旧:逸見エリカのヒーロー   作:逃げるレッド五号 5式

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第21夜 【慈愛の勇者】

 

シュェアア!!

 

 

 

「青い…ウルトラマン」

 

「うそ………あの人が、ウルトラマン…?」

 

「人がウルトラマンになれるのか…」

 

安藤、押田とエリカは目の前で見せられた光景に緊急事態であることを忘れるほど、口を大きく開けてポカンとしてしまっていた。

しかしマリーひとりだけは目を瞑り、指を組み祈る。

 

「お願い……銀ちゃんを、助けて……」

 

 

突然、ベムスターと対峙するナハトの横に現れた青白の光。 その中から現れたのは、優しき光のごとき、慈しみの青き巨人____ウルトラマンコスモスである。

これにベムスターは怯み、ハジメも驚く。

 

《青いウルトラマン……あなたは…》

 

《僕はムサシ。彼、ウルトラマンコスモスと一心同体となっている人間だ。ウルトラマンナハト、共にあの怪獣…ベムスターを止めよう!》

 

《…ムサシさん、俺は、あの怪獣を倒さないといけないんです! たとえ自分一人でも、一刻も早く倒さないと…!!》

 

《! ダメだ、二人で協力すれば、きっとこの怪獣…ベムスターだって止める事が出来る!》

 

やはり、それでも追い込まれていたと言えばいいか、心を許せる親友に吐露した後であったものの、ハジメは何らかの使命感に囚われていた。

ただ一人でまたベムスターへと向かい____

 

《俺は決めたんです。もう失敗は、しない! …スペシウム!!》

 

シュアッ! ハァァッ!

 

《ベムスターに破壊光線を正面から撃ってはいけない!!》

 

ハジメはマリーの願いもムサシの声も聞けなかった。それは、こうして願いを聞いた結果、自分の目の前でまた最悪の悲劇が起きてしまうことを想像してしまったからであった。最悪と最善、どちらを取るべきか、ハジメは決心していた。人の死と憎悪、どちらも取りたくないのは当然と言えば当然である。

ナハトは力の溜めなど隙を起こす事の無い、スペシウム光線でベムスターを倒そうとした。真っ直ぐに水色の光線がベムスターに放たれた前後で少女の小さな悲鳴が聞こえたが、これが最善であると自分に言い聞かせ、止めることはしなかった。

 

………が、しかしである。

 

《な、スペシウム光線が…!? 効かない!?》

 

すべてを振り払って放った必殺光線。それはベムスターのど真ん中、的のような腹に命中し息絶えさせる筈だった。そう考えていた。 

だが実際はその腹の口とも言うべき箇所からスペシウム光線を吸い込まれてしまった。 ナハトが動揺するのも無理はない。それとは反対にマリーだけは安堵の息を吐いていた。

 

キュイィーーン!!オォオン!!

 

カァァアアーーーッ! シュバッ!!!!

 

 

だが、そうも言ってもいられない。必殺光線を吸い込んだだけではなく、再び腹の口を開けたかと思うと、なんとそこからスペシウム光線を撃ち返してきたのだ。

 

___グッ、ウゥ!! ___ウァアッ!!

 

反射されたスペシウム光線はナハトとコスモス目掛けて横凪に放たれ、直に受けた両名は少なくないダメージを受ける。

予想以上の反撃をくらい膝をつくナハトに、コスモスが片手からヒーリング光線を浴びせ応急処置を施す。

 

《ぐぅ…なんだよ、それ…跳ね返すなんてありかよ……》

 

《ナハト、二人の力を合わせなければ、たとえベムスターの幼体であってもどうすることも出来ない!

