旧:逸見エリカのヒーロー   作:逃げるレッド五号 5式

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奇獣 ガンQ [エラーコード No.02]、
群奇獣 ガンQベビー、登場。


第14夜 【嗤う瞳】

「うぅ………ああ………」

 

 

マジノ女学院の生徒であり戦車道チームの隊長、エクレールは悪夢を見ていた。ここ最近、同じ内容の夢を見るのだ。どの夢でも、赤黒く禍々しい空間で自身の周りに無数の目が存在し、それらはエクレールを嘲笑っているような視線を投げ掛けてくる。そしてエクレールへの罵倒、失望など、負の感情からくる言葉をぶつけてくるというものだ。

 

『マジノの伝統を汚した醜い人…』

 

『隊長の座を奪って、今度は何をめちゃくちゃにするのかしら?』

 

『クスクス…本当に信頼されてると思ってるの?カリスマ性も無いのに…かわいそう…クスクス』

 

 

《違う!私は、マジノの為に!》

 

 

しかしエクレールの言葉にそれらは耳を貸さず、言葉を遮ってさらに責め立てる。

 

『口ではなんとでも言えますわ』

 

『マドレーヌ様の後釜が務まると思っていたの?そんなの、出来るわけないじゃない』

 

『貴女、西住流に憧れていたんですってね。…憧れとは程遠い醜態ですこと』

 

 

《私は…私は………!》

 

目玉たちへまともに言い返せず、言葉に詰まっているとエクレールは背後に気配を感じ、振り向く。するとそこには戦車道で自分の補佐をしている副隊長のフォンデュが立っていた。

 

《フォンデュ!?…なぜここに?》

 

『エクレール様………』

 

しかし細かくヒビの入っている眼鏡越しの彼女の目には光がなく虚ろであり、焦点が定まっておらず、身体がふらつく度に茶のポニーテールが揺れる。

 

『あなたは…あなたは最低の隊長です…』ギギギ…

 

《フォンデュ、どうして……痛っ!》

 

突然、フォンデュはエクレールの肩を強く掴んだ。爪が食い込むほどの力であったのか、エクレールの白いシャツの両肩を赤く染める。フォンデュの光の無い底無しの瞳がエクレールを捉える。顔を背けようとしても恐怖で釘付けにされ、思うように動けない。

 

『勝ちを狙いに行く戦術…?馬鹿じゃないですか?準備も、把握も何も出来ていない状況で見切り発車して…本当に、私たちを、マジノを考えてくださってたんですか?』

 

《そんなの、当たり前ですわ!!》

 

それを聞いたフォンデュは不敵な笑みを浮かべると、エクレールから一歩退き、不定形のドロドロとした黒い粘液の塊になる。それは蠢き始めると徐々に人型に近づき、形はいつも自分に冷ややかな態度を取っているチームメイト、ガレットの体を形作った。

 

《ガレット…貴女まで……!》

 

『無様……ですね』

 

《なっ……!?》

 

『貴女のすること成すこと全てが無様だと言ってるんです。実戦実戦とボヤいてはいますが、最も基本的な反復練習をまともに出来ていないマジノを見て、マジノを考えているなんてそんな戯言、言えるんですね』

 

そこから間髪入れず、ガレットは黒い粘液に変化し、今度はエクレールの先輩であり憧れでもあった、マジノ女学園戦車道元隊長、マドレーヌの姿となる。

 

《マドレーヌ様!》

 

『………貴女には、失望しましたわ。エクレール』

 

《え……》

 

『マジノに変革をもたらすと、勝利をもたらすと言い、そして見事私を打ち負かした。しかし、その後の蓋を開けてみれば、貴女の言っていたマジノの姿など、どこにも無いじゃない』

 

《マドレーヌ様!私たちは、まだ完璧ではありません!いまはその姿形が無い…ですがこれから作っていくのです!》

 

『…貴女を認め、その胸に着けた"隊長の証"を与えたあの時の私を引っ叩いてやりたいわ。……見込み違いでした。さあ、その証を剥がして私に返して頂戴』

 

《私は、私たちは必ずマジノの栄光を勝ち取ってみせます!だから、これだけはダメですわ!!貴女に、がんばりなさいと言われたのだから!!》

 

『返す気が無いならば、力尽くでやらせてもらうわ。貴女に伝統を任せるのは早すぎました』

 

《や、やめて、やめてください!!》ドンッ!

 

エクレールは自分の襟首に掴みかかり、無理矢理ジャケットからスペード・ブルを剥がそうとしてきているマドレーヌに抵抗する。その際、勢い余ってエクレールはマドレーヌを突き飛ばしてしまう。

 

《マドレーヌ様!》

 

『……………愚かな人間メ

 

《!?》

 

マドレーヌが発しているであろう声はくぐもっており、女性とは思えないほどおぞましい声だった。そしてこの赤黒い空間に存在する全ての目玉が彼女を捉えて黒目のみを弓の弦のように曲げ、耳障りな笑い声を上げる。

 

キュキュキュキュキュ!

 

ボォオッボォオッボォオ!!

 

奇怪な笑い声を上げた後は、耳に入ってくる声は自分の同級生や先輩後輩のものではなくなり、全て老人のようなしわがれた声に変化していた。

 

『恐れよ…恐れよ人間』

 

『恨みとは恐ろしいものだぞ?』

 

『憎しみをぶつけられ、貴様は耐えられるのか?』

 

《いや、いやぁ…もう、やめて…》

 

『貴様の心は、弱い』

 

俯いていたマドレーヌがエクレールの方へと顔を上げる。しかしその顔は、顔とは言えないものであった。顔一面が全て無数の眼に覆われている。有り得ないことではあるが、それら一つひとつが笑い出し、ゆっくり一歩ずつエクレールへと歩み寄ってくる。それを見ているエクレールは後ずさる。その間も空間には声が響き渡る。

 

『恐ろしいか?解らぬか?ならば、我々と融合せよ。それこそ、貴様に残された最後の道…』

 

