軟体怪獣 ゲゾラ、ダガール、
大蟹怪獣 ガンザ、ガニメ、
破壊獣 ギガントツリー、
破壊獣 ファルクスヴェールⅡ、登場。
オセアニア ニュージーランド
南太平洋沖 レッチ島・セルジオ島水路
ギシャァァアアアーーーッ!!
ギュォオオオオオ!!!
豪州連合加盟国_ニュージーランドの領有する、貿易中継拠点として使われているレッチ島、セルジオ島間の東西に開通している水路を通り、咆哮を上げて西へと進撃するは、突如南太平洋海底から出現した_巨大なエビ型の怪獣エビラと軟体動物のイカとタコを思わせるゲゾラ、ダガールの三匹であった。
三匹の正体は、異常磁場によって突然変異、凶暴化した甲殻類と、ワームホールによってそれぞれの異世界からやってきた巨大水生生物たちだ。
「水路はもう無人だな?」
「はい。事前避難は完了しています」
「化け物どもに、地獄の鉄槌を下す時がやってきたな。航空隊に通信!」
欧州のベルリン、日本の福岡に次ぐ規模の大型特殊生物群の来襲である。しかし、豪州連合軍司令部に焦りの色は見えなかった。寧ろ余裕の表情だった。
ゴォォオオオオオオオオオ!!!
大空に爆音を轟かせながら、海洋特殊生物撃滅のために音速で飛び向かっているのは、〈F/A-18E スーパーホーネット〉戦闘攻撃機の一個飛行大隊36機だ。
全てのホーネットの機体下部ハードポイントには、形状がやや特殊な大型誘導弾が四発抱えられている。
『バベルチームへ通達。"
「司令部よりN2弾頭弾、使用制限の解除を確認! 作戦開始だ、ヤツらを丸焼きに仕上げろ!!」
『『『了解!!』』』
豪州連合軍が余裕の態度を取っているのは、これの存在があったためである。N2弾の初投入であったトモス島爆撃作戦にて、その成果を見せつけるのに成功した彼らは、特殊生物出現前から着手していたN2弾の多用途化をさらに推し進めた。
「モンティナ・マックス少将の第1艦隊のN2ミサイル攻撃と合わせる。攻撃目標の重複に注意せよ」
そして今回、N2弾頭搭載型の対艦ミサイル配備が間に合ったことで、本実戦に使用されるに至る。
オーストラリア国防海軍、第1艦隊のイージス艦群と、第1艦隊旗艦___新型原子力航空母艦〈グレートサンディー〉所属である、ホーネット飛行大隊___バベル隊に装備させていた、N2弾頭搭載のミサイルが遂に飛翔する時がやってきた。
「…………発射っ!!」
バシュッ! ババシュ!! ___シュゴォオオオオオーーー!!
バベル隊のホーネット各機から業火を解き放つ光槍が放たれた。そこに、海面ギリギリの超低空から、遥か後方の第1艦隊が発射しただろうハープーンN2弾頭弾が、バベル隊を追い抜いていった。
核に通ずる威力を持った破壊兵器による波状攻撃が始まった。
しかし、それは呆気なくすぐに終わることになる。
ギュォオオオオ……!!!!
ギ、ギシャァ___
エビラ、ゲゾラ、ダガール、三体の怪獣へと殺到する白い尾。
連続した閃光と明色の強大な火球。
しばし遅れて鼓膜を揺さぶる轟音。体の芯にまで響いてくる振動。
巨大な存在を包み込むように広がる無数の黒いキノコ雲。
整備が行き届いていた水路の変わり果てた姿。
黒煙の中から姿を現した、海面に大きな水飛沫を上げて倒れ込む無惨な怪物とソレを構成していた残骸。
初撃で沈黙し、高熱に耐えられず最期の時を迎え生体機能を喪失しただろう物言わぬ怪物の死骸。
圧倒的な火力によって嬲られ、傷だらけ、穴だらけになった身体を弱々しく動かし続けることしか出来なくなった怪物。
『さすが少将だ、タイミングはドンピシャだったぞ』
『ざまあみろ化け物どもめ!!』
『残りの武装もすべて使え。徹底的に潰せ。情けは無用、殲滅せよ!』
ズドドドドドド!!
