旧:逸見エリカのヒーロー   作:逃げるレッド五号 5式

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地球守護獣 ガメラ

超遺伝子獣 ギャオス

覚醒





第10夜 【災影飛翔、玄武復活】

 

 

 

異星人武力侵攻事案"ニューヨーク・アタック"から数日後

及びギャオスによる姫神島夜襲の翌日早朝

 

 

 

東アジア 日本国九州地方 鹿児島県

五島列島 姫神島沖200m洋上

 

 

 

ブォオオオオオーー‼︎

 

 朝日を浴びて、ディーゼルエンジンの轟音と共に海上を波立たせ5輌の単横陣で時速13km/hで突き進むのは、陸上自衛隊陸上総隊隷下の作戦部隊__水陸機動団(日本版海兵隊)戦闘上陸大隊が保有する機甲戦力、水陸両用の装甲兵員輸送車〈AAV-7〉である。

 

『間もなく姫神島沿岸です!』

 

「了解。……総員上陸準備! これが我々の初陣だ。気を引き締めろ!!」

 

 部隊指揮官だろう隊員がインカムを手に取り声を張り上げた。

 

 AAV-7車内の兵員収容室内に設置されているベンチに座る隊員達は、水陸機動団員ではない。彼らは皆、見慣れない黒ずくめの戦闘服を身に纏っており、銃の安全装置の解除などの、各種装備の最終点検・確認をしている。

 

「島民はどれくらい生き残っているか…」

「最悪の場合も想定しておけ。現場で動けなくなったらやられるぞ」

「ああ。分かってる」

「大丈夫さ。人を殺しに行くんじゃない…人を殺そうとするヤツらを倒しに行くんだ。それが俺達、()()()()()の仕事だ」

 

「トッキョー」と自ら名乗った彼らは、特生自衛隊隷下の特殊部隊___"対特殊生物強襲制圧隊"の隊員であった。

 同隊は、特生自衛隊構想時にあった"対特殊生物特選群"の発想を元にした、その名の通り特殊生物専門の特殊部隊だ。この部隊は、現在母隊となっている特生自衛隊発足前に国内で二例目の特殊生物災害__ゴルザ・メルバ襲来後、極秘裏に特生自衛隊よりも先に隊員を召集・結成に動いていた。

 

「飛行能力を有する肉食性鳥型特殊生物…"ベータ(メルバ)"のような飛び道具タイプじゃなきゃいいが…」

「こうも立て続けに来るもんなのか怪獣ってのは」

「愚痴を言っても始まらん…やるしかない」

 

 強襲制圧隊の人員は"第1空挺団(1st AB)"や"特別警備隊(SBU)"、"特殊作戦群(SOG)"、前述の"水陸機動団(ARDB)"の所属及び陸自各方面隊のレンジャー課程修了者から選抜されたメンバーで構成されており、彼らは現在まで世界各国に出現したあらゆる特殊生物の知識や情報を頭に詰め込んでいる。隊の規模は現在200名強。最終的には凡そ1000名ほどにまで拡張される予定だ。

 同隊の主な任務は、国内で発生した特殊生物災害___これには侵略異星人襲来や他の超常存在との邂逅等も含まれる___への即応と、出現した敵性存在の要撃及び遊撃である。隊員個々人の判断で迅速に展開し、陸海空特自衛隊の各部隊と連携して小型中型の対象を速やかに駆除ないし撃滅することを主眼に置いている。

 場合によっては大型対象への攻撃も行なうが、同隊の最大火力は対戦車無反動砲や軽量迫撃砲と言った携行式火砲であるため、大型・特大型対処のケースは極めて稀有かつ限定的になるだろうと言える。これは過去、南米大陸ブラジルに出現した50m級(大型)クモンガとブラジル陸軍クモンガ駆除部隊の間で勃発した戦闘…その結果が起因している。ブラジル軍が編成した件のクモンガ駆除部隊は主力の大半が通常歩兵であった。大型クモンガ相手に駆除部隊の歩兵火力の集中運用を行ない、これに全くと言っていい程通用しなかった…撃滅に足るダメージを与えることができなかったのだ。

 そこから自衛隊は「身の丈にあった相手と戦う」対特殊生物対応部隊__強襲制圧隊を創設しようと思い至った。これが同隊の専らの役割が小型中型の敵性存在との戦闘に絞っている理由である。

 なお、小型・中型・大型…そして人類未遭遇の特大型はあくまでもサイズの枠組みであり、それが脅威度や個体別の強さの指数などと必ずしも比例することは無いという点を頭の片隅に留めておいてほしい。

 

 ちなみに___

 小型が10m未満、

 中型が10m〜25m、

 大型が50m〜100m、

 特大型が150m以上、

 ___とされているが、これらは「全高やら全幅なんぞ悠長に測ってられるか」「だいたいこんくらいだろう」と言う目算の下、線引きがされたり、事態収拾後にそこから「よくよく考えたらこっちだったな」と訂正されたりするなど、どの国でも上記の()()()()()、カテゴリー間の判別の難しい()()帯は、ある程度盛られるか削られるかされて無理矢理枠組みの何処かに押し込んでいる…というのが現状だ。

 そのため、日本に留まらず世界各国でサイズ以外の、超常存在らを識別する新たな指標を設ける必要性が叫ばれつつあるが、具体案は持ち上がってはいない。

 

「空自のRF-15(スカウト)が明け方に偵察したらしいが…鳥型の飛翔は確認できず…とのことだ。『奴らは夜行性である』可能性が高いと言うのが政府が急遽招集した専門家達の意見らしい」

「しかし万一のことがあったらってことで…」

「海から俺らが行くってことだな」

「……そろそろだ。切り替えろ」

 

 彼ら強襲制圧隊の装備は先に説明したように、黒・灰色を基調とした暗色で統一されている。

 頭にはフルフェイスのバイザーヘルメット、体は人工筋繊維や超伝導モーターを組み込んだ強化外骨格(エグゾスケルトン)を搭載し機動性を向上させたボディアーマー__"19式先進防護戦闘服"を纏い、武器は米陸海軍並びに海兵隊にて扱われているFNハースタル社製アサルトライフル"SCAR-L"や強化外骨格の恩恵を受けて背嚢に携行(マウント)が可能となった破壊力に優れる対戦車無反動砲"110mm個人携行対戦車弾(LAM)"、"9mm拳銃"、"MK2 破片手榴弾"を装備している。他に同隊にて保有している火器火砲には、軽機関銃(MINIMI)対物狙撃銃(M95)、軽量迫撃砲、各種携行誘導弾などがある。

 

 強襲制圧隊の姫神島急行までの流れは以下の通りである。

 

 昨日深夜より、姫神島所属の中型漁船"第七ほしつり丸"から衛星電話を介して本土の長崎県警に緊急(110番)通報が寄越された。通報者の同島漁師の証言から、突如現れた鳥のような怪物…特殊生物が島民を襲撃し捕食していることが判明。更なる詳細を得るべく再度の呼び掛けが行われたが、通報者の漁師は以降応答することは無かった。

 通報者との連絡が途絶えたことから事態はこちらの想像以上に喫緊のものであると長崎県警は認識。本事案が既存の警察力…銃器対策部隊等では十分な対応が不可能であると判断し自衛隊と政府、その他重要機関に姫神島特殊生物来襲の旨を伝達した。

 それによって本日未明、官邸で関係閣僚が緊急招集され臨時閣議が開催。姫神島への自衛隊の特殊防衛出動が閣議決定された。

 姫神島の島民生存者救助と可能な限りの鳥型特殊生物駆除のために、特自対特殊生物強襲制圧隊と陸自水陸機動団、海自佐世保地方隊、空自西部航空方面隊に招集・出動命令が為され、迅速な統合任務部隊(JTF)編成と作戦立案を経て、数時間前に陸海空特自衛隊による本共同作戦__"海伏作戦"が発動されるに至る。

 空自の戦術偵察機〈RF-15MJ スカウトイーグル〉、無人偵察機〈RQ-4 グローバルホーク〉と早期警戒機〈E-2D アドバンスド・ホークアイ〉による事前の綿密な航空偵察及び索敵が完了し、上陸部隊が姫神島到達まで秒読みに差し掛かった。

 

 ………と言うのが現在までの動きである。

 

 今次の投入戦力は、島民救出と特殊生物排除を担当する特自強襲制圧隊隊員100名と彼らを姫神島まで送り届け作戦終了後は迅速に彼らを回収する陸自水陸機動団のAAV-7が5輌、海自からは佐世保基地より制空権確保と上陸部隊支援として〈"いぶき"型航空護衛艦〉一番艦(ネームシップ)"いぶき"を擁する、アジア屈指の精強機動艦隊__第2護衛隊群第2護衛隊と、AAV-7の母艦として掃海隊群"第2輸送隊"に籍を置く〈"おおすみ"型輸送艦〉4番艦…"おおあらい"が参加しており、かなりの規模となっている。

 同護衛隊並びに輸送艦"おおあらい"は現在、姫神島より東方凡そ50km洋上にて待機している。護衛隊旗艦の空護"いぶき"は艦載戦闘機(F-35JB)一個飛行隊(アルバトロス隊)8機を発艦させており、これが上陸部隊の航空支援(エアカバー)を担当する。また、鳥型特殊生物は飛行能力を有していることが判明しているため、五島列島諸島間・沖縄諸島・九州本土方面への拡散を危惧して、統合任務部隊司令部は空自の西部航空方面隊だけでなく南西航空方面隊にも飛行隊による封じ込め…五島列島付近の空域の監視飛行を要請していた。

 

―――ガクン!