『認めたくない事柄があるのならば、盲目となれ。融合せよ。』

 

『絶望から逃れたいか?死にたくはないだろう。ならば、融合せよ。』

 

 『我々と。融合せよ。』

 

  『我々の力となれ。融合せよ。』

 

   『我々は受け入れる。融合せよ。』

 

 

《やめて!!私はそんなこと、したくはありませんわ!!!》

 

エクレールは周りを見ると、手を生やした巨大な目玉たちが自分を取り囲んでいることに気づく。それらは、徐々にエクレールとの距離を詰めていき、無数の手が彼女に掴みかかる。

 

『『『融合せよ。さあ、さあ、さあ!!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はっ!!……………また、悪夢を見ていたのですね……」

 

無数の手によって視界を閉ざされたと思った瞬間に、エクレールは夢から醒め、視界が朝日によって眩しく照らされる。かなりうなされていたようで、自身の着ている寝巻きは汗で濡れ、それはひどく冷たく、重い。枕も多量の汗を含んでいた。生理的に嫌なしっとりとした触感がする。

ベッドから起き上がり、エクレールは部屋の隅から隅まで見渡し、ここが現実であることを改めて認識すると、安堵する。それも束の間、すぐにカレンダーと目覚まし時計を交互に見て、あることに気づく。

 

「いけない…今日は黒森峰との練習試合……急いで着替えなければ……」

 

 

 

コンコンッ!

 

「!!」

 

ベッドから起きてクローゼットを開け、制服を取り出していると、今エクレールのいる寝室の扉がノックされた。悪夢の影響もあり、恐る恐るエクレールはそれに応える。

 

「……誰?」

 

するとドアノブが回転し、扉が開く。

 

ガチャッ

 

「おはようございます、エクレール様。フォンデュです。あ、すいません…起床されたところでしたか」

 

現れたのは副隊長のフォンデュであった。夢に出た時のようにボロボロに変わり果てた姿ではなく、健康体であり爽やかな笑顔をエクレールに見せ、一礼し挨拶をしてきた。

 

「ええ、おはようフォンデュ…」

 

「…もしかして、また悪夢を見たのですか?」

 

フォンデュはエクレールの様子に気づき、心配しているようだ。それに対してエクレールは感謝しつつ、今日の試合には支障は無いと伝える。

 

「ええ、かなり苦しかった。でも安心して。今日はあの黒森峰との試合があるんですもの。向こうがこちらとの試合を希望してくれたのだから、それに見合った態度で臨まなくては失礼ですわ。それに、胃が痛くなることには段々と慣れましたから」

 

「普通は胃痛に慣れるといったことは無いはずです…もっとお身体を大事にしてください。エクレール様が倒れでもしたら、私は……」

 

「気遣いありがとう。大丈夫ですわ。私にはこの胃薬と頼りになる貴女方がついているもの。今日は、頑張りましょう。……フォンデュ、貴女が来たという事は、試合関連の話?」

 

「はい、エクレール様と各車長それぞれの意見を取り入れ、作戦としてまとまった物の最終確認が出来たのでその報告を…」

 

「着替えて食事を摂ったらすぐに詳細を聞きますわ」

 

「分かりました!」

 

 

フォンデュが部屋から出て行き、ドアが閉まったのを確認すると、エクレールはタオルで身体を拭きつつ、制服に着替えながら最近見ている悪夢について考えるのだった。

 

(あの悪夢を見るようになってから、人の視線や陰口がさらに気になるようになってきた……これは胃薬と精神剤を手放せないほど私の心と身体が弱いから?分からない…でも、怖気付いてしまっては栄光あるマジノの名が泣く。ここで挫けてたまるものですか!)

 

 

 

『……………』

 

しかし、エクレールは気づいていなかった。自分のことを、部屋のあらゆる影の暗闇から目玉が見つめていたことに。それらが静かにほくそ笑んでいたことに。

 

 

 

____

 

山梨県 新国道52号線 南アルプス市

 

 

山梨県のマジノ女学院との練習試合のため、富士川沿いの新国道52号線を通って黒森峰学園、戦車道チームは機甲科の選手はバスで、整備科は戦車運搬トレーラーに乗って向かっていた。そしてトレーラー群の先頭、ハジメの運転するトレーラーの助手席には、ヒカルや田中ではなく、何故か機甲科であるはずのエリカが乗っていた。

 

「………………」

 

「………………」

 

「………………」

 

「…………っ! なんか喋りなさいよ!!」

 

「は!?え!?これ怒られるのか!?理不尽だろ!」

 

 

何故エリカが整備科であるハジメのトレーラーに同乗しているか…それは佐世保の出来事が原因だと言えば、分かるかもしれない。エリカはハジメの見張りとして、本来共に乗っているはずのヒカルに無理を言って通してもらったのだ。ちなみに、幸か不幸か他のトレーラーの席が空いてなかったヒカルは、エリカが乗る2、3年生機甲科女子オンリーの一号車の席に座る事になったとか。隣が小梅なのでいくらか緊張は和らいだらしい。

 

『くっそーー!!男子がいねえ!!!!』

 

『まあまあ…ナギさんも、トランプやりませんか?』

 

『え?ア、ハイッ。やるっす』

 

『三年生の西住隊長たちと』

 

『駒凪君もやるのか、よろしくな』

 

『ふっふっふっ!後輩だからって手加減はしないぞ駒凪イ!!』

 

『エリカがいない分お前に絡んでやる!嬉しいだろ!?』

 

『坊主頭を触らせろぉ〜』ワシャワシャ

 

『』

 

いつもの男子メンバーがおらず、三年生の先輩と同級生の女子に囲まれ絡まれでメンタルと理性を保てたとか保てなかったとか………。

 

 

 

「なんだよ、ナギでも問題無いだろ?」

 

「何言ってんのよ。アンタら、目を離したらすぐに共謀して何かやらかすでしょ?止めるヤツがいなくなるじゃない」

 

「共謀って…さすがにそれは」

 

「アンタにはもう前科がたんまりとあるの。だから私が見張る、やらかさなければ説教も何もしないわ」

 