「B-57戦略爆撃隊に帰投するよう通達せよ。高高度からの第二次攻撃は不要だ。クククク…やはりN2はオセアニアを救う切り札足り得るものだったな。どうだね、ムスカ君?素晴らしいだろう、我が国の科学技術の結晶は…人類の新たな叡智の炎は」
「頼もしい……と感じております。しかしその反面、恐怖も少しばかり感じておりますが…」
南太平洋で勃発した戦闘の様子を、偵察機から送られてくる中継映像を観てほくそ笑んでいる男が一人と、その横に立ち口元を少し緩めているだけの男が一人。
彼らは、ニュージーランドよりも西、オーストラリア連邦のキャンベラに位置する豪州連合本部の一角にある連合軍司令室にいる将官達だ。一人は前連合空軍参謀長・大将であった人物、バスク・オム元帥である。現在はオペレーション・メギド発動後行われた大規模人事
これも彼の計画の内である。そしてその横に控えているのは、国家諜報組織である"豪州連合特務情報機関"の長官___ムスカ・ブルースカイ大佐だ。ムスカ大佐はバスク元帥の右腕的な存在であり、現在は豪州連合へ混乱をもたらすテロリスト、犯罪者、民間人摘発の指揮を執っている人物でもある。
「ほう…?圧倒的な火力を完全に統制できている我が連合軍がいるにも関わらず、恐怖を覚えると?」
「今後、未知の脅威による、N2及び弾頭の奪取、強奪、破壊によるコントロール不能の状況が発生することも考えられます。あらゆる物事に絶対はありません。我々の制御から離れた兵器がこちらに向けられるのは…」
「ハッハッハッ!!ムスカ君、キミは少し並みの人間よりも心配性のようだ。キミのようなトップの人間が臆病風に吹かれたら、下に就く者達はどうなる? 大丈夫だ。余計な憂いは必要ないぞ。
……話はここで一旦切る。例の欧州のモノは、どうなっている?」
「現在、メルボルンの兵器開発局で解析中であります。未だに信じられません…あのような技術、なぜ日本は開発を見送ったのか……」
「欧米型の自由主義国家は、使用する兵器に対して、倫理的な問題を視野に入れるため、欠点を多く抱えることになる。彼らはそれを防ぐことができず、無視もできない。自然環境や都市、民間人への多少の被害を躊躇うような人間が多くいれば、当然それらの兵器は使われることはない。要はそういうことだよ」
「……また、カナダ・インド経由で米露の人型機動兵器の機密情報も断片的ではありますが、入手することに成功しました。これらを元にして、開発局は豪州連合産の人型機動兵器開発に乗り出すことが出来ました」
「おお!それはそれは良い知らせだ! いいぞぉ、風は我がオセアニアに吹き続けている。引き続きそちらの方も進めたまえ。
この神聖な国土を奴らに汚されてはならないのだ。多少の被害と犠牲を払ってでも守り抜く…それが我々軍人の本分よ…。ニュージーランド政府にはあとで災害支援を行う旨と、水路の復旧活動を全面的にバックアップすることを伝えておきたまえ。あのトモス島に続く復興政策だとな」
「はっ!!」
一連のやり取りが終わる頃には、凄まじい生命力で最後まで触手を振り回して抵抗していたゲゾラが海上に倒れ、沈黙した。これで三体の海洋性大型特殊生物は豪州連合空海軍によって完全に殲滅された。
既に黒煙が漂う破壊し尽くされた水路と、その中に力無く浮かんでいる大型特殊生物の死骸の上空には哨戒ヘリや早期警戒機が飛んでいることが確認できる。
「これほどの短時間で、大型特殊生物群を撃滅できる豪州連合は、過去の貧弱な国際組織ではない!新たな世界のリーダーとして君臨するに足る存在なのだ!! ウルトラマンなどという異星人と、益獣どもの力を借りてやっと特殊生物を駆逐できる先進国など、ものの数ではない!!
……行く行くは、それらの不穏分子もすべて抹殺しなければな」
出現から約二時間も経たずして、大型特殊生物三体を撃滅した豪州連合は、より一層、軍拡を推し進める。それは過剰とも言える動きであった。まるで…世界の国々を相手取るかのような、そういったものにも見える。
各国は新型特殊爆弾の使用を躊躇わずに大量投入した、今回の件をそれぞれが重く受け止め、警戒を強めるのだった。
"団結"とは、大きく分けて二つある。
内なる団結か、
外なる団結か、である。
_________
東アジア 中華人民共和国 山東省
山東半島沖 黄海
『海蛇1より通達。甲殻類型特殊生物群の撃退成功を確認。繰り返す、成功を確認。』
黄海上空を飛んでいるのは中国人民解放海軍所属の〈Z-9〉哨戒ヘリである。ヘリのパイロットらは眼下に広がる海の光景を報告していた。
『了解した。引き続き上空監視を続行せよ。』
『了解。監視を続ける。』
バタバタバタバタバタ…!
