守護勇者 アヴァンガメラ ピイスケ、登場。
「泰平の世は、我らが守る」
一陣の風が、大洗町に吹く。
病院爆散の窮地を救い、風と共にやってきたのは、森の如き深緑の体躯を持った逞しい"シノビ"だった。
そしてそのシノビは赤のマフラーをたなびかせながら、呆気に取られているナハトの隣に並び立つ。
「我はシノビ…ドルゲユキムラと申す。この世界のためにも、星の戦士…ウルトラマンナハトよ、共に戦わせてほしい」
《に、忍者…なのか?……いや今はそんなことどうでもいい。当たり前だ、俺も一緒に戦う》
「その言葉、待っていた。紫坊…影法師とやらの目論見を打ち砕かねば、空に広がる次元の裂け目だけでは収まらずこの星が、この世界自体が狂ってしまう。まずはあの心無き化け物共を倒すぞ」
ヘアッ!!
ムゥン!!
こちらに向かってくるバキシム、ベロクロンに対して構えるナハトとユキムラ。
病院とそこにいる人々は絶対に守る。二人の決意は固かった。
「我は一角の化け物を、貴君は黒き化け物の相手を頼めるか?」
《わかった。やろう!》
ユキムラはバキシムを。ナハトがベロクロンを相手する。それぞれが前へと大きく跳躍し、そのまま飛び蹴りを超獣達へ食らわせた。
両の足で踏み留まるバキシムとベロクロン。バキシムは両腕を合わせ、ベロクロンは口を開き反撃の火炎を吐く。
ハアッ!
《防いで押し返す!!》
オオオッ!!
「ゼロカゲより受け取りしこの力、ここで使う!!」
それをナハトは円形のバリア__ストーム・バリアを用いて跳ね返し、ユキムラは何処からか取り出した手元の黄色い巻物を開き広範囲に光の束__"光牙忍法
地表に進出するマグマの温度は1500℃。それを優に超える高温の火炎放射が真上を通過した地上にある一般家屋等が融解を始め、原型が消えてゆく。避難したことで人がいない点が唯一の幸いだったかもしれない。
攻撃を防ぎ続け、長期戦になればナハトやユキムラの体力だけでなく、大洗の街が耐えられなくなるだろう。
ゴォオオオオオオーーー!!!
『!! 先ほどの特自偵察ドローン並びに
戦闘が始まってから十分弱が経過したところで、大洗の空域に、航空自衛隊入間基地、横田基地より飛び立って来た戦闘機部隊が駆けつけた。
『新型"穴"、"
『ライブ1より司令部。早急な敵性存在の排除が必要と判断し、これよりシェードチームと共に特殊防衛行動に移行する』
入間基地の"第12飛行隊"〈
『よし。特殊生物への攻撃敢行を認める。しかし、行動範囲は
『シェード1了解。ポーターズを可能な限り援護しつつ、アウトレンジより特殊生物を攻撃する』
『ライブ1了解。…ライブチーム各機に告ぐ。我々は先陣を切り攻撃しナハトと"ジャイアント"を援護する。敵はミサイルで武装している。注意しろ。オーバー』
バタバタバタバタ!