 

「うお!」

 

 AAV-7車内で一瞬浮遊感が漂ったかと思うとすぐに重力が戻ってきた。

 どうやら姫神島の海岸に到達したらしかった。

 

『姫神島砂丘海岸に上陸!!各隊降車用意っ!!』

 

「…(おか)に上がったか」

「ホントの本当にこれが本番……行くぞ」

 

AAV-7の操縦手からの報告を聞いた強襲制圧隊隊長は骨伝導マイクを起動し各車に分乗している全隊員にゴーサインを出す。

 

「よし!総員降車ァ!! 行け!行け行けェ!!」

 

 それと同時に車体後方のランプドアが自動開口され、そこから勢いよく強襲制圧隊員が次々と海岸部に飛び出していく。

 上陸部隊は即座に海岸部を橋頭堡として確保。簡易的な防御陣地を形成する。水際で敵…鳥型特殊生物の襲撃が予想されていたが、部隊上陸に対する島の反応は嫌に静かであった。

 

「上陸地点確保!!特殊生物の姿は見受けられず!!」

「第1から第3分隊と二輌のAAVは島外縁道路から漁港へ、第4から第6分隊とAAV一輌は島北西の山村に向かえ!残る部隊はこの南海岸…上陸地点の防衛だ!!――これより島内生存者の捜索を行う!!特殊生物との遭遇を警戒しつつ前進!!」

 

「「「了!!」」」

 

 上陸した強襲制圧隊と水陸機動団車輌の合同部隊は最優先目標である島民捜索・救出のために動き出した。

 

 それから凡そ十分弱。

 島外縁の沿岸道を西進していた部隊が漁港とそれに隣接する港町に到達し、同領域内に展開。生存者捜索を開始した。

 

「鳥型は人間を捕食するとは聞いていたが……これは……」

 

 港町と漁港の様子は、一言で表すならば「凄惨」であり、至る所に食い荒らされた末の大小様々な…ヒトを構成していた()()()が無造作に転がり、燻んだ赤色の()()が一面に広がっていた。そして島の中でも、最も惨たらしい状態だったのは木造建築の一般家屋が連なっている臨海居住地区だった。同地区は島民の血で染まった赤い瓦礫の山と化しており、上陸部隊による生存者の捜索活動は困難を極めた。

 

「付近の家屋、漁港施設内には生存者なし。…遺体、()()()()()()()はどれも損傷が激しく、腐敗が顕著で身元の特定は困難です」

「顔も分からん仏さんしか見つからんか…」

 

 港町各所もまた居住地区と同様に見つかる島民の遺体は、五体満足の状態のものは見当たらず、どれも必ず欠損と劣化が認められ、路上や屋内…至る所に散乱していた。控えめに言っても一般人が直視できる光景では無かった。

 漁港の沿岸部倉庫では隊員らによる遺体の簡易的な集積と処理が行われていた。

 

「どこの建造物も天井を何かで剥がされた、もしくは切り裂かれた状態となっています。通報の時間帯が深夜だったことからも、おそらく特殊生物は住民の就寝中を襲ったのでしょう」

「埠頭に係留されていた、中破状態の漁船の船名を照合したところ、県警に緊急通報を行なった"第七ほしつり丸"であることを確認しました。同船内からは携帯式衛星電話を発見。船名や内部で飛散していた漁師のモノだろう血痕や遺留物などから、これが通報に使われた端末だと思われます」

 

 漁港側で捜索活動を行なっていた隊員の一人が上長である上陸部隊指揮官に、上の話に出てきた衛星電話を手渡した。

 衛星電話は所々がひび割れて破損しており、微量ながら使用者のものと思われる血液も付着している。報告を聞く限りこれの持ち主…通報者である漁師の生存は絶望的だろう。最悪遺体は見つからないと考えられた。

 

「そうか………山岳側からの報告はどうだ?」

 

「――山村もここと同様に全滅の可能性大とのことです。道中、家畜動物や避難中に襲撃されたと思われる島民の遺体が複数確認済みですが、対して鳥型は依然として姿の一片も無い、と」

「状況証拠的に…これまでの特殊生物と違い、鳥型は明確にヒトを()()として狙っているものと推測されます」

「ヒトを認識し出来るおつむを持っていて、挙句に群れで行動すると来た。そんなのが4、5体…下手すれば10体もいるとなれば……」

「極めて厄介な存在…としか言えません」

 

 隊員の一人が打ち出した鳥型特殊生物の習性の仮説は恐らく事実だろう。上陸部隊はその仮説への確証を港町進入時点で得ていた。

 これまで日本に出現が確認された特殊生物は、コッヴ・ゴルザ・メルバ・クモンガ・カマキラス…5種の大型のみであり、それらの目的は全て()()を第一に行動していた。現に政府より「特殊被災地」認定をされた熊本市と佐世保市は大規模な自然災害__土砂災害等の被災地と相違無い状態となっていた。

 対して、今回の…姫神島の鳥型の所業はどうだ。島の惨状は、災害と言うよりも、島内全域で発生した極めて猟奇的な大量殺人事件と言われても違和感の無いものである。鳥型特殊生物は目的を人間の()()()()()に絞って行動しているとしか思えなかった。同時にこれは鳥型特殊生物は高度な知能…五感を駆使しての個体間識別能力や何らかのコミニュケーション能力並びに手段を有している可能性が大いに有り得ることを示していた。

 

「鳥型の対人探知能力は我々以上のようだ」

 

 彼らの目の前…道路上に鎮座する、()()()()()真っ白な内装外装共に綺麗な軽トラと、車内に肉片が散らばっている__()()()()()()燻んだ赤色で汚れたバンはその典型的例の一つと言えるだろう。

 

「奴らの優先目標はあくまでも人間と、それの捕食……特殊生物にあるとされる破壊習性がそういった行動を補助するものに置き換わっているのでしょうか?」

「その詳細を調べ上げるのは学者さん方の仕事だ。――このまま生存者が発見出来なかった場合は……作戦目標を島民捜索・救助から島内に潜伏しているだろう鳥型の索敵・駆除に切り替える」

 

 憤りを押し殺した声色で、指揮官が言った。島の惨状と相次ぐ隊員達の報告を聞けば、最早生存者は皆無だと思われた。

 その時だった。漁港近辺の捜索並びに警戒に当たっていた隊員から「生存者発見!」と言う心の何処かで待ち望んでいた報告が舞い込んだ。

 

「発見、保護した生存者は一名、島民の少年です」

 

 第一発見者となった隊員曰く、臨港道路の用水路の中から子供の声が聞こえたのだと言う。声に気がついた隊員はバディの隊員にカバーを頼み手持ちの小銃(SCAR)の銃身下部に取り付けていたフラッシュライトを用いて水路内を照らしクリアリングした所、件の少年を発見したとのことだった。

 

「…よく見つけてくれた。全滅では…無かったのだな」

「島内勤務の警官の指示に従って隠れていたそうです。現在捜索要員を数人割り当て、その警官を探させてはおりますが、今のところ付近には散乱していた複数の薬莢以外は痕跡一つありません」

「少年の意識ははっきりしており、驚くべきことに健康状態も悪くありませんが無理はさせず、すぐにAAVへ乗せます」

「ああ。頼む。……この地獄で一人生き延びた少年か…」

 

 姫神島上陸部隊、島内での作戦行動開始から凡そ30分後、島民唯一の生存者__信悟(シンゴ)少年を発見。これを速やかに保護した。

 

「――少年は島を襲撃した鳥型特殊生物を()()()()と呼称しているようです」

 

 少年の証言の報告に指揮官が僅かに眉を動かした。

 

「ん? 奴らの何かを知っているのか?」

 

 情報は武器であり防具だ。未知なる敵の情報が少しでも得られれば今後戦闘で発生するこちらの損害は抑えられるかもしれない。詳細は是が非にでも得たかった。

 

「どうやら特徴的な鳴き声だったようで、その鳴き声が由来なのだそうです」

 

 呼称の由来が由来だったため指揮官は鳩が豆鉄砲を喰らったように、一瞬だけ目を丸くした。

 されど、その呼称が人類の()()であると一発で認識できるシンプル性が内在しているようにも感じられた。

 

「…ギャオス………ギャオス、か………」

 

 まだ見ぬ怪物の名を、指揮官は噛み締めるように、静かに復唱したのだった。

 

 

 

――ギャア、ギャアギャア! ギャオオオーー!!

 

 

 

 その直後、島がおぞましい咆哮に包まれた。

 

「「「!!」」」

 

 港町各所の隊員らがSCAR小銃を山岳地帯の空に構える。

 咆哮は山岳地帯から聞こえてきた。山村の島民捜索に当たっていた部隊が咆哮の主と鉢合わせてしまったのだろうか。

 携帯無線機で()()()()を受けた隊員がその答えを叫ぶ。

 

「山岳方面で生存者を捜索中の第4分隊より報告!!___『鳥型特殊生物群の出現を確認。敵の数が事前情報と比べ遥かに多く、当方の対処能力を大きく上回っている。遺憾ながらこれより島民捜索並びに救助活動を中止し上陸地点まで後退し、合流する』と!!」

 

 報告を聞きながら、指揮官は双眼鏡で山岳方面の空を直接目で確かめていた。

 

()()()が、あの子が言っていたギャオスなるものか…」

 

 レンズ越しに映るのは島上空を舞う異形の影達。

 頭は矢尻の形状、蝙蝠を連想させる巨大な暗色の翼、体色は赤褐色の大怪鳥_十数匹の小型・中型ギャオスの群れの姿が、姫神島山岳部の中空にあった。

 

「明らかに分隊規模ではない…小隊、中隊規模の非大型種の群れ……奴ら…ギャオスの凡その大きさは分かるか」

「……推定5〜7m級の小型と20m前後の中型の混成群であるかと!!」

 

 新たな相手が外からやって来たと気づいたのだろう。ギャオスの群れは島を囲むように散開、旋回し出した。

 

 ギャオスは熱探知能力を有する視覚とそれを用いた個体識別能力によって彼ら上陸部隊が先の餌…島民とは些か差異のある存在であると勘付いていた。上陸部隊(アレら)が昨晩貪った餌達の兵隊種、上位種に位置するモノであると認識したギャオスらは襲撃の前段階行動…様子見に移ったのである。