「へーい…」

 

イルマとの入れ替わりがあったとはいえ、変身時の動きを怪しまれていたことを理解していたハジメは、事情を言えないため気持ちが晴れず、ハンドルに顎をつけ適当に返事をする。そして今度はハジメが気に掛けていたことをエリカに聞く。

 

「………そんなことよりも、エリさんはもう大丈夫なの?」

 

「え?…ああ、病院の検査でも異常はどこにも無かったし、私自身もあの出来事は処理できたから、なんともないわ。心配しなくてもいい。小梅も同じだと思うわ」

 

「そっか。……何かあったら言ってな?相談に乗るからさ」

 

「私は自分のことよりも、無茶するアンタのことが心配なのよ!!」

 

「うっ…すまん……」

 

エリカは顔を窓の方へと向け、ドアに頬杖をつき、面と向かって言うのが恥ずかしいのか、ハジメの顔を見ずにだが感謝を伝える。ハジメの方からは顔は見えない。だが、何となく想像は出来る。

 

「…………でも、あの時、助けに来てくれたのは…嬉しかった………ありがと…」

 

「……おう!」

 

丁度ハジメたちの車両群が通った道路上の青色の案内標識には、南アルプス市の演習場まで残りわずかであることを示していた。

 

「…ん。もうすぐで着くわね。んー!首と肩がこってるわ〜」

 

「肩の方は座りっぱなしだけが原因じゃな…………」

 

話を続けようとしていたハジメの視界の隅に、一瞬だけ見覚えのある者の姿が映った。しかし、それは道路脇にいたため、ハジメの運転するトレーラーはすぐにそこを通り過ぎ、それは後ろの風景の一部となって消えていった。

 

「なによ。途中で黙って…ほら、いつまでもよそ見しない!前を見る!」

 

「あ、ああ…分かってるよ」

 

「………なんかいたの?」

 

「山道横に黒紫のコート?ローブ…を羽織った人がいたようだったから…少しね…」

 

「特別な宗派のお坊さんなんじゃない?私もチラッと見えたけれど、そんなに怪しかった?」

 

「……いや、少しばっかし気になっただけだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

黒森峰の校章をペイントしてある車両が通り過ぎていくのを見ていた者の正体は、地球に怪獣を呼び寄せる謎の存在、影法師であった。それは口元に薄ら笑いを浮かべる。

 

「フフフフ……此度は必ず、ウルトラマン、お前を抹殺する……!奇獣よ…目覚めるのだ!!人類へ絶望を振りまけ!!」

 

 

_____

 

東アジア 朝鮮民主主義人民共和国

黄海北道平山群

第2軍団朝鮮人民軍陸軍基地 司令部

 

 

朝鮮戦争の休戦条約締結からはや十数年、未だに大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国との間に講和条約は結ばれておらず、両国は現在も休戦中であり、予断を許さない状態であるのことには変わりない。

 

 

「平壌特別区の状況は?」

 

「はっ!日帝、米帝にも劣らない、人民軍の誇る世界最高峰のレーダー群により、24時間平壌の空を監視しており、万全の用意がありますッ!!」

 

「そうか。その調子で頼むぞ。……我々がやられれば、将軍閣下も、我々の愛する家族が殺される…肝に銘じておけ!」

 

「はっ!!」

 

そのため、人民軍は比較的国境から離れている首都、平壌ではどの地区よりも年中日夜問わず、陸海空からやってくるであろう侵入者の有無を厳しく監視しているのだ。最近は、特殊生物_怪獣や、宇宙人の地球襲来を受け、人民の指導者であり、全人民軍を統括する金星義最高書記長の命により、さらに警戒体制を強化したところである。

 

 

「………煬上将」

 

「どうした?」

 

「平壌戦略ミサイル軍基地からの定時連絡が来ていません。連絡を怠るといったことは、崇高なる人民軍がするわけが無いはずですが…現に来ていないのです」

 

基地司令と軍団長を担当している煬上将は、報告を聞き眉を潜め、何かの間違いではないかと確認する。

 

「なに?戦略ミサイル軍が?機器の故障ではないのだな?」

 

「はっ!通信機器は正常に稼働していることを先程確認致しました!こちらに不備はありません!」

 

「ふむ………一体なにが…クーデターなぞありえない。テロとしても我が人民軍の基地を落とせるほどの戦力を保有する武装組織も国内には存在しない…」

 

「現在、連絡兵を出し、確認を行なっています」

 

「…了解した。報告が届き次第、最優先事項として私に伝えろ。平壌の第104戦車師団、特殊歩兵旅団に臨戦態勢を取るよう通達。基地の第3歩兵師団の派遣準備をしておけ。これは、なにか巨大なモノが来るぞ」

 

 

 

 

そこからおよそ10分後………

 

 

平壌特別区郊外 戦略ミサイル軍基地

 

第2軍団陸軍基地より発した連絡要員が、ミサイル軍基地に到着すると、驚くべきことに、そこには精強な人民軍の姿はどこにも見当たらなかった。首都防衛と敵国への先制攻撃を任とするミサイル軍の基地は、地面のあちこちが抉れ、クレーターを形成し、建造物も数年経ったかのように荒廃しており、さらには上半身が無い、若しくは首が消えているといった人民軍兵士の死体が転がっていた。

 

「こ、こちら連絡班!ミサイル軍施設が………壊滅しています!!基地には生存者が殆どいません!!」

 

『どういうことだ!特殊旅団の一部が警備にあたっていた筈だぞ!彼らとも連絡が取れないのか!?』

 

「はい…特殊旅団の隊員の死体が、多数見つかっています。至る所に薬莢が転がっており、何者かに急襲されたものかと思われます。サイロ区画を確認した者によると、地下施設まで到達するほどのクレーターができており、跡形も無くなっていたとのことです」

 

『昼間の定時連絡の間であるたったの数十分で救援を送る事もできずに壊滅?………韓国や米帝の特殊部隊でもそれは不可能だ…いや、その前にこれは、人間が出来るものか?』

 

