのか、深呼吸を一つ挟んでからいつもの穏やかな顔に戻っていった。

 

「あのぉ…まほさん」

 

 マモルが男子側の輪から外れて、まほの名前をオドオドとしながらも呼びつつ、挙手して質問したいと言う意を伝えようとしていた。

 

「ん。どうした?マモル君?」

 

 マモルの動きをまほは見逃しはしなかった。

 一つ下に彼のように気が弱く、他者に配慮し過ぎて遠慮がちな妹を持つ姉である彼女だったからこそ出来た対応だったかもしれない。

 「大丈夫。キミが何か聞きたいことは分かってる」と、小さくコクリと頷き、微笑を向けて続きを促した。

 

「えと…ボクたち、黒森峰はいつ佐世保に向かうんですか? 結局今日までの6日間、熊本にずっと停泊しているんで…」

 

 マモルが気になっていたのは、此度の停泊期間についてであった。

 ゴルザ・メルバ襲来から凡そ一週間近く、学園艦は新熊本港に停泊を続けている。マモル達一般生徒側にどれほどの日数、同港に停泊をし続けるのか、今回は珍しく伝えられていなかったからだ。

 さらに言うと、黒森峰戦車道チームは、来たる全国大会に向けてアメリカ合衆国風の学園艦__サンダース大附属高校のチームと練習試合を組んでいた。試合場所は相手のホームグラウンド、佐世保だ。

 距離的に近いとは言え、試合当日まで僅かである。陸路…輸送車輌や鉄道を使うと言う話も出ていなかったので、そろそろ出航しなくてはいけないのではと彼は言いたかったのだろう。

 

「ああ。そのことだが、あと1時間かかるかかからないかで、舞鶴の護衛艦が熊本に到着すると、先生方と船舶科の知り合いから聞いた。護衛艦と合流し次第、佐世保まで護衛してもらうとのことらしい」

 

「うん…うん?え、なんで舞鶴からなんですか?佐世保所属のじゃなくて?」

 

 素朴な疑問だった。ここらの海域は、海上自衛隊佐世保地方隊の管轄である。佐世保基地を母港とする実働部隊(護衛隊群)が黒森峰学園艦の護衛として就くのではというのがマモルや話を聞いていた他のメンバーの頭の中に浮かんでいた考えだった。

 

「佐世保からっつーガセ持ってきたやつ誰だっけ?」

「やめてくれ、不毛な争いは好きじゃない」

「てめーかダイト!!」

 

 男子勢が相変わらず賑やかであることにはまほは毎度のことだとスルーして話を戻そうとする。

 

「あー…いいかな?海上自衛隊による各学園艦の護衛は基地の枠組みを越えて数隻単位でのローテーションで行うとのことだ。今回は護衛艦、"あさひ"と"たかなみ"の2隻だ。…質問に関しては、これで良かった?」

 

 まほの返答によって、マモルの疑問は案外あっさりと解けた。

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 日本が有する学園艦は40と数隻…これまで学園艦の護衛任務といえば、下手に近隣諸国__中国、北朝鮮、豪州連合__との軋轢を生じさせないよう、日本の事実上の海軍組織__海上自衛隊の護衛艦の代わりに"海の警察"海上保安庁の艦艇が一週間に数回のペースで行なっていた。

 しかし今後は、特殊生物の出現に伴って、警護役の艦船は大口径機銃若しくは多砲身機関砲が最大火力である巡視船や巡視艇だけでなく、艦砲・誘導弾・魚雷といったガチガチの戦闘能力を有する護衛艦も追加されることとなった。また、一時的な帰投や補給もすることなく文字通り護衛対象の学園艦が次なる寄港先に到達するまでつきっきりになると言う。

 

「なるほど。そのローテ方式ならいけるもんなのか………あ!海自と言えば、3日前に"第5護衛隊群"が予定より早く訓練を切り上げて実戦配備されるって言ってたな!」

 

 海自と海保、その両組織に言えることだが、管轄に拘り過ぎてしまえばその地域の部隊の運用に支障が出てくる。最悪パンクしてしまうだろう。

 よくよく考えてみれば、ローテーションは妥当な案だった。

 

 ヒカルが納得した様子で頷きつつ、海自に関係する別話題を新たに挙げた。

 

「大湊の新しい艦隊だっけ?」

「北の守りは盤石ってわけだ」

「んでも、今はもうロシアは仮想敵国じゃないよね。大湊よりだったら、豪州連合に近い佐世保とか呉に置いた方が___」

「災害派遣も視野に入れてのことだろ。震災だってあったんだから」

 

 "第5護衛隊群"。

 大湊基地に司令部を置く、海自の新たな実働部隊だ。

 当隊は、海上自衛隊が事実上の()()である〈"いぶき"型航空護衛艦〉を運用するために2010年前後より新設の議論が為されていた。

 そして凡そ10年が経過した今年。ようやく6月に正式に配備、運用が開始された護衛隊群だった。

 …本来は、この護衛隊群は上記の航空護衛艦__一番艦の"いぶき"就役に合わせて配備されるはずだった。

 

 要は()()()()()()()()のである。

 

 何に、如何にして間に合わなかったのか?

 それには〈"いぶき"型航空護衛艦〉就役の理由と深く関係している。

 空護"いぶき"誕生のきっかけは、2000年代以降…先の《神海》と言ったミサイル戦力だけでなく、海軍戦力を増強していた中国が新たに__()()()と言えど__初の航空母艦である〈アドミラル・クズネツォフ級航空母艦 "ヴァリャーグ"〉を購入し、人民海軍に〈001型航空母艦 "遼寧"〉として就役させたという出来事によるものだった。

 ちなみに、オーストラリア国防海軍__豪州連合海軍の原子力空母実戦配備のタイミングもこれに前後しており、そちらもまた日本にとって懸念材料でしかなかった。

 

 新型弾道ミサイルだけでは飽き足らず、それに続くように今度は"海上航空基地"としての役目を持つ戦略艦船たる航空母艦を中国が保有したことによって、再度安全保障上の危機に陥った日本政府は、あくまで対中国抑止を念頭として()()()()()()()()()()()()()()()の建造と配備を目指した"ペガソス計画"なる新型艦建造プランを極秘裏に打ち立て、それを推進した。

 同計画によって生み出されたのが上文で幾度も出てきた〈“いぶき”型航空護衛艦〉である。

 

 そして2014年、一番艦たる空護"いぶき"就役直後。

 中国が突然、日本領海の尖閣諸島近海に空母"遼寧"と後継艦の"山東"を主力とした、劉大校の指揮する北海艦隊を演習目的で派遣した。

 これに対して日本政府は戦後並びに憲法制定後そして海上自衛隊創設以来3度目__1999年の“能登半島沖不審船事件”、2004年の“漢級原子力潜水艦領海侵犯事件”に続くもの(史実世界では2009年に“ソマリア沖の海賊対策”にて3度目となる発令をしているが、本史世界では2000年代に発足した旧アフリカ連合…AUを前身母体とする“アフリカ共同体”によって実施された対ソマリア救援政策によって海賊自体が発生することが無くなっている)__となる「海上警備行動」を発令。海上自衛隊も、"いぶき"を擁する佐世保の第2護衛隊を同海域に急行させ、第5及び第8護衛隊を増援として派遣した。

 また、先行していた日中の両艦載機による尖閣諸島沖での偶発的かつ消極的な空戦が発生。

 しかし、双方に損害は発生することなく空戦は終結。

 これ以上の事態のエスカレートは、局地戦では収まらずに日中両国による全面戦争に発展すると危惧した両国の現場指揮官による独自判断により、北海艦隊並びに海自護衛隊は海域より撤収。一触即発の事態は回避され、その後は日中の外交官による対談から首相同士の会談を経て、相互の不和は残ることにはなったものの、両国の緊張状態は徐々に回復していった……というのが2014年に発生した"いぶき事件"の内容だ。

 

 "第5護衛隊群"はこのような事態に対処するために考えられた、航空護衛艦専用の部隊であったのだが、事態発生の前に結成に至らなかったわけなのである。

 そのため今年__2020年に正式配備が言い渡された当部隊は、通常の護衛隊群と変わらない、五番目の護衛隊群となった。

 

 長々とした内容となってしまった。

 

 黒森峰のメンバー達の会話に話を戻そう。

 

「___空自の方は《F-3J 蒼天》の追加配備が決まったってさ〜」

 

