逸見エリカのヒーロー   作:逃げるレッド五号 4式

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巨大異星人 ネオゴドレイ星人、登場。


第28夜 【たくさん泣いたら】

 

 

「千代美、僕は決めたよ」

 

「えっ?」

 

アンチョビは、ソーレの右手に握られている新聞の朝刊と、彼の神妙な顔つきを見て、彼が何を知り、何を決断したのかを、段々と理解してきた。それはアンチョビが危惧していたものであった。なんとなくソーレが何を言おうとしてるか分かる。だが認めたくない。

 

「ま、待て、その新聞…、ソーレ___」

 

「地球の人たちは、異星人をみんな敵だと思っているんだね……それで千代美は僕にあの日、人間の姿で過ごさないかって言ったんだね?」

 

「それは……」

 

今までやってきた宇宙人はすべて、人類に敵対的であったから…。ソーレは特別だ。

 

「……僕が以前会ったあの自衛隊の人達に伝えに行く。彼らに僕は害意や悪意を持っていないことを話すんだ」

 

「!!、やめてくれ!!お前が、いままでと同じ破壊したり征服したり操ったりするようなヤツじゃないことは、私がよく知ってる!」

 

「千代美だけじゃなくて、みんなにも話さなくちゃいけないんだ。ずっと、何かに対して誤解と偏見を持ち続けるのは良くない。だから…僕がやる」

 

地球人が宇宙からやってくる全ての存在に危険意識を持っていることを知ったソーレは、自らが姿を見せて説得すると言う。

 

「無茶だ!できるワケない!考え直せ! そんなことしたら、ソーレは死んじゃうぞ!! なんでソーレがしなくちゃいけないんだ!?

ソーレは異星人なんだぞ、もしソーレが行ってしまったら、もうこんな風にご飯食べたり、外に出て歩くこともできなくなるかもしれないんだぞ!!」

 

「僕は悪いことはしていない。これからもしない、絶対に。だから、行くんだ。分かってほしい 千代美」

 

「そんなの……そんなの……!」

 

アンチョビは台所から飛び出してソーレの前までやってきたものの、言いようのない何かが頭の中を駆け巡り、口からは同じ言葉しか出ない。次第に俯いていき、肩を震わせている。頬には涙が伝っているのが分かる。

それをソーレがそっと指で取ってやり、優しく語りかける。

 

「分かってくれないかい、千代美。これは未来にも繋がっていく大切なことなんだ」

 

「不確かな未来のことなんかよりも、今が大事だろう!」

 

「ここで隠れて、逃げ続けてしまったら、これから地球の人たちは宇宙に住む、僕と同じ心を持った異星人たちがやって来ても、信頼してくれないと思う。

…でもこれだけは勘違いしてほしくない。僕は、生命の惑星_地球にやってきてから、僕と分け隔てなく接してくれた千代美と、温かみのあるアンツィオの人達との生活は、充実していたし、嬉しかったんだ。この幸せな場所が、ずっと在り続けれるために、心無い者達に壊されないために、行くんだ。僕にとっての、憧れを守りたいんだよ。」

 

「ソーレ…」

 

「僕だって怖いさ…恐怖はどんなものにでもあり、完全に無くなることはない。ずっとここで暮らしたい。だけど、この役目は僕がやらないといけない気がするんだ」

 

ソーレの話を聞いたアンチョビは、遂に折れた。彼の瞳に決意の光が宿っている。その決意は、自分の説得紛いの引き止め程度ではどうにもならないだろうと悟ったからだ。

 

「いつ、行くんだ?」

 

「……ここで話してしまったら、千代美はその時止めにくるだろう? ごめん、言えない…」

 

「……分かった…。私は、ソーレの意思を尊重する。…だけどな、危ないと思ったら逃げるんだぞ。自分の命を大切にしなかったら、元も子もないから…」

 

「うん。分かった」

 

ソーレの返事を聞いて、少し安心しただろうアンチョビは、彼に朝食の席に着くよう促す。精一杯の笑顔を向けて。

 

「…さあ、ここでその話は終わりだ! 冷めないうちに朝ごはんを食べるぞ!」

 

「そうだね、いただくよ」

 

「……なあソーレ…」

 

「なんだい?」

 

「今日の試合、観に来てくれるよな…?」

 

「…うん。千代美たちが頑張った練習の成果を見せるところなんだから、絶対に行く」

 

「絶対だぞ」

 

「うん、絶対。」

 

 

 

 

 

 

____

 

 

同国 星間同盟秘匿地下施設

 

 

 

 

「ワロガ君、ワイアールがやられてからのプランはリフレクト君のものを採用していいと思うかい?」

 

「……知らん、勝手にしろ。お目付役として寄越された私が、先発隊の貴様らが立てた最適だろうプランに口出しするのはお門違いだ」

 

「そこらへんは律儀なのは関心できるけれど、私はキミ個人から見た、このプランの評価を聞きたいのだがね…」

 

日本の何処かに存在する星間同盟の秘密地下施設。巨大なモニター群が並んでいる作戦司令所に、ヒッポリトとワロガが立っていた。ヒッポリトからタブレットを手渡しされてワロガは己の意見を伝える。

普段は険悪な関係の彼らであっても、腐っても同じ組織の構成員だ。そこらの分別は出来ている。

 

「………私から見て、このプランは一言で表すとしたら、コレは能無しだ」

 

「ふむ。大方そうだろうと思っていたよ」

 

「ただただ無差別な破壊と殺戮を繰り返す……知的の欠片も無い。このようなプラン、鹵獲ギャラクトロンや旧ベリアル軍のレギオノイドにやらせてもいいくらいのものだ。それほど、単調すぎる。

複数の副次目標が非達成になる可能性が高い。同化シナリオ失敗後に再指定された、地球を無傷に近いカタチで接収するという貴様ら先発隊が打ち出した方針と矛盾する」

 

「厳密に言えば地球環境さえ修復可能なレベルであればどうなっても構わない。

地球人類の文明を完膚なきまで叩き潰しても良いのだよ。大多数の生物とほんの少しの地球人さえ残っていれば、問題は何ら一つ無い」

 

「敵意の持っていない、従順な消費資源を減らすことは愚案であると思うがな」

 

「ワロガ君…この地球にはウルトラマンナハト、そして地球怪獣が存在している。

ここの地球人類は彼らがいることで我々のような宇宙からやってくる存在を大した脅威としてみなしていないのだ。

自分たちは負けることはないと思ってる地球人らを言論で手懐けようとしても無駄。ならば純粋かつ単純、圧倒的な暴力、理不尽、恐怖を与えなくてはならない。だからこそのこのプランなのだ。馬鹿な作戦に見えるかもしれないけどね、低脳な地球人類にはこの馬鹿で野蛮なぐらいが一番効果的で、こちらの意図が伝わりやすい」

 

「そのための、ヤツか…あの戦闘種族は私は嫌いだ。向こうのヤツらは本当に言葉が通じているかすら怪しい…」

 

「彼は簡単な命令は理解してくれるし、種族の中では優秀な部類だよ。…まあ、今回も捨て駒程度に見ていようじゃないか」

 

「………下衆が…」

 

「キミには負けるよ。……私だ。リフレクト君、ゴドレイに出撃準備を伝えてほしい。タイミングはこちらから指令する」

 

『ハッ!承りました』

 

 

_________

 

 

静岡県 静岡市 市街地

 

 

 

 

ドドォオオン!