「また、生存者に対しての聞き取りによれば、空に浮かぶ巨大な目玉が突如現れ、何もかも取り込んで消えたと…中国軍が上海で交戦した特殊生物と酷似していた模様です」

 

『了解した。襲撃した存在の再出現に注意し、生存者捜索を続行せよ。そちらに一個歩兵師団を増援として送っている』

 

それを聞いて安心した通信士は煬上将に了解の旨を伝えようとしたその時、背後から仲間の悲鳴が上がった。驚いた通信士は、すぐに振り向き何があったのか聞こうとする。無線越しの煬上将も何があった、状況を報告しろと言ってきた。

 

「め、目玉のバケモノだ!」

 

『何!?詳細に報告しろ!!』

 

彼らの前には、単眼を有したスライム型の小型特殊生物、『ガンQベビー』が群を成して現れていた。恐怖から動けない生存者であるミサイル軍の人間たちに奇声を上げながら擦り寄ってくる。

 

「撃て!撃てえ!!生存者を守るんだ!!」

 

ガガガガガガガ!

 

連絡兵たちは、携行していた"98式小銃"を構え、引き金を引く。銃口から飛び出した弾丸は正確にベビーたちを捉えていた。しかし、ベビーらは血飛沫を上げて倒れるといったこともなく、寧ろ弾丸を浴びて生き生きとしていた。小銃弾を吸収し、自らの糧としたのだ。

 

『連絡班、何と交戦している!?先程の報告にあった巨大生物か!?』

 

目の前の敵への対処に必死であるがために、煬上将の問いかけに誰も答えることが出来ず、返事の代わりに銃声と悲鳴のみが返っていくのみである。

 

「来るなぁ!!あっちにいけ!!」

 

ガガガガガガッ!

 

「こいつら、地面の割れ目から無尽蔵に湧いてきてるぞ!!」

 

「た、助けてくれ…死にたくない!手を貸してくれ!」

 

「今助ける!」

 

「あっ!」

 

その瞬間、連絡兵たちは恐怖と驚愕によって顔が歪んだ。逃げおくれていたミサイル軍の生存者の一人が複数のベビーに取りつかれ、じわじわと吸収されたのだ。

 

「うわああ!!人間を食ったぞ!!!!」

 

「銃が効かない!どうすればいい!?誰か教えてくれ!!」

 

「手榴弾!!」ブンッ!

 

ブチュッ!

 

爆発音でもなく、手榴弾が地面に接触した金属音でもない生々しくグロテスクな音が響く。ベビーの一体に見事に手榴弾は命中し、地面に転がるはずだと誰もが思った……がしかし、銃弾だけでなく爆発物である手榴弾も炸裂せずに取り込まれた。これにより、連絡兵たちは自分らの現有装備では太刀打ちできないことを理解するのだが、それは遅かった。

 

「囲まれた……!」

 

「嫌だあーー!!死にたくない!!」

 

「ああ……母さん!」

 

輸送トラックまでの退路を塞がれたのだ。さらには、彼らが乗ってきた輸送トラックとその乗員らもベビーに取りつかれ、使い物にならなくなりつつあった。ベビーたちは目で笑いながら、嘲笑う。

 

「「「キュッキュッキュッ!」」」

 

 

「何がおかしい化け物め!」

 

「くそっ!死ねっ!死ねえええええ!!」

 

ガガガガガガガ! ガガガガガッ!

 

「なんだ、なんなんだコイツら…なんで銃が効かないんだよ!!」

 

「ちくしょう…ちくしょう!!」

 

「うわあああああああああああー!!!!」

 

 

 

 

『おい!どうなった!!応答しろ!!……くそっ、歩兵部隊をミサイル基地付近に展開、包囲させろ!全ての部隊に出動命令!!平壌防御司令部に緊急連絡をしろ!万が一に備えて将軍…共和国元帥を内閣庁舎の地下司令室に退避させるんだ!!』

 

 

連絡兵から投げ出された無線機からは、煬上将の必死の呼びかけが聞こえてくるが、それを聞く人間は一人も残ってはいなかった。そして、ミサイル軍基地の上空にはいつ間にか巨大な眼球状の存在、ガンQが浮遊していた。それをレーダーにて確認した人民陸軍高射部隊及び、人民空軍も動き出したのだった。

 

 

空に浮かぶガンQは、静かに日本列島のある方角を見ていた。

 

《……マッサツ……ウルトラマンナハト………マッサツ…》

 

その後、ガンQ出現により共和国は平壌付近に陸海空軍を集結させ、これに応戦。結果は敗北。通常兵器による攻撃は全くと言っていいほど通用せず、投入戦力の7割が消失し、平壌特別区域内への侵入を許し、市民や在朝外国人から多数の犠牲者を出すこととなる。そして地下司令部に退避していた共和国最高書記長、金星義や最高幹部らの消息も不明となり、指揮系統が崩壊。人民軍は組織的な行動を取ることが不可能となる。これはすぐに世界に拡散され、世界各国は約2週間前に上海に出現した怪獣の再来を認知した。

 

平壌襲撃後、ガンQは共和国と韓国の軍事境界線上空を飛行中、人民空軍の精鋭である"MiG-29 ファルクラム"16機からなる航空隊と交戦し、これを難なく撃破。両国の対空砲火を物ともせず、そのまま大韓民国に侵入した。

 

_____

 

 

 

場面は日本国山梨県にいるハジメたちに戻る。ハジメたちは無事、試合会場である南アルプス市の演習場に到着し、試合のために戦車の整備と調整を行なっていた。

 

「うう……香水臭え……」

 

「あ"?女子だけのバスに乗ったとか凄まじく羨ましいんだが?」

 

「小梅ちゃんの隣に座ったんだよね、ナギさん……許さないぞぉ!」

 

「あの…ナギ、まほさんはどんなカードゲーム好きそうだった?」

 

「やめろお前ら!離れろぉ!気持ち悪いぞお前らホモなのか!?」

 