 海自周りの話が落ち着き、またしても別の話題__空自の戦闘機に関する話が男子側で広げられていた。スマホを開き、ネット記事を読んでいたユウが記事の見出しを横のヒカルに見せながら呟く。

 画面には、記事の見出しがでかでかと映っていた。

 『"蒼空の守護神"、増産へ』。

 そしてその見出しの下には、F-2のような洋上迷彩を施したF-22に酷似している、日の丸を翼に付けた戦闘機__F-3Jの画像が掲載されてあった。

 

「あの翼竜("アルファ")のせいだろうな」

 

 航空自衛隊の誇る、国産第五世代ステルス戦闘機__〈F-3J 蒼天〉。

 別名「日本版F-22(ラプター)」。

 あらゆる状況に対応可能な、多用途戦闘機__マルチロールファイターとしての側面も持つハイスペック機体である。

 

 F-3の追加配備は、先の対メルバ("アルファ")戦__"北九州航空戦"で数を減らしたF-35の補填をするためなのだろう。

 

「やっぱそれかよ…」

 

 なお、この話題に…特殊生物に対する備えに関連するものとしては、数日前に治安組織__警察庁が、警官の装備強化を行う意向を示す会見があった。

 主にパトカーの後部トランクのスペースに配置する装備として短機関銃、散弾銃といった銃器や防弾ヘルメット及びチョッキの採用を検討しているとのことだった。

 

「空自もだけど、陸自も陸自で被害が大きかったからね…」

 

 タクミの呟きの通り、現に防衛省は空自航空隊だけでなく、陸自第8師団の戦車連隊再編に苦慮していたことを記しておく。

 "熊本市防衛戦"__ゴルザ("ベータ")迎撃に投入した機甲戦力、航空戦力の5割強が消滅、1割5部が大破ないし中破の損害を被った。

 損耗5割を超えればその部隊は()()の判定だと言う。いかに西部方面の陸上自衛隊が切迫した状態にあるかが分かるだろう。

 

 先の学園艦に関するマモルとまほのやり取りから、直近のイベント…練習試合について、革張りの椅子に背を預けて伸びをしながらヒカルが触れる。

 

「___なんやかんやで、今年もサンダースとの定期戦の時期かぁ」

 

 黒森峰は年に一回__本格的な夏季突入前の6〜7月の間に、サンダース大附属と戦車道での交流試合を設けている。

 毎年執り行われるこの試合は、両校の生徒間の交流促進と戦車道の技術技能の向上が狙いであったりする。

 

「そうですよ。向こうの集中火力ドクトリンは侮れません」

 

 ヒカルの呟きを小梅が拾い、試合予定の相手校(サンダース大付属)についてのおさらいに近い返しをしていた。

 

 彼ら彼女らは既に()のことを見据えていた。

 日常が戻ってきたのなら、為すべきことは決まっていた。

 日々積み重ねてきた努力が、形として成る青春の大舞台に意識を向けているのだ。

 

「シャーマンの一斉射撃はドイツ戦車とはまた違う圧力があるよな…」

「そんなゲッソリした顔で言われても、お前が撃たれるわけじゃないだろヒカル」

「いやいや。ゲームでは散々俺の日本戦車を叩き潰してる連中だぞ。戦車乗らん奴でもトラウマはある」

「黒高生なんだからドイツ戦車使えよ」

 

 …若干の雑念を携えながら。

 

「さてと…一旦ここで切って、そのサンダースとの試合と参加メンバーについて話しておく。…ちょうどレイラもいるしな」

 

 まほが会議室内の雑談に区切りをつける。

 チラリと一度レイラを見やって「ここに皆んなを集めたのはこの話のためだったが」と前置きしつつ言った。

 

「え?ま…まさか、もしかして!!」

 

 隊長であるまほの言葉を聞いてレイラの声色は明るくなる。

 その「もしかして」から、想像の膨らんだレイラが思いのあまり席から立ち上がって、身を乗り出さん勢いでまほの口から出る言葉を待ち望んでいた。

 それを見ていたまほは彼女に応えて頷きながら続ける。

 

「__レイラのパンターも今回のサンダース戦からAチームに参加してもらう。頼むぞ?」

 

 いつものクールフェイスを崩して穏やかな笑顔で、である。

 それは彼女に対するまほの期待の表れでもあった。

 

 再び余談となるが、本史世界の日本では、"戦車道全国高校生大会"と"全国高等学校野球選手権大会"__所謂"甲子園"が青春スポーツの代名詞…その二大巨頭であると捉えられている。

 高校戦車道は、甲子園__高校硬式野球を除いて、唯一夏季全国大会の全国中継が行われるスポーツであり、この世界の日本では二度「高校生達の暑い夏」をお茶の間で観ることができるのである。

 

「は、はいっ!!了解しました……!!!」

 

 Aチーム…一軍の、レギュラーメンバーへの昇格。

 

 高校戦車道の名門、ここ黒森峰では他校と比べてその言葉は、二軍や三軍相当のチームのメンバー…一軍選手として公式試合に臨もうと日夜練習に明け暮れ血反吐を吐く勢いで打ち込んでいる履修生の少女達に対して絶大な威力を持つ。

 それも、ガレージに張り紙で通達されるより、機甲科隊長から面と向かって直々にそのお達しが貰えれば余計に、であった。

 

「___やっっったぁーーー!!エリカちゃんとまた一緒に試合出来るよぉおお!!中等部以来だよ〜!!」スリスリ

 

 そして何より、親友__エリカと肩を並べて戦えることに至高の喜びを持っていた。

 席から立つとそのままエリカの元へダイブ。

 彼女の左脇腹にレイラは勢いよく抱きつきその顔をこれでもかと埋めていた。

 

「ちょ、ちょっとレイラ!くっつくんじゃないわよ!!暑いじゃない!!」

 

 親友に抱きつかれたエリカの顔が赤いのは室内に設置されているエアコンの出力不足だけが原因ではないだろう。

 ……なんだかんだ言って実は彼女も嬉しいのである。

 

「えへへ!離さないよ〜!!」

 

 エリカの制服に顔を埋めているため、レイラの声は若干くぐもったりしているが、そんなのはお構い無しに彼女のいちゃつきの具合は更に高まりつつあった。

 

「本当に離れなさ…あら?」

 

 ふとエリカの視界の中に、まほがテーブルに置いていたメンバーの一覧表に中でも比較的上に載っていたある名前が目に入った。

 

「レイラ?アンタの苗字ってたしか…"楼"だったわよね?なんで"蕪木"になってるの?」

 

 エリカにとっては初出の情報だった。

 

「あー、実はね!高等部に上がる前にお父さんの方の苗字に変わったんだよ!エリカちゃんとは別クラスだったから言ってなかったね」

 

「それに皆んな下の名前でレイラちゃんのこと呼んでるから…」

 

 日々の日常的やりとりが重なっていったことで、逆に気づく人間が少なかったというべきか。

 しかし、高等部二年より機甲科隊長として書類系の整理__事務作業を多く片付けているまほには見慣れたものであり、彼女の人柄からしても、特段騒いだり問いただしたりする内容ではなかったため、そしてそもそも興味さえなかったために、大勢の前でレイラの苗字について触れようともしなかったのだろう。

 第一に、レイラ本人にとっても、その話題がタブーでは無かったのも幸いしたと思われる。

 

「そうだったの…そう言えばレイラのお父さんの顔、見たことなかった……小学校の時、会えたのはお母さんだけだったわね」

 

 この中では一番レイラとの関係が長いエリカが独り言のように呟き、自身の記憶をなぞって思い返していた。

 それを聞いたレイラはどこの何がとは言わないが、無い胸を張りながら答える。

 

「ふっふっふっ!だってお父さんはね〜?…聞いて驚け!海上自衛官なのだぁ!」

 

 この言動を一コマとして捉え、そこに貼る擬音を例えるなら…「ドヤッ!」であろう。

 ここが教室ならば、普段よりクラスメートにマスコット枠として認知されている彼女は、たちまち大量の女子生徒達にもみくちゃにされ「よ〜しよしよ〜し!かわいいねぇ〜!!」と、撫で回されていたに違いない。

 しかし、ここには幸か不幸か、集まっている人間の半数は野郎で占められており、残りの女性陣も比較的そういったものには疎い、若しくは大人しい性格の集まりであったため、そんなことは無かった。

 

「そうだったの? だからか。会う機会が無かったわけだわ」

 