中国首都圏と各地沿岸部を繋ぐシーレーンとして重要である海域___黄海は、普段通りならば海上にはタンカーや輸送船、学園艦などが航行しているはずなのだが、その姿は一切見えない。
その代わりに、黄海には中国人民解放海軍の三大艦隊の一つ、中国東北部沿岸と黄海の防衛の任に就いている___北海艦隊が展開しており、旅順港の向かいにある山東半島の南海岸部と海面付近にはおびただしい数の赤色の巨大甲殻類の死骸が浮いていたり、海岸に打ち上がっていた。それらから流れる体液によって、付近の海面や砂浜は緑色に変色している。
「我が艦隊初の実戦が、特殊生物相手となりましたか…」
「日本のいぶき騒動でのいざこざという擬似実戦を含めればこれで二回目だ。…日本の自衛隊と接触したのは航空隊のみだったがな」
「いやはや……しかし、黄海最奥まで侵攻する前に叩けたのが功を奏しましたな…さらには艦隊の損害はゼロ、これは誇るべきものでしょう」
「海上だけでなく海中に原潜を展開させ封鎖させたからだ。彼らの働きが大きかったよ。無論、フリゲートやミサイル艇による撹乱も上手くいった点もあるが」
上のような会話をしているのは、中国海軍北海艦隊旗艦にして中国海軍の最大艦船_航空母艦〈広東〉の艦橋内にいる艦長と艦隊司令、
「漁船団の失踪が前兆だったことに気づいても良かったな……。たしかにあれほどの数を、ただの災害による事故として片付けるのはいささか問題だった。」
山東半島南側の沿岸部に現出した特殊生物群の死骸は、豪州連合に出現したエビラに酷似した甲殻類___カニ・ザリガニ型の特殊生物、体長4、5〜40メートル弱ほどのガニメ・ガンザの師団規模に相当する群れのなれ果てであった。
中国軍が、豪州の海洋性特殊生物群の出現に合わせるかのように黄海南方海域に出現し北進を始めたガニメ、ガンザの小型、中型の群れを偵察衛星を介して発見したことで事態が判明し、海警局と人民海軍の北海艦隊によりそれら全てを駆除した…というのがことの次第である。
「司令、一時間後には官民合同で黄海のクリーンアップ作業に入るとのことです。」
「我が艦隊からも哨戒艇と掃海艇群を派遣すると伝えろ。彼らの直掩として航空隊の再出撃も許可する」
「ハッ!わかりました!!」
「劉大校、私は今回の特殊生物の侵攻、何らかの前哨戦であると思えてなりません…。これらの個体は子供で、これの親が___大型個体が今も黄海に潜伏していると…」
「奇遇だな艦長。残念ながら私もそう思う。近いうちに黄海一帯をしらみ潰しに捜索することになるだろう」
慌ただしく艦橋内の人員が動く中で、劉大校はひとり、青い海を見る。ここではないどこかの、遥か遠くを覗くように。
「この時世でさえ、上の委員会の役人どもは諸外国との関係を改善しようとしない……。
上海会戦で尊い兵士たちの命を散らせたにも関わらず、今度はインドに手を出そうとしている。なぜ末端の士官達でさえ感じはじめている違和感から目を背け続けるのだ…?
いぶきよ、我々海の人間が目指すべき"ペガソスの海"はまだまだ遥か彼方にあるらしい…」
____
北米 カナダ マニトバ州チャーチル
ハドソン湾沿岸部
ザシュッ!! ドシュッドドッ!
ボォオオオオオ!!!
グオオオオオオオ!!
ザンッッ!
ズズゥン!!
近年続く地球規模の異常気象により、現在ハドソン湾は現在は砕氷船による航路の開拓なくしては満足に湾内を移動することができないほどの凍結状態にあった。
そんなハドソン湾に流れるチャーチル川下流の真ん中で、巨大な異形の怪物二体が争っている。
グォオオオ!!グォアアアーーーッ!!!!