 

「なにやってんだ…アイツら……」

 

各自の戦車の最終確認が終わり始めてきたのか、ヒカルに対しての移動中の恨みを晴らさんと整備科メンバーがハイエナの如く群がっている。そんな光景を遠巻きから見ていたハジメは若干引いていた。

 

「…なにやってんのよ、あのバカコンビと取り巻きの男子どもは……」

 

「あ、エリさん。ミーティング終わったんだ」

 

「ええ、今向こうの隊長と副隊長が挨拶に来るらしいから、西住隊長と一緒にこっちに来たのよ」

 

エリカも男衆に対して、ハジメと似たような感想を呟きながら現れる。それに続いてまほも会話に加わる。

 

「マジノでは隊内でのいざこざがあったらしくてな、隊長が代わったらしいんだ。だから私もその隊長と顔を合わせるのは初めてということになる」

 

「向こうはお嬢様学校ですけど、西住隊長は礼儀作法とかはやっぱり受けてるんですか?」

 

「む、私も西住流の女だ。作法ぐらいは、できる。………だが、それ以外に関してはちょっとな…私だって都会の人間ではないからな…」

 

「…向こうのチーム、マジノでは従来の防御戦術から機動戦術への転換、大きな改革があったのは間違いないわ。戦車道では伝統ある学校だから、何割かの生徒たちはそれを受け入れられなくて戦車道を辞めたみたいね…」

 

「やり方が変わったからってすぐにほっぽり出した奴もいるんだな。打ち込める物を簡単に捨てたら、そうすぐには同じもんは戻ってこないぞ」

 

「………しかし、改革を成し遂げたという点では、我々の先を行っている。…私が少しでも、あの時、何かを変えていたら……」

 

「隊長……」

 

ハジメは自身の発した言葉を後悔していた。あの決勝敗退と西住みほの失踪からはそう時間は経っていない。まほ、エリカに苦い記憶を掘り起こさせてしまったのことを悔やんだ。

 

「ははっ……いけないな。過去にはもう戻れない。いつまでも囚われていたら、前が見えなくなる。西住流は、何があろうとも前に進む流派だからな。そうだな?エリカ」

 

「はいっ!」

 

「それならば、私が皆の模範とならないと示しがつかない。今年の夏に全力を注がないと、二の舞になる。気を引き締めなけばな…」

 

そんなことを話していると、マジノ所属の小型トラックがこちらに向かってきていることに一同は気づく。当然、揉みくちゃの乱闘騒ぎにまで発展していた整備科も一旦、落ち着きを取り戻し、失礼のない態度を取ることに努めた。しかし彼らの目つきは穏やかではなかったことを付け加えておこう。

 

「あれが、マジノの新隊長…」

 

「幹部も一新したのね」

 

トラックが停車し、助手席からは長髪の女子生徒、運転席からはその彼女の後ろにつくように眼鏡を掛けたポニーテールの生徒が控える。マジノ戦車道チーム隊長のエクレールと副隊長のフォンデュだ。まほがエクレールに手を差し出し、握手を交わして互いに挨拶をする。

 

「黒森峰で隊長をやっている、西住まほだ。このような情勢の中で今日の練習試合、受けてくれた事に深く感謝する。ありがとう。今日はよろしく頼む」

 

「はい!こちらこそよろしくお願い致します!新隊長を任されたエクレールと申します。西住さんと相見えることが出来て光栄ですわ。今日の試合、全力で臨ませていただきますわ」

 

「ああ。こちらも、全力で行かせてもらおう」

 

隊長同士の挨拶が終わり、マジノの二人はトラックに乗って自分たちの待機場所へと戻っていく。整備科メンバーは心ここに在らずといった感じになってしまっていた。

 

「それでは、ごきげんよう」

 

 

「………かなりの別嬪さんだったなぁ」

 

「うちの女子にも負けないぐらいの清楚な子だったなぁ…」

 

「先輩方だって鼻の下伸ばしてるじゃないですかぁ」

 

「田中、お前らは何も分かってないな!いいかぁ?女子のポイントってのはだな…」

 

「……アンタら……あとでみんなにチクッとくからね、覚悟しときなさいよ」

 

「逸見さん!?いつの間に!!」

 

「すいません、どうか小梅ちゃんだけには内密に!! 出来心だったんですううう!」

 

「あ!汚ねえぞ須藤!死ぬ時はみんな仲良くだろうが!!」

 

 

 

「男の友情も儚いな……」

 

「ストームリーダーさん、キミもその男でしょーが」

 

ハジメの隣にはヒカルが立っていた。どうやら整備科の男どもの包囲網を抜け出してきたらしい。ふざけてはいるものの、ヒカルたちが担当していた戦車の整備は完了しているようだった。やるときはキッチリとやる。そんなところが、こいつらの良いところだ__とハジメは思う。

 

「ナギ、無事だったんだな…」

 

「ああ…………って、なんだこの茶番」

 

「とにかく、そろそろ試合が始まる。片付けるものは片付けて観戦できるよう会場に移動しよう」

 

「そうだな。俺から言っとく……やっぱハジメも一緒に頼む…」

 

「お前さっきどんなことされたんだよ…」

 

ハジメとヒカルの二人は、一人のスマホの画面を全員で固まって見ている整備科メンバーのもとに行き、移動の準備をするように伝えようとする。しかし、全員がスマホに映っているニュース画面を熱心に見ているようで、返事はバラバラだ。

 

「なんのニュースだ?」

 

「お、ナギ、ハジメと一緒に戻ってきたか。これ見てみろよ、朝鮮半島の38度線付近で上海で大暴れしたガンQが出たんだってよ」

 

「…それを詳しく見せてくれ」

 

怪獣絡みのニュースであることを知ったハジメはヒカルよりも食いついた。

 

「おう。あまり情報が出回らなかったらしくてな、実は1時間ぐらい前に北朝鮮の平壌が壊滅していたらしい。NATOがマークしていた精鋭のミグ航空隊もやられたって話だ。んで、今は38度線に形成した対空陣地と砲兵部隊で抑え込めてるらしい。ほら、画面のガンQが苦しそうにしてるだろ?」