キミは急ぎすぎている!!》

 

《急ぎすぎなわけがない!コイツを倒さないと、悲しむ人が増える! だから!ここで息の根を…》

 

《…必ず相手の命を奪う必要はないんだ。別の道もきっとある。あの女の子は、ベムスターのことを友達だと言った。今キミがやろうとしていることは、彼女と、ベムスターの歩む道を閉ざしてしまうことに繋がる。 お願いだ、どちらも希望を持って明日を生きていけるようするためにも、力を貸してくれ…!今助けられる命に手を伸ばすことが大事なんじゃないのかい!》

 

《!!》

 

ムサシの言葉は、ハジメを動かした。ハジメは、自分の知っている友好的な怪獣以外はすべて悪であるということは決して無い……そのような根本的な意識が抜け落ちていたことにようやく気づいた。それこそ、ガメラのような怪獣と人との繋がりを、未来を断ち切る行為であることだったと、改めて理解した。

 

進むべき道はあった。人も宇宙人も怪獣も関係ない。そう言ったのは自分自身ではなかったのか?

 

 

【♪BGM】『Spirit』

 

 

ハジメはまた一つ、葛藤と苦悩に打ち勝ち、答えを見つけたのだろう。ナハトの輝く瞳には、もう曇りは無い。今自分に出来ることをやるのみだ。

手を伸ばして助けることがあるのなら、手を伸ばす。

 

《…自分で知らないうちに、勝手に心を追い詰めていた…切り捨てれば今よりも楽になると思いかけていたかもしれない。………ムサシさん、お願いします。一緒に戦わせてください!》

 

《ああ! だがベムスターを落ち着かせるには、コスモスの光線を浴びせなくてはいけない。その時に動かれると効果も薄くなってしまう。だからキミにはベムスターに組み付き、動きを止めてほしいんだ!》

 

《分かりました 行きましょう!! スタイルチェンジッ!ガッツ!!》

 

力を合わせベムスターに向かうことを決心したナハト。彼女達の種族を超えた絆を繋ぐために、護るために、大地を巻き上げ疾る。

 

ズゥン! ズゥン! ズゥン!

 

 

《組み付ければこっちのもの!とぉおっ!!》

 

燃える紅のガッツスタイルへとチェンジしたナハトは、先頭をきってベムスターに力強く走っていく。

そこから背を向けバック転で近づいてから跳び上がり、ベムスターの背後に着地する。

 

キュイィ!?

 

シュアッ!!

 

《これでえ!!》

 

ガシィ!!

 

《捕まえたぞ! 大人しくするんだ!》

 

怪力自慢のガッツスタイルとなったナハトに羽交い締めされ、さすがの大怪獣ベムスターも、幼体であることもありナハトによる拘束を解くことは不可能であった。

ただ不機嫌そうな唸り声を上げ、もがくことぐらいがやっとの状態だ。

 

《ムサシさん ここでベムスターを!!》

 

《ありがとう!………"フルムーンレクト"…!》

 

コスモスは身動きの取れないベムスターに向け、右拳をゆっくりと突き出し、そこからは眩い光の粒子を放つ。ルナモードの慈愛の象徴である、興奮抑制光線、"フルムーンレクト"だ。

 

キュゥウ………

 

コスモスの放った光線を、攻撃と認識したベムスター。タダではやられはしないと言う意思表示か、先程ナハトのスペシウム光線を取り込んだ時と同じように、腹の口を大きく開き吸収しようとする。

しかしその直前に光線の粒子が幾本にも分散し、ベムスターの腹部を避けるように本体へ到達した。

 

トァアッ!

 

ギュォオオオオ……ウゥゥゥ…

 

「やった!」

 

「ウルトラマンが光線を…」

 

「銀ちゃん!」

 

ナハトはベムスターにフルムーンレクトが直撃したことを確認すると、ベムスターから離れるよう側転して距離を取り様子を窺う。

 

《どうだ……?》

 

《手応えはあった。もう心配はいらない。……ベムスターの凶暴化した原因だったであろう、"宇宙アメーバ"は消えたよ》

 

《宇宙アメーバ?》

 

