旧:逸見エリカのヒーロー   作:逃げるレッド五号 5式

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宇宙同化獣 ガディバ、
超複合怪獣 トライリベンジャー、登場。


第30夜 【さすらいの風来坊】

東アジア 日本国関東地方 茨城県大洗町 

茨城港 大洗女子学園艦

民間ヘリ発着場

 

 

 

「ここが、大洗女子学園か…」

 

そう呟いたのは黒森峰学園高等部二年生のハジメだ。

現在、大洗女子学園艦は黒森峰学園艦とは別の海域を航行している最中であるが、ヘリの操縦資格のあるエリカに学校所有の旧独空軍輸送ヘリ___〈フォッケ・アハゲリス Fa223 ドラッヘ〉を動かしてもらい、黒森峰のメンバー数人…まほ、マモル、ヒカル、ハジメ、__そして何故かシンゴもいた―― は大洗女子学園艦にやってきていた。

 

「すごいねー、黒森峰以外の学園艦には初めて乗ったよ!」

 

「シンゴ、わかってると思うけど、あんましはしゃぎ過ぎたらダメだぞ?」

 

「うん。分かってるよ。…やっぱり、ここに来てから、持ってる勾玉が熱くなってるんだ。何かあるのかな」

 

「そうなのか?」

 

シンゴが手に握っている翡翠の勾玉が確かに鈍く、そして長い感覚でぼんやりと点滅を繰り返していた。ハジメもここには邪悪ではない、何らかの力があるのを頭の片隅に入れておくことにした。

 

「この学校にみほさんは今通ってるんだな…」

 

いつもより低く、重い声色でそう呟いたのは元みほ車整備班長のヒカルである。あのプラウダ戦からおよそ半年以上…黒森峰から姿を消し会うことがなくなっていたみほに、戦車道の新興チーム偵察という建前の下、ヒカルだけでなくいつもの黒森峰メンバーのほとんどが、簡潔に言えばみほに会いに来たのだ。

 

「……どうしてるんだろうな…もう前みたく接してくれたりは…」

 

「らしくもないことを言うな駒凪君。みほはそんな風に人を扱ったりはしない…分かるだろう? 心配はいらない、大丈夫だ」

 

「そ、そうっすか?」

 

ややいつもより元気の足りないヒカルと、それを説得しているまほと言う珍しい構図。そんな光景がしばらく続いていると、ヘリを格納し終えたエリカが戻ってきた。

 

「隊長、いよいよ…ですね…」

 

「ああ。みほの本心を、聞きに行くぞ。戦車道を一度離れ、また戦車道と向き合ってくれたのには、きっと何か理由があるはずだ。それを、確かめたい」

 

メンバーらはそれに合わせてみほのいるだろう大洗女子の校舎へ向かうため艦上の街を歩く。

 

 

「確かに黒森峰よりは規模は小さいけれど、そこは学園艦ね、立派な一つの町じゃない。活気もあって、みんな明るい」

 

「黒森峰だって人の温かさなら、負けてないと思うけどね」

 

「私は何も黒森峰より上とは言ってないわよ!」

 

歩みを進めていると、大洗女子学園の校舎が見える住宅街の街角までやってきていた。

 

「ハジメ君、エリカ、少し声のトーンを下げろ。街中に入ったんだ。周りのことも考えろ」

 

「俺は声荒げてなかったんだけどなぁ…」

 

「アンタねぇ…!」

 

エリカがハジメにジトッとした目線を送っていると、前方から悲鳴に近い声が上がる。

 

「ああ"ーーっ!!」

 

「「「!?」」」

 

甲高い声を上げた主は、大洗女子高等部の二年生、みほが車長を務めるあんこうチームの一人でもある秋山優花里だった。

 

「高校戦車道の強豪、黒森峰学園の生徒の方々でありますかぁ!?」

 

「あ、え、えっと…そうです」

 

しかし初対面である。混乱状態にある黒森峰側を置いて優花里の方は羨望の眼差しで彼らを見ている。当の黒森峰側は、奇異の目線を優花里に送っている………。突然の質問に答えたハジメも若干戸惑っているようだ。

 

「も、もしかして、我が校の偵察でありますか!?黒森峰の隊長・副隊長、そして整備科の方々まで!!」

 

「俺らのことも知ってるんだ…」

 

「勿論であります!選手と整備士の方々の名前と顔、戦績・活躍まで全て頭に叩き込んでありますので!