 

そう言ってユウが持っているスマホの画面をハジメに向けて、韓国からの生中継の映像を見せる。たしかに画面の向こうでは、ガンQに対して、濃密な砲火が途切れることなく命中しその度にガンQが身を捩り、苦しげな声を上げている。

 

「韓国空軍の"F-15K(スラムイーグル)"の爆撃部隊も投入するとか韓国の国防省が発表してたな。最早ガンQの撃滅も時間の問題、韓国軍と在韓米軍による怪獣の完全な無力化を完遂するとか言って」

 

「ガンQが撃った火炎弾の流れ弾が数発ソウル方面に飛んでって、ソウル市街のマンションにいくつか命中して少しパニックになってるってよ」

 

しかし画面に映るガンQの姿……それは見る者が見たら、ただ戯れて遊んでいる子供のようにしか見えないものであった。まるで、今は本来の力を見せていないような姿にも見て取れた。

 

「なるほどな……(いざとなったら変身できるように準備しておこう)」

 

「ん?それで、なんでハジメたちはこっちに来たんだっけ?」

 

「戦車の点検終わってるのなら、西住隊長に一言伝えてから観戦会場に移動するぞって声掛けに来たんだけど」

 

「あー、そういうことね。ユウは了解した。…よーし!お前らぁ!準備できた奴から会場の席に座りに行けー!飲み物とかは予め売店で買っておくんだぞー!」

 

「「「はい!」」」

 

ユウが一年生に連絡を伝え、早く動くように促す。それを確認して、ハジメたちも観戦会場に移動するための準備に取り掛かったのだった。

 

 

そして試合が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

ドオオン! ズドン!

 

ズガァアン!

 

 

「くうっ!なんて激しい砲撃、隙が全くない!!」

 

『エクレール様!一度態勢を立て直すためにも、撤退を進言致します!!』

 

「そうですわね……一時後退の準備を…」

 

 

試合は黒森峰優勢で進み、マジノ女学院は黒森峰の機動戦術の前に圧倒されつつあった。しかし、彼女たちは劣勢である中でも一人たりとも諦めてはいなかった。それはエクレールの叱咤激励によるチームメイトらの士気上昇が生んだものであった。エクレールへ冷ややかな態度を取っていたガレットでさえも、それに心を動かされ、果敢に黒森峰へと奇襲攻撃を何度も仕掛けている。黒森峰という強敵を前にマジノ女学院は団結しつつあった。

 

『わたし、あなた(エクレール)が嫌いですわ! でも、わたしがあなたが目指す伝統を体現するものの一部であると言うのなら!!その期待に応えてみせますわ!!』

 

「ガレット……ええ、共に戦車道を、楽しんでいきましょう! っう!?ゲホッ!!」

 

「エクレール様!大丈夫ですか!!」

 

「……う、ふぅ……大丈夫ですわ。頭痛と腹痛が同時に来てしまっただけですから……みんなには言わないでください。ここで混乱させてしまったら勝機が消え失せてしまいます…」

 

「エクレール様……」

 

エクレールが突然車内で体調を崩させたのは、ただの腹痛と頭痛だけではなかった。意識ははっきりとしているのに、悪夢を見た時に聞いた老人の声がずっと頭の中に響いているのだ。

 

《まもなく融合の時が来る…受け入れよ》

 

《世は辛きことばかり…融合せよ》

 

「みんなが一つになろうとしている…楽しいことが増えようとしている時に…そんなこと、したくはありませんわ…!」

 

 

 

_____

 

北米 アメリカ合衆国バージニア州

ノーフォーク市街地

 

 

 

ズドォン! ズドォン! ズドォン!

 

 

ピギィイイイイイイイイ!!!!

 

 

「ここでヤツを抑えろ!!俺たちの後ろには、市民がいる!突破させるな!!」

 

「大隊長!ギガンテス、到着しました!!」

 

「よし!この気色悪いカイジュウを押し返せ!!」

 

「なお、陣地転換と足回りの関係でタイタンの到着が大幅に遅れています!」

 

朝鮮半島のガンQ出現に呼応するかのように、以前ノーフォーク海軍基地に侵入したペドレオンの残党が街中に出現。さらに、全ての個体が集合、合体し、55メートルの大型特殊生物サイズに。市民からの通報を受け、州警察並びに州軍が出動。現在は米陸軍の機甲戦力により、ノーフォーク市街地に押し留めることには成功してはいるものの、全個体の集合体であることを米政府などが把握しているわけがなく、別個体の出現を危惧した米軍により、戦力の分散が発生。ペドレオン撃破には今ひとつ火力が足りない状況であった。

 

 

「歩兵を下がらせろ!ヤツに喰われるぞ!! ああ!?何言ってやがる!装甲車も全部だ!! おい、なんで増援のアパッチが来ねえ?どうなってる!!」

 

「現在、基地に帰投して弾薬補給中とのことです!支援には今しばらく時間がかかります!!」

 

「時間がかかるって、どのくらいかかんだよ!詳細を言え! 押し返すどころの話じゃなくなってきたな……これじゃあ世界の警察の名が泣くぜぇ………っ!!全車後退!ブレスが来るぞ!!」

 

ペドレオンは米軍の事情など鑑みることなく、進撃を続ける。怪獣が人間の都合で動くわけがないのだ。足止めが関の山であるそんな状況に機甲部隊の隊長は歯噛みをしていた。

 

「タイタンも来ねえとなると、いよいよキツくなってきたな…既にM1が7輌も食われた……アパッチや空軍の航空攻撃はまだか!?」

 

「約6分…いや、5分で到着します!!」

 

「本当に5分で着くんだろうな!!こっちがくたばったら、ヤツの餌食になるのは市民だぞ!!」

 

しかしその時、ペドレオンの真上の空間に黒紫色の大穴、ワームホールが現れた。ペドレオンも空のワームホールの方に注意が行っているようで、米軍への攻撃を止めている。

 