『ポーター01より、第62普連選抜中隊へ。我々は赤色空域内に侵入、へリボーン地点に到着した。ここから先は何が起こるか分からない。降下中、降下後の周辺警戒を徹底されたし』
『空自の飛行隊も来たらしいな。今が好機だ、行け』
『ポーターズ、輸送感謝する。各班、へリボーン開始!ゴーゴーゴー!!』
『第3班は俺に続け!真っ直ぐ海岸病院へ向かうぞ!』
『第1班、第2班は降下地点周辺で民間人捜索と救助にあたれ!』
『4〜6班は3班を援護、道中ルートの哨戒だ!南2ブロック先に特自の機械化部隊が展開している。彼らと連携しろ』
特に妨害を受けることなく、陸自勝田駐屯地より発した第62普連の救助隊が輸送ヘリ部隊ポーターズに運ばれ大洗町…諏訪神社周辺の住宅街に降下した。
大洗海岸病院とは凡そ250メートルの距離だ。道はほぼ南西に伸びている。中隊第3班が他班からカバーされつつ、病院へと全速力で駆けて行く。
「陸自62普連だな!こちらは特自"第143即応機動中隊"。病院までのルートは我々がバックアップする!」
「カバー感謝する。よし、第3班各員もう一度聞け!本班は病院より逃げ遅れた民間人の保護と護衛だ。走れェッ!」
第3班…陸自一個分隊は、途中で先に現着していた特自東部方面隊"第1旅団"隷下の機械化部隊…普通科隊員を随伴させた〈16式機動戦闘車〉や〈96式装輪装甲車〉と合流し向かうのであった。
「我らは"パンドラ"
ユキムラはそう宣言してバキシムに拳を高速で何度も叩き込むと、赤い巻物を次元の狭間__超次元ホールから取り出して封を解く。すると上空に激しい雷と炎を纏った巨大な鉄球が忽然と現れた。
「"次元の雷球"…!!」
ハアッ!
――――ドゴン!!!
両腕をバキシムの方へ振り下ろすと、鉄球は意志を持っているかのように、バキシムの脳天目掛けて落下した。
鈍い音が街に響く。
キィィイイイ……!!!
超獣は痛みを感じない。しかしバキシムでもこれは体内の神経伝達系にかなり堪えたらしく、上手く動けないためにか低く唸りながら足元がおぼつかない様子でなんとか立っている。
バキシムは、頭部のツノと鼻にあたる部分からミサイルを連続発射。ユキムラを牽制する。
その牽制のミサイルの一部は度々ついでとばかりに隙あらば海岸病院へと向かおうとユキムラを飛び越して行こうとする。
「これでは埒が明かない…!!」
生体ミサイルの飛翔を、背負っている長刀や取り出す巻物を駆使することで辛うじて防ぎ続けるユキムラ。
もう一方、ユキムラの横ではナハトがベロクロンと取っ組み合っていた。
ナハトもまた、全身武器庫と言っても過言ではない存在との戦い方に苦慮していた。
ウォォオオオーーーーーー!!!!
グッ!――ジュワッ!!
《火炎も吐くしミサイルも撃つ、さらには手からは光弾まで…怪獣を兵器にしているのか…!!惨い、たとえ怪獣だとしても、これはやりすぎだ!》
怪獣をあらゆる面で超越した究極生物__"超獣"をハジメはすべて理解しているわけではない。それらが、一般的な怪獣から改造されたのではなく、一から異物同士が組み合わされ感情を持つこともなくただ殺戮・侵略という私利私欲の悪意によって生み出された兵器であることを知っているわけではない。超獣とは何たるかを知らない。
ハジメの考え所がズレているのは当たり前である。彼は超獣が生まれてしまった世界の住人でもなければ、その関係者でも取り巻きでもないのだから。
ハァッ!ジュゥウアッ!!
《…だけど、何をしても赦されるワケじゃない!!ここは、通さないぞ。絶対に!!》
それでも、である。思い遣りの心と、物事の分別をつける力を、ハジメは持っている。強いヒト、なのである。
ハジメは誓ったのだ。もう何からも目は背けない。それがケジメなのだと。大切な人を守るために、祈り願う人々のために、その人らの代わりに自分は戦うと。
オオオオオ……!