 

ズガァアーーーッ!!

 

「わあーっ!すごいよハジメ、連れてきてくれてありがとう!!」

 

「あんまりはしゃぎすぎるなよ? 他の観客の人とか、相手校の生徒もいるんだから」

 

「わ、分かってるさ!」

 

時は早朝から昼過ぎまで進み、場所も変わって清水港ではなく静岡市内。現在、市の海岸線に沿っている地域をアンツィオ高校と黒森峰学園の練習試合会場として、試合が始まっていた。

ハジメ達は今試合の臨時観戦エリアとして指定された市内球場のスタンドから、グラウンド内に設置された大型モニターを介して試合の動向を見守っている。そして、今日は珍しくハジメと共に観戦しているのは、ヒカルやマモルではなく地球人に擬態しているイルマである。二人は中央スタンドの一般席に座っている。

 

「ねえ、相手の…アンツィオ高校だっけ?…黒森峰より、みんな戦車ちっちゃいね」

 

「だけどすばしっこくて油断は出来ないぞ」

 

他の整備科メンバーらは離れた席に陣取って観戦している。これはハジメが佐世保から来て合流した体のイルマに戦車道を教えてやると話をしたため、それなら邪魔はしないようにと彼らなりの思いやりによるものである。

試合は中盤に差し掛かっている。やはり火力・装甲、そして練度に勝る黒森峰が優勢で進んでいた。そんな戦況と、相手の保有戦車を見たイルマは、上記のような感想を溢し、相方のハジメがその考えを咎めていたのがこれまでの流れである。

 

「でもさぁ、それぐらいじゃん、黒森峰に勝ってるとこ。今回も絶対に黒森峰が勝つよ!」

 

「素直に喜んでいいものか…」

 

 

「___勝負は最期まで何が起こるか分からないものだよ」

 

「「え?」」

 

話に割り込んできたのは、ハジメの隣に座っていた大人びた雰囲気を持つ少年だった。

 

「な、なにを根拠にそんなこと言うのさ!」

 

「大局的な戦いであれば、相手が勝つだろう。だけど、局地的な……小さな戦いではどうだろうね」

 

その言葉を聞いた直後、スクリーンでは本隊の増援として向かうべく、狭い路地を進んでいた黒森峰の〈Ⅳ号駆逐戦車〉 が、C.V.33数輌、セモベンテ M40一輌による数方向からの集中射撃を受け、履帯が破壊されていた。

アンツィオ側には地元特有の土地勘があった。自慢の快速を活かした高機動の撹乱作戦に打って出たのだ。彼の言った通り、アンツィオは局所的ながらも小さな勝利を掴んだのだ。

 

「弱い者には、弱い者なりの戦い方がある。そして、僕は彼女たちの工夫と頑張り、そしてその努力を見てきた」

 

「もしかして、アンツィオの整備科の人ですか?」

 

「いいや、違うよ。ただ彼女達の、打ち込む姿を見ていただけの存在だよ」

 

アンツィオのOBだろうかとハジメは予想していた。しかし、掛けられた次の言葉でその予想はハズレとなる。

 

《キミが、この星を守っている戦士…ウルトラマンナハトだね。そして横にいるのはザラブ星人の友達かな》

 

「っ!?」

 

頭の中に届いた、かの少年___ネリル星人ソーレの言葉に、イルマはあからさまに動揺し、ハジメは目を見開いて立ち上がる。ハジメは懐のアルファカプセルを握ろうとした時、今度はテレパシーではなく直接口を開いてソーレが、ハジメに変身する必要は無いと話す。

 

「僕はソーレ…ネリル星人ソーレ。流浪の身で、千代美に助けてもらった。この美しい命の星を侵略する気も、破壊する気もない。だから座ってほしい。試合を観ながら話そう」

 

近似宇宙の異星人の存在を、ザラブ星人であるイルマも知っていたらしく、ハジメに彼の種族に心当たりがあることを伝える。

 

「ネリル星人と言ったら、全方位穏健外交を取る異星人として知られていたよ……でも母星の崩壊によって外交機関も閉鎖してからは僕ら他の宇宙人とは接触すらしなくなった。星系外に脱出した以降は消息は切れたままだって聞いたことがある」

 

「そうなのか…? それに千代美って……もしかして安斎さん?アンツィオの隊長の」

 

「うん。彼女に、地球の色んなことを、教えてもらった。人々の温かさにも触れた。動植物の生命の風を感じられた。ここは…地球は、僕が憧れていた場所そのものなんだ」

 

ソーレの様子を見たハジメは、彼から害意を感じることはなかった。ソーレの言葉を信じることにしたハジメは、最後の念押しをする。

 

「……本当に、悪事はしないんだな?」

 

「もちろん。それに、この試合を見終えたら、僕はこの国の防衛組織…自衛隊の人に、知ってることのすべて話す。千代美も了解してくれた」

 

了解を取った…ということは、ソーレはかなりの信頼をアンチョビから得ていると分かる。

 

「なぜそんなことを…?」

 

「キミの友達や僕のように擬態できない、これからやってくるだろう地球を愛する異星人達、後にやってくる同じ心を持った仲間たちの為に。僕がやらなければならない」

 

一種の自己犠牲か、それとも"次"の者達にバトンを繋ぐための勇気ある行動か……数回会話を交わした程度で彼の真意は測れるものではなかった。ただ、善意からこの人物は動いている、そうハジメとイルマは感じた。人類に仇をなす存在ではなく、寧ろその逆だ。

 

「最初に出会った地球人である千代美は、僕に親切にしてくれた。同じくアンツィオの人々も、みんな。だから、これは僕なりの恩返しでもあるんだ」

 

「研究や、解剖されたりするとしてもかい?」

 

「当たり前のことだよ。これまで真正面から地球にやってきた異星人は侵略目的だった………覚悟は出来てる。僕は、僕の持つ信念を貫く」

 

これほど優しさの中に、強い心が内在している人物は今までいただろうかとハジメは思う。一通り話し終えたソーレは、試合観戦の方に意識を移した。試合はいよいよ終盤といったところだ。

彼にとって、これが最初で最後の、一人の少女との思い出の記憶となるだろう。

 

「千代美たちの努力は無駄じゃない。彼女たちを動かしているのもまた、憧れなのだから」

 

「憧れ…」

 

「僕の故郷の言葉では、"サ・ヌーシュ"と言う。星全体の理念でもあったんだ。きっと、千代美たちも、目指している大切ものを見つけるために頑張っている。そんな一生懸命な姿に僕も憧れた。…好きなんだ」

 

「そう…なんだな……」

 

地球人の勝手な思い込みや偏見を、自分の命と一生を捧げて正そうとしている友好的な異星人がいることを、大多数の人間が知ることは後にも先にも無いだろう。それでも、彼はやる。成し遂げようとしている。

ハジメはそれをどうしても他人事として処理できなかった。自分も、イルマがいなければ大勢の中にいたかもしれなかったのだから。

 

___ズガァアンッ!!

 

パシュッ!