……それで、今回はどう言ったご用件で!?やはり先ほど聞いたように偵察でありますか!?」

 

テンションが高いやつだなとエリカは思いながら、相手のペースに乗せられるものかと質問する。

 

「あー、それはまあ、そうかもだけど…その前に!アンタ何者よ!」

 

「あう…し、失礼致しました!私、秋山優花里と申します!!」

 

一瞬エリカに気押されたものの、すぐに立て直すと、ビシィッ!___そんな音が聞こえてきそうなほどのキビキビとした陸軍式敬礼をし自己紹介を終える優花里。

 

「…西住まほだ。あ、えっと……何から話せば…」

 

まほが何から話したら…聞けばいいのか混乱していると、向こうの方から優花里と同じ大洗の制服を着た少女達三人がやってきた。

 

「すいませーん!! もー、ゆかりん、大声出したかと思えば急に今度は走り出して…。あのウチのゆかりんが失礼しました!」

 

「あら、みなさんは……たしか…」

 

「西住さんが通っていた、前の学校の人間か。なんだ、ここまで来て西住さんを責めに来たのか?」

 

「なんですって!?」

 

「ちょっ、麻子!!その言い方は失礼でしょ!」

 

麻子の言う事を黒森峰メンバー達は理解できた。外部から見たら、みほを追放した勝利至上主義が闊歩するひどい学校の生徒…しかも同じ機甲科の所属なのだから、余計そうだろう。

一人がやらかせば、外の者達はそのやらかした人間が所属していた組織、グループが一括りにされ"やらかす奴ら"という印象を持ってしまう。団体の中が善良な人間で多数を占めていたとしても、である。これは人間の性質上、致し方の無いことでもあるが…。

 

「違う。俺は……俺たちは、みほさんを責めるためにここに来た訳じゃねぇ…。ただ、知りたいんだ。知りたいだけなんだ!」

 

ここで一歩、ヒカルが前に出て麻子を真っ直ぐ見ながら口を開いた。一言一句力強く、麻子がこちらに向けている、友人を守るための疑心と敵意の籠った瞳から目を逸らさずに。

 

「知りたいって、何をだ」

 

「それは______」

 

 

 

 

 

 

茨城県 大洗町 大洗海浜公園

 

 

 

ザザーーーン…

 

「ねえ、どうやってピイ助はここに来たの? 」

 

「ぴぃ?」

 

「あ、いや…初めてあった場所、ここのことじゃなくて…今のこと。戦車道倉庫にいたはずなのに」

 

みほはいつものようにあんこうチームのメンバーとは下校せず、一人で艦から降り、新たなスタートを迎えた場所でもあるこの海浜公園にまた来ていたのだ。

そしてそこに何故かピイ助もいた。何故か、である。今日はウサギさんチームの面々が見ていると聞いていたため、クリっとしたピイ助の可愛らしい目を見ながら首を傾げるみほ。

 

「……て、話せないよね…、何してるんだろ…私。なんでここにまた来ちゃったんだろ」

 

新しい道を見つけて歩けていると思っていた。道を選べたと思っていた。自分は人を信じれていると思ってた。

たしかに大洗という新天地に来てから、向こうでは感じられなかった別の温かさに包まれたが、逆に向こうで感じられた温かさが無い。足りないのだ。

そして今はどうだろうか、決意した道が閉ざされかけていると、自分でも何となく分かってしまっている。

 

「大会で一勝……それも出来るのかな…」

 

みほの不安の種は、恐らくここ最近行った、大洗女子初の戦車道練習試合だろう。相手は強豪の一角___聖グロリアーナ女学院との対戦だった。

結果は言わずもがな敗北。みほ率いるあんこうチームが最後に相手隊長車に肉薄し、一矢報いようとしたものの、敢えなく撃破され大洗側は全滅というカタチで終わった。

 

「………今から、無理って言ったら…みんな、どう思うかな…」

 

あの時よりもいくらか訓練を積んだとは言え、大会に出せるかと言われればまだまだお粗末な練度である。

先が思いやられ、途方にくれていたら、様々な不安が浮き彫りになってきて感情の整理が出来なくなりつつあったのが、今のみほの状態だ。

また…心が折れそうになっている。

 

「何をすれば……いいの? 分かんないよ…」

 