 一人、エリカが過去の記憶と照らし合わせを行ない、納得していた。

 

「それならレイラさんのお父さんは護衛艦に乗ってるんですか?」

 

 今の質問者__小梅のことを指すわけではないが、恐らく海上自衛隊と聞いて海自(イコール)護衛艦(軍艦)乗りを直感でイメージする人間は多いと思われる。

 そういった面も考慮すれば、比較的オーソドックスな質問がであったと言える。

 

 それをうんうんと頷きながら早く答えてあげたいというオーラを纏っているレイラ。

 

「小梅ちゃん良くぞ聞いてくれました!お父さんはミニイージスとも言われる"あらなみ"の艦長なんだよ!」

 

 待ってましたという勢いで、レイラから説明が入った。再び例の「ドヤッ!」が飛んできそうな勢いだ。

 …ここでもまた、どこがとは言わないが無い胸を張っている。

 

「"あらなみ"の艦長なのか!?すげえ!…てことは佐世保の第2護衛隊群じゃん!!」

「友人の中にすごい人の娘さんが…」

「いやいや、目の前の機甲科隊長も流派の令嬢さんなんだけど…」

「船乗りの父ちゃんかぁ…憧れるねぇ」

 

 黒森峰に入学してきた__ある意味怖いもの知らずな__男子生徒らのように忘れている人間も多くいるかもしれないが、改めて説明させてもらうと黒森峰学園は最近までは女子校__それも"超"がつくほどの()()()()()だったわけで、戦車道以外にも毎年財界や政界、大企業の重役に留まらず、日本を動かす…若しくは支える人物らの令嬢が共学化した後とはいえ依然として数多く入ってくる学園である。

 このように家族が自衛官である女子生徒も少なくないはず……なのだが上述の男子生徒もとい()()()の殆どは比較的一般家庭出身の者が多く、家柄関連の話題にはあまり詳しくない…というより気にもしない。

 そのためそういった事情を知らないある意味純粋な男子達は目を輝かせて話に聞き入るのである。

 …まだ詳しくは説明しないが、ハジメ自身も企業社長である母親の息子であったりして、ちゃっかり()()()()であったりする。

 

 無論、身内に自衛官がいる家庭が多いわけではないので、自衛隊の話を聞ける機会自体は学園艦…黒森峰の中でもレアものであることは変わらない。

 ちなみに黒森峰は自衛官の輩出は陸上自衛隊が最も多く、特に機甲科__戦車乗りの割合が顕著であり、凡そ7割ほどを占めている。

 

 ……また、完全な余談になるが、エスカレーター式で中等部より上がってきた上記のお嬢様方(女子生徒)__ハジメと同学年の一般令嬢達__には、同い年の男子に対する免疫がほぼゼロに等しかったためにハジメ達の高等部一年時には、玄関の下駄箱から教室の個人ロッカーに至るまで様々な()()()が入っていたりした。

 だが、二年になる頃には例の三馬鹿(ハジメ・ヒカル・マモル)が天下の西住流の幼馴染という事が知れ渡ったことで上にあるようなアプローチ等は下火になっていった。

 

 …諦めきれていない一部生徒もいるらしく密かにそれぞれのファンクラブも出来上がっていると言う。学園祭や、体育祭では黄色い()()が飛び交うらしい。

 また、黒森峰高等部は男子単独を推す一途な陣営と、男子×自分を妄想してそれを推す強欲な陣営、男子×その幼馴染or仲の良い女子の二人組__例としてはハジメとエリカ__を推す穏和な陣営の三つに分かれて混沌を極めつつあるとか…。

 

「私も知らなかったです」

「今度是非、海自の話を……!」

「あ、俺にも俺にも!」

 

 他のメンバーもレイラの父親に関しての情報は初耳だったらしく、特にミリタリー色の濃い男子たちは大興奮だった。無論、健全な意味でである。

 

「…静かに。話を戻すぞ?」

 

 しかし、まほの一言で全員がすぐに口を閉じ、彼女の話に耳を傾ける。

 

「日本戦車道連盟と高校戦車道連盟は現在、夏の全国大会を予定通り通常開催する方針で進めているとのことだ。それに合わせて、私たちも様々な試合の局面に対応できるよう練習及び実戦を兼ねた多数の高校との練習試合を行い、調整していく。今回のサンダースとの練習試合もその一つと捉えてもらっていい。今後の日程に関しては後日プリントを印刷してガレージでの終礼時に配布する。……このところ世間では特殊災害が頻発し、みんなも不安を抱え、思うところもあることだろう。しかし、今は目の前の大会に向けて万全の準備を整えてほしい。いいな?」

 

「「「はいっ!!」」」

 

「「「了解!!」」」

 

 機甲科、整備科共に凛とした返事をまほに返し、これで会議室での集まりは取り敢えず解散となった。

 

「____大会中に怪獣が突然出たらどうするんだろ」

「そこはお前、自衛隊が対応するだろうさ」

「試合中に出たら大惨事なのは考えなくとも…だな」

 

 ミーティングが終わった後、ハジメたち整備科メンバーは戦車道の全国大会について話しながら、部室棟正面玄関に続く廊下を固まって歩いていた。

 

「『特殊災害に負けず、伝統ある日本戦車道をアピール』って…死人が出てからじゃおせーぞ」

 

 ニュースで見た、とある一部の日本戦車道連盟会員と文科省役員が揃って口にしていた的外れな発言を思い出してヒカルが悪態半分にボヤく。

 

「上海に出た隕石怪獣…いっちゃんねるだと"ガンQ"って呼ばれてるやつだって今は中国軍にボカボカ発破されてるけど健在なんだろ?アレ動き出したら、どうすんのかね」

 

 まほの言葉があったとは言え、整備科メンバーは大会日程中の怪獣出現がやはり気掛かりであった。

 

「ガンQか…何食ったらそんなネーミングセンスが育つんだか」

「日本も、アメリカの"タイタン"みたく超重戦車とか作っといた方がいいって」

 

 アメリカ合衆国陸軍の精神的支柱とも言える存在、重戦車〈M156 タイタン〉。

 戦艦の大口径主砲を短砲身化したもの__"レクイエム砲"なる特注品を主砲に据え、砲塔上部には単装速射砲を2基備えている…現時点で世界最大最強の多砲塔戦車だ。

 その超装甲は、弾道ミサイルの直撃さえ耐え得るとされており、その圧倒的な防御力と規格外の火力を有する様から、付いた異名は「動く要塞」。

 アフリカ大陸と中東での派遣経験を持つ当車輌は、派遣先の現地ゲリラ兵やテロリストを正面から完膚なきまでに叩きのめし、乗員の生存率は驚異の10割を打ち出したことで、米陸軍内では神格化されかけた英雄的重戦車なのである。

 

 この世界__本史の合衆国は戦時中の"大艦巨砲主義"から分岐・派生した、"巨人主義''__「戦略・戦術級の超巨大兵器で戦場をコントロールする」という考えの下生まれた陸海空の巨大兵器達__通称"巨人兵器"を主力とし運用するドクトリンを戦後から推し進めている。

 そんな"巨人兵器"の一つが、タイタンなのである。

 

「ばーか、アメリカと日本じゃ一般道の強度はダンチだぜ?いくら戦車道規格っつったって、〈90式戦車(キューマル)〉ならともかくタイタンレベルの戦車なんて日本で走らせたらアスファルトの海に沈んじまう」

「そ、それに…怪獣の話なら、あの日本海溝に消えたって言う、政府が命名した……その…なんだっけ? ……ああ、そう、ゴジラだってまだ行方が掴めないだけで、生死は分かってないし」

「せやな。ゴジラまで日本に来たらヤバいって。見た?ゴジラ映した空自のあの画像。アレまんまクッソでかい東洋龍だよな?」

「うん。それにまた日本上空に紫色の穴(ワームホール)が出てきたら…」

 

 嫌な未来、たらればが気がつけばそれぞれの口から溢れていた。

 それも、今では機甲科の少女達にとって無くてはならない支えとなっている__ポジティブが売りであるはずの__整備科の男子達の口から、であった。

 

____パァン!!

 

 突然廊下に、大きく、乾いた音…破裂音に近いモノが響く。

 銃声…ではなかった。

 らしくもなく曇りのかけていた面々を見て、これ以上のメンバーのメンタル悪化はいささか不味いと悟ったハジメが、手を思い切り叩き合わせたのだ。

 一同が何事かとこちらに目を向けたことをハジメは確認すると、メンバー全員を見やり____

 