 

『アンツィオ高校フラッグ車、P40走行不能!!

よって、黒森峰学園の勝利!!』

 

長いようで短かった試合が終わった。日も傾き出している。

ソーレは、撃破されたP40のキューポラから顔を出しているアンチョビのスクリーン越しの姿を、目に焼き付けると、席を立って去ろうとする。

 

「それじゃぁ…僕は行くよ」

 

「安斎さんに一声掛けたりしないのか?」

 

「彼女とは、また会うと約束したから」

 

そう言ってソーレはスタンド席の階段を降りていく。ハジメとイルマはその背中を見ていることしか出来なかった。なんとも言えない空気が周りに漂う。

 

「なあ、イルマ……俺たちが出来ることって、ないのかな」

 

「……ゴメン。僕も分からない…。あんな風な行動を取れなかった僕が言えることはないと思うから…」

 

「そっか…」

 

 

 

 

 

 

場面は試合後の挨拶を終えて、アンツィオと黒森峰の交流会のようなものが始まっている所に変わる。

両校の健闘を祝しての宴会の準備段階に入ったという意味でもある。手の空いてるアンツィオの生徒達は積極的に黒森峰の生徒と交流を図っていた。

 

「そっちの機動戦術はすごかったわ! もっと火力があったら、危なかったかも…」

 

「やっぱ火力が足らなかったかぁ…!」

 

「ウチも軽戦車の導入とかした方が」

 

日常会話から、戦車道についての会話まで、幅広く行われる話し合い。意外にも両校は気が合うようで、宴会前から盛り上がりを見せていた。

 

「安斎、今日の練習試合、受けてくれて感謝する」

 

「アンチョビだ!! …そんな堅苦しい話し方するな、まほ」

 

「む、堅苦しいか?」

 

「二年の時よりマシだが、まだまだ堅い」

 

少し離れた場所では、黒森峰の隊長であるまほと、アンツィオの隊長、アンチョビが二人で談笑していた。

同い年かつ知り合いである二人の距離は、他校の隊長と接している時よりも親密である。

 

「善処する……それはそうと、どうだ、チームの方は?間もなく抽選も始まるが…」

 

「ウチの生徒達はみんな素直で良い奴らばっかりだからな!チームワークに関してはどこにも負けてない…じゃなかった!勝ってると思うぞ!!それとだな、まほ達にも紹介したい仲間がいるんだ!!」

 

「新しく入った選手か?」

 

「いや、そのなんて言うんだろ……ま、まあ、兎に角いいヤツなんだ。多分今日まではここにいるだろうし、試合も観てくれてたはずだから」

 

「………恋人か?」

 

「なっ///!?なんで!じゃなくて、どうしてそう思うんだ!」

 

「西住流の勘だ」キリッ!

 

「くっ、なかなかやるじゃないか………」

 

友人という関係故の軽いおふざけも交えながら、終始笑顔で二人は話している。

そして、先ほどまでの話題を切り、意を決して口を開いたのはアンチョビだ。

 

「なあ、試合前から思っていたんだが、妹の…みほの方はどうしたんだ? 姿が見えないが、あの試合以来、練習とか参加してないのか?」

 

「………みほは、自分に責任があると思って、一人でそれを背負ったまま、黒森峰からいなくなった」

 

「退学、したのか?」

 

「いや、最近…二日、三日前にようやく大洗女子の方に転校してたことを確認したとお母様から聞いた。どうやら戦車道の無い高校に行ったらしい」

 

「まほ達は、それをどう思ってるんだ…?」

 

「それがみほの選択なら、私はそれを尊重する。お母様も同じとのことだ。チームメイト…特にあの試合に参加していた三年生と二年生はみほの行動を恨んだりはしてない。整備科の方だと、みほの安否を聞いて安心したのか気絶した奴もいたよ」

 

「あぁ…アイツかぁ…、誰か分かったぞ」

 

「まあ、私も同じ気持ちだったし、出来ることならすぐに連絡を取りたかった。だがみほの方がこちらからの連絡をどう受け取るかは何となく予想できる。だからまだ電話も掛けてない」

 

「そっちも、大変だったんだな…」

 

「私も、色々あったが…自分が目指す道を見つれたんだ。だから、みほも、みほの道を見つけていてほしい…」

 

「妹想いなのは相変わらずで安心したぞ……早く会えるといいな」

 

「ああ。ほんとうに…」

 

「もう少しで宴会の準備も終わりそうだな……あ」

 

次の話題はどうしようかとアンチョビが悩んでいると、視界の隅にソーレが映った。こちらに来るのだろうか?朝はああは言ったが、ソーレが自分の下から離れる具体的な日と時間は話してこなかった。

 

「どうした安斎?」

 

「さっき話した、私の友達だ。おーい!ソーレ!」

 

ソーレはアンチョビの呼びかけに反応することなく、歩いていく。

宴会に使うこの場所は芝生が広がる、駐車場手前の場所。よくグラウンド入場前に野球チームがアップに使うような所である。

 

「あれが安斎の恋人か」

 

「だから違う。ソーレ、待て!聞こえてるだろ!」

 

ソーレとの距離は遠くはない。聞こえないといったことはないはずだ。

 

___千代美は止めにくるだろう?___

 

アンチョビは思わずハッとした。今がその時なのだ。球場の駐車場___警察と共に会場警備の任に就いている自衛隊がいる仮設テントの方へと向かっていることに気づいたからだ。

 

今か、今なのか!?

 

人間、案外よくできてはいない。あとからひっくり返したくなるものもある。後から理不尽に感じてしまうものもある。認めたくないものがある。頭で分かってはいるがそう簡単に分別できないものがある。

 

「お、おい安斎!いきなりどうしたんだ!」

 

気づいた時には駆け出していた。

彼を止めるために。約束したのに、自分はそれをまだ処理できていなかったのだ。

 

 

 

 

「ん、お兄さん…あの時のアンツィオの」

 

「アンツィオ、今日は惜しかったっすね…」

 

ソーレが会ったのはアンツィオに来た初日の夜、異星人である自分の情報を探しにきた特生自衛官、伊丹たちであった。以前は二人だったが、元から所属していた部隊___"第3普通科中隊"第1分隊と今回は会場に来ていたのだろう。他にも数人の自衛官がいた。

20メートル弱。自分と、武装した自衛官との距離である。そして意を決したソーレは口を開いた。

 

「僕はソーレ!ネリル星からやってきた宇宙人だ。僕に、地球を害する意思はない。話し合いにきたんだ!」

 

「…おいおい、お兄さん、その話は本当か…?それがウソなら…」

 

伊丹の目がいつもの緩んだものから、自衛官のそれに変わった。口調こそ、接触したあの時の穏やかなままであるが、その態度は違う。

他の隊員らも座っていたパイプ椅子から立ち上がり、こちらを警戒している。拳銃のホルスターに手を伸ばしている隊員も見受けられた。

異星人というのがウソであっても、異常者、若しくはテロリストの可能性も十二分にあるからである。

 

「これで…信じてもらえるかい」

 

「「「!!」」」

 

ジャキッ!