怪物のうちの一体は、以前欧州六月災厄でベルギーに出現した特殊生物ファルクスヴェールの同種であると思われる、黒色の大型種___ファルクスヴェールⅡだ。
そしてソレと肉弾戦を繰り広げているのは、目や鼻といった組織が見当たらないが、大きな口を持つ樹木のような化け物___ギガントツリーだ。日本に出現したソリチュラとは違い、緑葉や花弁は生えておらず、二足歩行で大地を踏み締めており、その姿は歩く口だけ人面樹と言ったところか。その濛々たる両腕は無数の鋭い棘で覆われており、振り回して相手に打撃を繰り出すだけで深刻なダメージを与えられると予測できる。
この二体も、やはりワームホールによって別世界からやってきたのだろう。
二体の怪物が振り回した攻撃の余波によって発生する見えない斬撃や衝撃波の影響で、両岸の土手に生えている樹齢数十年から百数年ほどだろう背丈の針葉樹を軒並み倒していく。
そしてそれらの動きをじっと海岸線道路から静かに注視しているのは、44口径120mmの砲身を向け、ずらりと並ぶ何十輌もの〈レオパルト2A4〉・〈M1 エイブラムス〉主力戦車と、カナダ軍がアメリカ合衆国から試験的に導入した数輌の〈M2A4 ギガンテス〉自走レールガンで構成されたカナダ陸軍大西洋地域軍全部隊からありったけかき集めて編成した機甲部隊だ。
そしてその上空にはウェニペグ空軍基地から飛び立ちやってきた、カナダ空軍所属である数十機の爆装済みの汎用戦闘機〈CF-18A ホーネット〉が飛行している。
「第1、第3野戦砲兵連隊を含めた統合任務部隊、配置に着きました。これですべての火砲の有効射程範囲内です。空軍も攻撃命令を待っています。いつでもどうぞ」
「攻撃は今暫く待て。奴らの動向を静観する」
「いいのですか?」
「奴らは互いを敵と認識し、争っている。どちらかが絶命し、残った虫の息となっている方に集中火力を浴びせて撃破する。いくら避難の完了している地区であっても、下手に刺激させ、周辺被害や部隊に損害が発生したら目も当てられん」
チャーチル市街地内に位置する戦車道用運動場には前線司令部の仮設施設としていくつものテントが張られ、高機動装甲車や〈クーガー装甲車〉、輸送トラックに〈ピラニアⅡ装輪式装甲兵員輸送車〉などが停車している。時折連絡要員と思われる隊員がテントとテントを行ったり来たりしているのが分かる。
その司令部用のテントの一つ、指揮官らが在席しているテントの中では攻撃開始のタイミングを図っていた。
ボォオオオオオオォ!!!!
ザシュッ!!__ドドォン!
「…! 後方での観測に従事していた観測機ベル5、ファルクスヴェールによるものと思われる衝撃波によって撃墜されました!!」
「……ベル4をベル5が担当していた空域に回せ」
「こちらに意識を向けていないだろう今がチャンスだと思います。アレが欧州に現れた大型種と同種かつ同等以上ならば、現在海岸部に配置している陸上戦力と航空戦力では致命傷を与えられません……レールガンも効果は薄いはずです。それにもう片方は完全な新型……何をしてくるか……」
「ハドソン湾湾外に展開している海軍にも援護をしてもらう。対艦、対地ミサイルの直撃を何発も喰らえば大型種でも撃破できるはずだ……!」
どこにそんな根拠があるのか、その場居合せた士官には分からなかった。しかし、指揮官達のその考えは慢心から来てるものではないことは明白であった。
恐らく、それらは理想的なもの…簡単に言えば祈りに近いものなのだろう。なぜなら現在集結させた戦力で太刀打ちできなければ、カナダはそれで終わりだからである。国軍がやられれば、その国には怪獣を撃退する力が無いことを世界に発信することにもなるからだ。
「植物型が残った場合は最悪、辺り一帯をナパームで焼くか…」
「しかしあのツンドラモンスターが既存の樹木構造ではない可能性が高い…。
ヨーロッパ連合陸軍機甲部隊の損失のおよそ六割がファルクスヴェール中型種の腕鎌による切断であったと聞く。つまり中型種でさえ戦車の複合装甲を容易く両断する威力を持っていると言うことだ…!」
「それがどうし___」
「大型種はそれ以上の物を有しているはず…しかしソレの攻撃を何度もあのモンスターは受けているが、映像を見てみろ、健在だっ!!分かるか!?