鋭い踵落としを繰り出したナハト。地面に顔から叩きつけられるベロクロン……。
超獣相手に多少の同情を感じることはあれど、それで躊躇するほどハジメは軟弱ではない。相手が影法師と繋がりがあるのならば余計である。
「過去数年、我らの住む"パンドラ・スペース"に異変が続いたのも、紫坊…影法師の仕業だろう!強烈な悪意をこの世界に満たすため、無理やり妖魔共を次元越えをさせていることはとうに割れている!!」
《っ!!そんなことまで、そんなことまでして影法師は…!》
ユキムラの語りを聞きつつ立ち上がってきたベロクロンをいなすナハト。知っている気であった影法師の底抜けな悪意の一部をさらに知ったことで、ナハト__ハジメは怒りに震える。奴はそれほどまでにこの世界を貶めたいのかと、そう思うのだ。
「この世界、この星に満ちている力…
――――ゴォオオオオオオオ!!!……ドカァアン!!!
「!!」
《!!》
超獣の侵攻を食い止めていたナハトとユキムラ。そこに人類の援護が加わった。
空自の飛行隊__第12、第121飛行隊による
『いいか、赤色空域外からのナハト、並びに"ジャイアント"の援護を徹底しろ。続けて
『ライブ2、発射!!』
『ライブ3、発射!』
『ライブ4、発射っ!』
『視覚は生物の急所の一つだ。あとは分かるな?狙うは一点だ。シェードチーム、射撃開始!!』
『『『了!!』』』
第一波に第二波…そして第三波と、F-3JとF-35JA計八機から数十発の誘導弾が一斉にバキシムとベロクロンへと放たれ、次々と着弾…命中する。
攻撃は頭部に集中した。生物の知覚領域は主に五つある。その内の一つたる視覚を奪うためにも彼らはそこを突いたというわけだ。
「済まぬ!かたじけない!!」ガシッ!
ゴォオオオオオオオ――ッ!!!
『おい聞いたか!?"ジャイアント"が礼を言ってくれたぞ!』
『拳と掌を突き合わせている…向こうの作法なのか?』
『しかし、悪い気はしない』
『…! 今、一瞬東南に機の反応が…』
二体の超獣は鬱陶しそうに頭部をブルブルと左右に激しく振り、自分達にちょっかいを掛けてきた連中…距離的に小粒程度の存在にしか見えない戦闘機をロックオンする。
「……やらせてなるものかっ!!」
タアッ!!
バチン! バキッ!!
ウオオオオオ!?!?
戦闘機に狙いを定めつつあったベロクロンにユキムラが肉薄。格闘技を畳みかける。
それに続きナハトはバキシムに飛び掛かった。
向こうが飛び道具を持っている以上、光線の発射タイミングは限られてくる。ナハトは渾身の一撃をお見舞いするために機を狙っていた。
―ズズゥン! ズーン!! ドドォオオオーーッ!!
シュアッ!! ハァッ!!
「ナハトが戦ってる…!」
場面は海岸まで残り100メートルも無い、一般道を病院にいた人々と共に走るエリカ達に移る。
エリカが駆け足で避難している中、ちらりと後ろを向くとナハトの後ろ姿が見えた。そこに見慣れない赤いマフラーを纏った緑の巨人__ユキムラも確認できる。
数百メートル先の地響きと、ナハトとユキムラの声も聞こえる。
「あの緑の巨人も、ナハトと一緒に病院を…?」
「病院を出た時に吹いた、背中を押してくれたかのような突風、あの方が吹かせたように思えます…」
「ナハトのお友達なのかな…?」
「巻物や刀を持っていますし、もしや忍道の方なのでは?」
「こらあんた達!べらべら喋るのは勝手だけどね、せめて逃げおおせてからにしないかい!!」
こんな時でも説教をかます久子。久子は今、麻子とみほに両肩を貸してもらって三人四脚のようにして歩いていた。
「おばぁ、あんまり動いている時に大声出さない方がいい…それに、耳元で言われると私と西住さんも辛いと思う……」
「麻子さん、私は大丈夫だから。もう少しで海岸だし、頑張ろう?」
「…恩に着る」
エリカ達は病院からの避難民の先頭集団の中いた。このペースで動ければ、間もなく海岸に続く階段がある地点まで到着するだろう。
ヒュルルルルルルル~~~!!