 

 不気味な翼膜を広げ、空に赤黒い円環を作り出したギャオスの集団を見て危機感が募っていった。

 統合任務部隊司令部と上陸部隊が接敵・駆除を想定していたのは通報の情報を元にした10m級中型種5〜10体程度である。それに反し、現在確認されている上空の群れの構成個体数は3倍近く…上陸部隊の対処能力を優に越えていた。

 携行対空火器も持ってきてはいるが、相手取るのに必要な絶対数が足りない。熟考の必要は無かった。

 指揮官は島からの全面撤退を即座に決定した。

 

 「――沖の"いぶき"に撤収連絡と支援要請!我々はこれより保護した生存者と共に島から退避する!!各分隊に至急伝達!!」

 

 指揮官の命令はすぐに島内の分隊全てに通達された。

 

「各員乗車!!撤退してくる残りの分隊と合流でき次第、上陸地点と防御陣地を放棄し姫神島から離脱する!! これより砂丘海岸へ後退!山の奴らが戻ってくるまで上陸地点を死守するぞ!!」

 

 隊員達が迅速にAAV-7へと搭乗していく。その間、車体上部の__自動擲弾銃("Mk.19")重機関銃("M85")が取り付けられた__新型砲塔が上空を向き警戒に入った。

 そんな中ある隊員が沖合上空に一機の航空機が飛行していることに気づく。

 

「!?――おい、なんで民間ヘリが島の沖合を飛んでいる!!」

 

 上の指摘に気づいた周囲数人の隊員が港沖へ視線を向ける。そこには指摘通り、報道用の民間ヘリが確かに飛んでいた。

 

「海自が見逃したのか!?」

「なんの為の飛行制限だ!」

「早く乗り込め、俺たちじゃどうすることもできん!!」

 

 なんて無謀な、と驚愕一色の隊員達。しかし現状あのヘリに干渉する手段は無く、部隊は撤退行動に入っている。やれることは無かった。

 各分隊の隊員収容を終えたAAV-7の後部ハッチが続々閉まっていく。

 

「各車、隊員の収容完了!発進します!!」

 

 ブロロロロロロ…!

 

「来た………ギャオスが…来た…」

 

 港町方面最後のAAV-7のハッチが完全に閉まる直前に、車内に運び込まれていたシンゴ少年は朝空を飛ぶ厄災の影を見たことによる怯えと恐れを孕んだ呟きを溢したのだった。

 

 

 

___

 

 

 

 時間は少し遡り、場所は姫神島沖上空。

 視点は報道ヘリの中に移る。

 

 

 

バタバタバタバタ!

 

 

 

 姫神島のある方向へと海面スレスレの高度で飛行しているのは民間の報道ヘリだ。

 サイドドアには"笑顔テレビ"のロゴマークが描かれている。

 

「なあ、もっと早く島に近づけねえのか!?」

 

 ヘリのキャビンで小型の中継用カメラを担いで機体から顔を出している一人の男性カメラマンが、ローター音に掻き消されぬように大声でヘリパイロットに尋ねた。

 

「無茶言うなよ茅原(チハラ)!これでもギリギリまでスピード上げてるんだ!!」

 

 しかもここはもう作戦区域の奥の奥だぞ本当はこれ以上近づきたくはねぇんだと、彼の無茶振りに答えた。

 上陸部隊が確認にした沖合のヘリは、笑顔テレビ報道班が所有している機であった。それには同報道番組の看板キャスターである美代も搭乗していた。

 彼女らは姫神島の異変…新たな特殊生物をカメラに収めるために自衛隊が作戦区域に制定した空域内に侵入していたのである。

 

「てか良いのかな美代さん、一応通信は受け付けないよう言われたように切ってるけど……後ろから海上自衛隊のヘリが……」

 

 報道ヘリの気弱な副パイロットが美代に尋ねる。

 後ろに振り返ってみれば、彼の言う通り小粒ほどであるが飛行物体が確認できた。無論、機内のレーダーにも光点が映っている。

 

「時には危険を冒してでも現場から真実を報道することも大事なのよ!」

 

 アメリカのファンタス星人の時とは真逆じゃないですか、と言う副パイロットの愚痴に近い台詞は彼女には届かなかった。

 

「俺もスリリングなのはばっちこいだからな!!」

 

 美代の考えにカメラマンの茅原も賛同の意を示しながら白い歯を見せ、なははは!と笑っていた。

 

「今度からは美代さんと茅原さんとは別の担当に回してもらおう…」

 

 副操縦士が独り言を溢したあたりだった。

 

「………見えた!姫神島だ!!」

 

 眼前に絶海の孤島…姫神島が目視できるまで近づいていた。

 

「おお!来たきたきたァア!!!………あ?なんだ、ありゃ?黒い輪っかが浮いてんぞ」

 

 カメラを構えていた茅原が姫神島の空を指差して何かがいることを美代たちに伝える。

 美代はそれを目を凝らして、恐らく茅原が見つけたと思われる「輪っか」とされるモノを前方の島上空に確認した。

 

「あれは………鳥?」

 

 美代の呟きに答える者は機内にはいなかった。

 

 

 

____

 

 

 

太平洋西部 東シナ海海底 超古代先史文明遺跡群

 

 

 

 太平洋の深い深い海の底には、明らかに現代の科学技術で作られたものではないと分かる異文明の建造物群が静かにそびえ立っていた。

 建造物群は、現代で言うところの大都市圏(メトロポリス)に該当する規模の、海底に沈む広大な魚礁と化した荒廃都市であった。

 その建造物群の中央部には、密閉された用途不明の全幅約1kmは下らない巨大なドーム状建造物がある。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…

 

 そして今、そのドームの上層にある無数の巨大ハッチの一つが、ゴボゴボと気泡を吐きながらゆっくりと口を開きつつあった。

 

……バシュウゥン!!

 

 海底ドームのハッチが最大仰角まで開くと、直後にそこから高速で()()が人知れず射出された。

 

 

 

_________

 

 

 

 太平洋西部 東シナ海

 五島列島沖 南東約70km洋上

 

 

 

 ハジメ達が住む大型学園艦__黒森峰学園は、左右を海上自衛隊の護衛艦"あさひ"、"たかなみ"の2隻に護衛されながら、次の戦車道練習試合相手である関東地方山梨県のマジノ女学院の母港の一つ、静岡県__田子の浦港、学園艦停泊地へ向かうべく、現在は鹿児島方面へ南下している最中であった。

 

『___現在、まだ詳細は不明ですが、護衛艦"あさひ"と本土からの情報によりますと、鹿児島県五島列島周辺に怪獣…特殊生物が複数体出現したとのことです。そのため本艦は護衛艦の誘導に従って自衛隊の作戦海域に指定されたコースを大きく迂回する形で田子の浦港へと予定通り向かいます。シェルターへの避難の必要はありません。繰り返します___』

 

 学園艦の運用を管理・担当する船舶科からの艦上全域放送が流れている。

 内容としてはここより少し離れた海域に所在する諸島近辺に特殊生物の群れが現れ、それに自衛隊が出動…作戦が行われるため、黒森峰は航行ルートを一部変更し当初の寄港先に向かうと言うものだ。

 

「……五島列島ってすぐ近くじゃないか」

 

 北東の水平線へと首を向けながら呟いたのはハジメだった。黒森峰戦車道履修部生は戦車道ガレージ内で船舶科の放送を揃って聞き入っている。

 今は丁度、機甲科の全体早朝練習が終了し、整備科による戦車の点検整備がされているところであった。

 

「まぁた九州か…怪獣は九州がそんなに好きなんかね……」

 

 三度、特殊生物災害を文字通り目の当たりにしてきた者の一人であるヒカルがそう愚痴った。

 もう日本に出んのは勘弁してくれよ、と付け加えて。

 

 朝とはいえ真夏に照りつける太陽の日差しが入るガレージ内の室温は、屈強な整備科男子達でも流石にキツいようで、彼らの側に扇風機が置かれている中、各々が整備服(ツナギ)を脱いでアンダーシャツ、ランニングシャツ一枚などの軽装で工具を片手に戦車の整備を行っている。

 そしてガレージ内の空きスペース、機甲科の簡易ミーティングスペースではパイプ椅子と折り畳み式木製テーブルが設置され、エリカ達機甲科Aチーム(主力)メンバーとBチーム(控え)メンバーの少女達が今の時間…整備兼休憩時間明けの午前練習の打ち合わせをしていた。そんな彼女らもミーティングを一時中断して、練習内容を書き留めるためのメモ帳やノート、ペンに鉛筆を手に持ったままスピーカーから流れる艦内放送に耳を傾けていた。

 

 ちなみに、黒森峰機甲科内にはA、B、C、三つのチームが存在する。どのグループも、単独で他校と試合を組める規模で、メンバーの分け方は戦車道(競技)に対する実力を重視して決められている。無論、メンバー間のコミニュケーション能力といった間接材料にも目を向けられており、実力こそが全て…と言うわけではない。

 この三集団の設立は、女学園時代…夏季全国大会連覇開始前後の世代から始まったもので、十数年前と比較的最近行われた変革である。

 Aチームは、他スポーツでの所謂レギュラーメンバーやスターティングメンバーなるもので、高校全国レベル・大学レベルに匹敵する練度の履修生で構成される黒森峰高等部の最精鋭集団だ。このチームがよくテレビや新聞で取り上げられる「黒森峰戦車道チーム」である。実戦経験の差で三年生の割合が多く主力となっているが、実力で彼女らに迫る若しくは超えているエリカや小梅、レイラと言った二年生、一年生も多数所属している。