 

「両手を上にあげて後ろに組むんだ!!」

 

一触即発。この言葉一つで表現できる状況となった。ソーレが擬態を解いたために、伊丹達が即座に銃を抜いたからである。

伊丹は目の前の少年が突然異星人へと変身したため、89式小銃を構え叫んだ。ソーレはそれに素直に従う。

 

「き、キミがあの発光体の正体だったんすか!?」

 

「隊長、発砲の許可を!」

 

「落ち着け栗林、相手はこちらの指示に従っている。早計な判断はやめろ。それとおやっさん、本部に連絡して。古田ぁ、周りの子ども達を退避させろ」

 

「「了解」」

 

周囲の人々も異変に気づきはじめた。いきなり自衛官が叫んだかと思えば、銃を構えており、それを向けられているのは謎の異星人ときたら、誰であれすぐに状況を整理はできなくとも認識できる。

 

「なにあれ…宇宙人…?」

「すごーい!はじめて生で見た!」

「ねえ、離れた方がいい?」

 

「みんな下がって!早く離れるんだ!」

 

「ウソ…あのお兄さん、宇宙人だったんだ…」

「それじゃあお兄さんに私たち、騙されてたの?」

「侵略、するのかな…」

 

伊丹達がソーレの拘束を始め、他の隊員が回してきた黒いカラーリングの〈軽装甲機動車〉の後部座席へと乗せて連行する直前に、アンチョビがやってきた。

 

「お嬢さん、これ以上はダメだ!通せない!!」

 

「ソーレッ!! やっぱりダメだ!行かないでくれ!離せ、離してくれ!私はアイツに用があるんだ!!アイツは友達だ、侵略なんてしない奴なんだよ!!」

 

「千代美……やっぱり来ちゃったんだね…」

 

「………ほら、早く乗りな。」

 

「さようなら、千代美。僕はキミのことが___」

 

バタン!

 

「ソーレ!ソーレェ…!!」

 

後半の言葉は聞こえなかったが、アンチョビは呼びかけ続けた。しかし、無情にも装甲車の扉はソーレが乗ってすぐに閉められ、発進。

アンチョビの声がソーレに届くことはなかった。

 

「うぅ…ソーレ……」

 

「ドゥーチェ!」

 

「アンチョビ姐さん!!どうしたんすか!?」

 

「安斎…!なにがあった?」

 

「アイツが、ソーレが……連れてかれた…」

 

「「「えぇ!?」」」

 

項垂れるアンチョビの横にまほや他のアンツィオ生徒が駆け寄り、事情を聞く。

ソーレが連行される様子と彼が姿を変えた時、この場に居合せたアンツィオの生徒らが、あとからやってきたまほ達に説明する。説明していた殆どの者に落胆の色が濃かった。

 

「ソーレさんがまさか宇宙人だったなんて」

 

「それがどうした!?アイツは友達なんだぞ!何も悪いことしていないのに…なんで拘束されて連れてかれるんだ…」

 

「姐さん…そろそろ宴会始まるっすよ、その…」

 

「安斎、ここにこのままずっといるのはあれだろう。私たちに話してくれないか…お前の話を聞きたい。立てるか?」

 

「あ、ああ……聞いてくれるか…? …ありがとう」

 

アンチョビは取り敢えずまほ達に連れられ、野外宴会会場へと歩くことにした。ソーレへの一抹の不安を拭いきれぬままではあったが、ここで沈んでいるよりは、誰かと話している方がマシだと思ったのだろう。

 

______

 

清水区 国道1号線

 

 

 

「ソーレ、キミはあのまま地球人の姿をしていたら、こうはならなかったんじゃないのか。あの変身能力ってのは制限とかも無いんじゃなかったのか?

あの女の子、泣いてただろ。キミのことを心配して___」

 

「やらないといけないと思ったんだ」

 

現在、ソーレを乗せている軽装甲機動車は、各地で警戒に当たっていた部隊の装甲車輌を護衛として数輌伴わせ、一時的な交通規制を取らせた国道を走行していた。

ソーレを乗せた機動車には、助手席に伊丹、運転を倉田、左後部座席に栗林が搭乗しており、他の隊員らは後ろに続いて走っている高機動車数台に分乗して追従している。

 

「なぜだ?」

 

「この広い宇宙には、他種族と友好的な交流を進めたいと思っている宇宙人も多くいる。もちろん、その逆も」

 

「…たしかにそうだな。人間にも、悪さするしょうもない奴らはいる。大多数の人間が宇宙人にも良いやつ悪いやつがいるってこと、考えれてもいいんだが…」

 

「仕方のないことだと思う。異星人はこれまで何度もこの星にやってきては、侵略をしようとして、その度に倒されてきた……。

人間は、地球人は、異星人に気をつけなければならない。未知の存在というものは、面と向かって会わなければ、本性すら分からないのだから。僕が軍人か科学者という立場にいたら、同じことをしている」

 

「なぜ逃げない…あの日の夜と同じように、発光飛翔体となって飛ぶこともできんじゃないのか。こっから先は、俺たちにも分からないことばっかりなんだ。何されるか分かったもんじゃない。安全も保証しかねる」

 

「それは何度も考えて、やると決めたこと。あなた方と接触した時には、もう後戻りは出来なくなっている。今逃げれば…人類から信頼を二度と得ることができなくなる。当然、その機会も」

 

伊丹はソーレの発言に対して、そうかとしか言えなかった。任務に私情を挟むのは厳禁である。個人的な感情に動かされ、独断で捕縛対象を解放することは許されないのは伊丹自身がよく理解している。

しかし、以前のソリチュラ事件にてネオワイアール星人と会敵し、宇宙人の射殺を経験した伊丹には、今話している異星人ソーレが人類に害を与えるに足る者ではないと確信していた。それ故にやるせないという気持ちが、胸の中を支配していた。

 

「…!! ……来る!」

 

「何が?どこに?」

 

いきなり沈黙を破り声を上げたソーレに、伊丹は問う。ソーレは伊丹の方へ顔を向けず、後ろに見える清水区市街地___アンチョビ達がいるだろう場所をずっと険しい顔で見ている。その様子の変化を横にいた栗林に気づかれ、訊ねられる。

 

「アンタの仲間か何かが来るってこと?」

 

「違う…アレは、悪意を持った…敵………いけない!」

 

ソーレは何かを止めようとするかのように、車内で緑色の光粒子体へと変身すると、車窓をすり抜けて清水港の方向へと飛翔していった。

 

「ちょっ!?ええ〜!嘘でしょぉお!?」

 

「あっ!?」

 

「……行っちまったなぁ。おい、倉田は前見てろ」

 

「隊長!呑気なこと言ってる場合じゃないですよ!逃げられたんです、やはり敵性異星人だったんだ!」

 

「それは…………とにかく、俺が上に報告する!その後すぐに発光体を追跡し、可能であれば確保するぞ。栗林、後続の連中に通達頼めるか」

 

「…了解」

 

 

「敵が来るって…お前はいったい、何をする気なんだ……地球人でもないのに…」

 

 