「なんだ……これは………」

 

「歩兵部隊を戦車の後ろに隠れさせろ!!」

 

「ニホンに出現したワームホールとそっくりだ…まさか、別のモンスターが出てくるのか!!」

 

ペドレオンだけでなく、機甲部隊隊長や他の米軍兵士らも、動きを止めて空を見上げてしまっている。目の前で自分たちが戦っている怪獣よりも、恐ろしい存在が作り出した物であると思わせるには十分な光景であった。

そして突然、ワームホールが意思を持っているかのように、ペドレオン目掛けて降下し、抵抗させることなく呑み込み、ペドレオンを空間から消した。ワームホールはペドレオンを取り込むと、段々と小さく縮んで消えていき、空はシミ一つない元の青色に戻った。

 

「モンスターが消えた……」

 

「いや、倒したわけじゃねえ、ヤツの行方を追わせろ!アレがニホンに出たワームホールと同じなら、アメリカ本土のどこかにヤツが転移してても不思議じゃないぞ。司令部に通達しろ! 対象が突如、ワームホールと思われる事象に巻き込まれ消失。空間転移の可能性あり。全軍にこの情報を通達せよ、だ!」

 

 

____

 

 

日本国 山梨県

 

あれから1時間後、黒森峰学園とマジノ女学院の戦車道の試合はスムーズに進み、黒森峰の勝利で終わった。しかし、試合終了時にマジノ側にトラブルが起こっていたことが分かった。エクレールの体調が酷く悪化していたのだ。車内では目眩、吐き気、幻聴を訴えていたようで、降車後はそのまま嘔吐してしまった。

 

「…負けてしまいましたわね…うぅ……ゲホッゲホッ!」

 

「エクレール様!」

 

「だ、大丈夫…胃薬を飲めば治りますわ……」

 

そう言ってエクレールはジャケットのポケットから胃薬の錠剤が入った小瓶を手に取り、蓋を開けて薬を取り出したのだが、手が震えて口まで薬を持っていけないでいた。相当精神的にも体力的にも参ってしまっている状態であることは誰の目にも明らかだった。

 

「周囲の目やプレッシャーに、今更潰されかけるとは…ははっ、我ながら情け無い…ですわ」

 

「エクレール様、今は安静にしてください!」

 

「いけませんわ。まだ、試合後の挨拶も終えていませんもの」

 

背中を預けていた戦車から、ヨロヨロと立ち上がって黒森峰生徒と審判員が待っているであろう場所へと向かおうとするが、バランスを崩して倒れかける。それをフォンデュとガレットが支える。

 

「申し訳ありません…こんな弱い隊長で……」

 

「そんなことありません!あなたは先ほどまでわたしたちのために…!」

 

「ガレット、エクレール様を取り敢えず救護テントまで」

 

「……はい。エクレール様、今は安静にお願いします。そこのあなた!救護の方に連絡を取って!」

 

「わたくしがやります!」

 

エクレールを運ぶべくマジノ生徒たちが動いた時、さらにエクレールが苦しみだした。独り言を呟きながら何かに謝っているようだ。もしかしたら自分たちにだろうか?ガレットとフォンデュはそう思ったが、彼女が謝らなくてはいけないことはしていないと言うが本人には聞こえていない。そこに、いつまで経ってもマジノ側が来ないため、エリカとまほが様子を見に来た。

 

「そっちの隊長に何かあったの?」

 

「気分が優れないのか?」

 

「お見苦しい姿を見せてしまい申し訳ございません…」

 

エクレールが申し訳なさそうな顔をして頭を少し下げ、俯いてしまう。まほとエリカはどう声をかけたら良いのか分からず言葉に詰まる。マジノ女学院の生徒の一人が救護班に連絡を取っていた。がどうにも様子が変だった。

 

「あれ?……もしもし?…聞こえてますか?」

 

「どうしたの?」

 

「あの、無線機からはご老人の声が聞こえてくるんです…どこにも不具合は……」

 

「ちょっと貸してみなさい」

 

エリカは機械のことならばハジメから少しばかり教導を受けていたため、故障していないかどうか確かめるべく生徒から受け取り、取り敢えずスピーカーに耳を近づける。

 

「もしもし?」

 

『……………せよ』

 

「は?」

 

『…融合せよ。その時は近い…」

 

「!! な、なに?なんなの?」

 

『』ブツッ ツーツーツー…

 

「……なんだったのかしら…気持ち悪い…。隊長、この無線機は…」

 

通話相手はマジノ女学院隊長の名前を呟くと、それっきり話すことなく電話が切れた。何か不気味なものを感じたエリカがまほに相談しようと振り向くと、目の前の光景に驚愕した。地面から無数の目玉が浮き出てきたのだ。この光景を前に一同は動く事が出来なくなってしまった。

 

「なっ!? これは目!?」

 

「そこら中に眼球が……気色悪い…」

 

「私たち、頭がおかしくなったの?」

 

「!! エクレール様!どうしたのですか!」

 

「ダメ…ですわ……その目を見続けていたら、みんな壊れてしまいます……早くここから……逃げ…ないと………だめ………」

 

「エクレール様? エクレール様!」

 

エクレールはそう言うなり気を失ってしまう。ガレット、フォンデュらは焦るが、一向に救護班が来る気配がない。遠くからは異変を察知した審判員たち恐らく救護班と連絡を取りながらこちらへと向かっているのが見えたが、向かおうとしてもエリカたちは動けなかった。今度は金縛りのようなもので動きが制限されているのだ。

 

 

 

また、一連の出来事を会場から見ていたハジメたちは首を傾げていた。

 

 

「どうして…あそこからみんなは動かないんだろう? 試合終了の挨拶すれば終わりなのに」

 

「まほさんたちは何かに怯えてるようだけども……どこにも可笑しいのはいないな…」

 

「向こうの隊長さん、両肩支えられてるけど何かあったんかな?」

 