 Bチームは、上位集団にあたるAチームと比べて数段実力の劣るチーム…控え選手(ベンチウォーマー)が多数在籍する集団であると学園内外から思われている。が、その実、ギリギリの所で…あと一歩の所で振るい落とされてしまったAチーム相当の実力を持つ即戦力__「隠れレギュラー」の巣窟である。Aチームで何らかのトラブル等で欠員が生じた場合は即座に本チームから補填メンバーが投入されるぐらいには実力に差は無い。また、AチームとBチームでは実戦並びに訓練、チーム間紅白戦等による成績の上下によって昇格降格を懸けた火花散る激しい争いが行われている。

 最後のCチームは、ノウハウ、センス、体力、精神…戦車道に通ずるあらゆる要素において良くも悪くも中堅校上位止まりとされる二、三年生メンバーと、大多数の一年生___入学後即引き込みさえなければ、原則として一年生はこのチームに必ず最初に属する___で構成される集団である。また戦車を扱う訓練時間が最も少ないチームでもある。当チームは通常練習以外にABチームの訓練・試合準備補助と一年生の錬成が役割となっている。そのため、Bチームに届かない履修生達の練度上げ…だけでなく、一年生の教導機関と言う側面も持つ。なお、ここに属する二、三年生は皆燻らずに日々訓練・座学に励んでおり、そこで生まれる刺激と反骨精神を糧に短期間で才能を爆発的に開花させる者が毎年、毎月現れている。このように、他チームのサポートや一年生の成長への寄与、新戦力の発掘土壌と言うように、黒森峰機甲科内の「いらない人間の寄せ集め」ではなく、「無くてはならない必要不可欠な縁の下の力持ち集団」なのである。

 この三集団を持ってして夏季全国大会九連覇を黒森峰機甲科が成し遂げ、今日まで強豪名門と言われているのである。

 …また、「区別はすれど差別せず」の方針の下、各機甲科チームを1軍、2軍、3軍と呼ばないことが戦車道履修部内で代々暗黙のルールとなっていて、これが機甲科内の不必要な不和の発生防止に繋がっている。尤も、どのチームが崩れても戦車道履修部に暗雲が立ち込めることは皆が理解しており、互いのチームの役割、立場や意思を尊重しているため、進んで不仲を築いてやろうなどと考え口にして嘲ける者は今の所見られていない。

 

 こうした環境下で戦車道に励んできた歴代の履修生達が築き上げた雰囲気や体制が、現在のまほ、エリカ世代にまで受け継がれたことによって、正史世界であったとされる62回大会決勝敗戦時の機甲科(身内)生徒による西住みほへの責任追及やイジメと言った出来事が本史世界では起こらず、機甲科の大多数が西住みほ擁護側についた導因の一つとなっている。

 …しかし、こうした決定的な運命やその取り巻きの違いがあったのにも関わらず、外部からの心無い熾烈な干渉を受けてしまい本史世界でもまた「西住みほの転校」という事象は発生してしまったわけなのだが。

 

 

 閑話休題。

 

 

 黒森峰の航行ルート急遽変更と、新たな特殊生物の確認という話題は、ガレージ内を騒つかせるには十分なものだった。

 

「ネットニュースだと出たとこは姫神島で、今回は鳥型の怪獣ってことらしいぞ」

 

 一年整備科男子の宮崎(ミヤザキ)が軍手を外してスマホを弄り、周囲の同じ一年生整備士達にネット記事のページを映した画面を見せる。

 

「鳥型?……てことはサイズも鳥ぐらい?」

 

 両手を使ってぴよぴよと羽ばたく仕草を見せ聞き返したのは佐山(サヤマ)である。

 

「バカ。それとは比べ物にならないから特殊生物って言ってるんだろうが」

 

 おふざけ混じりの佐山の問いに横からツッコミの脳天チョップを炸裂させたのは彼らのまとめ役__田中(タナカ)である。

 お気づきの方が大半であると思われるが、先の宮崎少年と佐山少年は、あの佐世保…サンダース大附属高校との試合準備の際に、ハニトラに関する説教をユウとダイトからされた一年生二人である。

 

「ちょっとそこの一年メカニックトリオ、放送聞こえないから静かにして!」

 

 気の強そうな機甲科の二年生が三人の声量に叱責を飛ばしてきた。

 

「(あー、ゲシ子先輩に叱られたよ…)」

「(おい佐山やめろ!足文(アシフミ)先輩の前でそのあだ名口にするのはやめろ!!)」

「(本人はそれ気に入ってるわけじゃないからな!?)」

 

 整備科の一年衆が囁いた「ゲシ子」なるあだ名を持つ先輩…機甲科二年生の本名は足文(アシフミ)ランコである。彼女はAチームで〈V号戦車(パンター)G型〉の車長を務めている。

 彼女に関しては、史実(現実)世界にて「脇にヘッツァーがいる子」と呼ばれていることでお馴染みの少女と言った方が分かりやすいだろうか。

 なお、本史世界の彼女が「ゲシ子」と呼ばれるに至った理由は二つある。一つ目は、苗字の足文が()()()を連想させたから。そして二つ目は彼女が車長を担当する際のパンター操縦手に対する指示出し(蹴り方)が「結構いい所に入っちゃったデュクシ」並みに強く、それを常日頃の訓練で続けた結果、同級生の操縦手の内に眠っていたドM属性(マゾッ気)を呼び起こしてしまったから…である。

 しかし、怪我の功名(?)と言うべきか…その性癖開発事件以降、足文の指揮するパンターは機敏かつ繊細な動きを取れるようになったと言う。要は、蹴られ慣れた操縦手が、蹴りの微細な強弱を感じ取れるようになり、足文が理想とする機動を忠実にこなしてくれると言うワケだ。このように、図らずも隊員の練度向上に繋がってしまった本プチ事件を当時把握した機甲科隊長(西住まほ)は、暫くの間、隊長事務室で結果論として素直に喜んで良いものかと頭を抱えて一人悩みに悩んだらしい。

 

「ん〜?メカニック坊主達、なんか言った?」

 

 ゲシ子…もとい足文がギギギ、と首を一年衆の方に向け聞き返した。その顔は微笑み一色であったが、横線になった目の中の瞳は笑っていない。

 十中八九、三人のこそこそ話は聞こえていたものと推察される。

 

「「「い、いえ!何も言ってません!!」」」

 

 かつかつとこちらへ歩み寄ってくる満面の笑みの足文が放っているプレッシャーからか、背筋を正して直立不動の姿勢で返事をする一年衆三人。

 

「ん?言ってみ? 私は優しいセンパイだからさ、お話聞いてあげるから」

 

 お話とは即ち言い訳言い分を指しているのだろうと三人は直感した。「あ、やっぱこの先輩もう確信に入ってるじゃん…」と絶望しながら。

 

「ほら〜言え〜坊主達〜? 自主(自首)的に言ってくれないと…この半長靴(ブーツ)でゲシゲシと___」

 

 空手などの格闘技で見られる高難度技__三段蹴りのシャドートレーニングをしながら、さらに近づいてくる。あまりにも綺麗なフォームでしていたものだから、三人の口から「いやもう先輩カラテやってくださいよ」と出かけたが無理矢理喉の奥にしまった。

 

 あわやタイキック祭りの始まりか…と思われたその時、ガレージの奥の方から二人の救世主がやって来る。

 

「「___()()だけどもしかして呼んだ?」」

 

 なんかあったか?と聞きたげな顔で整備科二年生の、ヒカルとダイト…物理的坊主の先輩二人がやってきたのである。

 

「駒凪、佐々木の坊主の方(ダイト)、お前らじゃない!座ってろッ!!」

 

 これに顔真っ赤にしてツッコミを入れたのは足文である。散れ散れと、手の平でシッシッ!と振る動作をもってして巨漢坊主二人を追い返す。

 だが、それで毒気が抜かれたようで、「あの坊主達に免じて許してやろう…次は無いぞ!」と引き下がって機甲科の輪の方に戻って行った。

 

 一年生三人は、自分達の聞き間違いで追い返されてしょんぼりしつつガレージの日陰で座り込む二人の先輩の背中に感謝を込めて合掌したのだった。

 

 黒森峰学園の船舶科からの艦内全域放送は依然として続いているらしく、スピーカー越しでのアナウンスが何度も聞こえてくる。

 それが学園艦(こちら)に十数年前から無断で乗り込んで定着した本土出身の図々しいセミたちの大合唱と絶妙に重複して、夏の暑さを余計掻き立てていた。

 夏の暑さと言っても、実はまだ6月半ばなのだが……これも近年続いている地球規模の異常気象が原因なのだろうかと皆思っていた。

 

「海の上なのによ〜、なんでセミの鳴き声聞かないといけないんだよぉ……」グデー…

「ナギが溶けてるぞぉ…」ベター…

「ダイト、お前もだぞぉ…」ドロー…

 

 担当戦車の整備を終わらせガレージの日陰で放送そっちのけに地面で胡座かいて休憩していたヒカルとダイトが、早朝とは思えない気温からの洗礼を受けてやられていた。

 互いに舌を出して「うへ〜あぁっつい…」と気怠げで情けない声を上げており、先の足文との絡みなぞ無かったかのようなへばりっぷりであった。

 …本日は彼らが起きる前から今まで、毎時間国内の最高気温の記録が塗り替えられ続けていたりするので、無理もないかもしれない。

 

「あーららら……急にダウンしてどうしたのよ?」

 

 と、ユウがガレージ内に置かれた機甲科整備科共有のクーラーボックスの一つから頂戴してきた氷漬けのスポーツドリンク__500mLボトルを持ってやってきた。彼はそれを二人にそれぞれトスしてやる。

 すると坊主二人はトスされ宙で弧を描いていたボトルを片手でキャッチし、すぐに顔元に引き寄せ冷気を補給していた。それでもなお、「暑くて干からびそぉ…動いてないのに暑いよぉ」とうわ言のように呟いている。

 