こんな時だけ、姉や、幼馴染の顔が過ぎるのだ。自分はなんて都合の良い人間なのだろうかと思ってしまう。

 

「結局、私…なんにも変わってなかったんだ…応えたい期待にも、応えられなくなってたんだ……」

 

みほは地面に座り込み、体育座りで顔を埋める。横にいるピイ助が、心配して頭を擦ってくるが、みほは何一つ反応を示さない。

 

 

「うわっ!? なんだ…あんちゃん、もしかしてずっとトラックの荷台ん中入ってたのか!?」

 

「ああ、すまない。俺は大丈夫だ」

 

「だ、大丈夫ってぇ……この中、−15℃以下だぞ…?どっから乗ってたんだ、最低でも二時間は……ええ…」

 

 

「?」

 

後ろから、上記のような奇怪なやり取りが聞こえたため、みほは顔を上げて後ろにゆっくり振り向いた。

するて目の前には、黒のロングジャケットと黒いハットを被ったいかにも旅人という風貌の青年が立っていた。服や帽子の所々に小さな氷柱を付けていながら。

ギョッとしたみほを他所に、青年は尋ねる。

 

「よお。ラムネ、飲むか?……ちっとばかし凍ってるが…」

 

___と言いながら両手に持ったほぼ氷結状態のラムネの片方をみほに渡す。

当然、いきなりのことにみほは驚くが、ラムネを受け取り礼をする。

 

「あ、え、え?えっと、私が貰っていいんですか?」

 

「ん? 気にするな、あのおっさんのトラックにあった荷物じゃないぞ。ちゃんと俺が買ったやつだ」

 

「そこじゃなくて……貴方は…お名前は…」

 

初対面でありながら気軽な友人に対するようなやり取りで色々とペースやらなんやらを持っていかれていたみほであったが、ようやく目の前の男の身元を尋ねることに成功した。

 

「俺の名前か? 俺は___」

 

整った顔立ちと突飛な出来事さえなければ通報案件の不審者なのだから、正体を知りたくなるのは当然だ。そもそもとして、早急にこの場から立ち去った方が良いという考えは既にみほから抜け落ちていた。

 

「___ラムネのお兄さんと呼ばれることもある」

 

「ら、ラムネのお兄さん? それに…呼ばれることもって……」

 

「この通り、俺は色んな場所を旅している風来坊だ。そして、こっちは一応名乗ったんだ、そちらの名前も良ければ教えてほしい」

 

「に、西住みほです…」

 

浮かない顔をして、また顔を俯けるみほに男は話を切り出す。近からず遠からずの距離を保ち横に座りながら。

 

「そうか。……で、どうしたんだ、こんなとこに女の子一人とデカい亀一匹で座って黄昏て。まだ夕日が見える時間には早いぞ。たしかにここで見る夕日は綺麗だとは思うが」

 

「夕日を見るために来たわけじゃないです…」

 

突き放すように呟いたみほの心情を男は驚くほど正確かつ素早く察していた。

 

「………悩み、だな。自分がこれから、どうしたらいいのか、分からないって思ってるだろう」

 

「え?なんで…」

 

「分かったのかって顔してるな、分かるさ。俺も似た経験をしたから分かる。そしてそういったことを考え悩んでいる、旅先の知り合いも多く見てきた。それに、ミホの場合は顔にこれでもかってぐらい出てる。

……そっちが良いなら、ここで話してもいいぞ。どんなことも吐ける時に、吐くのが一番だ」

 

「……ありがとうございます」

 

 

知り合いでもない人物に気軽に話せると思っていたのが功を奏したのかもしれない。みほは決心したように一つひとつ悩みを打ち明けはじめた。

みほが話している間、男は表情を崩すことなく、真剣に聞いていた。

 

 

「______そうか、確かに色々抱えてるな」

 

「…私、もう分からないんです。これから、どうしたらいいか、何をしたらいいか……」

 

先ほどよりもみほの顔は影を落としていた。またそれを察した男が口を開く。

 

「その…"センシャドー"ってのはあまりよく知らないが、ミホはそのスポーツが好きなんだろ?」

 

「戦車……と繋がりのある、想い出は好きです…」

 

「なら、続ければいいさ」

 

「え?」

 

自分の予想とは違った男の言葉を耳にし、みほは驚いて顔を上げると同時に男の方を凝視した。

自分は逃げたはずなのだ。なのに、なぜ、そう言うのだろう。

 