「あっ!? ミサイル!?」
エリカやみほ達、海岸を目指していた避難民達の行手を阻むかのように、何発かのミサイルが降り注いできた。
ユキムラが相手していたベロクロンが放った攻撃の流れ弾であった。燃料が切れかかり、失速しながらもこちらに確実に向かってきている。
通常のミサイルの着弾と炸裂時の加害半径を考えても、50メートル至近でさえ重傷、最悪死亡…どこかに落ちればタダではすまない。避難民の中から悲鳴が上がる。
(…っ!……ピイ助!!)
全員がミサイルから目を背け、下の地面を見るか、目を閉じ視界を闇に閉ざして身構える。
その中で、ここでみほは胸に触れた翡翠の勾玉の鼓動を感じた。服の下に隠れている勾玉は、琥珀色に明滅してみほに訴えかけているかのようである。
だからみほは心の中で叫んだ。
――バヒュン!!――ヒュヒュン!!
刹那、横から飛んできた三発の火球がミサイルすべてを飲み込み掻っ攫っていった。
これまで見てきた火球の中でも一回り小さいものだった。
周りの人々は上空からやってきた熱波に顔を上げる。そこにはミサイルは存在しなかった。消えていたのである。
みほがいち早く顔を上げた。そして何かを悟る。
「…来てくれたんだね」
「みほ?どう言うこと?」
ゴォオオオオオオオーーーーー!!!
「ほら、あそこに…」
状況が飲み込めない側の一人であるエリカは、凛とした視線を海岸側…東に掛けているみほに問う。辺りにはジェットエンジンに近い重音が響いている。
何が起こったのかを、すべて理解し、恐れていない様子のみほを、エリカ、まほ達は見る。
それに彼女は東の空を指差して、上のようなことを呟いた。
ガァアアアアアーーーーー!!!
どこからともなく轟いてきた咆哮。それは、聞いたことがある人ならば、ある者と比べるとやや高い印象を受ける。声変わりをする前の子供のようなものをイメージすればいいだろう。
東の青い空の一点、水平線のギリギリ上に、アクアマリンに激しく瞬く閃光が大洗に真っ直ぐ近づいてきていた。
エリカ達は咆哮を聞いた時、分かった。
「「「ガメラ……」」」
ガァアアアッッーーー!!!
キィイイイイイン!!!! ――ゴォオオオオオオオ!!!
みほ達の上空を数回旋回した後にホバリングを挟んで彼女らの正面に小さき勇者は着地した。
『司令部!こちらライブ1。ガメラを確認!!なんだ、ステルス機能でも持っているのか!?いまの今までレーダーは…!』
『避難行動中の民間人集団の前に着陸した!』
『……気のせいか?少しばかり小さくないか?それに、体色も燻んでいるように見える』
『各飛行隊、並びに地上部隊。"ホワイトホーン"、"ブラックバンドル"の動向を注視しつつ、情報収集を行なえ。ガメラとの敵対行動は禁ずる。……豪州連合から逃げおおせたガメラがそのまま日本に来たのか…?』
『シェード1了解。作戦行動を続行する』
『ポーターズ、作戦区域からの離脱を確認!』
『ガメラの飛行・侵入ルートを洗い出します』
自衛隊側は困惑していた。突如として海岸側より姿を現した小型ガメラという更なるイレギュラーが原因だ。
兎に角目下の問題は、破壊活動を続けている二体の超獣の迎撃と殲滅である。司令部側の判断は迅速だった。非敵性特殊生物との共闘を前提として自衛隊は動く。
《あれは…ガメラじゃない……でも、どこかで会っている。俺は、あのガメラと…》
「来たか。大地と大海、大空の総意たる
ナハトとユキムラも、小型ガメラを知覚した。
一度会っているのではないかと感じたナハト…ハジメは、思考を巡らす。あのガメラとはテレパシーを通じてさえ話していない。だが、まったく未知のガメラなのかと問われると、そうではないと答えるだろう。
分かることと言えば、小型ガメラは敵ではないという点だ。避難中だったエリカ達を__こちらが落としきれなかったミサイルから__守ったのだから。もしガメラが駆けつけなければ、エリカ達を失ったことでの再起不能のダメージをハジメは被っていただろう。
キィィイイイ!!!!