「まだ朝だし、メシ前だけど…しょうがない。待ってろ、ちょっとコンビニでアイス買ってくる」

 

 そんな仲間達の様子を見兼ねた、或いは呆れを通り越して哀れに思ったハジメが、ツナギズボンのポケットから財布を取り出し中身を確認しつつ、整備科の灰色制帽を被りコンビニへ繰り出す準備をしていた。

 

「あ〜神様仏様ストームリーダー様ぁ〜!ありがとうございますぅ〜!」

「願わくば…願わくばハーゲンのダッツをくだされぇ」

 

 念じるように強く手を合わせ正座合掌に入ったヒカルとダイト。ここまでテンションの管理と身体の制御が効くのなら、もしやアイスはいらないのでは…とハジメは訝しみ始めた。

 

「おい、しれっと高いもんを頼むんじゃない」

 

 そんなしょうもないやりとりをしているとハジメの横からエリカが話に入ってくる。

 

「――それなら私はミカンシャーベットね♪」

 

 アイスの単語を耳にしそれに惹かれたのだろう。背後からポンっと、ハジメの肩に手を当てて上機嫌な顔でリクエストを投げてきた。

 ちなみにエリカの言った「ミカンシャーベット」に該当する氷菓子の正式名称は、"ミカン(ボール)"だったりする。懐菓子(なつかし)__昭和から続く人気元祖古参菓子として有名で「シャーベット・フルーツ(ボール)シリーズ」に属するものの一つである。今需要が増加しているのは、先述のミカン、メロン、モモ、スイカ、リンゴの五つなんだとか。

 

「え…」

 

 エリカの方をマジマジと見るハジメ。

 

「なによ。私も食べたいのよ」

 

 何か文句でもあるの、と不機嫌そうな顔になったエリカに、ハジメは自身が懸念していることを口にした。いや、してしまった。

 結論から言ってしまえば、この一言は悪手以外のなにものでもなかった。

 

 

 

「た、食べたらふ、ふ………太らない?」

 

 

 

 それはもうとんでもない1000メガトン級を優に超える爆弾発言であった。遠慮がちに、申し訳なさそうに言ってもその発言の威力をカバーできる範疇は軽く超えていた。

 傍にいたユウは笑顔が消え青くなっているし、ヒカルとダイトは正座したままハジメに向けて十字を切って再び合掌している。

 これを聞いたエリカは顔面を真っ赤にさせて即座にかの幼馴染の首を背後から絞めにかかった。ハジメがギブアップだと言って結構な頻度でタップしてきたためエリカは緩めてやるが、今から買ってくるであろうアイスのような冷めた目つきで、ぜーぜーと肩で呼吸して膝をついている幼馴染を見下ろし睨む。

 そこからは烈火の如き叫びがガレージ内に轟いた。

 

「……アンタねぇ、女子にそんなこと言うんじゃないわよ!!! 倍よ!倍!!倍の量のアイス買って来なさい!それも隊長と小梅、レイラ…私たち機甲科全員の分もね!!」

 

 捲し立てるエリカ。今回はデリカシーの欠片も無い、年頃の少女にとってタブーな質問をしたハジメが十割悪い。

 

 …なぜ彼がこのようなナチュラル蛮行に及んでしまったのか…それは彼の食事に対する健康観が主な要因であったりする。

 ハジメは普段からあまり間食を___糖分、水分といった栄養補給や、肉体鍛錬(日課)のプロテイン摂取等の例外を抜きにすれば___摂らない。元より、ハジメ少年は嗜む程度には菓子類は摘むが、積極的にそして衝動的に手をつけるタイプでは無い。それにエリカが教室やガレージで友人達と「ちょっと体重かさんだかも…」のようなトークを常日頃からハジメ少年が耳にしていたことが重なり、こうなったとしか言えなかった。ちなみにエリカの体重増量はバストアップとヒップアップによるものだとハジメ少年はおろか彼女本人も気づいていない。

 今回の発言は単純に幼馴染の彼女の健康を想ってのものだったが、些か言葉足らず過ぎた。

 

「えぇ!? それだともっと太るん___「いい?買ってきなさい?」___…は、はい……」

 

 こりもせずにハジメが再度体重に関するタブーを口にすることはエリカのドスの効いた声で阻まれた。

 

「なんだ、ハジメ君。私たちの分もアイスを買ってきてくれるのか? ありがとう。ストームリーダー」

 

 更に、まほが話に入ってきたため逃げ場が余計無くなり、その彼女のダメ押しとも取れる一言でエリカの提示した履修部生全員への氷菓子奢りから逃れる術が、逃走経路がたった今消しとばされた。

 まほの輝く瞳には期待の光が宿っており、それを裏切ることはハジメには出来ず結局は戦車道履修生たちにアイスを買ってくることになったのだった。

 ガックシと項垂れているハジメを他所に、機甲科AB両チームと、整備の補助に回っていたCチームの女子たちは皆大喜びだった。

 

「……しゃーない。イッチ、チャリ貸してくれない? 今日徒歩登校だったんだ」

 

 機甲科のお祭り騒ぎを耳にして、まほの〈VI号戦車(ティーガーⅠ)〉を見ていたマモルもやってきた。

 彼はハジメの頼みを快諾する。

 

「全然いいよ。はい、鍵」

 

 チャリン、とデフォルメ化された柴犬のストラップ付きのキーが音を立ててハジメの手の平に渡された。

 それを見ていたユウが__

 

「よし。なら俺とダイトのチーム佐々木も手伝うか………あ、ダイトはナギと一緒に溶けてるな。――まあ俺も一緒に行くよ百人以上だろ? コンビニじゃなくてスーパーで箱で買ってドライアイス詰め込んで輸送しよう」

 

 __アイス運搬役に名乗りを上げてくれた。

 ユウの言うように、これだけの人数のアイス…安いカップ型やバー型でも備蓄、単価を考えればコンビニよりも食品スーパーの方が良いだろう。

 

「そうだね。そのプランでいこう。……それで、軍資金は?」

 

 ユウの提案に異論は無かった。

 出発の前…最後にハジメはアイス購入遠征のための補助金銭を目の前の機甲科隊長(まほ)並びに副隊長(エリカ)に求めた。

 二人は、ハジメが差し出してきた右手を見てからお互い顔を見合わせ、首を傾げてから代表してエリカが口を開いた。

 

 

 

「何? 全部アンタ持ちに決まってるじゃない」

 

 

 

 その言葉は、本日の早朝練習に参加した履修生総勢およそ100名のアイスを支援なしで丸々自腹で買って来いよと言うお達しに等しかった。

 

「ええええ!そんなぁ!!」

 

―――ジリリリリリッ!!!!

 

 ハジメの悲鳴が上がった直後、先ほどまでの喧騒すべてを掻き消すかのような甲高い非常ベルと国民保護サイレンが船舶科からの新たな艦内全域放送と共にガレージ内の各所スピーカーから流れ始めた。

 

『至急至急、自衛隊からの緊急連絡です!!現在、太平洋西部から五島列島方面へ向かって高速で飛行する巨大な未確認反応を感知したと通達がありました!!以降同反応を"フルー1"と呼称します!!――現在"フルー1"の予測進路上に本艦が位置しているとのことです!!よってこれより本艦は回避運動を取ります!!――"フルー1"は新たな特殊生物である可能性が高く、先程本艦の護衛である"あさひ"、"たかなみ"の2隻が"フルー1"に対して対空誘導弾による迎撃措置へと移ることが通達されました!――そのため、避難訓練時と同様に艦内住民の皆さんはフロートブロック内の多目的シェルターへと避難を開始してください!!各シェルター入り口までの移動が困難な方は艦中央部の黒森峰学園への避難をお願いします!!避難誘導は艦内警察並びに消防隊の方々が担当します!落ち着いて、指示に従ってください!!――繰り返します!!_____』

 

 非常時を告げる放送と共に、穏やかで何気ない日常が再び姿を消した。

 

「…どうやらアイスはお預けみたいだな」

 

 緊急放送の内容からして、今から早急に避難を開始しなければならない。

 ユウの呟きの通り、アイスなぞ買いに行ける状況では無くなった。

 

「早く校内の第2シェルターに行こう!あそこならここから10分もかからない!!」

 

 ハジメがすぐ頭を切り替え、声を張り上げた。

 

「ハジメ君の言った通り、全履修生は第2シェルターに避難する!!急ごう!!」

 

「「「はい!!」」」

「「「了解!!」」」

 

 まほがそれに続いて号令を発したことを端にして機甲科整備科共にシェルターへの避難を開始することとなった。

 

 

 

(どこかでイルマと入れ替われるタイミングを見つけないと……)

 

 まほ、エリカ、ハジメを先頭として、戦車道履修生達は固まってシェルターへと駆け足で向かっていた。

 ハジメは背後のメンバーの様子を見つつ、変身の機会を伺っていた。

 

「まもなくシェルター前だ!皆んな、列を乱さずそのまま___」

 

 ハジメ達が校内シェルターのゲートまで残り100mを切った時だった。

 

―――シュバァアアアーーーッ!!! ゴォオオオオオオオオ!!!