金属や他の特殊生物の表皮さえいとも簡単に刻んだ鎌の攻撃を受けても、猫の引っ掻き傷ほどのかわいいものしか付いていないのだ!!アレを少し硬いぐらいの木材と一緒にするのは間違いだ!!ナパームごとき、効くはずがない!!」
「落ち着け少佐!」
「他の者たちも最悪の想定をしておいてほしい!仮に片方が死亡したとしても、生き残ったもう片方に対してアメリカに支援を要請し、戦術核を使用する可能性があることを!いや、核でも生温いかもしれん…!」
「……たしかに少佐の意見も最もだ。だが先程、大佐が言っていたように我が軍は現在の戦闘に介入はせず、機を伺う…」
「…っ、…分かりました」
それは貶されることではない。怪獣は常軌を逸した天災である。ただ、次にまた…次があったらであるが、怪獣が現れた際に一国ではどうしようもできないという意味であり、単に現れ所が悪ければ国が滅びる、それだけである。
「なんにせよ、我々はあとで起こる事象を危惧することではなく、今起こっている事象と対面することが仕事だ。何もしないわけではない、そこは留意してほしい」
「司令、ではどうしますか? 爆撃隊の増派要請を?
米州機構に救援を出しますか?」
「要請はもう出していい。最悪ここでの戦闘に負けた場合、我が軍の保有する半分以上の機甲戦力と、三割の航空部隊は損失する…。そうなれば治安維持、国土防衛どころの話ではなくなる。」
「なぜファルクスヴェールは単体で動いてるのでしょうか?」
「奴はワームホールから現れたと予測されている。今回は偶然大型のみが___」
ボォアアアアアーーーーッ!!
ズガアアッ!!
ドドォオオオオオーー!!
「な、なんだ!?」
「状況を報告せよ!!」
チャーチル市街地全体が巨大な揺れに襲われた。突然の出来事に驚いた指揮官たちはテントから勢いよく飛び出した。
先程の振動によって外に停車していた戦闘車輌が複数台横転しており、下敷きになってしまっている者も見える。
振動を起こした主たちと思われる、二体の怪獣がいる方向に彼らは目を向ける。
ザシュッ! ザクッ!! ザシュ!シュバ!!
グゥウオオオオオオオオオ!!!
目線の先には、仰向けに倒されハドソン湾に前半身を沈めたギガントツリーと、それに跨りマウントを取ってひたすら斬撃を与えるファルクスヴェールⅡの姿があった。どうやら先程の揺れはギガントツリーが転倒したことによるものだったらしい。
「湾内に移ったか…機甲部隊を後退させろ!まだ攻撃はするな!! 航空部隊にも空中待機と伝えろ!!」
「わ、分かりました!」
二体の怪獣の戦闘を見ていると、ギガントツリーの様子がおかしいことに気づく。
「…もがいている…?」
「冷水……いや、海水に弱いのでしょうか?なんとか退かそうとしているようですが、力が足りないようですね」
「見てみろ!ツンドラモンスターの胴体に裂傷が!」
見ればギガントツリーの上半身は、ファルクスヴェールⅡの刺突や斬撃による深い傷溝が目立ちはじめていた。水温が氷点下を下回っているハドソン湾の海水が、ギガントツリーが海面に押しつけられる度に傷口に入っていく。海水が傷口の表面部に触れるとジュウジュウと音を上げ蒸発。大量の水蒸気が空気中に広がる。
どうやらギガントツリーの体内温度は超高温らしい。水分が大気に戻り、体表に残った海塩さえも融解してドロドロに滴っている有様だ。それがさらにダメージを与える要因となっている。
「やはりファルクスヴェール大型種の鎌の強度は脅威だ…。恐らくはあの無数の傷口から弱点であろう海水か冷水が入り込んだから、あのようにもがいて起きようとしているのか」
「これで我々の相手はファルクスヴェール…ですか」
「人類が一度戦っている相手になれば儲けものだが、まだ分からんぞ…」
だが二体の怪獣による湾内での戦いは、すぐに終わりを迎えることとなる。
まず先に動いたのはファルクスヴェールⅡであった。ギガントツリーの強固な表皮を削り、斬り、ついに内部の生命維持器官がある箇所までその凶刃は到達しかけていた。そしてトドメと言わんばかりに両腕の鎌を重ねて振り下ろしたのだ。
ザクッ!!