《宇宙に漂流して、テリトリー内を通った有機生命体に寄生して体の制御を乗っ取って繁殖する存在なんだ。きっと宇宙を旅してる時にやられたのかもしれない。 幸い、光線の興奮抑制の効果で活動が鈍くなったところで体内の新抗体によって駆逐されたようだね》

 

ベムスターを見れば、光の粒子に全身纏わりつかれ苦しみの声を上げていたが、今は大人しくなっていた。

ベムスターの鳴き声や目つきも穏やかになる。どうやらコスモスとムサシの思惑通りになったようだ。ベムスターはコスモスの方へゆっくりと歩み寄ると、猫のように身体を擦り始めていた。

 

《……つまり、この怪獣は操られていたってことですか?》

 

《大まかに言えばそうだね》

 

《そうだったんですか……俺は、危なく……》

 

そんなベムスターの下へマリーが走る。それに押田と安藤、エリカも続く。マリーに気づいたベムスターは喉を鳴らして顔を近づける。

 

「良かった…! 銀ちゃんが元に戻ってくれて!!」

 

「すごいな……ウルトラマンはこんなことも出来るのか…」

 

「まさかあの人がウルトラマンになるなんてな…」

 

「………あれは」

 

 

 

 

 

ゴォオオオオオオオオ!!!

 

轟音が聞こえ出した空に目を向ければ、航空自衛隊の戦闘機___F-3J 蒼天と少数のF-15MJ イーグルで混成された部隊が編隊を組んで上空に駆けつけたところであった。

彼らは通報と出動命令を受け小松基地からスクランブルした、第6航空団第303飛行隊___以前ガンQ迎撃に赴いた一文字率いるレイザー隊だ。

今は攻撃を開始せずに上空を旋回し状況の把握と確認を急いでいた。

 

『レーダーに反応しない…コイツも生体ステルスを保持しているのか!?』

 

『やるしかないか…………あ、あれ?様子がおかしい気が……』

 

「なんだなんだ? ナハトの他に見慣れねえ青いウルトラマンがいるじゃねえか。それに…アレが暴れていた例の特殊生物か?」

 

『はい。ですが、見ての通り…現在青いウルトラマンに寄りかかって……その、甘えているように見受けられます』

 

「…そうか。………よく見たら、案外カワイイ顔してんじゃねえか」

 

ある意味肩透かしをくらった一文字がベムスターに対する呑気かつ率直な感想を述べると、無線からは他の隊員達の乾いた笑いや溜め息が聞こえてくる。

その間に一文字の部下が航空総隊に現状報告をすると、返ってきた答えは攻撃の一時中止であった。

姫神島でのガメラ・ギャオスの件もあり、先ほどまで破壊活動の限りを尽くしていた怪獣とはいえ、ウルトラマンと友好的に接している怪獣を攻撃することは上層部でも躊躇いがあるようだ。

 

「___んなこと言われてもよお、ガメラはともかく、散々暴れといてはいそうですかで終われるかってんだ」

 

『ですが命令は命令なので…っ!! 一文字隊長!!』

 

突然部下が声を上げたのを怪訝そうに何があったのかと聞き返す。

 

「なんだ?」

 

『前方10時の方向!新たな二体の特殊生物が向かってきてます!!地上の個体と同種であると思います!』

 

「な、なんだと!?」

 

慌てて左上の空を睨む一文字。やはりレーダーには何も映っていない。

レーダーからは捕捉の反応は出てはいなかったが、太陽光を反射し発光している二体の銀色のベムスターがはっきりと映った。仲間を、同族を助けにでもやってきたのだろうか?それは分からない。

だがこちらを一瞥して通り過ぎようとする様子を見た一文字は、違和感を感じ隊員達に攻撃することがないよう声を張り上げる。

 

「……あれは………ま、待て!全員まだ撃つな!!下手に刺激するんじゃねえ!!」

 

『なぜですか!?』

 

最初こそ慌てていた一文字だったが、すぐに落ち着き…というよりは普段の状態に戻っていた。

驚きと疑問の声を上げる隊員らに一文字は目の前を通過し地上のベムスターへと向かっていく二体を見送りつつ一言、鼻を人差し指で擦りながら得意そうに、自身の直感が導いた結論を呟く。

 

 

 

 

 

「…ありゃあきっと、アイツのお袋と親父だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空からレイザー隊の一文字らが見守る中、幼体のベムスターこと銀ちゃんとその横にいるコスモス・ナハトの前に、その親であろう二体のベムスターが降り立つ。

 

《この二体は……》

 

キューーーッ!キューーーーッ!