すぐさま幹線道路をUターンし、静岡区市街地へと戻るために全速力で走行する特自・陸自車両群。

伊丹が司令部に連絡を入れるべく、車内の無線機に手を掛けた時だった。その司令部の方から緊急連絡が入ってきた。

 

『現在静岡市内に展開中の全部隊に通達!! 御前崎の警戒団が清水区沿岸部上空に"(デン)"の強力な反応を感知した!先日の反応の数倍の強度とのこと!各部隊は早急に市街地に展開し、市民の避難誘導並びに敵性存在の撃退準備に入られたし!!』

 

「ワームホールの反応がこのタイミングで!?」

 

「アレの本隊か何かがやってきたんですよきっと!」

 

「相手がなんだろうが関係ない。俺たちは小型中型特殊生物ならそれらの駆逐、大型並び特大型以上なら避難誘導の任に就くだけだ。

倉田ぁ、もっとスピードあげろ!今はいいんだよ、緊急事態だからな!……ワームホール出現から怪獣が降ってくるまで、これまでのものを合わせれば凡そ平均15分。どれくらい出来るか、だな…」

 

伊丹が、徐々に市街地へと近づいていることによって、清水区上空のワームホールが視認できるようになってきたと思ったその矢先、急にワームホールの色彩が黒紫色から、朱色へと変化した。

 

「色が…赤くなった………まさか!!」

 

ジジジジッ………ヒュドォン!!

 

そしてそこから白桃色の球状エネルギー体が表出。高速で地上へと降下したエネルギー体は、市街地のど真ん中に落着した。

ピンクの光が収まると、地上に落着したエネルギー体は人型へと変態した。伊丹達はまだまだ市街地到着には早い距離だが、そこからでも人型存在を視認できるということは、相当な大きさである。つまりは日本各地に襲来した異星人たちと同等の存在がやってきたことを意味する。

 

「くそっ!今回もインターバルは無くなるのかよ!!」

 

日本の異星人襲来は、奇襲と言っていいタイミングで始まることが殆どであった。その原因については、転移してくる側___敵性異星人が、転移時間の短縮などを促すなんらかのワームホール技術を使用している可能性が高いと、生総研が予測を出していた。今回もそれに当て嵌まる事案だろうという伊丹の考えは的中した。

 

ヴヴヴヴヴヴヴ…

 

市街地に立つ巨大人型異星人の見た目、雰囲気からは、人類と歩み寄ろうとする姿勢は到底見受けられなかった。先ほどまで会話をしていたソーレと比べると、やはりそう思うのだ。

 

「面倒ごとは向こうから歩いてくるってか!」

 

 

_________

 

 

静岡市清水区 市街地

 

 

 

ヴヴヴヴヴヴヴ…ヴヴヴヴヴヴヴ…

 

 

先ほど市街地に降下した巨大人型存在___星間同盟の戦闘兵士であるネオゴドレイ星人は、自身の出現を知らせている災害警報の喧騒を掻き消すほどの無機質かつ不気味な羽音、もしくはなんらかの機械音に近い音を発しながら直立不動の状態を維持していた。

 

『静岡市に、特殊災害警報が発令されました。未確認の大型特殊生物が、静岡市内に出現しています。市内並びに、隣接する区域に在住の市民の皆様は、早急に避難を開始してください。また、避難時には自衛隊、警察、消防の指示に従ってください。

繰り返します___』

 

空自の警戒団から、ワームホール出現の直接通達を受けていた静岡市は、数分前より避難勧告を開始。しかしながら、あるはずだった時間的な猶予が消え去ったため、全くと言っていいほど対応は進んでいなかった。

 

 

ヴヴヴヴヴヴヴ…ヴヴヴヴヴヴヴ…

 

 

ネオゴドレイ星人の出現は唐突だった。なにせ黒森峰とアンツィオの戦車道チームによる宴会の真っ最中に起こったのだから。アンチョビがソーレと出会ってから今日までのことを、まほ達数人に包み隠さず全てを話していた。話し終えたアンチョビは気が楽になったのか、心の落ち着きを取り戻しつつあった時に、彼女の状態を見計らったかのように、奴は現れたのだ。

 

「怪獣……?」

 

「いや、違う…あれは多分、宇宙人だ。安斎、アレは知ってるか?」

 

「知らない…」

 

「と、取り敢えず、隊長、ここから離れましょう!距離はたしかにありますが、アレがこのまま動かないとも、こちらに向かってこないとも限りません」

 

「そうだな。安斎、宴会は中止して___」

 

 

ヴヴヴヴヴヴヴ…

 

『服従セヨ』

 

異形の異星人、ネオゴドレイ星人を見ても、口にあたる器官は見受けられないが、確かに、一言、そう喋った。

 

『我々ハ、星間同盟。服従セヨ、地球人類。繰リ返ス服従セヨ。服従セヨ』

 

ヴヴヴヴヴヴヴ…

 

___バシュウン!!! ドガァアアン!!!!

 

再び口を開いた後、見せしめとしてなのか、ネオゴドレイ星人は先端が銃口のような形状をした自身の右腕から、右隣に建っている灯りの灯っていたオフィスビルへ水色の光弾を一発、叩き込んだ。まだ、上階から避難出来ていなかった人々がいただろうことは、想像に難くない。

瞬く間に市街地上空に黒煙が立ち上り、隣接する建造物へも火の手が回り出した。たちまち、辺りは地獄へと変わった。それは遠巻きから見ている安斎達に危険を知らせるサインとしては十分なものだった。

アレは敵である。これだけでも分かれば何をすべきかは少女達でも自ずと結論は出せた。とにかく、アレが現れた方角とは逆___学園艦が停泊中である清水港方面に逃げるのが最善手だと。

破壊行動に乗り出したネオゴドレイ星人に背を向けて逃げる中で、まほ達は知っていながらも、アンチョビに聞かずにはいられなかった。

 

「安斎、あの宇宙人は…!? もしかして、そのソーレが呼び出した___」

 

「知らない!ソーレは絶対そんなことしない!!」

 

 

『服従セヨ。服従セヨ___』

 

街中のスピーカーから市役所員による呼びかけが続いているが、それを上回る音量でネオゴドレイ星人は人類へと勧告する。それも、感情の抑揚を一切感じさせない声色で、淡々と告げる。何度も、同じことを。人類の降伏を。

 

バシュゥウン!!! ズババババッ!!