こちらに仕掛けて来るバキシムへ意識を戻してナハトは戦う。
「――ピイ助だよね?私たちを助けてくれたんだよね?……ありがとう」
グゥゥウ…!
目前の、25メートル級の小型ガメラ__ピイ助に語り掛けるみほ。
「いままで何処に行っていたの…?心配したんだよ?私だけじゃなくて、みんな…みんなが……」
ピイ助に歩み寄り優しく話すみほ。止めようとする人間はいなかった。あんこうチームも、黒森峰サイドも目を丸くするばかりである。ピイ助のイメージとはかけ離れた大亀が、同一の個体だとは信じられなかったからだ。
背後では依然として超獣と巨人たちによる戦闘は続いている。
――ごめんなさい――
「…! ピイ助、お話できるようになったの?」
勾玉経由のテレパシーによる念話をピイ助が会得していたことに驚くみほ。
それにガメラは答えず、今為さねばならぬことを伝えてみほを見下ろしていた頭を持ち上げ、戦闘を続けている巨大存在らの方へ首を向ける。
――ぼくは、地球を守る守護獣。だからあいつらを倒してくる。ウルトラマン達と一緒に……――
「……分かった。行ってらっしゃい。絶対帰ってくるんだよ?」
みほが感じていた優しさをピイ助はまだ持っているようだった。小亀から、ガメラとなったことで、"使命"を持ち何らかの変化があったのは確かであるが、一番の、根本的なモノは変わっていないことを知ったみほは、快く頷き、ピイ助を送り出す。
――うん。行ってくる。……"お母さん"、ぼくを育ててくれてありがとう――
――ゴォオオオオオオオ!!!
脚部をホバー機構化させ、高速で地面を駆けていくアヴァンガメラ__"ピイスケ"。
大きくなったその背中を、胸にかけている勾玉を両手で握ってみほは見届ける。
「私のこと、お母さんって、思ってくれてたんだね…」
ふと目から零れ頬を伝う一雫の涙を指で拭くみほに、あんこうチームとエリカ、まほ達が駆け付ける。
「みほ!あのガメラが、本当にピイ助なのか?」
「うん。ピイ助は、私をお母さんって…。あの子は私たちを守るために駆けつけてくれた……」
「お母さん…?」
「うん。そう言ってくれたの……」
みほが指差す方向には、ナハトとユキムラ、ベロクロンにバキシムが戦っている市街地があった。
そして、避難民の集団の後方に、陸自救助隊がおいついたのはこの後すぐの出来事であった。
――キィイイイイイン!!!!
『ガメラ、地上を高速で移動。火炎弾の発射を確認。攻撃は"ホワイトホーン"に直撃』
『司令部より作戦参加部隊へ。大洗市内の全ての民間人の確保、保護を確認した。よくやってくれた。残るは特殊生物だ』
『シェード1よりシェードチーム、もう一度"ブラックバンドル"に攻撃を仕掛けるぞ。続け』
『陸自第1戦車大隊の先行部隊が間もなく到着する。各隊、ここで踏みとどまれ!』
最大の急所であった市民の安全確保を一時的ながらもできた自衛隊は、ここでようやく本格的な反撃に移らんとしていた。
キュイイイイイーーーーン!!!