「話を聞いていれば、仲間達を、想いの人を置いてってしまった、きっと自分は戻れないし嫌われているだろうみたいなことをミホは言ってるが…それは多分違う。話を聞いた限りだと、俺にはその仲間達…特にその男が悪いこと言って恨んでくるような奴には思えないな」

 

「でも、私がみんなから逃げたことには…」

 

「逃げではなかったさ。仲間達も、きっと分かってくれてる。もうそこで出来ないってのなら、新しい場所で、自分は頑張ってるぞ!…ってぐらいの気概を持って、それを見せて教えてやれ」

 

「……いいんでしょうか…」

 

旅人の男が何度も勇気づけてくれてはいるが、みほは今一つ踏ん張れない。

過去、そして以前の仲間との確執と言えば良いのか。後ろ指を差されるのではないか、これからずっと許されないのではないかと悩み苦しんでいる。

 

♪〜〜〜!

 

いつの間にか男は懐から取り出したものと思われるハーモニカとはやや形状が異なる小楽器を口に当て器用に吹き始めた。それは実に綺麗な音色であり、みほにも聴き覚えのあるメロディであったらしく、徐々に笑顔になっていた。

 

「あ…それ、ボコの……!!」

 

「最近、ここらで聞いたことのあるのを即興でやってみた。好きな曲だったか?…顔、明るくなったじゃないか。さっきよりも断然今の顔の方が似合ってると思うぞ」

 

そんなに自分は酷い顔をしていたのかと、みほは思う。たしかに心持ちも幾らかマシにはなった気がしている。

 

「……くどいと思うかもしれないですけど、本当にいいんでしょうか…」

 

「それは他人に聞いて決めるもんじゃあない。他人からあーしろこーしろと言われるのは違う。あとな、人の命を助けて本当に怒鳴る奴なんかいない。特に、ミホのことを良く知ってる連中ならな。当然母さんも、父さんも、姉さんもそうだろう。

胸を張っていけ。自分が行く道は、自分で決めろ、選べるだよ。自分で、選ぶんだ!」

 

「私が、行く道……私が、選ぶ道……」

 

だが…と、前置きしてラムネの男は口を改めて開く。その口調は穏やかであり、聞く者に対して安心感を与える。

 

「今まで偉そうに俺が言ってたことは、あくまでも俺なりの考えだ。これ一つが全てじゃないさ。別に無下にしてくれてもいい」

 

「いえ!そんなことは…私、今ので勇気づけられた気が…背中を押してもらえた気がします。向き合ってみます。みんなと、あの人と」

 

「そうか。なら、あと一息なんじゃないか?返してないんだろ、自分の想いの答えを。返してやれ、絶対待ってくれてるはずだ。」

 

「はい!ありがとうございます、お兄さん!」

 

ふとラムネの男は、立ち直り出したみほから、みほの隣にジッとして動かないピイ助に視線を移していた。男の視線に気づいたのか、ピイ助も男の方に顔を向けて見つめる。

そんな一匹と一人の間に交わされているものはみほには分からなかったようで、少しソワソワしながら彼らの無言のやり取りが終わるまで静かに座っていた。そして口を先に開いたのはラムネの男だ。

 

 

「……そうだ、一緒にいるそこのカメ…名前はあるのか?」

 

「え? あ、はい!ピイ助って言います!」

 

「ピイスケ…ピイ助か。…俺にも分かる コイツは…良い奴だ、きっとミホ達を助けてくれる」

 

「ありがとうございます……あの、お兄さん、なんでこんなに私の話を親身に聞いてくれたんですか?」

 

「それは………おっと、あの制服はミホと同じ…どうやら迎えが来たようだぞ」

 

立ち上がって振り向いてみれば、顔の見知った友人達がこちらに駆け寄ってきていた。そして、その後ろには忘れもしない、幼馴染達と姉がいた。

 

「みぽりん発見!!やっぱりここにいたよぉ!」

 

「え!? みんな、それにお姉ちゃんにナギさん達も…?えっと、どうして?」

 

「み、みほ……」

 

「みほさん…」

 

ここ(大洗)にはいないはずの、少年少女達。やはり自分のことを許してはおらず、面と向かって責め立てにきたのだろうか…そんな考えがみほの脳裏を過ぎる。

先ほどまでラムネの男によって心のバランスが戻りかかっていたみほだが、ここでまた揺れ動く。その狼狽ぶりは、普段のみほからは想像できないほどのものだった。

 