 

『服従セヨ』

 

ネオゴドレイ星人が両腕を向け、その先端が発光する度に、それを向けられた方向に存在するものが爆発する。人も、乗り物も、建物も、すべて等しく消え失せていく。

 

「急げ巻き込まれるぞ!!後ろを見るな!!」

 

「わ、わかってる!!」

 

時折、爆発音だけでなく、人の悲鳴と思われるものが背後から聞こえてくるが、まほ達はひたすら走っていた。 

 

『服従セヨ』

 

残念ながら先ほどのエリカの予測は当たり、ネオゴドレイ星人は吸い寄せられるようにまほ達と同じ方向、清水港へと侵攻を開始したためである。

市街地内に展開していた陸自・特自部隊は警察と消防と共に市民の避難誘導と敵対存在に対する攻撃という同時に対処しなければならない事象が発生したことによって、ネオゴドレイ星人の侵攻を阻止するほどの組織的行動を起こせないでいた。福岡のギャオス戦と同じ構図である。現在投入している自衛隊の最大火力は、16式機動戦闘車の105mm砲であった。

 

「エリカ!整備科や一年生はどうした!?」

 

「すいません、逸れた可能性が高いです!ですが非常時の動きは全員覚えているはず…」

 

「うおっと!?あ、まほさんに逸見さん!」

 

「マモルじゃない、どうしたの!?」

 

航空戦力も、足止めとして動かなければならないのだろうが、そもそも現着しておらず、たとえ到着したとしても民間人への誤射も考えられるため、まともに手を出せないだろう。本格的な反撃の前の繋ぎとしてか、散発的な攻撃が続いているが、それらも長くは持たないだろう。

そんな時、まほ達が固まって走っている横に、人混みをかき分けて、作業着を汚したヒカルとマモル、そしてその二人にがっちりと掴まれたハジメが転がり込んできた。

 

「その…またハジメとはぐれちゃうところだったんだ…」

 

「ハジメには悪いが、こうして引っ張らせてもらったってわけだ……てかハジメがうろうろしようとしなければ無駄に体力使わんで済んだんだけどな!」

 

「こんの、バカジメ!!」

 

「ご、ごめん…」

 

「…あとで説教よ!今はとにかく逃げる!!行くわよ!!」

 

エリカが三人組と合流し、まほ達の方へ追いつこうと再びペースを上げて走ろうとした時だった。

ネオゴドレイ星人の侵攻方向上に、昼間のように明るく街を照らす光の柱が現出した。

 

「あれは!」

 

「ウルトラマンナハトか!!」

 

 

シュワッ!!

 

シュババッ!! __ドドォーーン!!

 

光の柱が完全に消え切る前に、中からナハトが牽制光線___球状のナハトショットを素早く両手からそれぞれ一つずつ、ネオゴドレイ星人の頭部目掛けて撃った。二発とも命中し、ネオゴドレイ星人から火花が散るが、侵攻速度に衰えは感じない。

 

『服従セヨ、ウルトラマン。服従セヨ、地球人類』

 

ヴヴヴヴヴヴヴ…‼︎

 

バシュゥウン!!! バシュゥウン!!! バシュゥウン!!!

 

グアアッ!?

 

《くそっ!!このままだと、突破される…!!》

 

間髪入れずに光弾と光線を交互に撃ち続けるネオゴドレイ星人。攻撃の威力もさることながら、それらの発射ディレイは今までのどの異星人よりも短く、正に隙は無い。

 

『服従セヨ。服従セヨ…!!』

 

ナハトの勢いがあったのは本当に序盤だけであった。終始今は圧倒されている。連続かつ超速の攻撃に晒され、防御技___ストーム・バリアも満足に張れず、仮に張れても高威力の光線に破られる。ジリ貧だった。

 

デュ、デュアッ!

 

《これ以上…ッ!好き勝手にやらせるもんか!!》

 

足掻こうとするナハトは光線と光弾を、背後の通りにいるアンチョビやまほ、エリカ達や避難中の人々を守るために自らの全身を盾にして浴びながらも、両手に黄金色の三日月光輪を形成、投擲する。

 

ガッガキィイイイン!!

 

シュア!?

 

《は、弾かれた!?》

 

ネオゴドレイ星人は、両腕を素早く横に振ると、ナハトの放った光輪を正確に弾いた。

相手に光線技だけでなく切断技に対しても耐性があると分かった以上、ナハトの攻撃の手数が少なくなるのは必然である。積極的な攻勢に移れないでいるナハトに、ネオゴドレイ星人は先程の三日月光輪による攻撃が無かったかのように攻撃の手を緩める気配はない。

 

バシュウン! バババババシュッ!!

 

『服従セヨ。服従セヨ。服従セヨ___』

 

グッ……ジュアッ!!

 

ナハトは劣勢。自衛隊も市民が作戦区域にいる以上下手に手出しが出来ない。状況は悪化の一途を辿っていた。

 

『清水が…!』

 

『攻撃は待て。作戦区域内にはまだ多数の民間人が確認されている。攻撃許可が下りない以上、我々は待機する。』

 

『黙ってやられているのを見てるだけなんて…』

 

『これだと、なぜここまで来たのか、分からないじゃないですか!!』

 

百里基地より、爆撃主体の装備である対特殊生物C兵装に換装した空自の飛行隊___中部方面隊所属の、第7航空団第3飛行隊のF-2戦闘機___四機が丁度静岡市上空に現着していた。

しかし上記のように、避難中の市民を巻き込んでの安易な空爆は出来ないとし、一向に進まない避難活動と陸上での散発的な陽動・反撃、それに対してのネオゴドレイ星人の撃ち返し、そして防戦一方のナハトを見守るしか、航空隊の取れうる行動はなかった。

 

 

ズドォオオオーーーン!!!

 

 

「こっちです、早く地下道へ!!」

 

「姿勢を低くして!足元に注意しながら!」

 

「近すぎるっすよ!!」

 

「口動かすなら体も相応に動かせ!」

 

戦場と化した清水区市街地には、陸自の機動戦闘車中隊だけでなく、伊丹達の特自第3普通科小隊が市民救出のために展開していた。

伊丹達はその中でも最前線である中心部付近にまで入り避難誘導とその支援を決死の覚悟で行っていた。ちなみに先程、二つ隣の通行路に展開していた一個分隊が避難していた市民諸共蒸発している。市街地内はそれほど危険な地帯へと化していた。

 

ダタタタタタッ! ダタタタタタタタタタッ!

 

「大丈夫ですか!手を貸します!!」

 

「栗林、そろそろ俺たちも下がるぞ!」

 

「了解です!……アレは…」

 

「どうした栗林!」

 

「あの例の宇宙人が、あんな所に!」

 

栗林の視線の先には、避難する民間人の最後列の集団___アンチョビやまほ達、戦車道履修生の中に混じっているネリル星人ソーレがいた。

しかし、何やら様子がおかしい。ソーレと、緑髪の少女が周辺に火柱がひっきりなしに上がっている危険な状況下で、立ち止まって言い合いをしてるように見える。

 

 

「___千代美、キミにどうしても話しておかなければならないことがあるんだ…」

 

「ソーレ、早くソーレも逃げないと!」

 

「いいかい千代美、僕の後にも、この美しい惑星を好きになって地球の人たちと心の底から友達になりたいと思う異星人がきっと現れる」

 

「そ、ソーレ…」

 

アンチョビは半泣きの状態である。話が進む毎に、彼がどこかへ行ってしまうような言いようのない感覚が強くなっていくからだ。

 

「泣かないで、千代美。彼らは、僕らのように地球の人々の姿になれるとは限らない……彼らは、異星人の姿をしてるせいで…侵略者だと思われてしまう。でも、その前に過去に一人でも、本当の友達なれた異星人がいるのなら、少しは変わると思うんだ…」

 

「もうはなさないでくれ!私たちと一緒に逃げるんだ!頼む…頼むよ……」

 

「僕は最初の一人になりたい。だけど、今目の前でこんな酷いことをしている異星人を、僕は見過ごすことも、許すこともできない」

 