 

《…このベムスターのお父さんとお母さんだ。ずっと探していたんだね》

 

思わずハジメは予想外の新たな怪獣の出現に身構えてしまうが、コスモスは二体のベムスターの方を向いた銀ちゃんに付き添うように二体の方へと歩む。

 

《………俺は…》

 

「お父さんとお母さんが迎えに来たのね…銀ちゃん…さようなら。あなたのことは忘れないわ。今度は迷子になったり、暴れん坊になっちゃダメよ…?」

 

「「うっ、う"ぅ……」」ズビィーーー!

 

「アンタら…案外仲良いじゃない」

 

ナハトはその光景を呆然と眺め、マリーは親達の下に戻っていく銀ちゃんを目に涙を溜めながら見守る。その両脇では時に鼻をかみながら、押田と安藤も隠す事なく涙を流し泣いていた。なんだかんだ言って、彼女達も銀ちゃんとの時間は大切なものとなっていたのだ。

そんな様子をエリカが優しい目で見ていた。

 

 

ズゥウン! ズゥウン! ズゥウン!…………クルッ

 

銀ちゃんは、付き添っていたコスモスを置いて両親の下に走った。そして親と触れ合う前にマリー達の方に振り向いた。

すると、銀ちゃんは安藤と押田、そしてマリーを見て右手を大きく上げて手を振ったのだ。別れの挨拶をしたのだろう。

 

キュ〜〜〜!!

 

涙を堪えていたマリーが銀ちゃんのその行動を目にしたことで遂に涙が止まらなくなったらしい。勿論、例の二人も例外ではなかった。

彼女達は涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらも、それに応える。

 

「さようならぁ〜!!!銀ちゃぁ〜〜ん!!!」

 

「身体に気をつけるんだぞぉ〜〜!!!」ズビィーーー!

 

「好き嫌いするんじゃないぞぉ〜〜〜!!!」ズビィーーー!

 

「……もう、このハンカチ使いなさい」

 

 

三人の声が届いたのか、銀ちゃんは満足したようでこちらまで響くほど喉を鳴らしながら両親の方へと振り向き歩く。その人よりも遥かに大きく、そして小さい背中には別れの悲しみを語っているようにも感じられる。彼も涙を流していた。

 

「バイバイ。銀ちゃん…」

 

「涙が止まらない…」

 

「たった数日の間だったのに…」

 

……やがて親子同士での会話でもしたのだろか、三体のベムスターはいつの間にか傾いていた太陽の方角へ向かって飛び立った。

かなり速度が出ていたため、すぐに空の彼方に彼らの姿は消えていったのだった。その場にいた全員に見守られながら。

 

 

 

 

『これは不戦勝……ですか?』

 

『……本当に親子だったんですね』

 

『すんません…自分、何故か涙がほろりと出てきました!』

 

「風のように現れ、風のように去る、ねぇ…。俺も"前原・いぶきレポート"の追記やる人間になっちまったなぁ。あー筆記はめんどくせえんだけどなぁ…」

 

レイザー隊は損害を出すといったこともなく、怪獣は去り、二人のウルトラマンもいつの間にか消えたため、基地に帰投することとなった。

しかし野党や多くのメディアには、今回の自衛隊の対応の甘さについて追求する材料を与えたことにもなった。

 

 

 

 

 

「ムサシさん、ありがとうございました………もしも俺があのまま倒そうとしていたら…」

 