「そこまで!!…俺たちはエリさんたちが安全に戦車に乗れるように整備するだけ。俺たちにやれるのはそれぐらいだよ。それに…いざとなれば、ウルトラマンが駆けつけてくれる……多分!」

 

 「そればっかりは他力本願だけどな…」と苦笑しながら、やるべき事を見失いかけていた面々を諭した。

 曇りかけていた男子メンバーの雰囲気をぴしゃりと消し去った。

 

「ははっ…多分てなんだよ、ストームリーダー。そこが一番肝心じゃねーのかよ!」

 

 ヒカルがいつもの快活な笑顔でツッコミを入れた。

 

「そうか、そうだよな。やれないことよりやれること…だな」

「よーし皆んな、練習試合だからって整備サボるなよ〜!!」

「それはお前もだタクミ!」

「そうなりゃ仕事仕事!どうせなら洗車までやったろうぜ!!」

「いいね〜!やろうやろう!!」

 

 ハジメの一言によって、不思議とメンバーの顔を覆っていた影が消え去っていた。

 

「…それじゃあ、行こう!」

 

 どうやら、皆それぞれいつもの調子を取り戻したらしい。

 彼らの瞳は活力に満ち溢れていた。

 ある者はツナギの腕を捲り、ある者は両の頬を叩き、ある者は髪をかき上げ、ある者は首を鳴らしていた。

 準備は万端だった。

 

「「「応!!」」」

 

 黒森峰学園戦車道整備科の二年生男子一同は、自分たちができることであるサンダース戦に向けての各担当戦車の整備をするために勢いよく、我先にと戦車ガレージへと走っていった。

 

 

 

__________

 

 

 

南アジア インド共和国 

アカナクマーワイルドライフ自然保護区

森林深部

 

 

 

ズゥウーーン…バキバキバキッ!……

 

 自然保護区内に鬱蒼と生い茂る長身の木々をなぎ倒し、踏み潰して堂々と歩いているのは50mを優に超える___大型特殊生物に該当する変異カマキリ__通称"カマキラス"だ。

 ()()()は、過去のインドでの度重なる核実験により住処の土壌が汚染され、その影響で突然変異してしまった南アジアに広く分布するカマキリ__ヴァイオリン・マンティスの成れの果てである。

 今、保護区内の密林を踏み荒らしている大型カマキラスは、元々は小型であったのだが、同族同士による共食い…そして生息域周辺に存在していた他生物も軒並み捕食したことで、急激に成長した個体なのである。

 

 インド軍は昆虫型特殊生物の新種であるカマキラスの国内大量発生を受けて、複数の州軍を動員させての初の対特殊生物軍事行動__"カマキラス駆除作戦(オペレーション・マンティスイーター)"を発動した。

 結果としては、小型中型の個体数を漸減させることに成功。

 であったが、この大型カマキラスだけは駆除はおろか、発見すら叶わなかったのである。

 それはインド軍が把握していなかったカマキラス特有の生体能力の一つ、光学擬態__生体ステルス機能が関係していた。

 大型カマキラスは、その高レベルのステルス迷彩を用いて見事にインド軍の目を掻い潜り生き延びたわけだ。

 

 

キキィイ!キキイイィイ!!

 

 

 件のカマキラスは、食欲を満たすため、中型の同族や大型哺乳類といった獲物を求めて森林の中を彷徨う。

 既存の生態系から逸脱したカマキラスに自然界の理は無意味であり、かの生物の活動を阻む者、害する者はこの森林には見当たらなかった。

 

 否、ここまでは。

 

 異変は空の一点にて起こった。

 前触れなく保護区上空に、黒紫色の穴__ワームホールが現れる。

 それは、思考が存在するかのように振る舞い出した。

 

 空を見上げ、腕を大きく伸ばし振り上げ威嚇するカマキラスに急速降下したのである。

 降下したワームホールは金魚掬いの網の如く虚空をすくい、両刀怪獣を躊躇なく飲み込んだ。

 それは最早神隠しと言っても過言では無い所業であった。

 

 ワームホールも、カマキラスを飲み込んで数秒後には青空の中に霧散。

 空は元の平穏そのものへと戻った。

 地上には、()()()()消えたカマキラスによって薙ぎ倒された木々が散乱している不自然な森林のみが残る。

 

 かの怪獣は何処へと消えたのか…否、何処へと連れ去られたのだろうか。

 それは、いつからか宙に浮かび一連の出来事をほくそ笑みながら眺めていた人型存在__影法師のみが知っている。

 

 

 

「フフフ………フフフフ、アハハハ!待っていろウルトラマン……!」

 

 

 

_________

 

 

 

東アジア 中華人民共和国 上海

市街地中央部 閉鎖区域

 

 

 

 工兵による爆破処理開始から数日。

 未だに目玉隕石__巷では日本のネット掲示板の書き込みにあった"ガンQ"という非公式の別称で世界的に通っている__を破壊できずにいた中国政府は、高性能爆弾から、攻撃ヘリによるミサイルでの処理に変更し、これを命令。

 

 それでもダメならばと、戦車砲による集中射撃と空軍の爆撃機による空爆を都市ごと敢行することを秘密裏に決定し、各方面に指示を出した。

 

 ガンQが落下した地点には、中国人民陸軍の歩兵部隊と装甲車両が多数配置されていたが、現在は攻撃ヘリによるガンQへのミサイル攻撃が決定されため、観測部隊兼監視部隊たる彼らは1ブロック後退の動きを見せていた。

 

「急げいそげ!14分後にはミサイルが来るぞ!!200メートル後退!再展開後は仕留め切れなかった場合に備え対戦車ロケットを準備!!」

 

 現地部隊の指揮官、陽中校が無線通信機を使わず声を張り上げて兵士達に指示を出し、作戦行動を円滑にするべく努めていた。

 

「全部隊から配置完了の報告が来ました!!」

「陽中校!凡そ20分ほどで第122装甲大隊も到着します!!」

「攻撃ヘリ部隊、まもなくです!!」

 

 続々と彼に現場の動きに直結する各方面の動きが集まってくる。

 ミサイル攻撃までの段取りは特段問題無く進んでいるようだ。

 

「うむ。分かった。対戦車中隊各員、98式準備!!!」

 

 陽の指示の下、陸上部隊は後退を終え、まもなくこちらに到着する予定の攻撃ヘリの射線と被らないようガンQを中心として扇状に囲むような戦力の配置を行っていた。

 彼らはヘリ部隊による攻撃開始に合わせて対戦車弾を主体とした多重攻撃を行うため、歩兵は"98式120mm対戦車ロケットランチャー"をガンQに向けて構え、いつ射撃命令が出てもいいように標準を合わせる。

 その他通常の兵士らはそれぞれ"80式汎用機関銃"や"03式自動小銃"の照準を、ガンQに向けていた。

 

 兵士達はアスファルトの道路上に土嚢や有刺鉄線、鉄板を用いた簡易陣地をブロック後退後に再構築しており、準備は万端なようだった。

 

 また、陣地の合間合間に、30mm機関砲や対戦車ミサイルを主兵装とする〈08式歩兵戦闘車〉と、105mmライフル砲を搭載する〈11式装輪装甲突撃車〉などの装甲車両も砲身をガンQに向けている。

 

ギョロ…ギョロッ……キュキュッ…キュキュキュキュ!

 

 一方のガンQは、人民解放軍が攻撃準備をしていることに気づいていた。

 そして静かに黒目だけを器用に三日月状に曲げ不気味に嗤っていたのだった。

 

 

 約10分程が経過。

 中国軍の対ガンQ破壊作戦は次のフェイズへ移行。

 それは、"上海会戦"と呼ばれることとなる中国初の対特殊生物戦の幕開けでもあった。

 

 

バタバタバタバタ…!