「待て…待ってソーレ…」

 

ソーレに縋り付くアンチョビはほぼほぼ前が見えなくなっていた。大粒の涙が流れている。彼女から見た彼は、死地に自ら赴こうとしているように見えてならなかった。もう、会えなくなると、直感が囁いていた。

 

「安斎!早く彼も連れて走るんだ!」

 

「姐さん、そこにいつまでもいたら危ないっすよ!ここも巻き込まれちゃうっす!!」

 

仲間達からの声が聞こえる。しかしアンチョビの意識はソーレの方に向いていた。遠くから足音が近づいてくる。まほだろうか、それともアンツィオの仲間だろうか、自分のことを無理矢理にでも避難させようと向かってきているようだ。

 

「千代美、僕は………キミのことが好きなんだ。千代美が教えてくれたよね、僕の名前は地球の言葉で"太陽"なんだって…だから、僕は僕の憧れと、大切なものを守るために行動する。希望に満ち溢れた明日を呼び込む太陽になる」

 

「ソーレは戦えないんだろう!? 死んじゃうぞ!ホントに死んじゃうぞ!!」

 

「千代美は本当に優しいね。大丈夫、きっと大丈夫___」

 

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴ…

 

ネオゴドレイ星人に圧倒されるナハト。こんな時、都合良く何時ぞやのようにガメラやモスラが現れてくれるわけがない。

 

《………はっ!ここにまだ安斎さん、エリさん達が!? くそっ、逃げてくれ…!》

 

後ろには仲間たちがいる。

自分一人でやらねばならない。

背後にいる多くの人々の盾になるのが精一杯である自身の力量不足を悔やむが、そのようなナハトの状態を侵略者は考えてはくれなかった。

 

ズバババァアッ!

 

グァアアッ!!

 

ズズゥウウウウン!………ピコンピコンピコン…

 

「…うっ、ウルトラマンが!?」

 

「これは…まずい」

 

強力な破壊光線、"ブレイクレーザーショット"を受け切ったナハトは大きく後方へと吹き飛ばされる。道路に亀裂を入れ、路肩に投げ出されている自動車や街灯、信号機に電柱などを巻き込みながら、アンチョビとソーレ、そして二人を連れ戻しに来たまほやエリカ、マモル、ヒカル達の前に倒れ込んでしまう。

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴ…

 

『服従セヨ』

 

ナハトが吹き飛ばされてきたことで、彼らはその場に棒立ちの状態となってしまう。そしてナハトが倒れたのを確認したネオゴドレイ星人は、再びブレイクレーザーショットの充填を始める。今度はナハトの後ろにいる小さき存在たちもまとめて吹き飛ばす気なのだ。

 

ブォオオオオオオオオオオ!!!

 

ガガガガガキィッガキィン!!

 

突然、ネオゴドレイ星人に金色の雨が降り注ぐ。

 

『抵抗ハ、無意味。服従セヨ』

 

上空で待機命令を受けていたはずの空自のF-2戦闘機一機が独断で先行。通達を受けて逃げ遅れたエリカ達を確認していたため、彼女たちを逃がすためにネオゴドレイ星人の後頭部へ"20ミリ機関砲"を発射。決死の行動を取る。

 

『服従セヨ。服従アルノミ』

 

ババシュッ!!___ドカァアアアン!!!

 

ヴヴヴヴヴヴヴヴ…!

 

しかし、片手間の要領で、文字通り体を張ったF-2が光弾を当てられ撃墜される。それを見たナハト___ハジメは歯噛みをし、ソーレはまるで命を弄ぶだけでは飽き足らず、他者の死を嘲笑うネオゴドレイ星人を睨む。

隙を見てナハトが力を振り絞ってスペシウム光線を放つが、ネオゴドレイ星人の両腕に阻まれる。腕を破壊したかと思ったのも束の間、瞬時に再生されなんともなかったかのようにネオゴドレイ星人は攻撃を再開する。

 

《このままじゃあ…!》

 

ナハトが立ち上がる動きを見せると、ネオゴドレイ星人はすかさず光線による猛攻を浴びせる。

ネオゴドレイ星人の胸部に禍々しい青白の光の渦が集まり出している。トドメを刺すつもりだ。

 

「そこの学生さん達!伏せろお!!!」

 

伊丹と倉田、栗林がエリカ達に飛びつき、無理やり地面に伏せさせる。アンチョビはその時、緑色の光へと変わるソーレの姿を見た。

 

「ソーレ…!!」

 

タイミングは同時だった。

閃光が走り、侵略者の光撃が放たれたのと、ソーレが光粒子化しナハト、そしてアンチョビ達を守る絶対障壁となったのは。

生命(いのち)の壁、そんな言葉が不意にアンチョビの脳裏を、過ぎる。

 

バチバチバチバチバチ!!!!

 

何かが勢いよく焼けるような、焦げるような音が市街地中に響く。

光壁となったソーレが侵略者の攻撃を受けている。

 

 

 

___顔を上げて、前に進むんだ___

 

 

 

ふと、声が聞こえた。暖かく、優しい声が、たしかに聞こえた。

 

「おかーさん、あの緑色に光ってる所から、声聞こえたよ?」

 

「今、知らない宇宙人が、頭の中に浮かんだぞ」

 

「だけど悪そうなヤツじゃなかった…」

 

「なんだ今の感覚…?」

 

街の中にいたすべての人々が、誰かから語りかけられるように感じる現象を体験した。特に、アンチョビとハジメ、そして擬態しているイルマには、それが、誰が言ったものか、そしてその言葉に含まれた真意に気付いていた。

 

「ソーレ!!」

 

___またね、千代美___

 

「ソーレェエエエ!!!!」

 

アンチョビに向けてテレパシーを送ったソーレは、ネオゴドレイ星人の攻撃を肩代わりし終えると、大気へ緑色の粒子、ソーレだったものが霧散して形を崩しながら消えていく。それらの一部は、ナハトの元へと結集し、ナハトのライフゲージに光を与えると、一つ言葉を残してやはり消えていく。

 

___どうか、この素晴らしい星を、彼女たちを……___

 

守ってくれ。

 

そう残したかったのかは分からない。最後の言葉を伝え切る前に、ソーレは粒子体すらも維持できなくなり、消えた。

ナハトに、ハジメに後を託すかのように。

 

《やったな……やりやがったなあ…!!》

 

ナハトは静かに立ち上がっていた。背後には、大きな声を上げながら涙を流して泣いている緑髪の少女がいる。

静かに怒りに震えるナハト。輝く瞳から一筋の涙を流し、拳を強く握り、ネオゴドレイ星人の方を見る。ライフゲージは鮮やかな青色に戻っていた。

ナハトの意思___ハジメの気迫に押されたのか、ネオゴドレイ星人は、はじめて一歩下がった。明らかにたじろいでいる。

この数瞬の間にナハトの力量が一時的ながら、数段跳ね上がったことを察知したのだろう。

 

 

《お前らみたいな奴がいるからッ!!!》

 

ジュワァアッ!!