 

 まほの呼び掛けを掻き消す轟音。

 それは2隻の護衛艦から未確認大型飛行物体"フルー1"迎撃の為の、個艦防空ミサイル__"RIM-162 ESSM(発展型シースパロー)"斉射の合図であった。

 学園の校庭からでも、護衛艦から空へ伸びていく十数の白い尾__艦対空ミサイルの飛翔がハッキリと見える。

 

「やばい!おっ始まったぞ!!」

 

 バーナーを吹かして飛んでいくミサイル群を見て、ヒカルが叫んだ。

 

「対空戦闘…? もう怪獣が来たの!?」

 

 エリカも怪訝な表情で、走りながら周囲の空を見回す。

 会敵する距離も時間も…こちらが避難を終えるぐらいまでは余裕があると予想していたが故にだ。

 

「怪獣はどこに…」

「そんなの…………ん?……あれか?」

「クッソでかい…カメ…が、飛んでる?」

「か、カメ?」

 

 ヒカルが気づき、他のメンバーも()()…空に浮かぶ親指サイズの不可思議な黒点を見つける。

 

「早くね?まだ時間があるはず…」

 

 目視できる距離まで、超高速で"フルー1"と思われる黒点が迫ってきている…それはつまり____

 

「!! こっちに来る!! エリさん、伏せて!!」

 

____黒森峰に到達するまで秒読みの段階であるという事である。

 

「え!? 何!?」

 

 ハジメの声により周囲の生徒たちも一斉にその場で伏せる。当のハジメはエリカに覆いかぶさって彼女を脅威から守る動きを取った。

 その直後、ハジメたちの真上を音速で()()()()()()に頭と翼が生えたような巨大な亀の如き怪獣が通り過ぎていった。

 それから暫し遅れて空気の衝撃が、学園艦全体に到達し、校庭は凄まじい砂嵐が吹き荒れ、まともに息も出来ない状況となった。

 

「前が見えねぇ!!」

 

 ダイトが両腕を顔の前で交差させた防御姿勢を保ちながら口を開く。しかしその後すぐに砂が口内へ入ったらしく、「ぶふぉあっ!?」と激しくむせ込んだ。

 

「けほっ!――皆んな、怪我はしていないか!!」

 

 砂嵐が収まり、視界が晴れ呼吸ができるようになると、まほは周囲を見渡しながら立ち上がり、地面に伏せているメンバー達の無事を確認するために声を張り上げた。

 うつ伏せ状態の面々から返事がぼちぼち返ってくる。目立った外傷は誰も負ってはおらず、取り敢えず全員が五体満足であると分かった。

 

「な、なんとか大丈夫です、まほさん…」

 

 口元に付いた砂をツナギの袖で拭いながらマモルが自身の安否を伝える。

 

「見えたと思ったらもう目の前だった……どれだけ速いんだよ、アイツ…」

 

 ユウも目を擦りながら何とか立ち上がっていた。

 

「か、カメっぽい見た目して飛んでんじゃねぇよ…ゴホッ!ゲホゲホッ!」

 

 ヒカルはヒカルでむせながらも学園艦の真上を通過した存在に対してツッコミを入れていた。

 

 艦直上を通過した件の巨大飛行物体("フルー1")は、護衛艦による対空砲火の尽くを交わして、北東の空へそのまま悠々と向かっていくのが見えた。

 

 ハジメはまほよりも早く立ち上がっており、手でツナギの懐にあるアルファカプセルを握っていた。

 あのカメモドキが空中で旋回し、こちらへ戻ってきた時に迎え撃とうとしてである。

 

「こうなったら…」

 

 学園艦が襲われれば、エリカやマモル、ヒカルと言った大切な仲間達の命が失われると思ったハジメは、正体がバレてしまってもいいと、アルファカプセルを用いて変身しようとした時だった。

 

《…待て。若き"星の戦士"よ……()()ギャオスは…私が倒す。手出しはするな…》

 

 幼少の頃に体験したモノと似たような感覚に襲われた。

 それは、"星の声"との出逢いの際に経験した念話(テレパシー)そのものだった。

 

「な…!?……お前は…」

 

 「手出しは無用」という制止の念話は"フルー1"からのものであるとハジメは驚愕の中で直感した。

 どうやら相手はこちら…ハジメの正体を知っており、人間に危害を加えるつもりは無いようだ。"フルー1"は何かしらの使命…「災影」なる存在__恐らくは、五島列島に出現したとされる、鳥型特殊生物のことを指しているのだろう__の撃破を果たすため姿を現したのだと考えるのが自然か。

 

 ハジメに名を問われた"フルー1"…否、玄武はそれに答えた。

 

《――我が名は…()()()。…命あるこの星を守る者……》

 

 ハジメの知り得ていなかった別個の守護者__ガメラ。

 

「………あれが…お前が、ガメラ…」

 

 彼は名乗りを終えると、更に数段加速し災影の巣食う姫神島へと向かっていった。

 ハジメはアルファカプセルを握る手の力を緩め、懐から手を戻し、北東の朝空へと飛んで行くガメラの後ろ姿を、エリカに呼び掛けられるまで見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

____

 

 

 

ガメラ黒森峰直上通過より数分前

 

 

 

姫神島 東50km沖洋上

 

 

日本国海上自衛隊第2護衛隊群 第2護衛隊

"海伏作戦"参加艦艇旗艦

航空護衛艦 "いぶき" 戦闘指揮所(CIC)

 

 

 

 艦隊の頭脳であり心臓でもある"いぶき"CICではクルーが慌ただしく動いていた。

 

「島の海岸は乱戦状態。鳥型…呼称はギャオスだったか…は、レーダーで捕捉できているが。――各艦の対空誘導弾の射撃は待機だろう…」

「いつでも発射できるよう、攻撃目標の割り当てはやっておけ!目標の重複に注意。各艦との情報伝達を密にせよ!」

E-2D(ホークアイ)、太平洋側の未確認大型反応(アンノウンⅡ)を追跡中。…同目標の飛行針路並びに機動変わらず!凡そ十数分後に大型学園艦(黒森峰)と交差する計算です!!」

「同艦護衛の"あさひ"、"たかなみ"、ESSMの発射態勢への移行を確認!」

「"第901飛行隊(アルバトロス隊)"、姫神島上空現着まで残り2分!間もなく()()誘導弾の射程圏に島全体が入ります!!」

『"いぶき"航空管制より、アルバトロス。貴隊はギャオス群を捕捉し次第、これを撃滅せよ』

 

 彼らは、姫神島の鳥型…ギャオスの群れと、太平洋より突如として現出した大型…ガメラ__"フルー1"改め、自衛隊識別名"アンノウンⅡ"__両方の対応に追われていた。

 

『アルバトロスリーダー了解。空域到着後、上陸部隊撤収の支援のため、即座に"空対空徹甲誘導弾(フルメタル・ミサイル)"を用いた精密攻撃を敢行する』

 

 本来の任務であるギャオス撃滅と、イレギュラーな"アンノウンⅡ"迎撃…この二つを艦隊は成さねばならなかった。

 そしてこの二つの事象の他に、もう一つ。艦隊が頭を悩ませるに足る事象があった。

 

「――新波(ニイナミ)艦長!作戦空域に侵入した民間ヘリはやはりこちらの呼びかけに応じる様子は一切ありません!」

「"いせ"の〈SH-60K(シーホーク)〉が現在追跡中。呼びかけを続けていますが動きに変化無し!このままだと姫神島上空に到達します!!」

 

 マスコミ…笑顔テレビ報道ヘリの戦闘空域侵入への対応であった。

 

「ううむ…通信回線の全てを遮断しているのか……くそっ、死んだら元も子もないぞ!」

 

 艦橋から艦内CICに移動していた"いぶき"艦長、新波歳也(ニイナミ・トシヤ)一等海佐は連絡要員からの報告を聞いて頭を抱える。

 彼は脳内にて情報を精査・整理した後、今回"いぶき"に乗艦している第2護衛隊群司令、梅津三郎(ウメヅ・サブロウ)海将補に次なる対応について意見を交わす。

 

「―――梅津群司令、鳥型特殊生物…ギャオスの群れも十分な脅威ですが、黒森峰学園へと現在向かっている未確認反応"アンノウンⅡ"にも対応しなければなりません。そこで、イージス艦である"あしがら"をアルバトロス隊の援護に回し、"はるさめ"を迎撃行動に入っている学園艦護衛艦艇群の"あさひ"、"たかなみ"と連携させ"アンノウンⅡ"に対してミサイルによる波状飽和攻撃を仕掛けます。そして万一に備えて"第902飛行隊(スパロウ隊)"を艦隊直掩、そして"アンノウンⅡ"への追撃に回すということで…よろしいでしょうか」

 

「まあよかろう。…鳥型への対応も重要であるが、学園艦の被害発生を許し、あまつさえ撃沈されたと言うことになれば途方も無い数多くの人命が海に没することは目に見えている。本来の作戦内容には無いが、現在我が艦隊には特殊防衛出動の命が下っている。作戦領域内に出現した新たな特殊生物…"アンノウンⅡ"への即応は我々の仕事と言えよう。私は、艦長の案を支持する」

 

 二正面での同時作戦行動…若干の懸念材料があれども、本艦隊の今後の動きが梅津群司令に承認され、決定が為された。

 

「民間ヘリは、どうしますか?」

 

 懸念材料の大元、報道ヘリの対応を新波艦長は梅津群司令に伺う。

 

「――なぜここまで来たのかは甚だ疑問ではあるが、彼らマスコミも熊本特災…コッヴ出現時からはある程度は学習している、はずだ。先程の報告によれば既に上陸部隊が襲いかかってきた小型種に対して対戦車砲と車載自動擲弾銃を使用し、これを撃破している。島では戦端が既に開いている。警告は…したのだ。こうなってしまえば彼らの動きを信じるしかあるまい」

 

「……分かりました。作戦は変更せず続行させます」

 

 改めて新波艦長は作戦を進めるべくクルーたちへ指示を飛ばす。

 そんな中、さらなる事態急変の報が転がり込んできた。

 

「――報告!たった今"アンノウンⅡ"が学園艦上空を通過。"はるさめ"のカバーは間に合わず、三艦同時迎撃は失敗した模様!!誘導弾は全弾命中せず!!___対象は姫神島方向へ尚も飛行を継続中!!このままでは撤収中の上陸部隊とアルバトロス隊が挟撃を受けます!!」

 

「何っ!? 早すぎるぞ!迎撃準備が整ってから対応が可能ではなかったのか!?」

 