ハジメたちには彼女たちの周りで起こっている現象を知覚できていなかった。恐らくはエリカたちのみに見えるような細工が何者かに施されているのだろう。そこで、エリカたちの様子が心配になったハジメは会場から出ようとした。しかしその時、スクリーン両端に備え付けられいるスピーカーから派手なサイレンが鳴ったかと思うと、スクリーン画面には大きく緊急速報のテロップが表示された。

 

[怪獣__通称"ガンQ"、米韓防衛線を突破。その後、朝鮮半島を南下し、釜山港を襲撃。同港に壊滅的な被害が発生。]

 

 

「なんだよ、試合始まる前ぐらいには抑え込んでたじゃねえか」

 

「しかもたった数十分でソウル近郊から、釜山まで飛んで移動って……」

 

「これ、対馬に来るんじゃ?」

 

「下手したら本土に来るぞ」

 

「こっちは日本海側じゃないからまだマシだろ」

 

メンバーたちが口々に言い合っていると、さらに画面には続報として続けてまたテロップが流れ出す。

 

[ガンQ、飛翔後に飛行進路を変更。日本本土襲来の可能性が濃厚。現在日本海を横断中。韓国空軍による追撃が続いているとのことだが、撃墜の報は無し。各自治体、日本海沿岸部地域に避難警報を発令。西部、中部方面航空隊がスクランブル発進中とのこと。]

 

テロップが流れ終えると、今度は市内放送による避難指示が出される。本県は太平洋側ではあるものの、日本をガンQが横断した場合の進路上に入っているための措置であるとのことだった。それにしたがって、観戦会場にいた観客が避難しはじめた。ハジメも整備科メンバーと共に避難しようとしていたが、やはりエリカたちのことが気になりそちらへ向かおうと決めた。それに気づいたヒカルがハジメを止めようとする。

 

「ハジメ!今度はどこに行くんだ!! 俺たちは待機所にいる機甲科と合流して避難だぞ!次やらかしたらお前やばいだろ!」

 

「俺はエリさんたちを連れてくる!」

 

「あっ!お前!! 待てっ、ハジメ!おい!!」

 

ヒカルの制止はハジメには効かず、エリカたちがいるであろう演習場内へと走っていった。ヒカルもマモルやタクミに声を掛けてハジメを連れ戻そうとしたが、人波に阻まれてそれは出来なかった。

 

 

_________

 

 

日本海 石川県沖合 

 

 

航空自衛隊中部方面隊隷下の第6航空団、第303飛行隊は小松基地を発し、輪島の警戒管制レーダーの支援を受けつつ本土近海でガンQを迎撃すべく態勢を整えていた。イージス護衛艦である"みょうこう"、"あたご"の2隻を主力とする舞鶴の第3護衛隊も動き出しており、現在航空隊の後方で展開中であった。

 

 

第303飛行隊は最新鋭の国産戦闘機"F-3 蒼天"、20機を擁した強力な要撃部隊である。そんな彼らの機体のハードポイントには対特殊生物徹甲誘導弾___フルメタルミサイルがこれでもかと言うほどに搭載されている。それは各方面隊に着々と対特殊生物装備が配備されつつある証でもあった。

 

『監視レーダー、早期警戒機との戦術データリンク……迎撃対象、"オッドアイ"の反応を確認! 対象の速度、マッハ6!!』

 

『情報によれば通常の誘導弾はすべて命中後炸裂せず、取り込まれたらしいですね…』

 

「その現象が確認されたのは通常弾のみだろ? 我々は徹甲誘導弾を装備している。……仮に誘導弾や機関砲が効かないとしても、我々にはそれ以外の攻撃手段がない。どの道やるしかないんだ。 …全機、誘導弾の有効射程内に入り次第、撃ち込め。その後すぐに散開、すれ違いざまに機関砲を浴びせろ。追撃は不可能、ありったけをぶちこめ!」

 

『『『了解!!』』』

 

第303航空隊はガンQを捕捉し、遂に攻撃の時が来た。海上自衛隊第3護衛隊も展開を終え、航空隊の誘導弾発射と合わせて艦対空ミサイル、"スタンダードSAM"による飽和攻撃を行おうとしており、万全の状態で待機している。

 

「………徹甲誘導弾、発射!!」カチッ!

 

 

全ての蒼天からフルメタルミサイルが発射され、それを確認した海自艦艇群も早期警戒機とイージスシステムによる管制を受けて一斉に対空ミサイルを全力発射。大量のミサイルが空に白い線を描いてガンQへと飛翔していった。

 




大変お久しぶりナス!

今回の被害者は二つの国と少女一人だな!ヨシ!(良くない)
数話ぶりにガンQ君が出ましたね。コイツはあくまでも不条理の塊の模倣なので、物理兵器は一応は当たります。当たるだけですけど。(なお弱いとは言ってない) ガンQエラーコード君はエクレール隊長にちょっかい掛けてましたね……もう許さねえからなぁ? エラーコード君の悪いところは吸収したものを自身の力とするので、そこが厄介です。ベビーのテレビ登場、あくしろよ。

連絡です。いよいよ投稿者に期末テスト、共通テストが迫ってきたので、そちらに集中したいので三作品すべての投稿を完全にストップします。投稿者の進路確定する……四月ごろに一気にドバーっとまとめて投稿するということにします。かなり期間が開きます。申し訳ない。

_______

 次回
 予告


ガンQ、日本本土襲来!自衛隊の防衛線を突破したガンQは、ついに山梨県に飛来する! ハジメはナハトに変身し迎え撃つが、そこにペドレオンと星間同盟によって新たな力を授けられた宇宙人たち_____ネオスペーシーズも現れてしまう。そんな圧倒的劣勢の中、光の国から歴戦の二人のウルトラ戦士がやってくる! 彼らと共に奴らと戦え!ウルトラマンナハト!

次回!ウルトラマンナハト、
【灼熱の炎と神速の拳】!

サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)

  • 紗希のトモダチ
  • ミチビキさん サンダース編
  • ミライVSマホ カレー対決
  • ハジメ、迷い家にて
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