「ミホ、踏ん張れ。大丈夫だ。(そうだ、お前に寄り添えるのは俺じゃない。その子達だ)」

 

後ろにいる、会っておよそ30分ほどの交流であったラムネの男が、みほにだけ聞こえるぐらいの小声でまた背中を押してくれた。ほんの短い間しか話していない人間からの声かけであるのに、妙に頼もしく感じる。

みほはそれに応えるように、顔を上げて黒森峰のメンバー達の方に目線を向ける。

 

「みんな、久しぶり……その、ずっと連絡もしなくって…ごめんなさい!」

 

そこから何度か口をまごつかせた後、地面にぶつかるのではないかと思うぐらい勢いよく頭を下げて謝る。

当然、みほは頭を下げているので対面のまほ達黒森峰メンバーの顔色の把握は出来ない。返事などの反応が返ってこないため、みほが緊張で次第に震えてきた時、懐かしく、穏やかな声が返ってきた。

 

「みほ、久しぶり。以前より元気そうで、良かった…急にこっちに来てしまってすまない。驚いただろう」

 

「あ、うん。びっくりしちゃった」

 

最初に返ってきた声は姉のまほだった。普段の生活、そして家にいる時に見せる優しい顔。

ラムネの男の言う通りだった。まほは怒っていなかった。自分の妹、みほの今を心配していてくれたのだ。

 

「はじめまして!ボク、シンゴ。嵐 信吾!」

 

「え?ハジメ君の弟?」

 

「あはは、久しぶり…だね、西住さん。このシンゴは、黒森峰に来た俺の新しい家族なんだ。仲良くしてもらえると嬉しいかな」

 

「私がいなくなってからそっちも色々あったんだね…」

 

ハジメの弟___シンゴに軽く会釈をして嵐兄弟を交互に見ていると、その横から親友のエリカも入ってきた。エリカだけは開口一番にみほを怒鳴った。

 

「アンタねぇ、連絡寄越さないってどういうつもり!?」

 

「あぅ…ごめんね、エリカさん」

 

「何か勘違いしてるようだけれどね、いいこと?私が怒ってるのは、一方的で、傍迷惑だと思われるかもしれないけどね、みんなを心配させたこと!これだけ!!

別にアンタのことが嫌いだからキツくあたってるワケじゃないの!わかる?」

 

「うん。分かるよ、本当にごめんなさい…」

 

「……でも、何もなくて、本当に良かった…」

 

「……ありがとう」

 

ここで初めて、エリカが泣いた。今言ったこと以外にも言いたいことが数多くあるはずである。しかし、安堵できることが、今の彼女にとっては十分なものであった。どうやら和解…というよりみほの予想よりも穏やかな再会を果たしたと言っていいだろう。

 

「それにね……私以上に、隊長と同じぐらいアンタのこと案じてた奴がここにいるんだから」

 

そしてエリカは自分とハジメの後ろに隠れていた人物に声を掛けた。その人物は遠慮がちにみほの前に姿を見せる

 

「……みほさん、その…久しぶり…でいいのかな…?」

 

「ナギさん…」

 

最後にみほと対面した黒森峰メンバーはヒカルだった。

ヒカルと、みほの関係性を説くならば、直近の関係としては同じ学校で、戦車を整備する人間と、その戦車に乗る人間である。そして友人という関係から進展させるための一歩を踏み出せず、それが遅れてしまったがためにお互いの想いを伝える前に離れてしまった辛い期間でもある。

さらに遡るのなら、生まれてから中学生に上がるまでずっと一緒にいた幼馴染であり、よく互いの家に招いたり、逆にお邪魔したりするような深い仲でもあった。

 

「…俺さ、今なんて声かけりゃいいか分からないんだ」

 

「………」

 

しかしながら時の流れは無情なものである。歳が上がるに連れ、他人に対する意識は変わっていく。

それは特に親しい間柄の人物であって例外ではない。思春期という時期も意識の変革を助長させた要因であるのは間違いないだろう。

 

「俺、確かにみほさんのことが好きなんだ。ここに、大洗に来てみほさんを見て安心してるってのは、そういうことなんだと思う」

 