予想していたよりも聞き覚えのある音に近いものが辺りに響いた。それはギガントツリーの重要器官を的確に仕留めたことを意味するものでもある。
グォ…ォオォォ………!
油の切れたブリキ人形のような弱々しい動作が目立つギガントツリーを見て、ファルクスヴェールⅡは勝ち誇ったかのように雄叫びを上げた。
ボォオオオオオオォォオォオオオオ!!!!!
ビリビリと耳をつんざくような、心臓にまで叩き響いてくる咆哮が数秒続く。まだまだ叫び続け、こちら側の鼓膜との耐久勝負になると彼らカナダ軍が覚悟した矢先_
………グォオアッ!!!
ブゥン!!!___ドチュッ!!!
スライム若しくはゼリー状の塊を潰したような、小気味の良い音が聞こえた。すると先ほどまでハドソン湾に響いていた咆哮がぷっつりと止んだのだ。
カナダ軍の兵士達は目一杯塞ぎ閉じていた、耳から手を離し、目をゆっくりと開け、目の前に広がる光景への処理を始める。
ボォ…ボォォァ……ガフッ!!
何かが潰れたような音の正体は、残っていた力を振り絞って繰り出されたギガントツリーの一撃であった。
つい数分前までは圧倒的不利な状況下にあったギガントツリーは自身の持つ高すぎる闘争本能によるものか、最後の最後で凶器そのものである右腕を全力でファルクスヴェールⅡの頭部側面に叩き込んだのだ。
腕部に生えた幾本の鋭棘が、ファルクスヴェールⅡの頭部に深く突き刺さっている。ギガントツリー最期の一撃は、ファルクスヴェールⅡの頭部内を滅茶苦茶に破壊し、絶命に追い込むのに十分な役割を果たした。
ファルクスヴェールⅡが力無く右に倒れ、水柱が空高く上がる。それを見届けた後にギガントツリーの右腕もダランと落ちる。
ズザッパァアーーーーン!!
カナダ軍の不戦勝である。
「両個体、沈黙しました……」
「勝った…のか?」
「新たに偵察機並びにヘリを出せ!本当に生命活動を停止させたのか確認するんだ!!」
「いや、これは勝ちではない。しかも我々は、土俵にすら立っていなかった。…ただの観客だったよ」
市街地に仮設されたヘリポートから、汎用ヘリや偵察ヘリが続々と離陸し、現場へと向かい出していた。
「そうだ。我々の勝ちではない。我々が直接手を下し、撃破に成功したわけではないのだ。今回は偶然、奴らが敵同士であり、それで潰し合い共倒れしたにすぎん…」
「脅威が消えたことを、素直に喜べんな…」
「あの二体のサンプルを研究に回し、どれだけ今後の対応が測れるか……」
現有戦力での特殊生物への対応能力不足のために、素直に敵性特殊生物の戦闘終結は喜べなかった。
今回の戦闘と、豪州連合による特殊生物群撃滅の一件により焦ったカナダ軍は、カナダ政府に対して軍備拡充計画案を提出。予算及び組織の規模拡大を可決するよう強く要求したのだった。
自らの身を守れるほどの頑丈で強固な盾を持ち、それを扱う者には、その頼もしい盾に自身が押し潰される可能性も内在している……。
____
東ア\\\ア 日\\\\\\関\\\地方 \\\\\\府\\\\\\市
ダタタタタタッ! ダタタタタタッ!
「下がれ!下がるんだ!!」
「コブラはどうした!?なぜ増援が来ない!?」
「京都に現れたトール
「畜生!"臨界戦"で負け続けかよ!!
黒づくめの戦闘服を見に纏った男達が〈89式突撃小銃〉を構え銃口を向けている相手はヒトではなかった。
彼らは自衛隊ではないようである。
そして彼らがいる街中では、至る所から黒煙が上っており、断続的に破裂音や咆哮が聞こえてくる。
ダタタタタタッ!
ギョオオオオオオオ!!
それは中型カイロポットの分隊規模の群れであった。5.56ミリNATO弾はカイロポットの外皮を貫けずにいた。
街中の路地という路地から続々と現れ、彼ら黒の部隊の対処能力を上回りつつあった。
「グスタフを使え!!」
バシュン! ドカアン!!!