 

『炎蛇1から地上部隊へ。たった今、作戦空域上空に到着。これより目標に対し、ミサイルによる攻撃を敢行する。急ぎ射線上から退避せよ』

 

 十数分後、高層ビルが立ち並ぶ上海市街地を、中国人民解放陸軍の国産新型攻撃ヘリ〈武直10型(Z-10)〉が3機編隊でビルの合間を最小の動きで抜け、市街地中央部___ガンQの居座る閉鎖区域へと現着した。

 ホバリング飛行で地上部隊に倣い、彼らもまた扇状に広がってガンQを囲い込む。

 機体下部の機関砲が()()__ガンQを見定める。

 

「炎蛇、こちらは既に退避を完了している。やってくれ」

 

 誤射を防ぐための地上にいる陽中校とのやり取りを終え、いよいよヘリ部隊の攻撃準備は整った。

 

『了解!』

 

 皆がこの時を待ち侘びていた。

 

『ミサイル発射!!』

 

 各機のヘリガンナーはガンQを捕捉。

 力強く引き金を引いた。

 

『『発射!!』』

 

 指揮官機__炎蛇1の指示の下、対戦車ミサイル"HJ-10(レッドアロー10)"が3機のZ-10から同時に放たれる。

 

シュパパパパッ!!

 

 発射された対戦車ミサイルは白い尾を引いて真っ直ぐにガンQへと飛翔し、殺到する。

 

 当ミサイル__HJ-10は、弾頭にタンデム式対戦車榴(HEAT)弾を採用している。

 それは、爆発反応装甲込みの凡そ140cmの装甲を貫通する。

 目標に命中してしまえば、内部奥深くまで突き刺さり爆発エネルギーを解放し、無視できないダメージを対象に与える。

 

 現場にいる解放軍兵士の誰もがこれで片付くと確信していた。

 

 紅の光槍(レッドアロー)が、眼塊の化物を射止め爆砕する____

 

_____ドドドッ! ドチュ!!

 

 ___ハズだった。

 

 ミサイルがガンQに着弾したその時、ミサイルは爆発することなくガンQの本体に生々しい音を立てて突き刺さったのである。

 そして、そのままミサイルは役割を果たすことなく、全て取り込まれてしまった。

 

 兵士達は己の目を疑った。

 彼らが目にした特異な要素は二つ。

 

「な!?」

「み、ミサイルが!!」

「食われた…」

 

 一つは、隕石状の怪存在がミサイルを()()したこと。

 

「おい!隕石の目から…()()が生えてきたぞ!!!」

 

 そしてもう一つは、どう言う原理なのかは不明だが、眼塊の化物に手足__と思われるモノが脈絡も無く唐突に生成され始めたこと…であった。

 

『なんてヤツだ…』

『こちらのミサイルが効いていないだと!?』

『…マズイな』

 

 手足を獲得したガンQは、それらを器用に扱ってすぐに立ち上がる。

 肥大な頭部や身体中に付いている大小さまざまな()をギョロギョロと動かし___

 

ボォオッボォッボオオッ!

 

 ___不気味で不快な嗤い声を上海に轟かせた。

 その余りに奇怪な光景を目にした解放軍の兵士達は戦慄する。

 

「なんだ…なんなんだ!?」

「あ、頭がおかしくなりそうだ…!!」

「アイツ、口が無いのに笑ってる!?」

 

 ガンQの常軌を逸した不気味さに耐えきれなかったのか、数人の兵士たちは身の危険を感じて、本能的に後退りをしていた。

 半ば発狂しかけている者も見受けられる。

 

「きっとミサイルを取り込んだんだ!!なんでこんな奴が本土に!!」

 

 対戦車ミサイルを無力化・吸収した規格外(ガンQ)とこれから戦うのだと認識した兵士の一人が天を仰いで嘆く。

 

「狼狽えるな!98式構えー!!!撃てえ!!!」

 

 されど指揮官__陽中校と大多数の兵士は立ち向かうことを選択していた。

 動揺する兵士を一喝し、なんとかまとめ上げる。

 

バシュバシュバシュッ! バシュッ!

 

 地上部隊による対戦車ロケット弾の斉射が開始。

 ロケット弾による多重攻撃がガンQに浴びせかけられた。

 

キャキャキャ!!

 

 しかし、ガンQには効果は皆無だった。

 ガンQは笑い声とも言えない奇声を上げ、頭部の巨眼から紫色の怪光線__"吸収光線"をカウンターとして放った。

 吸収光線は、一つ残らずロケット弾を取り込む。

 

 陸空での火砲・誘導弾攻撃は阻まれた。

 攻撃ヘリ部隊は誘導弾による波状攻撃から、機関砲と高速ロケット弾による飽和攻撃に切り替える。

 

『炎蛇1から炎蛇隊へ。目標が再度光線を発射する前に機関砲とロケット弾で片付ける。頭部に火力を集中せよ。』

 

 炎蛇隊の隊長は落ち着いていた。

 ガンQにこちらの常識が通じないとは言え、まだ取れる択、試していない択はある。

 淡々と他2機に射撃命令を出した。

 

『『了解!』』

 

 各機の"30mm機関砲"は唸りを上げ、ロケットポッドは火を噴いた。

 

ドドドドドドドドドドッ!!

 

シュパパパパパパパッ!

 

 機関砲弾とロケット弾がガンQに飛翔するが、到達前にまたもや吸収光線の再照射により取り込まれる結果で終わる。

 しかも、今度は吸収光線の照射範囲がヘリ部隊まで伸びていた。

 

『うわぁあーー!!!!』

『こ、これは!?誰か!助けてくれ!!』

『操縦不能!操縦不___』

 

 ミサイル、ロケット弾、機関砲弾と同様に、ヘリも吸収光線の引力作用の対象であった。

 無線越しにヘリパイロット達の絶叫が響く。

 しかし彼らは友軍に助けられる間もなくヘリごと完全にガンQに取り込まれてしまった。

 

キュキュキュキュキュッ!!!!

 

 ガンQは満足したのか、それとも残った者たちに恐怖を与えるためか、器用に黒目のみを三日月状に曲げて更にあざ笑う。

 

「退避!退避だ!!ヤツから離れろ!!吸い込まれるぞ!!」

 

 ガンQが地上部隊に向けて前進を開始した。

 ガンQの侵攻と人民解放軍地上部隊の退避の動きはほぼ同時であった。

 

「射撃しつつ後退!!」

「来るな…来るなぁああーー!!!」

「俺たちも食われるぞ!!早く走れ!!」

 

 陽中校の撤退指示を受けて歩兵部隊と機甲部隊が全速後退を開始。

 皆必死の形相でガンQから離れるべく走る。

 生死を懸けた逃走劇が始まった。

 

バババババババッ! バババババッ!

 

ドォンドォンドォンドォン!!

 

ダラララララララララ! パパパパッ! パパパパッ!!

 

 戦車砲に機関砲、歩兵の小銃から機関銃までのあらゆる弾丸や砲弾、誘導弾がガンQに向け撃たれる。

 今度は戦闘車に搭載されたミサイルや銃弾などが見事命中し、ガンQの胴体部分を中心に爆発や閃光が走る。

 

 しかしガンQには全く効いていないようで、それらの攻撃を全く意に介さずに、引き続きヒトのように軽やかなスキップ歩調で後退する陸上部隊を追う。

 

 地上部隊の被害が出たのはここからだった。

 まず、歩兵の盾となるべく留まっていた装甲車や歩兵戦闘車が真っ先に踏み潰され、爆散した。

 

 そして、逃げ続ける兵士達も無傷とはいかず、ガンQが触手ようなものに変化させた腕__触腕で一人ずつ絡め取られ、頭部の巨眼に放り込まれ姿を消していく。

 一人、また一人と取り込む度にガンQは耳障りな笑い声を発し、逃げ延びるために全力疾走する兵士たちにひたすら恐怖を与えた。

 

 全力で後退している陸上部隊はもはやパニック状態に陥っており、ただただ自分たちに迫ってきているガンQからなんとかして距離を取ろうとしていた。

 

「後ろの突撃車が全部やられた!!」

 

 先頭を走っていた、まだ余裕のある歩兵が後ろの惨状を見て悲鳴に近い声を上げた。

 

「いやだあ!死にたくない!!」

 

 涙なのか、汗なのか、はたまた鼻水なのか、それらで顔をぐちゃぐちゃにした兵士が虚しく叫ぶ。

 

「!!、おい前を見ろ!光山戦車大隊が来てくれたぞ!!」

「精鋭の122装甲軍だ!助かったぞお!!」

 

 しかし、遂に敗走状態に等しい陸上部隊に光明が差した。

 

『目標、撤退行動中の友軍に迫る大型特殊生物。各車、射撃開始。これ以上同志を死なせるな!!』

 

 増援として急行していた東部戦区陸軍の最精鋭機甲部隊__"第122装甲(光山戦車)大隊"が到着したのである。

 前方から頼もしい援軍が到着したことで、走り続けていた兵士や残存する車両の搭乗員たちからワァーッ!っと歓声が上がった。

 

 それに答えるかのように、同胞を一方的に嬲り続けていた化け物を灰塵に帰すべく、戦車大隊の先鋒の〈99式戦車〉から順に砲撃を開始。また、戦車の搭乗員がキューポラから乗り出して砲塔上部に搭載されている重機関銃をも使い出した。

 

ドォン! ドドォン! ドォオン!! ドォン!!