 

流浪の身であった、優しき隣人が遺した願いを、想いを乗せて、スペシウム・オーバー・レイを放った。

放たれた虹色の光線は、以前より威力も跳ね上がっている。ネオゴドレイ星人は両腕を、先程のスペシウム光線を防いだ時のようにクロスさせて防御動作に入った。

しかし徐々に光線を受ける箇所から、ネオゴドレイ星人は消失していく。

 

《はぁああああーーーーっ!!!!》

 

畳み掛けるように最期は、七色の光線は膨張しネオゴドレイ星人のみを綺麗に飲み込んだ。

光線が通った後には侵略者の姿は無かった。ナハトは、断末魔を上げさせることも許さずにネオゴドレイ星人を葬ったのだった。

 

 

《………ごめん。》

 

清水区市街地から人々の生命を脅かす存在はいなくなったが、市街地のあちこちで未だに火の手は残っている。周辺に目を向ければ、焼け溶けた金属や何らかの灰の山、戦闘機・装甲車の残骸、鳴り続けているサイレン…。

今回も、失ったものは大きいに違いない。

 

___ありがとう、ウルトラマンナハト___

 

 

 

…………シュワッチ!!

 

ハジメは心に何かを引っ掛けた感覚を持ったまま、空へと飛び去った。

 

 

 

 

「やはり、今回もダメだったようだね」

 

「暴力に訴えれば、必ずさらに巨大な暴力が返ってくる。これは偶発的な事象であり、必然の事象でもあった。だから私は言ったのだ」

 

「どこの地球人も、ウルトラマンも、不可解な力を発揮するね………まぁ、いいさ。それならまた相手を上回る力を持って挑めばいい」

 

「その考えはいつか身を滅ぼすぞ、ヒッポリト」

 

「一つの手段として挙げてみただけだよ」

 

 

_________

 

 

翌日

 

 

静岡市 清水港学園艦第三停泊地 

アンツィオ高校学園艦 校内中庭

 

 

 

アンツィオ高校の中庭の中心___小さな丘の上には、七月上旬にも関わらず桜吹雪を吹かせている、大きな桜の木が一本立っている。

木陰にはアンチョビと、まほが立っている。そこから少し離れた、丘の下にはカルパッチョとペパロニ、お節介だと思いながらもまほの付き添いという形で、ハジメとエリカもいる。

 

「ここの桜の木はな、世界中で異常気象が起こるようになってから、夏前の超遅咲きになったんだ…」

 

「そう、なのか……綺麗だな…」

 

「ソーレにはこれからも何回も見せたかった。……昨日、あんなことがあって色々と大変だったんだけど…みんなでコレ、作ったんだ」

 

「墓標…なのか?」

 

桜の木の下には小さな土の祠がある。アンチョビはまほのその答えに首を横に振る。

 

「これは、証なんだ。ソーレが私たちと一緒に、ここにいた大切な証」

 

「大切な……証……。その、あの…昨日のこと…安斎、本当に大丈夫か?」

 

アンチョビは大空を見上げながら続ける。その声色は暗くはなかった。むしろ明るい。

小さな祠の真前まで歩むと、クルッとまほの方に振り向く。そこにはもう沈んでいた昨日のアンチョビはいなかった。

 

「私は大丈夫だ!…ソーレと会えて、その間にいろいろな体験して、そして別れて……私は変われたと思う。私はな、高校にいる間の目標しか、なかったんだ」

 

「……」

 

「将来、何になりたいかとか、なかったんだ。でも、ソーレと会えて見つけれたんだ。どんな奴とも、分け隔て無く仲良くなれて、笑い合える…そんな社会を作る人間になろうって…な」

 

「安斎も、自分の道を見つけれたんだな」

 

「ああ。未来のためにも、今を頑張る。またソーレに会えた時、胸張ってドゥーチェだぞって言えるように、勉強も戦車道も頑張るんだ」

 

「だが…彼はもう………」

 

「いや、違うぞ まほ」

 

アンチョビの目には悲壮はなかった。爛々と輝いている、赤い瞳。

 

「ソーレは死んだわけじゃない。きっと、この青く澄んでいる広い空から、私たちを見守ってくれてる。また会えると、そう私は信じてるから。

……そうだよなあ!ソーレ!」

 

青々とした雲一つ無い初夏の空を見上げながらアンチョビは、地球の大気に溶け消え、この星の風となった初恋の人物の名を呼ぶ。

応えは返ってはこなかったが、その代わりというように桜の花びらを揺らす程の、心地よい優しい風が吹いた。

そして、高い青色の空に、微かに光る赤い粒が見えた。

 

「!」

 

いつかソーレが飛ばした、あの小さな赤い風船は、まだ飛んでいたのだ。それは彼が遥か天高くから見守っているようにも見える風景。

声が枯れるまで、たくさん泣いて、涙を流しきったと思っていたのに。心は切り替えたと思っていたのに、ツーっと頬を伝う涙。

 

 

【♪ED BGM】ゆず『また会える日まで』

 

 

「こうしちゃいられないな!」

 

アンチョビはゴシゴシと顔の涙を袖で拭くと、桃色の大樹が立つ小さな丘の下にいる、頼れる仲間二人に呼びかける。

 

「ペパ〜!カルパッチョ〜! 練習するぞ〜!こんな時に元気出さないでいつ出すんだって話だ!みんなを呼びに行ってくれ!!

……それじゃ、まほ。大会があったら試合で、また会おうな!」

 

「……今年のアンツィオは強そうだ」

 

「いや違うな!"今年"のじゃない、"これから"のアンツィオは強くなるんだ!覚悟しておくんだな!」

 

「……ああ。よろしく頼む」

 

笑顔で別れを告げる二人。まほはゆっくりとエリカとハジメの方へと向かう。

アンチョビはペパロニとカルパッチョの下へと思い切り走り出した。

 

「こらー!私を置いていくな"〜!!」

 

 

"サ・ヌーシュ"

 

 

___憧れは、僕らの手と足を動かす。何度躓いても、何度倒れても、何度転んでも、その度に立ち上がり、勇気を持って踏み出し、歩み続ける。

あの遥か先にあるだろう、まだ見ぬ地平線にたどり着くために、僕らは、歩き続ける___

 

 

遥かなる恋人の故郷の言葉は___"憧れ"の精神は、この星にも深く根付いてゆく。忘れることなど、きっとない。それは明日に吹く風に乗ってどこまでも、いつまでも。

 

 

 

 




どうもです…投稿時間、三時間も遅れて申し訳ないっす…。
今日は自動車の仮免前の修了検定だったもので、帰宅後爆睡してしまいました。

やはりキーフが成した言動は偉大ですよね。劇中このシーンを録画で何度も観て何度も泣きました。
他種族のために、異界の地で、命を落とす覚悟って、どれほどのものなんでしょう…
次回もお楽しみに!

_________

 次回
 予告

一人の少年と少女の別れから、僅かながら時が進み、各国の直面している現状と苦悩。そして、道を誤る者に待っているのは、悪魔からの祝福か、それとも……

次回!ウルトラマンナハト、
【果てしなき苦悩】!

サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)

  • 紗希のトモダチ
  • ミチビキさん サンダース編
  • ミライVSマホ カレー対決
  • ハジメ、迷い家にて

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