いつも一緒に遊んでいた。しかし学年が上がれば上がっていくほど、やること、やるべきことにそれぞれ違いが出てきた。

性別も違えば、生まれた家も違う。共に過ごすメンバー、時間にもズレが生じ、中学に上がる頃には疎遠と言っても差し支えないほど、関わりが無くなっていた。

学園艦と本土学校……戦車道とそれ以外…すれ違いが明確になったのもその時期だった。だが中学生の終わり頃、再び合流した。……そしてまた離れてすれ違い、今に至る。

 

「あの時も、俺は何も言えなかったし、答えももらえなかった……嫌われたのかとも思ったけど、俺の方は変わらない…だけど……」

 

「だけど…?」

 

ヒカルにはみほが遠くにいる存在なのか、近くにいる存在なのか、分からなくなっていた。もう自分の知らない存在に変わってしまったのかと不安だった。

 

「だけどさ…許せないって思ってるもう一人の自分が心の中の片隅にいるらしいんだ。新聞とか動画、観たんだ……その時にさ、なんで黒森峰にいた時より、昔よりも明るそうに、楽しそうにしてるだって、怒ってる俺がいた…」

 

「ナギさん……」

 

「ホントは、俺は俺だけは来ちゃダメだったんじゃないかなって。今、俺の頭の中ごっちゃになってるんだからさ……好きなのに嫌いって…変だろ…?」

 

「ナギ、お前…そのモヤ……」

 

「…え?」

 

言葉に覇気が無い。ヒカルのことをよく知るみほやハジメらだけでなく、見守っていたあんこうチームの面々ですらそう分かるほど、ヒカルから気力が抜け落ちていた。大洗にやってきた時よりも遥かに顔色は悪い。

そして何より全員の目を惹いているのは、いつの間にかヒカルの背後から溢れ出ていたどす黒い煙のようなモノである。

その禍々しい雰囲気にピイ助も危機感を持ったのか、ヒカル…ではなく、その背後に漂い登り続けている実体の無い黒い何かに唸り声を上げていた。

 

「邪気……いや、"マイナス・エネルギー"か…?」

 

そう呟いたのはラムネの男だった。ヒカルから出続けているモノに強い危機感を募らせているようだ。

 

「なんで…みんな後退りしてるんだ……?どうして…」

 

「な、ナギさん…」

 

「みほさんまで…やっぱり、俺のこと…」

 

ヒカルの尋常ならざる状態に対して取ったみほ達の反応が不味かった。

 

「違う。違うよ!ねえ聞いて、ナギさん!私は_」

 

「うるさいっ!!それ以上言わないでくれ!!!」

 

何かを早とちりしたヒカルは突然声を荒げて叫んだ。

 

「知ってた…知ってんだ!どうせ俺たちの、俺のことなんて……」

 

「!!、これは…!みんな離れろ!!」

 

「ナギさん!」

 

「ナギ!!」

 

今度は徐々にヒカルの声が小さくなっていった。さらには、その動きに連動するかのように背中の黒煙の空に昇る量が爆発的に増した。

いち早く反応していたラムネの男はみほの前に立ち、庇いながら周りの少年少女達に危険を報せる。

 

「俺は…もう分かんないや……半端者だもんな…だからこんな人生なんだろうな…」

 

フフフフフ、絶望せし人間よ…お前の闇を使わせるのだ…

 

「! お、お前は…俺に何をする気だ…?」

 

出でよ、ガディバ……人間の闇を喰らい、ウルトラマンナハトによって倒された怪獣達の怨念を糧に、新たなる崇高な存在として現出するのだ…フフフフフ

 

ヒカルのすぐ横には、黒紫色の怪しき存在_影法師がいた。影法師と以前から何度も遭遇しているエリカやハジメ、それに加えてあんこうチームとラムネの男が目を見開いた。

影法師からヒカルが放つ黒煙に似たオーラを出したかと思えば、それは人間大の実体を持たない黒い蛇へと変化し、周囲を飛び回り始める。

 

「なんなの!?あのフードのいかにも怪しそうな人!? それにこの空飛んでる意味分かんない蛇みたいなやつ!?」

 

「……ただならぬ気配を感じます…」

 

「あれはいったい…」

 

「アイツは影法師だ!」

 

「か、影法師…でありますか?」

 

「今度は何をやらかす気!!」

 

各々の反応を見ながら影法師はケタケタと笑っている。影法師は恐怖で動けないヒカルの方に向き直り、右腕を差し向けると、空を飛んでいた紅い眼を持つ黒き蛇_ガディバがヒカルの黒い負のオーラを全て吸い込んだ。

 

「う…ぅぁ……」バタッ

 

「ナギさん!」

 

「今は行くな!奴に呑まれるぞ!!」ガシッ!