『"いずも"よりオットー1、発艦を許可する』
『オットー1了解。上がるぞ』
『続けて哨戒ヘリ部隊、甲板へ』
空自飛行隊によるアウトレンジ・アタックはもちろんの事、陸自救助隊のカバーに入っていた特自即応機動中隊が市街地内に再展開し、16式の105ミリライフル砲や96式の
『四体以上の大型特殊生物の同地域への集結……。欧州六月災厄か、福岡特災のような地獄か……それだけは阻止しなければならない』
高い火力を持った大型特殊生物の二体同時出現…自衛隊は関東の東部方面隊、中部航空方面隊、横須賀地方隊による総力戦に発展するだろうと考え、最悪の事態である首都圏到達前に撃破するべくあらゆる部隊が動き出しており、東京都の防衛省では後続の統合任務部隊の提案・編成が始まっていた。
そして場面は再び巨大存在同士が争う大洗の市街地へ。
唐突な小型ガメラ__ピイスケの参戦に、ナハトとユキムラは少々驚いていた。
――ぼくも戦う。お母さん達を…守りたいんだ!――
《キミは、ピイ助なのか!?》
「
ナハトとユキムラはバキシム、ベロクロンを広場に突き飛ばし、体勢を整える。そこにピイスケが合流した。
曇りかけていた青空の一点から陽光が、ナハト達に差す。
【♪FT BGM】佐咲紗花『Belief』
「往くぞ!」
《往こう!!》
――往くんだっ!――
オオッ!!
シェアッ!!
ガァアアーーッ!!
強く、熱い鼓動を絶え間なく響かせることで、生き物は皆生きている。
その力強い鼓動から生み出されるエネルギーは、悪しき者達を退かせる強大かつ神聖な力となり、他者の祈り、願い、託される想いを守る剛壁となる。
その力を胸に、守護者達は駆け出した。
「あの子なら…ピイ助なら、大丈夫…きっと……」
みほは、誰に囁くでもなく、ただただポツリポツリとそう呟いた。
首に掛かる勾玉を両手で握りしめ、超獣と戦うピイスケたちを見ていた。
その目に迷いや葛藤などは介在しておらず、勇気と確信に満ちていた。なにがそこまでみほをそうさせるのか、エリカは尋ねる。
「……みほ。どうして、そう思うの?」
「――希望だから。ピイ助は、私が選んで、手を伸ばした道そのものだから。……だから私はあそこで戦ってる皆の姿を見届けないといけないと思うの」
「アンタが選んだ…道……」
何か思うエリカに向き直り、「それにね?」とみほは続けた。
「そんな希望が三つも集まったら、負けないよ。だから私は信じれる」
みほの抱く想いに応えるかのように、アヴァンガメラ__ピイスケ達は戦っていた。
バキシム、ベロクロンの両者は、遂に体内に貯蔵していた弾薬が底を尽くしたのか、攻撃の勢いは衰え出していた。
ガァアアア!!
バヒュン!! バヒュウン! バヒュッ!!!
ここで一気に畳みかけるべく、まずはじめにピイスケが仕掛けた。腹部の間隔より仄かに赤い光が疾り、その直後にピイスケの口からは火炎弾――"マイクロ・プラズマ火球"が連続で形成、射出される。
高速で飛来する火球群に対して、二体の超獣はなす術なく、着弾を許した。頭部にダメージが蓄積していたバキシムとベロクロンはこれによって視覚を失い両腕両足を乱暴に振り回しあたり構わず暴れる。
《――スペシウム!!》
「"龍脈術 水霊の計"…!!」
ジュァアッ!!
ハァアアッ!!!
ギィイイイイイイイイ!!!!!
ボオオオ……ッ!!!
ナハトはバキシムに向けてスペシウム・オーバー・レイを放った。見事にバキシムに光線は命中し、光の中へバキシムは消滅していった。
ユキムラは自身の背丈の半分はあるかと思うほどの青の巻物__忍法帖を超次元ホールより取り出し、封を解き術を詠唱する。するとユキムラの周囲の空間に時空の穴がいくつも開き、そこから猛々しい水流の腕が伸びてきた。それらはベロクロンへと殺到し、巻きつきながら対象の自由を封じる。
「次元の海へと逝くがいい!!」
そして身動きの取れなくなったベロクロンはそのまま水流の腕によっていつの間にか開いていた巨大な次元の穴__超次元ホールへと抵抗することも許されず引き摺り込まれていった。
ゴォオオオオオオオ!!!