 

ダタタタタタッ! ダタタタタタッ!

 

 戦車砲と機関銃による絶え間ない弾幕が張られる。

 着弾・命中に伴う爆炎と黒煙が何度もガンQを塗り潰す。

 砲撃を連続して受けたガンQが圧殺されたかに思えた。

 が、しかし。

 

____ボゥッ!!

 

 突然立ち込めていた爆煙の中を、巨大な火球が突き破ってきた。

 それも、一発ではなく複数だ。

 火球群は戦車隊に向けてガンQより放たれたものだった。

 

 火球が着弾する度に先の砲撃に負けず劣らずの爆発が起こり、火球に直撃した戦車は車体と砲塔が別々に吹き飛んだ。

 直撃を免れた車輌であっても爆風による衝撃で後続の部隊や側面のビルに激突し大破するなどしており、どちらにしても中の人員は無事では済まないだろうことは分かる。

 

「嘘だろ…!?精鋭の122軍が……」

 

 そうこうしている内に戦車大隊の先頭集団が全滅してしまった。

 また、ガンQの攻撃による影響で後続の車列が分断され、内部で挟まれた部隊は身動きが取れない状態に陥った。

 後続の戦車やそのさらに後方から続いている機甲部隊は、前進することすらままならず、その混乱に乗じる形でガンQが三度目の吸収光線を照射した。

 

 今度の光線の標的は瓦礫、壊滅した機甲部隊車輌群だけでなく、逃げ場を失ってしまった陽中校の指揮下の機械化歩兵部隊まで及んだ。

 

「もはやここまでか…」

「どうすれば…!?」

「おい、こっちに来い!早く!!」

「もうダメだ」

「ああ、あああ……」

 

 ガンQは自身を討伐しに来た相手を一挙に取り込んだと判断すると、再び己が足による移動を開始した。

 そこからは、上海を包囲・封鎖していた中国軍を手当たり次第襲撃。

 このままでは事態の収拾がつかないと判断した解放軍司令部が、上海放棄の命令を出した頃にはガンQは同都市より姿を消していた。

 

 ガンQの攻撃と吸収を免れ生き延びた兵士の証言によれば、「テレポートしたように突然消えた」と言っていることから、ガンQは何処か別の地点に転移した可能性が高いとし、上海での一連の戦闘__"上海会戦"の終結を政府は発表した。

 

 結果的に中国は上海地区に作戦のために展開していた人民解放軍のおよそ7割を一体の怪獣に消失させられたことになった。これによって東部戦区の部隊が激減。同戦区の影響力並びに配備戦力が著しく低下した。

 その後、哨戒機や偵察ヘリ等を使っての全土捜索が行われたものの、対象__ガンQの行方を掴むことは一切出来なかった。

 また、上海市の放棄命令は数日後に解除され、再襲撃に市民たちは怯えながらも生活を再開することになった。

 

 中国政府は、ガンQの国内再出現に備えて全土に戒厳令を発令。

 解放軍からは一般警察にも対戦車ロケットや対物ライフルなどが一時的に支給され、陸軍の特殊部隊__解放陸軍緊急展開部隊に臨戦態勢を取らせた。

 この事態はおよそ一週間半続くことなる。

 

 

 

_________

 

 

 

東アジア 日本国関東地方 東京都新宿区 防衛省庁舎

 

 

 

 ある部屋の一室では日本の国防に関する話が交わされていた。

 そこには自衛官であることを示す濃緑色の制服__"91式制服"を身につけた()()()と呼ばれる自衛官数名。そしてその向かいには黒いスーツを着た初老の男性が一人座っていた。

 

 その初老男性の正体は、日本の現内閣総理大臣であり、自衛隊の最高指揮官である垂水慶一郎その人だ。

 彼らは現在、防衛装備庁と日本生類総合研究所が共同で進めている新概念兵器__指向性放電砲開発計画『Lプロジェクト』の現状について直接確認するべく、官邸から単身で赴いてきたのだ。

 

「例のプロジェクトの現状はどうだね?」

 

 垂水総理が対面の幹部自衛官達に尋ねる。

 

「はい。Lプロジェクトの進展ですが、当初の予想を上回るペースで進んでいます。戸崎防衛大臣にも報告はしておりますが、本プロジェクトの開発構想自体は元から存在していたこと、学園艦関連の科学技術の発展により技術的な問題が消えたこと、そして何より生総研の全面協力を受けられたことが、功を奏したようです」

 

 自衛官の一人が、垂水総理に資料を手渡し、自身は手元のメモを用いて説明していく。

 

「そうか……このペースでならば、あとどのくらいで使える?」

 

「このまま順調に調整が続けば早くて凡そ一ヶ月後…いえ、半月で実戦投入できます。プロトタイプ…試作一号は北海道、千歳地下特別試験場にて実射テストを既に終えており、順調です。また、例の対特殊生物徹甲誘導弾(フルメタル・ミサイル)も無事、量産体制に移行する段階まで漕ぎ着けました」

「放電砲並びに徹甲誘導弾は改修予定の戦闘車両、護衛艦、航空機以外に、陸自と海自から提出された計画上にある防衛移動要塞や特殊潜水艦にも搭載する予定です」

「放電砲の派生装備も、複数出来上がってきています」

 

 どのプロジェクトも、予想以上のペースで進んでいるようであった。

 

「分かった。そちらも頑張ってくれ。ウルトラマンへの対応も考えなくては……我々には国民の命を…未来を守る責任があるんだ」

 

 垂水総理は報告を聞き、今後の展望を思索する。

 

「「「はい!!」」」

 

 自衛隊の第一、第二の切り札は間もなく姿を見せることだろう。

 

「メーサー砲とフルメタル・ミサイルは必ず完成させます……!!」

 

 そう宣言した自衛官は、強くそして静かに拳を握っていた。

 

 

_________

 

 

 

同国関東地方 茨城県東茨城郡 大洗町

大洗海浜公園 海岸

 

 

 

「はぁ………」

 

 海浜公園からは、現在小型の学園艦__県立大洗女子学園が入港準備に入っている茨城港が見える。

 そんな海浜公園内には、一人の茶髪の少女が海岸の波打ち際に、時に深いため息を吐きながら体育座りで黄昏ていた。

 

「私……これからどうしたら良いんだろ……」

 

 自分の先行きに不安を感じているその少女の正体は、元黒森峰学園戦車道機甲科の副隊長___西住みほである。

 

 黒森峰の悲願であった、夏の戦車道全国大会十連覇を果たすことが出来なかった。

 それも、自身の行動がトリガーとなって、である。

 人の道…そして己の信じる正しき道に従って取った行動が、結果的にはマイナスの方向に物事を進めてしまったのだと、彼女は後ろめたさを感じているのだ。

 彼女の「友達を助けたい」という信念は間違いでは無かったと言うのに。

 不幸にも、この場にはそれを肯定してくれる人物は近くにはいなかった。

 

 そして…彼女は半ば責任を取らされる形で逃げるように黒森峰から降り、戦車道の無い学校である茨城県立大洗女子学園に転校するに至った。

 みほは、春の新学期より、大洗の学び舎にて普通科の授業を受けている。

 されども、新天地であるためか、それとも彼女自身の引っ込み思案な性格のためか、クラスで浮く存在にはならなかったものの、よく喋る知り合いはおろか友人さえ、出来ていなかった。凡そ三ヶ月経った今でも、であった。

 

「やっぱり何も言わずにお別れしたのはダメだったかな……みんな、怒ってるんだろうな……」

 

 そんな小さなみほの呟きは波のさざめきによってかき消されていく。

 

「熊本に怪獣が……みんな怪我してないかな…お姉ちゃん…エリカさん…ナギさん………みんなどうしてるのかな…グスッ」

 

 みほは遂に耐えきれなくなってきたのか、だんだんと涙声になる。

 無理もない。たったひとり、様々なものを抱えてここまで来たのだから。

 