 "アンノウンⅡ"は護衛艦の誘導弾攻撃を看破し、しかもこちらが敷いた迎撃網を大した損害を被ることなく突破。そして学園艦上空を難なく通過して見せたのだと言う。

 

「そ、それがミサイル発射タイミングの前後で、"アンノウンⅡ"は瞬間的に加速…マッハ1.5からマッハ7へと速度を急激に上げ、こちらの攻撃を全て回避したとのことです!!」

 

 新波艦長は己の耳から入った報告の詳細を疑ってしまった。それが事実ならば、ミサイルの追尾能力を凌駕する機動性を有する"アンノウンⅡ"への有効な手札は艦隊に無いと言える。

 

「"アルファ(メルバ)"のマッハ6を凌ぐマッハ7、だと……!? ――学園艦の被害状況は!」

 

 兎に角情報の再整理が必要だとして、"アンノウンⅡ"が真上を飛翔した学園艦__黒森峰の現状を尋ねた。

 

「――――死傷者はゼロ、艦上並びに艦内設備に損害無し…とのことです!」

 

 特殊生物の接近を許し、防げなかったために甚大な被害が出てもおかしくは無いと誰もが思っていた。

 しかし、その予想に反して学園艦は健在。黒森峰学園の運用要員…同校の船舶科生徒からの報告によれば、件の"アンノウンⅡ"の動きは艦上空を通過しただけに留まり、攻撃は受けず特筆すべき被害は確認されていないとのことであった。

 この奇跡的な報告を聞き、新波艦長ら全クルーは一時的ながら安堵した。されどもその余韻に浸り続けられる余裕も暇も無い。

 新波艦長はすぐさま新たな指示を飛ばす。

 

「……アルバトロス隊に緊急連絡!『こちらは"アンノウンⅡ"の迎撃に失敗、後方から同目標が高速で接近中、警戒せよ』と!!スパロウ隊は全機発艦完了後、即座に"アンノウンⅡ"の追撃に入らせろ!!」

 

「了!!」

 

 別の要員を掴まえ、"アンノウンⅡ"の詳細を求めた。

 

「"あさひ"、"たかなみ"から"アンノウンⅡ"の情報は上がってきているか! かの存在の外見、体長、能力、その他の要素で分かっているものだけでいい!!」

 

「っは!!――二隻からの報告では、目視にて確認した"アンノウンⅡ"の外形は巨大なウミガメ若しくはリクガメであり、前脚からは飛翼、後ろ脚は…信じられない話ですが、それをジェット機構化し推進、高速飛行しているとのことです」

 

「…巨大なカメ、だと?」

 

 あまりに突飛な情報の数々に新波艦長が一瞬硬直した。

 

「はい。カメです」

 

 連絡要員は淡々と答えた。

 

「………その巨大なカメが、翼を広げて現代の戦闘機よろしくジェット噴射で空を飛んでるというのか」

 

 鳥型__ギャオスはまだ分かる。鳥型と呼称されている通り、既知の鳥類と同じ飛行器官、飛行手段に準じていると理解できるからだ。

 しかし、既知の四足爬虫類__カメは種によって陸を這い、海を泳ぐが、空を飛ばない。

 

「その認識で間違いないかと…」

 

 連絡要員のクルーにも困惑の表情が滲み出ていた。自分の報告はこれで合ってるのだろうか…と言うような一抹の不安を持っているようだった。

 

 あまりに現実から剥離している…などとは言えなかった。相手は()()地球生物ではない。その枠組みの外側に在り、人類の常識が通じる例は皆無な存在…怪獣なのだから。

 

 新波君、と梅津群司令が艦長に声を掛けた。

 

「……どうやら、我々はまだ()()を『自分達の常識の範疇に収まるものである』とどこか勘違い…いや、そう纏めようとしていたようだ」

 

「はい…そのようです梅津司令…」

 

 人類は今後も自らの常識を無慈悲に幾度となく覆され、叩き潰されるだろう。

 人々は凝り固まった考え方を改めなければならなかった。

 

「……しかし、それもよかろう。反省は幾らでも後から出来るのだから。今出来ることを全力で遂行するのが我々の仕事だ」

 

 より良き今後に繋ぐため…今、できること、やるべきこと、やらねばならぬこと…喫緊のものはいくつもあった。

 新波艦長は感情を切り替える。

 

「――はい!!……黒森峰学園艦と護衛艦艇群は当海域から離脱させろ!!  "はるさめ"には"あしがら"のカバーをさせるんだ!アルバトロス隊の射撃確認に合わせて攻撃!民間機に退避勧告をしているシーホークを呼び戻せ!このままだとやられるぞ!!――その民間機の方はどうなっている!?」

 

「相変わらずこちらの呼びかけには応答しません。………__「おい、これ…」__なんだ、ん?……あっ!!」

 

 報告していたクルーが別のクルーからとある画面に映っている()()を横から見せられると突然大声を上げた。

 

「どうした?」

 

 何らかの…別個の問題が新たに発生したのか、と新波艦長が問う。

 

「そ、それが!」

 

 焦った様子のクルーは次の言葉を繋げられずにいた。

 

「か、艦長、司令!見てください!! 例の民間機が、姫神島の生中継を開始しています!!」

 

 その報告と同時にCICの中央大型モニターに、笑顔テレビの現地中継映像を流している動画サイトの画面が映された。

 

「な! ついにやりやがった!!」

「トッキョーと水機団の戦闘を映しているのか?」

「しかし、対空レーダーで探知した数よりも動画に映っている鳥型の数が多くはないか…?二倍はいるように見える」

「あれがギャオスか。想像よりもデカい…!!あんなのが人を食うのか」

「あんなとこ飛んでたら死ぬぞ!」

 

 モニターを見る"いぶき"クルー達は気が気では無かった。誰かが呟いたギャオスの()()()()()()()()()も気になりはしたが、この時は新波艦長、梅津群司令をはじめとした全員が、報道ヘリ乗員の人命の方に意識が大きく傾いていた。

 

 

 

 そんな折、アルバトロス隊の方で動きがあった。

 

『アルバトロスリーダーから"いぶき"へ。鳥型特殊生物が徹甲誘導弾の射程範囲内に入った。これより対象を撃滅する。』

 

『こちら"いぶき"管制。了解、やってくれ』

 

 アルバトロスリーダーは一度小さく呼吸を挟んでから意を決して口を開いた。

 

『――アルバトロスリーダーからアルバトロス全機。いいか? 奴らは歩兵火力で撃破可能なほど防御力は低い。しかし、先程"いぶき"が受け取った上陸部隊からの報告によれば、これまでの特殊生物らのような、光線発射器官を口部に備えているとのことだ。ナメてかかるなよ。全機、攻撃開始!!FOX2!FOX2!!』

 

『FOX2!』

 『FOX2!』

  『FOX2!』

 

 攻撃開始の号令を皮切りに、アルバトロス隊のF-35全8機はギャオスに対し新型誘導弾__フルメタルミサイルによる攻撃を開始した。

 銀の大杭が、白線を幾本も描いて飛翔する。

 

 

 

 そして―――

 

 

 

『だ、ダメだ! こちらスパロウ3!"アンノウンⅡ"に空対空誘導弾は効果無し!!』

『こっちのことなんざ気にもしてない!』

『くそっ!!姫神島に着いちまうぞ!!』

 

 ―――"アンノウンⅡ(ガメラ)"追撃の任を請け負った第902飛行隊__スパロウ隊F-35全8機は通常誘導弾による同目標の撃墜を狙っていた。

 が、ガメラに対しては今一つでしかなく、特殊生物特効とされる新型誘導弾…フルメタルミサイルを積まずに急遽スクランブルした彼らに、かの怪獣へ有効打を与えることは出来ておらず、こちらが追い付ける速度で相手が飛行しているのに、絶好の大的であるのに、と歯痒い思いをしていた。

 

『諦めるな。全機、機関砲で各部位を狙え。どんな生物も()()は弱い』

 

 焦りを募らせる同隊隊員らを、スパロウリーダーが鼓舞する。

 

『『『了!!』』』

 

 ガメラの姫神島到達まで、間もなくであった。

 

 

 

____

 

 

 

 姫神島上空

 

 

 

 ―――バタバタバタバタバタッ!!!

 

「見えていますか!?現在、姫神島の周りには鳥のような怪獣の群れが飛んでいます!!そして島民救助のためか、それとも鳥型怪獣の撃破のためか、自衛隊と思われる部隊が海岸で小型種との戦闘を続けています!ここからでもチカチカと射撃による光がハッキリと確認できます!!」

 

 戦闘領域と化した姫神島上空。笑顔テレビ報道ヘリは間近に映る戦闘を、美代による実況を加えて中継していた。

 彼女らの眼下、姫神島南部の砂丘海岸には、大小様々なギャオスに砲火を浴びせながら海上へと駆ける5輌の装軌装甲車があった。

 

 あの水陸両用車群は撤退の動きに移ったみたいだ、と美代が思っていると、飛行中だった複数のギャオスが突如銀に煌めく何かに穿たれほぼ同じタイミングで爆散した。

 新たな銀の飛槍がまた別のギャオスに突き刺さり、同様に爆ぜた。

 

「あっ!空中にいた何体かが爆発しました!さらにまた数匹!いったい何が……あ!自衛隊の戦闘機です!!さきほどのはミサイルによる攻撃だった模様です!!」

 

 直後、必中の空飛ぶ銀槍を放った主達が空よりやってきた。

 爆音を轟かせながら自衛隊のF-35戦闘機8機が姫神島上空をフライパスし、小さく旋回を挟むと素早く誘導弾を__ 戦闘機(乱入者)に驚いてホバリングし威嚇の咆哮を上げる無防備な状態だった__ギャオス数体に叩き込んだ。

 そして間髪入れず、機体中央下部に備える機関砲ポッドが火を噴きさらにギャオスを撃墜。正に獅子奮迅の大立ち回りと言えた。航空優勢は自衛隊側に傾きつつあった。

 