「間違うことは誰にでもあるさ。キミも大切な人達を守ろうと必死だったのは分かるよ」

 

「それでも、俺はムサシさんのようなことは出来ないし…」

 

「その時に大切な人を救える手段が無かったら、その時の最善の行動を取るのは正しい。僕にも、時には命を奪わなければ助けられないこともあった…」

 

「……そう…なんですか」

 

「だからね、気持ちで負けちゃ駄目だ。気持ちで負けてしまったら、なにも出来なくなってしまう。 

力だけが大切なわけじゃない…分かり合おうとする優しさ、キミにもあるはずだ。 それにはもう気づいてるかもしれない。でもそれが実践できるかどうかはキミ次第だ。

出来た時こそ、きっとキミも一人で飛べるようになる。でもキミは一人じゃない。それは忘れないでくれ。

 

それじゃあ、またこの広い宇宙(そら)で会えたら!」

 

「はいっ、その時はよろしくお願いします」

 

ムサシは最後に笑顔を見せ、光の粒子となって空に昇っていった。

 

「………そうだな、今は前に進むことを考えないとな。いつまでも暗い雰囲気じゃ駄目か………よし!」

 

ハジメはパンッ!___と、両手で頬を叩いて気持ちを入れ替える。ムサシやマモルの言葉を胸に、前に進むことを決意した。この先、さらに厳しい未来が待っていようとも。

心を入れ替えたハジメは走ってエリカ達のいる場所に向かった。

 

 

「アンタたち、いつまでも泣いてるのよ!」

 

「し、しかし…それでも涙が流れるんだ逸見君…!」

 

「逸見君、ティッシュも借りていいだろうか?」ズズッ!

 

「……またいつか会えるわ、きっとね」

 

なんとも言えない、しんみりとした空気が辺りを漂う。しかしその雰囲気を壊したのは手を振ってこちらにやってきたハジメであった。

 

「おーい!エリさーん!!」

 

「は、ハジメ!」

 

「あの方は?」

 

「ウチの整備士の一人よ」

 

ハジメはエリカに駆け寄ると心配そうな顔をして体に異常などが無いか確認をする。

エリカはそれに鬱陶しそうに答える。

 

「大丈夫!? どこか怪我とかしてない?」

 

「大丈夫よ、怪我なんかしてないわよ。てかアンタ また避難しないでここまで走ってきたんでしょ!!」

 

「それを言うならエリさんもじゃないの?」

 

「うっ……うるさいわね!どっかの馬鹿のバカが移ったのよ!!」

 

「?」

 

「この鈍感男!!」

 

ここでもハジメが怒鳴られるのは必然らしい。散々注意しても毎度のように自分の身を危険に晒して躊躇することなくやって来るのだ。当然エリカも怒るわけである。

 

「いたぞ!エリカ、聞こえるか!」

 

「エリカさん!」

 

「「「マリー様ぁ!!」」」

 

「こんな近くにいたのか…」

 

「攻撃命令が出ていたら危なかったですね…」

 

マリー達やエリカの安否が気掛かりだったのだろう。今まで退避していた両校の戦車道チームが自衛隊の車両群と共に現れた。

どうやら無理を言って同行してきたらしい。

 

「エリカッ! 聞いたぞ、一人で救助に向かったんだと! ……ハジメ君…キミもか。何度言えば分かってくれるんだ?」

 

「「す、すいません…」」

 

「まったく…しかしこれでハジメ君は何度目だ? 私も、キミが嫌いだから言ってるわけじゃないんだ。だがそう何度も勝手な行動を取られると、安全の観点上無視できない…最悪今度からハジメ君の対外試合への同行を禁止しなくてはならない。頼むからこれ以上危険な行動はやめて、謹んでほしい」

 

「……はい」

 

「私や機甲科、整備科の面々もみんな心配なんだ。そして誰よりもキミのことを心配しているのは隣に立っているエリカだと思うぞ」

 

「………」

 

「………よし、今日はここまでにしておく。試合の簡易的な挨拶をして学園艦に戻るぞ」

 