 

同時にヒカルは糸がプツンと切れたかのように倒れ込む。だが幸い、まだ意識はあるようだ。それを確認していたみほがヒカルの元に走ろうとしたところをラムネの男が腕を掴んでそれを止める。

 

「お兄さん離してください!!ナギさんを助けないと!!ピイ助をお願いします!」

 

「ダメだ!アレが彷徨いてるうちはこっちからは仕掛けられない!」

 

「何がどうなってるんですか、お兄さんはどこまで、何を知ってるんですか!」

 

「いいか、ミホは早く友達とここから出来るだけ離れろ。奴は俺がどうにかする」

 

「どうにかって…」

 

そんなやりとりを交わしてる間にも状況はさらに悪い方向へと進んでいく。ヒカルの闇を取り込んだガディバは巨大なドス黒い球体となって空高く上がっていく。

 

「お兄さん、説明してください!アレはなんなんですか!!」

 

「人の心は不安定だ。突然の暴発だって、目に見えるレベルまで負の感情を溜め込んでしまう奴だっている。

あれが、あの煙がアイツの闇、負の側の具現化だ。人並み以上に濃くなった負の感情を、影法師は利用した。次に起きるのは……」

 

ヒカル、影法師、ガディバの周囲から大洗・黒森峰両メンバーは離れるだけ離れ、遠巻きから様子を見ていることしか出来なかった。

 

ゴゴゴゴゴ…!

 

「空が真っ黒に…!」

 

「おい!空に何か変なのが…アレは!」

 

「今度は何!?」

 

「ハジメお兄さん!」

 

「シンゴ、こっちに来い!」

 

「あれは………」

 

ガディバを中心とし、空には渦巻状の巨大な黒雲が現れ、その渦の中心は何らかの世界と繋がっているのか、発光した半透明の怪物――霊体のようなモノが凡そ三つ、渦の中心である穴から飛び出し、空に浮かぶガディバへと向かう。

それらはすべて、エリカやハジメ達が忘れもしない、見覚えのあるシルエットだった。

 

「…………コッヴ…」

 

「熊本特災の…」

 

「それに、あの翼竜と蜥蜴まで」

 

「アイツらはナハトが全部倒したはず!」

 

キィイイイ!!

ガァァアアア!!

キュィイアア!!!

 

「何が起こるんですか、もう意味が分かりません…」

 

「アレは…怪獣たちの怨念…」

 

「怪獣の、怨念…?」

 

「たとえそれが憎悪の念に塗れた死者のものであっても、魂を弄ぶ卑劣な行為、到底許されることじゃない…!」

 

コッヴ、ゴルザ、メルバ……過去にナハトが対峙し、退けてきた怪獣達の、ラムネの男が言うように怨念を抱いた亡霊…なのだろう。

自分達はまだ倒されたなどと思ってはいないと、エリカが発した言葉を否定し、上塗りするかのような恐ろしい咆哮が響き渡る。それは遠巻きに聞こえ出してきていた国民保護サイレンと避難誘導の放送を掻き消すほど。

 

ゴロゴロゴロ…カッ!!

 

そして何者からも妨害を受けることもなく、三体の亡霊はガディバであった禍々しい球体へと到達。

激突したかと思えば、今度は眩い光が辺りに広がる。

閃光が走った後、次に全員が感じたのは巨大な何かが水面に落ちる音、遅れて強い振動、さらに遅れて空から降ってきた海水の水飛沫。

目を開ける間もなく連続した事象が続き、エリカ達は態勢を崩してその場に座りこんでしまう。

 

「……っ、次は、なんな……の……」

 

「怪獣が、合体した…?」

 

「で、デカイ…」

 

「トライキング…!!」

 

各々が目を開けば、目の前の海には巨大な異形が二足で立っていた。あの三体の怪獣の要素をこれでもかと詰め込んだかのような姿の、化け物。

 

違う。トライキングではない……此奴はトライリベンジャー。地獄から再び舞い戻った悪魔の遣い…復讐の執行者なのだ…フフフフフフ…

 

「お前!こんなことしてタダで済むとは思ってないよな!!」

 

フフフ…せいぜいほざいていろ。トライリベンジャーにより、ウルトラマンナハトは死に、地球は絶望に包まれる…! フハハハハ!