「やばいっすよ…茅原さん。この空域にいつまでもいたら…!」

 

「シーッ!今増子ちゃん頑張ってるから!」

 

 その時だった。上陸部隊車輌を囲っていた準中型のギャオス一匹が突然頭を上げたかと思えば、空へ飛翔した悠々と上空で傍観していた美代たちの乗る報道ヘリに狙いを定め迫ってきたのである。副操縦士が危惧した通りの最悪の展開だった。

 

「ああっ!!一匹こっちに来たあ!!!」

 

 それを目視で気づいた副操縦士が涙混じりで悲鳴を上げた。

 

 

 

『隊長!!一匹、ヘリの方に!!』

『くそっ!間に合わん!!!』

『レーダーに映らん個体がいるぞ!」

『アイツら、デカければデカいほどレーダーに反応しない!!それで当たらなかったんだ!!』

 

 アルバトロス隊のどのF-35も、報道ヘリに接近するギャオスを捌ける状態には無かった。

 

「ブレイク!ブレイク!!…ああ、ダメだ!間に合わない!!」

 

 ギャオスはヘリの側面に突っ込もうと首を突き出しながらさらに加速する。回避機動を今からしようにも間に合わない。

 

「うわああああ!!!!」

「きゃあっ!!」

「最後まで俺は撮るからなっ!!」

 

 絶対絶命。運命は決められていたかに思えた。

 空飛ぶおぞましい化け物…ギャオスが口をガパっと開けてサメを思わせる何十にも生え揃った鋭利な歯を見せて突っ込んでくる。

 

ギャオオオーー!グェッ……!

 

 されども…それは横から突出してきた火の玉…いや、火の玉と言うには些か巨大過ぎる火球に阻まれた。

 その轟々と真っ赤に燃え盛る巨大な球状の炎塊___"プラズマ火球"は、翼長凡そ50mはくだらない準中型ギャオスに()()したかと思えば、瞬く間にそれを飲み込み、空の彼方へ連れ去った。

 

「あっつ!?な、なんだ!?」

「……助かったのか?」

「自衛隊……?」

 

「いえ、違う。火の玉が飛んできて……今のは…」

 

 笑顔テレビ報道班の面々は、眼前で起こったギャオスの()()という差し迫っていた危機の消滅に目を丸くすることしかできなかった。

 彼らはギャオスを消し飛ばした火球が飛んできた方向を本能的に見た。

 刹那、ヘリのすぐ真横を黒く無骨な巨影が、アクアマリンの閃光と、ジェットエンジンと聞き違える重音と共に通り過ぎていった。

 

「うっ――もしかしてあれが、助けてくれたのか?俺たちを?」

「新しい怪獣じゃないか……!」

「鳥型を一発のファイアボールで堕としちまった」

「何がなんなんすか!?」

 

「でも不思議……あれは、敵じゃない…」

 

 美代達の窮地を救ったのはスパロウ隊の追撃を振り切ってやってきた守護獣___ガメラである。

 ガメラは、ヘリに襲いかかっていた個体を滅殺すると、姫神島南部漁港区域に瓦礫を盛大に巻き上げながら後ろ脚を出して着地。海岸を飛び回るギャオスの群れを睨むと、空に向かって自身の存在を誇示するかのような大咆哮を上げた。

 

ガァアアアアアーーーーー!!!

 

 あまりの音量に、大気がビリビリと振動し、生物の鼓膜を等しく揺さぶる。

 F-35とのドッグファイトをしていた___群れの個体数は著しく減少している___ギャオスらは、ガメラの雄叫びを耳にした途端、ピタリと戦闘機への攻撃を中止してガメラに襲いかかった。

 まるで、本能がそうさせているかのようである。あれは何が何でも殺さねばならぬ、と思っているようにも感じられた。

 

――キュオオオオオーン!!

 

 しかしギャオスの群れ残党の統率者、或いは君臨者と目される、大型に準ずるサイズの個体計四体は、その巨躯に見合わぬ動きを取った。

 他の同胞達がガメラに一目散に突撃する中で、なんと、自らの身を海原に()()()()()のである。

 それらは高速で海面に突入しその後浮上は確認されなかった。ガメラとの力量差を悟り、自死を選んだのだろうか。()()()()まだ分からなかった。

 

 そんな思索を巡らせている間に、残存ギャオス群とガメラの正面戦闘が勃発した。

 

 その様子を報道班のカメラは未だノンストップで映していた。混乱から立ち直った美代達は危険を顧みずさらに報道を続ける。

 

「――先程、我々報道班ヘリに襲いかかってきた鳥型怪獣を、それらより更に巨大な怪獣…カメ型怪獣が火炎攻撃で撃破しました!!我々を守るかのような行動取ったカメ型怪獣……これは偶然なのでしょうか!怪獣同士の――」

 

 

____

 

 

 

同国関東地方 茨城県東茨城郡 大洗町

茨城港 学園艦停泊地

学園艦 県立大洗女子学園 学生寮

 

 

 

『―――激しい戦闘が続いています!!』

 

 

 西住みほも姫神島生中継映像をテレビで見ている人間の一人であった。

 本日、大洗女子学園は中等部高等部共に午後授業である。そのため彼女は、今日は朝イチより自室でテレビを…ピイ助をリビング中央に置いてある丸テーブルの上に乗せて共に見漁っていたのである。

 

 みほは、画面に映るガメラと目の前のピイ助を何度も見比べる。

 

「あの怪獣って………どうみても、大きなカメ…だよね? もしかして、ピイ助のお母さんとか、お父さんだったりするのかな?――――ピイ助?」

 

 謎の動力で空を飛び、炎を吐いてギャオスの群れと対峙する二足歩行のカメ型巨大怪獣__ガメラが、ピイ助と似ていると、みほがピイ助をガメラの雛…幼生体、或いは近縁種なのではないかと考えられるぐらいには、共通点は揃っていた。

 もしも、仮にそうであるならば今まで小さな同居人が披露してきた不思議な能力についても大方の説明がつく。

 

 彼女がピイ助に問い掛けても向こうは返事の鳴き声を上げなかった。

 珍しい。今までこんなことは無かった。こちらが声を掛ければ健気に返事をしてくれたのに、とみほは思った。

 

 ピイ助は飼い主そっちのけで、テレビの中のガメラをジッと見つめ続けている。

 

 …この様子を見るに、ガメラは親、もしくは兄弟、同胞と言ったそれらに近い存在だから、ピイ助は気になって目が離せないのだろうか?

 はたまた、室内犬や家猫のように、自分と似た姿をした存在が画面に映っているから興味を示しているだけなのだろうか?

 それはみほには分からない。

 しかしその時、自身の首に掛けていた__以前ピイ助と共に拾った__陰陽玉状の、琥珀の勾玉がいつの間にか鼓動の如くオレンジに点滅し、熱まで帯びていることにみほは気づいた。

 驚きつつも彼女はそれを両の手で優しく握って胸元に寄せてみる。

 

「………あったかい。優しい光……」

 

 すると、じんわりと、暖かい何かが体の中心から隅々にまで広がっていく心地良い感覚を覚える。

 不快では無かった。寧ろ、苦もなく受け入れられる尊いもの…今では忘れてしまった大切なモノを呼び起こしてくれるような、懐かしいモノだった。

 

 目を閉じ、勾玉の鼓動に意識を向けていたみほは気づいていなかった。

 小さな同居人…小亀のピイ助の、その身体が勾玉と同様に―――

 

「………」

 

―――仄かに紅い輝きを放っていることに。

 

 

 





 あと
 がき

【2023年版編集】

 第10夜まで読んでいただき、ありがとうございます。この後書き編集時点で例のしんさくの3週目に突入した投稿者の逃げるレッドです。
 なんでごすが死ななあかんのや…あと大豊娘娘ってなんなんだよ!?…逸見エリカ大豊娘娘コスプレ概念が自分の中で沸々と沸いてきてしまった…!!おのれ解放戦線、そしてディケイドぉ!!

 こっちの世界のギャオスは適応能力高めの魔改造仕様となります。
 笑顔テレビのカメラマンのモデルは『クロムクロ』の茅原君で、トッキョーのモデルは漫画版『亜人』の対亜特戦群です。
 
 黒森峰のモブ子ちゃん数名はネームドに昇格させています。これからはあんな子やそんな子も出るかも…
 投稿者は外伝、スピンオフ漫画はほぼ読んでおりますので、原作本編外のキャラも登場させていきます。独自設定、独自解釈はどんどん増えていくのだ…。ちなみに、本作のキャラデザイメージはスピンオフの一つ、【アバンティ!アンツィオ高校】が一番近いのかな〜と思っております。
 ※2023/10/20追記:最終章4話で全員でないにせよ、皆んなに名前付いたぁああああ!!!!! 本作ではマウ子ちゃんとゲシ子ちゃんだけはそのまま固定でいきます。

 ハジメ君の好きな花(本人は名称も花言葉も知らない)は、胡蝶蘭です。
 幼少期のある日、エリカさんを連れ回してる時に見つけたものが印象に残ってる感じです。

 次回も、お楽しみに。

_____

 次回
 予告

 地球守護獣ガメラが覚醒。現代の全地球生命の未来を守るため、長い眠りを経て立ち上がった。
 しかし、自衛隊はその戦闘能力や巨体といった脅威度から、ガメラを最優先攻撃目標に制定。ギャオスの軍団と対峙するガメラに自衛隊の攻撃が加わり、ガメラは徐々に追い詰められていく………

 ウルトラマンとして、そして地球に生きる一人の人間として、ハジメの下す決断は!?

 次回!ウルトラマンナハト、
【災影拡散】!


サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)

  • 紗希のトモダチ
  • ミチビキさん サンダース編
  • ミライVSマホ カレー対決
  • ハジメ、迷い家にて
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