『…敵性大型特殊生物、消滅を確認!』
残る問題は、空間の裂け目である異次元空間である。
しかし、その問題はユキムラがすぐさま解決する。
《あの裂け目は、どうすれば……》
「秘奥義を使う。さすればあの赤き裂け目を閉じることは容易い。安心召されよ」
そうナハトに語ったユキムラは、空高く跳躍し、裂け目が広がっている高度まで上がると、背負っている一本の長刀を抜き、その刀身に無数の琥珀色と翡翠色の光の粒子__霊的エネルギー"マナ"を宿す。
すると長刀は"
「……! "怒流牙一刀流 次元断裂斬"ッ!!」
――ザンッッッ!!!!!!
空に広がる異次元に繋がる円状の裂け目を、両断する巨大な鮮やかな光の斬撃が飛び、異次元の裂け目を二つに割った。すると、切断された箇所から綻びがみるみる生じていき、斬撃に篭っていたマナがその綻びへと入っていき…マナが溶けていった箇所から元の青い空へと徐々に戻っていく。
――キンッ!
「現世と異界の繋がりは絶った。もう憂う必要は、無い」
長刀を鞘に戻しながら、ユキムラは地上へと舞い戻る。
異次元への裂け目が消滅したことを、自衛隊も確認しており、彼らも胸を撫で下ろしていた。
『"
『緑の巨人……奴は、彼は何者なんだ。あれもまた、別種のウルトラマンなのか……それとも全く別の存在か…』
『明確な意志の疎通ができた相手です。接触さえできれば、話はできるはず』
『兎に角、残弾ゼロとなった飛行隊は各所属基地へ帰投。地上部隊は引き続き、市民の保護を行え。新種と思われるガメラ、"ジャイアント"は本土から発つまで
『統合任務部隊は、大洗での戦闘の終結を確認したため、一週間後に順次解散する。また、その間にまた特殊生物の出現が関東周辺にて発生した場合はその限りではない』
『災害救助のため、茨城県内の各駐屯地に部隊派遣を要請』
『…驚くほどに、被害が少ない…これも彼らのおかげか』
しかしながら、警戒は緩めることなく自衛隊たる彼らは彼らで動くのである。
自衛隊や茨城県警、消防・救急隊が大洗町で活動するのを背景に、戦いに勝利したハジメ__ナハト、ユキムラ、ピイスケは向かい合ってなにやらコミニュケーションを取っていた。
「ウルトラマン…ナハトと呼んだ方がいいか?……そうか、ならばそう呼ばせてもらう。……戦闘の最中にも言ったが、今この世界、次元にあるこの星は、外より来た悪しき者共によって狂わされつつある。恐らく、もう一方……ピイスケと言ったか、守護獣たるそちらはある程度把握しているだろう」
《影法師、星間同盟のことか……》
――地球の、特にお母さん達が住む場所のマナの組成に異常があるって、
「それは
《ありがとう…ユキムラ。仲間はいて損は無いし、同じ困難に立ち向かう人間として、とても嬉しい》
――ぼくもまた一緒に戦う!――
《ピイスケも、ありがとう。キミが来てくれたおかげで、エリさん達も助かったんだ。本当に……ありがとう!》
「さらばだ。また会おうぞ!」
……シュワッチ!!