 

影法師は陰湿な高笑いを響かせながら、空に消えていった。ただ一つ、怪獣と言う巨大な置き土産を残して。

 

「待て!!」

 

グォォオオオオオ!!!

 

「クソ、まずはこの目の前の奴から片付けないとならないか…!」

 

「片付けるって、お兄さん一人じゃ…私達では何も出来ないですよ!?あの怪獣に立ち向かうつもりですか!!」

 

「勿論だ。だから何度も言ってるだろ、俺がなんとかするから、あそこに倒れてるやつも連れてお前達は逃げろ」

 

「無理ですよ!踏み潰されちゃいます!!」

 

みほの静止を聞かず、ラムネの男は怪獣の前にまで走ると、どこからかリング状のアイテム___オーブリングを取り出し空に掲げる。

 

「俺は、俺が信じる勇気を選ぶ。絆の力を信じるんだ!」バッ!

 

男はその瞬間、光に包まれた。

 

 

――

 

 

特殊な空間に、男は"オーブリング"と、ウルトラ戦士が描かれた札___フュージョンカードを持っている。

そして彼はカードに込められた力を扱うためにリングに読み込ませる。

 

「ウルトラマンさん!」

 

『ウルトラマン!』

 

ヘァッ!

 

 

「ティガさん!」

 

『ウルトラマンティガ!』

 

ジュアッ!

 

 

「光の力、お借りしますッ!」

 

『フュージョンアップ!』

 

ジャァッ!ヘァッ!

 

『ウルトラマンオーブ!スペシウムゼペリオン!!』

 

再び男は光に包まれ、今度は光の巨人へと姿を変えていった。

 

――

 

 

 

 

ジィアッ!!

 

ザッパァアアーーーン!!!

 

額には紫色のランプ、肩には黄金のプロテクター、胸には青い円のクリスタル、身体は赤・紫・黒とナハトと遠からず近からずのカラーリングである、光の巨人―ウルトラマンオーブ スペシウムゼペリオンが空から現れ、トライリベンジャーの侵攻を妨げるようにその前に立ち塞がった。その様子をみほをはじめとしたメンバー達は現実として受け取ることに戸惑った。

 

「また人が、ウルトラマンに…」

 

「新しい光の巨人…」

 

「あのお兄さんが、ウルトラマン…?」

 

 

《俺はオーブ!闇を照らして悪を撃つ!!》

 

 

光の魂を継ぐ、闇を照らす光の戦士は少女に何を魅せるのか。

 




 明けまして、おめでとうございます。
 今年もよろしくお願い致します。投稿者の逃げるレッドです。
 年末あたりの円谷サンによる連続発表…失神するかと思いましたね。SSSS.シリーズ劇場版、シン・ウルトラマン、トリガー エピソードZ…お前、死ぬんか?ってレベルの怒涛の勢いでしたぁ…まあ、ガルパン沼に嵌めたウルトラオタクの友人と観に行く予定ですけどねっ!!
 話をへし曲げますが、投稿者は今年大吉でした。しかし慢心は無しで今年も頑張っていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。

※怪獣図鑑の方に記載したトライリベンジャーの元ネタ枠をZとギンガ両方としています。これはファイブキング系統の初出演がギンガSだったためと、Z本編でその亜種枠であるトライキングが初出演したためです。ファイブとトライの区切りが個人的に怪しかったため、両作品を元ネタとして記載しています。ご理解ください。


_________

 次回
 予告

銀河の流れ星、ウルトラマンオーブと地獄から這い上がってきた亡霊、トライリベンジャーが現れた!
オーブに加勢するため、ハジメも変身し立ち向かう。
地上に残されたまほ達は退避するために動き出すが、戦闘の余波を受けてしまう……しかしその時、奇跡が起こる!

「たとえ時間が人を変えるとしても、無駄だった時間や想い出なんて、無いんだよ!」

大切な人を守ろうとする想い、人を愛する心……キミの大切なものはいったい何だろう。
少年と少女は向かい合う時が来た。ここからは、キミ達次第だ!

次回!ウルトラマンナハト、
【キミが歩く道】!

サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)

  • 紗希のトモダチ
  • ミチビキさん サンダース編
  • ミライVSマホ カレー対決
  • ハジメ、迷い家にて
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