 しかしこのままだと感情が爆発してしまうと感じたみほは、恋しい思い出と嫌な記憶を一時でも忘れようと顔を上げて海を見て気を紛らわせようとする。

 それでも、涙は流れてくる。頑張って堪えていたつもりだった。

 服の袖で瞳からとめどなく伝って流れてくる涙を拭くしかなかった。

 

「う……うぅっ…グスッ。……あれ?何か光った……?」

 

 みほが波打ち際を見やった時だった。

 何度も砂浜へ寄せてきてはすぐに引いていく波を見続けていると、ある砂浜の一点だけ特段白く光り輝いている箇所を見つけた。

 彼女は立ち上がってそれに近づいていき、直に見て確認しようとする。

 何故か、そうしようと思った。

 輝きを放つ地点の砂を両手でかき分けて掘っていく。

 数度くり返していると光っていた物が顔を出した。

 

「卵と……丸い綺麗な石……」

 

 正体は真っ白な卵と、霞んだ黄土色の変わった小石だった。

 掘り出した直後、卵にはてっぺんに上述の小石がくっつくように乗っていた。

 

「勾玉って言うより…陰陽玉、なのかな…?」

 

 小石__丸石は親指ほどの大きさで、太陽光を稀に反射して琥珀色にちらりと輝くらしかった。

 卵の方も手のひらに収まるほどの手軽なサイズであり、微かに暖かった。

 どうやら()()は生きているようである。

 

「それに、これはなんの卵なんだろう?」

 

 みほは不思議な石と白い卵をさらに細かく観察することにした。

 拾った丸石は何やら曲線を彫られた…と言うよりも全く異なる石と石同士を合体させたような__古典や日本史の授業の中で教科書に写真で頻繁に載っている__勾玉を二つ合わせたような形状だ。

 所謂"陰陽玉"に近いものだった。

 

 なぜ丸石とセットで卵が…あるいは卵とセットで丸石が__体積の八割ほどが砂下に埋もれていたのかはみほの預かり知らぬところである。

 一番に彼女が首を傾げていることは、卵の()()についてであった。

 スーパー等で売られている一般的な鶏卵、ましてやウズラの卵などよりも大きい。見たことのない卵だった。

 

「うーん………ん?」

 

 手のひらに乗せていた卵がいきなり自ら動き出したことに気づく。

 

パキャ…パキパキパキッ!

 

 そして何かが卵を内側で動いたために割れ始めた。

 何が生まれるのだろうか?

 

「………」ゴクリ…

 

 みほが固唾を飲んで、卵から生まれてくる存在を静かに見守る。

 破った殻がぽろぽろと砂浜に落ちていき、中身の全体像が徐々に露わになっていった。

 

 そして___

 

「ぴぃい!ぴいぴいっ!!」

 

 ___卵の中身が姿を見せた。

 

「カ……かっ…!」

 

 そして遂に殆どの殻を退かして現れたのは、元気に鳥のヒナの如く鳴く子ガメだった。

 

「カメさんだったんだぁ!かわいい〜!」

 

 くりくりとした可愛らしい二つの瞳がみほをジッと捉えていた。

 その可愛らしさにみほが「はぅ〜」と悶える。

 

「どんなカメさんの赤ちゃんなんだろう?」

 

 自分()を母親だと思っているのだろうか?

 みほはそう思いながら子ガメの甲羅や頭を優しく指で撫でてやる。

 心地良さそうにカメは目を細めていた。

 

「あ…でも勝手に連れていっちゃダメだよね。ごめんね、びっくりさせちゃったよね…。カメさんも、みんなに会えるといいね……みんなに……」

 

 みほはしゃがみこんで、子ガメを手の平から砂の上へと下ろして自由にしてやることにした。

 そして子ガメが海に入るまで見守ることにしたのだった。

 しかし、いくら待っても子ガメはみほの方を向いて海に向かおうとは頑なにしなかった。

 手を使って押し出してやっても、みほの方によちよちと戻ってくる。

 

「だ、ダメだよ!カメさんは海に行ってみんなと会わないと…私と違って、みんなが待ってるはずだから……」

 

 伝わるはずもないと分かってはいるがみほは子ガメを説得させるべく話しかける。両手を前に出してわたわたとした動きもセットで。

 だが子ガメはジッとみほを見つめるのみで、一向に動く気配はない。

 再度みほが両手に抱えて、波打ち際に靴が濡れないギリギリまで近づいて離してやっても、またみほについてくる。

 子ガメは海の方に興味を持つ気配すらしない。

 

 何度やってもみほから離れようとしないのだ。

 

「う…だ、ダメだよ!そんな目で見ても………」

 

「ぴい!」

 

「はぅぅ…」

 

 

 

大洗女子学園 学園艦 学生寮

 

 

 

「ああ…結局寮まで連れてきちゃったよ…」

 

 母性というか、庇護欲には抗えなかった。

 

「ぴい!」

 

 みほはアパートの自室にある勉強机に付属している椅子に座り、元気に机上を歩いている__結局、保護する形となった子ガメに話しかける。

 

「いい?この部屋から出ちゃダメだからね?もし外に出ちゃったら私、見つけれないと思うから………って言っても分からないか……」

 

 言葉が通じるわけではないが、躾…のような厳しい言い方ではないが、子ガメに面と向かって言って聞かせるみほ。

 

「ぴい!」

 

 偶然か、しっかりと子ガメはそれに応えた。

 

「元気が良いなぁ…その元気を分けてもらいたいぐらいだよ……あ、カメさんはご飯って何食べるんだろ?」

 

 

 

 凡そ30分するかしないかの時が経った。

 

 

 

 あれから、スマホを使ってカメの生態、特に食性についてみほは調べた。

 しかし、保護した子ガメがどの種に該当するのかを検索したものの、それっぽい…と言うよりも近縁種すら見つからない有様だった。

 あらゆる種類の亀の特徴がごちゃごちゃに混ざっており、みほは困惑した。自分の調べ方が悪いのかもしれないと思うぐらいには。

 

「冷蔵庫にキャベツがあったよー!千切ってあげればいいんだよね?はい、どうぞ!」

 

 何も食べさせないのは可哀想だと、取り敢えずは一般的な餌として与えられる惣菜が見つかったため、それを食べさせることで落ち着いた。

 子ガメは美味しそうにその小柄な体に見合わず、ムシャムシャとみほが千切ったキャベツをものすごいスピードで食べていく。

 

「わわっ!すごい食べっぷり…美味しい?えっと…えっと……そういえば名前、決めてなかったね。どんなお名前が良いかな?」

 

「ぴい?」

 

 子ガメが食べるのをやめて首を傾げた。

 

「うーん…どうしようかなぁ…」

 

 数分に渡って悩みに悩んだ末、名前が決まる。

 

「えっと、ピイピイって鳴くから"ピイ助"!キミの名前は今日からピイ助だよ!!」

 

 みほは子ガメ__ピイ助を持ち上げて椅子から立ち上がりクルクルと回る。

 

「ぴぃいっ!!」

 

 対してピイ助の方もまたみほにつけられた名前を気に入ったらしく、先ほどよりも高いトーンで鳴いていた。

 

「これからよろしくね!ピイ助!!おかげで転校の緊張がいくらか吹き飛んだよ。…ありがとね」

 

「ピュイ!!」

 

 一人の少女は一匹の新たな同居人から勇気をもらい、暗闇の底から立ち上がるための、確かな足掛かりを得たのだった。

 

 

 

 

 

 

★☆★☆★☆

 

 

 

おまけ 『ウルトラ水流』

 

 

 

 高校二年の暑いとある休日。

 午後練手前のガレージ内で起こった出来事。

 

「おおっとぉ……もしかしなくても、ガレージ一番乗りかな?」

 

 午前練と午後練の合間に設けられた昼食時間。

 学生寮側の食堂で昼飯を摂り、与えられた時間の半分ほどで食べ終えたハジメ少年。

 休憩時間でもある昼食時間に、特にやることもなく、歯を磨いた後は珍しく親友達とも駄弁らず、一人で機甲科の戦車が収められている格納庫__戦車道ガレージへと向かったのである。

 

「なんか得した気分だな」

 

 人は、普段とは違う体験をした時、そしてそれが自身にとってプラスな事象であった場合、少なからず万能感や全能感が湧いてくることがある。

 今のハジメはその状態に当て嵌っていた。

 

「……よし。今からパパッとティーガーⅡ、エリさん達が来る前に軽く洗っちゃおうか!」

 

 練習再開までは30分ほど。

 簡易的な洗車でも間に合うか怪しかった。

 当然、本人にもその自覚はあった。

 

「元野球部ナギ直伝の園芸ホース捌きと、ブラシの二刀流なら練習開始前に完遂可能、と見た…!」

 

 だが、せっかくその気になれたのだから、やらないという択はハジメ少年の脳内からは弾き飛ばされていた。

 既にツナギの袖は捲られており、彼の右手にはトリガーノズル装着済みの緑色ホース、左手にはプール掃除等でよく見る汎用的なタイプのデッキブラシが力強く握られていた。ホースはしっかりと屋外の水道蛇口に食い込ませている。

 

 最早誰も彼を止められまい。

 

「速攻!電撃戦!!いざ尋常に!!」

 

 誰もいないガレージだからこそ、可笑しなテンションでハジメ少年は洗車に取り掛かれた。…別にいつもの調子であっても問題は無いが。

 ウルトラマンナハト スピリットスタイルを彷彿とさせる素早い身のこなしで、彼は鋼鉄の王虎の砲塔上部__キューポラまでよじ登る。

 

ガチャッ!!