「行くわよハジメ」

 

「ああ。」

 

ハジメはエリカについて行き、トラックに搭乗する。

そして、この先も未知なる脅威との戦いは続くことを改めて考え、車上で揺られながらも自分なりに思考を巡らせていた。

思考の海に沈みかけた時、エリカに声を掛けられる。

 

「そういえばハジメ、もう気持ちの方は大丈夫になったの?」

 

「え? ああ、うん。おかげさまで…迷惑かけて申し訳なかった。イッチに励まされたら楽になったよ」

 

「…ふーん、マモルに相談したの……私に話してくれても良かったじゃない…」ボソッ

 

エリカの呟きはとても小さかったため、ハジメはその言葉を耳にすることは出来なかった。

なんと言ったのか聞いてみようかとしたら、エリカがまた口を開く。

 

「あ、そうだ。ねえ聞いてよ! ナハトと一緒に戦った、あの青いウルトラマンはね、若い男の人だったのよ! 目の前で何かを掲げて光に包まれて…そしてウルトラマンになっちゃったんだから私腰抜かすかと思ったわ」

 

「へ、へぇ…そうだったんだ」

 

「? もう少し驚いてくれたっていいじゃない。これ多分かなり貴重かつ重要な話だと思うわよ? だって、その人が青いウルトラマンになれたってことは、ナハトも誰か変身してるかもしれない可能性もあるってことでしょ?」

 

「!!」ビクッ!

 

「なによそんなに肩を跳ね上げて…。ははぁ〜ん、さては…ハジメがナハトだったりして!」

 

「え、えっと…」

 

「……なーんて、冗談よジョーダン! あはは!今のアンタの顔、スマホで撮っとけばよかった!」

 

「や、やめろよ〜!(心臓飛び出すかと思った…)」

 

 

 

 

 

 

____________

 

 

岩手県沖 大洗女子学園艦 生徒会室

 

 

 

「ふーーん……。 で、戦車道を受講したくないから、直訴しにきたんだ。お友達連れて」

 

「は、はい………あの、本当に戦車道はもう…」

 

学園艦の艦橋部分に存在する生徒会室。 

執務机の椅子に座る生徒会会長___角谷杏は背後の窓から差す太陽の光によって、暗い影が彼女の顔を覆う。それは見る者に彼女の腹の内を探ることを邪魔するかのようなものだった。そして彼女の左右には生徒会書記と広報の二人が神妙な顔で立っているため、さらに威圧感が加わる。

 

「んー、ダメかな」

 

「そんな…」

 

「これは権力の濫用です!!」

「そこまでするのはさすがに横暴じゃないの!?」

 

「取り巻きは黙っていろ。今、会長はそこの生徒と話している」

 

「そゆことだね。私は今、西住ちゃんとお話ししてるんだ。ねえ、どうしても戦車道、やってくれないかなぁ?」

 

その対面に立っていたのは最近大洗に越してきた、黒森峰の西住みほだ。みほの取り巻きとは言わずもがな華と沙織のことである。

彼女たちは丁度先日の全校集会で戦車道の復活宣言を聞いたばっかりだった。そして希望履修科目の用紙を提出したら、翌日の今日、ここに呼び出されたのだ。 

なお呼び出しをくらったのは、みほのみである。

 

そして杏がみほを呼んだ理由は、戦車道を復活させたから、強豪校からの転校生であり戦車道経験者であるみほに戦車道を洗濯して履修しろ、要約すればこうなる。お願い、というよりは最早勧告、要請、命令の類いである。

無理もない。彼女達にも背負っているものがある。その背負っているものを救えるのなら、一生徒の生活を潰すことも躊躇いは無かった。

 

「こっちにもねー、引くに引けない事情ってやつがあるんだよね〜」

 

「でも、私は…」

 

「あーもう、こればっかしは使いたくなかったけど。……西住ちゃん、戦車道選んでくれなかったら、この学校にいられなくしちゃうからね?」

 