ギョォオオオオオオオオ!!!
「くそ!焦がす程度くらいにしかならないか!!」
「本部からの通達です!現在、大阪市に展開させていたキューマルを関西司令部の"あべのハルクス"まで後退させ、戦力の結集を図ると!」
「なんだと!それなら、我々情報戦闘中隊への救助はどうなるんだ!これ以上は持たないぞ!」
「1キロ後方の十字路にチヌークを寄越すそうです!到着時間は12:55!」
「ふざけるな!あと30分も___ゔっ!ぐ…ぎ!あがが……!!!!」
ボパアンッ!!
部下からの報告に声を荒げていた、隊長格の男の身体が突然膨らみだし、風船のように破裂した。辺りにヒトであった身体、赤い臓物と黒い装備品が飛び散る。
そしてその後ろの路地裏からは、ハイヒールの足音に似たカツカツといった音を立てながら、非常に細長い四肢と体躯を持った異形の生物が現れる。
「うっ!?側面からγ種!!河島隊長がやられた!!」
「なんだと!?」
「先頭部隊と分断されたぞ!くそっ!くそったれ!! 後方にはα種、部隊の真ん中にはγ種ときた!!」
「この端末群だけは本部に持ち帰らなくてはならない!死守するんだ!!これがあれば、これさえあれば…人類は再び、繁栄することが!!」
「滋賀の仲間たちの犠牲を無駄にしてはいけない!!撃て、撃てえ!!」
ダタタタタタタッ! ダラララ! タタタタタタッ!
分断された黒の部隊は死に物狂いで手に持っている小銃の引き金を引き、カイロポットとコンパスのような化け物に銃弾を撃ち込んでいく。
彼らの内の数人は、欧州連合研究所に運び込まれた機器に酷似したものを抱え持っていた。
「データを守るんだ!」
ギョオオオ!
ドガアッ!
「ぐえっ!」ベキョ!
カイロポットは自身の触手___長腕を、前に出ていた隊員の一人の胴体に高速で打突を行なった。目にも止まらぬ攻撃を奇襲という形で側面から受けた隊員は、大きく吹き飛ばされ建物2階の外壁に強く衝突。即死する。
「佐山がやられた!」
「紺野、こっちに来てカバーしろ!」
「りょ、了解!」
ダタタタタタタッ!
ギョオオオ! ギョオオオッ!
「不味い!デカイのが来るぞー!!」
「間に合わない!」
「回避だ、各自回避!」
しかし、カイロポット中型種の中を突っ切ってやってきた大型成体種が突撃することによって、大きく陣形が乱れ、崩れる。
ミシャアアアアーーー!!!!
「ぐぁあああっ!!!」
荒波の如き勢いで雪崩れ込んできたカイロポットの集団に、黒の部隊はなす術もなく飲み込まれ、全滅することになる。
その時に転がったデータ端末を、カイロポット達が飲み込んだのと同時に、上空では紫色のワームホールが出来上がっていたのだった。
どうもです。実家に帰省してゆっくりさせてもらっている逃げるレッドです。
世界中で特殊生物___怪獣がさらに猛威を奮い出しました。各国の軍備拡張は恐らく続きます。本当は何に対しての軍備なのかは、分かりませんけどね。個人的にはファルクスベール君…緑ゴーヤくんは原作内でもかなりお気に入りの特殊生物なので、再参戦させてもらいました。対戦相手であったギガント君は、ハカイジュウ本編に登場した水道橋トールタイプ三兄弟の一匹です。γ種は、たしか2巻の表紙を飾っていたはず。
ちなみに豪州連合は独自建造した空母を多数保有しています。
_________
次回
予告
地球にやってきた流浪の宇宙人、ソーレ。
アンチョビやアンツィオの人々との交流を深めていき楽しく輝かしい日常が続く。
そして次第にアンチョビとの距離が縮まっていく中で、このまま人間の姿でいてくれと言う彼女の言葉に疑問を覚えたソーレは、ついにその疑問の答えを見つける。
次回!ウルトラマンナハト、
【遥かなる恋人】!
サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)
-
紗希のトモダチ
-
ミチビキさん サンダース編
-
ミライVSマホ カレー対決
-
ハジメ、迷い家にて