 

 無駄の無い、最速の動きでキューポラの蓋部分を開く。

 そこへ捩じ込む形で、ホースを挿入。

 

「くらえっ!!ゲットォスプラァーッシュ!!」

 

ブッシャアアーッ!!!

 

 高らかに技名__彼の推しヒーローである"ゲットファイターアルファ"が使用していた水流攻撃___を宣言してホースノズルの引き金を力強く、少年は引く。

 ホースからはあらゆる魔を払う願いのこもった銀の弾丸が…ではなく、シャワー状の水流が勢いよく吐き出された。

 しかしその時___

 

「きゃっ!?」

 

 ___誰もいないと思われていたティーガーⅡの車内から、小さな悲鳴が聞こえてきた。

 

「ゑ?」

 

 一番に困惑し、焦ったのはハジメだった。

 

 ガレージにいるのは自分だけではなかったこと。

 一連の自分の恥ずかしいムーブを見聞きされていた可能性が浮上したこと。

 そして何より車内に誰か__暫定女子がいる状態で冷水をぶっかけたこと。

 

 この三点がハジメ少年の頭の中でグルグルと周回を開始。

 水を引っ掛けた相手への謝罪や車内の確認をせずして、思考渋滞__宇宙化猫状態に突入していた。

 

「ちょっと!?今の声ハジメよね!何やってんのよ!!」

 

 車内にいたのはこの車輌__ティーガーⅡ車長である幼馴染、逸見エリカだった。

 

「ねえ!聞いてる!?ハジメ!!バーカージーメ!!」

 

「………はっ!え、エリさん!!ご、ごめん!!」

 

 砲塔上部にて放心していたハジメを現実に引き戻し、これは一体全体どういうことなのかとキューポラから半身乗り出して問い質すエリカ。

 彼女のシルバーグレーの綺麗な髪からは水滴が滴っていた。

 

「いきなり私の頭に冷水ふっかけるとか、何考えてんの!?」

 

「あ、いや、ホントごめん!練習前にティーガーを洗車しようと思って…それで……戦車ん中に誰かいるとは思ってなかったんだ…」

 

「やるにしても順序ってもんがあるでしょーが!中を確認してからやりなさいな!それに、マニュアルとか入ってたらそれら軒並み水浸しにもなるのよ?洗車やる時はやるって教えなさいよ!!」

 

 ハジメに次々と突き刺さる正論。

 戦車の上で正座でエリカの説教を聞くしかなかった。

 ハジメよりも早くガレージに待機していたエリカ曰く、「珍しく誰よりも早くガレージ到着したものの、やることが思いつかなかったので仮眠をとっていた」とのことである。

 これを聞かずとも、落ち度はハジメ側にほぼ10割と言えた。

 

「……あ、あの…エリさん」

 

 本来ならば、彼女の気が済むまで口を噤み、説教を最後まで聞かなければならない立場のハズだが___

 

「何よ?今回は午後練開始までは…」

 

 ___エリカの()()に気づき、それを指摘する。

 顔を段々と紅潮させながら。

 

「エリさんのシャツ、透けてます…!!」

 

 振り絞るように、そう彼女に報告した。

 

「へっ?」

 

 今度はエリカの顔がみるみると赤みを帯びていった。

 

 …エリカはハジメへ説教する直前に、びしょ濡れとなったパンツァージャケットを脱いでいた。

 現在彼女は赤シャツオンリーである。色素の関係上、本来下着まで透けることは無い。

 

 だがしかし、黒森峰はクールビズ制度の導入によって、各種制服・ユニフォームに夏服と冬服が爆誕しているのは、以前説明した通りである。

 夏服と冬服の主な違いは、構成する生地にある。

 夏服は、夏季の暑さを可能な限り和らげるために冬服と比べ薄く、涼しい素材__ポリエステルが多く使用されている。

 

 つまりは、生地の下がしっかり丸見えになってしまうというワケである。

 

「だ、だからその…し、下着が____ぶはっ!?」

 

 ハジメ少年の鼻から白旗代わりの鮮血が飛び散った。

 そのまま車上にて仰向けに倒れ、彼は気絶する。

 

「は、ハジメっ!?」

 

 赤シャツ越しに見えた黒い肌着は、ハジメ少年にとって刺激が強烈すぎたのだ。

 幼馴染に下着を見られた恥ずかしさを、幼馴染が突如ウルトラ水流に勝るとも劣らない血の噴水を生成した衝撃によって上書きされたエリカが、すぐさまハジメ少年を介抱するべく動いた。

 

 その後、なんとかエリカによる懸命なる応急手当によってハジメは機甲科・整備科メンバーが集まる午後練開始時間10分前ほどに復活。練習には参加した。なお、車上の血痕は一つ残らずハジメが練習開始前に責任を持って全て抹消した。

 そのため、この一連の出来事を知るのはエリカとハジメの二人だけである。

 後日、エリカに水ぶっかけの件と下着の件でハジメは改めて説教を食らった。

 

 

 

 ____そこから数日間、赤面したハジメの、トイレに駆け込む回数がやや増えた。

 

 

 





 あと
 がき

【2023年版編集】

 日常回()でした。日本で暴れる悪いやつがいなかったので、これは日常回です(目逸らし)

 楼レイラちゃんはちょこっと改名させてもらいました。お父さんの元キャラは『空母いぶき great game』に登場する蕪木さんです。
 法律ガバはお許しください。

 西住殿がかわいい亀さんと出会いましたね。名前は悩みましたが、こうなりました。のび太の恐竜2006はいいぞ。

 学園艦関連の独自設定…中国の新型ミサイルのお話しと、この世界での"ペガソス計画"、それらを発端に発生した軍事衝突"いぶき事件"、"第5護衛隊群"の掘り下げ…そしておまけ日常小話を追加しました。
 2023年1月時点での最新話まで、細かい説明も無かったため、ここで説明を挟ませていただきやした。
 また、共学化前後の黒森峰のお話も追加してます。
 神海は今後、中国での対怪獣戦で人類の底力枠で登場する…かも?

 ハジメ君は西住殿に次ぐドジっ子属性を持ってます。ずっこける場所は屋内外問わず、前触れなく突然というのが殆どなため、周りはおろか本人さえ予想できないことが多々あったり…。エリカさんはそこに母性本能とか庇護欲やらを刺激されたりしてます。
 また、黒森峰男子のファンクラブについてですが、例の三馬鹿が際立ってるいるだけで、他のネームドメンバーや田中達一年生も相当数の女子生徒から推されてたりします。

 これからもよろしくお願い致します。

_________

 次回
 予告

 黒森峰とサンダースの戦車道練習試合が佐世保にて始まった。

 しかし突如として佐世保市にクモンガ、カマキラスの二大昆虫怪獣が来襲。
 エリカたちのピンチにハジメはナハトに変身する。
 ___が、怪獣二体を相手取ろうとしたナハトは苦戦してしまう。

 そんな時、真っ赤な闘志を持つある老人が現れた!

 次回!ウルトラマンナハト、
【真紅の戦士】!

サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)

  • 紗希のトモダチ
  • ミチビキさん サンダース編
  • ミライVSマホ カレー対決
  • ハジメ、迷い家にて

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