「「「え!?」」」

 

杏から発された言葉にみほ達は固まった。

 

「そ、そんな冗談、効くと思ってるの!?」

 

「冗談じゃないよ、大真面目。あ、西住ちゃん…そういえば最近、スーパーでペット用の餌、買い始めたんだって? それもカメの。こっそり飼ってるんでしょ?」 

 

「なんでそんなことを…知ってるんですか?」

 

「こっちはいろんなこと出来るからね〜。 あーいけないなぁー、西住ちゃんの住んでる寮ってペット禁止だったはずなんだけどなぁ…。ま、それぐらいじゃ退学にはならないけど、そこのお友達を退学にすることぐらいまでは出来るかな?やろうと思えば色々でっち上げもできるんだ〜」

 

「あ、私のせいで……また………」

 

「みぽりん!私たちのことはいいよ!気にしないで!!」

「西住さんがどうしたいか、自分の意思を第一に決めてください」

 

「二人とも……」

 

この光景、以前にも何度か見た気がする。みほには二人の顔に、姉と黒森峰の友人達の面影を感じたのだ。

 

気の弱い自分は、意見する前に気の強い者や声の大きい者たちがいるとよく跳ね除けられ、再度口を開いて発言することなく終わることがあった。また同様に行動を起こそうとした時もそうであった。

そんな時に助けてくれたのは自慢の姉と幼馴染達だった。

 

みほは考える。もしもあの人達なら、どうするだろうと。

 

嫌なこと、苦しいこと、辛いこと、それらから逃げるだろうか? 投げ出すだろうか?

 

諦めずにもう一度立ち上がらないのだろうか?

 

自分が好きだったものを簡単にやめたりするだろうか?

 

______キミは強い人だ。______

 

答えは、否である。今、ここで勇気を振り絞るのだ。今も自分は一人ではない。あの人たちも、自分のことは嫌ってはいなかった。寧ろ心配してくれていた。ここでやめてしまうことこそが、裏切りになってしまうと思った。

 

「……やります。私、戦車道、やります!」

 

「みぽりん!?」

「西住さん!?」

 

だが、言わされたわけではないのだと、これは自分の意思で決めたのだと、決意に満ちた瞳を杏に向ける。勇気は周りから貰った。ならば次は自分が立ち上がる番なのだ。

杏は相変わらず不敵に笑っている。

 

「!………そっか。やってくれるんだね、ありがと。かーしまー」

 

「はい。それでは、また後日新たに用紙を渡す。記入後提出しに来い」

 

「ありがとうね西住さん…本当に……助かるわ」

 

これで本当に良いのかと華と沙織はみほを見るが、みほはそれに大丈夫だと目で伝え返す。

 

(みんな、私はもう一度、頑張ってみるよ…)

 

一度離れた戦車道に、再び向き合う決心をしたみほ。

彼女の新たな道への歩みと見えざる壁への挑みは今ここからスタートした。

 

 

 

 




はい、久しぶりナス!一人暮らしも悪くないと思ってる逃げるレッドです!
なんとか持ち直したハジメ君。そして何かのヒントを得てしまったエリカさん。小さな出来事は、集まれば大きな物になるのです……それは取り返しのつかないものなのかも。
この世界でもやはり西住殿は戦車道と再び向き合うことになりました。

次回もお楽しみに!

____

 次回
 予告

世界各地でギャオスや昆虫型特殊生物の活動がさらに活発化しつつある中、ゴジラ・ガメラ・モスラの三大護国聖獣が地球のために戦かっていた。
そんな彼等を各国が"益獣"ともてはやし、さらなる地球人類の団結を声高に掲げるが、順風満帆に物事は運ばない…!

次回!ウルトラマンナハト、
【掴みかけたピース】!


サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)

  • 紗希のトモダチ
  • ミチビキさん サンダース編
  • ミライVSマホ カレー対決
  • ハジメ、迷い家にて
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