そして粗方話を終えた三者は、それぞれ別れて帰路に就く。ナハトは空高く飛び去り、ユキムラは自身の力で超次元ホールを開き、大洗町に散らばっていた"ハザマ"のシノビ達と共に元の次元へと一時的にではあるが帰還するために戻る。
――お母さんが無事で良かった…――
そして、残るピイスケは飛行形態へと成り、太平洋沖合に向かう。母親にあたるみほとは戦闘後には顔を合わせずに、であった。それは恐らく、ここでまたみほとあったならば、守護獣として覚醒した自分の意思が揺らいでしまうと思ったからだろう。
――ごめんなさい、お母さん。ここでまた会ったら、ぼくは立ち止まってしまうから、行くよ…ぼくは、守護獣だから、ぼくはもう"ガメラ"だから…
だからこそ、ピイスケは瞳に涙を浮かべながら、せめて念話だけでもとして、みほに置き手紙の如く一方的に言葉を送るのみに留め、みほ側からの接触をシャットアウトして海へ。その海域の上空には回転飛行形態でホバリングしているガメラが待っていた。
《いいのか…?育ての親には今度いつ会えるのか、分からないのだぞ。家族なのだろう?》
――ぼくは、決めたから――
それでも、みほの心の声がほんの少し、聞こえた気がした。《いつでも帰ってきていいんだよ》と。
小さな勇者は、口を固く閉ざし歯を強く食いしばりながら、親亀の如きガメラと共に海へと去っていった。
「ピイ助…いつの間にか、すごーく成長したんだね…」
「みほ、ガメラと……ピイ助はどうだった?」
海岸から水平線を見つめ続けていたみほに、まほが心配して声を掛けた。みほは「うん」と頷き、瞳から引いていた涙の筋を服の袖で拭き、姉と、その後ろにいるエリカやあんこうチームに笑顔を見せる。
「ピイ助は、ガメラと二人で地球を守るために戦うことを選んだって」
愛おしそうに手のひらにある透き通るように美しい翡翠色の勾玉を見つめるみほ。
ガメラ…ピイ助と交信できること、そしてあのリクガメのようだったピイ助がガメラなったこと自体、信じられないことの連続であり、そのすべてが初耳の話ではあったが、まほやエリカはその話を否定せずに受け入れていた。もちろん彼女の事情をより知っている大洗の仲間たちも。
勾玉を見て、合点がいったのか、まほは尋ねる。
「そうか…その勾玉は、ニュースにも載っていた、不思議な勾玉と同じ代物だったんだな」
「うん。そっか…お姉ちゃんにも、エリカさんにも言えてなかったもんね…。ごめんね、伝えられなくて」
「気にしないで。それは、アンタなりの不器用で、優しい心遣いから来たものでしょうから」
「エリカの言う通りだ。それに、人にはいくつか言えないことだって、あるだろうしな…」
まほは何処か遠くを見ながら、上のようなことを言った。ハッとしたエリカはその言葉を、他人事として、単に良い話として受け入れる気にはなれなかった。どうしても、自分の周り…あの幼馴染のことに思えてならなかったのだ。当て嵌まるようなものが多すぎる。
そして、その幼馴染は、病院で自分達を逃そうとしてから、見ていない。エリカはそれを思い出し、周囲…海岸を見渡す。しかし、避難民でごった返しており、大声で叫ぼうにも、海岸に現れ着陸を始めた自衛隊ヘリの爆音によって掻き消される。
「隊長、ハジメを探してきます」
努めて冷静に、澄ました顔をしてハジメを探す旨を伝えるエリカ。しかし、エリカはまほからの返答を待たずして、人混みの中へと入った。明らかに動揺していた。
今回もまたハジメは自分を盾にして行動した。もしかしたら、あの病室で怪獣ではなく影法師に斃されてしまったかもしれない…そんな考えが過ぎる。
しかし、アイツのことだ、死んではいない。きっとそうだと、根拠のない考えも頭の中に浮かび上がっていた。
「ハジメ、アンタ今度はどこに………あっ」
「――あ、エリさん!」
そうこうして、人をかき分けて何度目か分からなくなった時、人の波の間からハジメが顔を出した。
ハジメの顔は「しまった…」というような顔ではなく、エリカを見て心底安心したような、そんな明るい顔だった。
その顔をしたいのはエリカの方であるし、またしてもこちらを心配させたのだから申し訳なさそうな顔ぐらいはしてほしいとエリカは思っていた。
「…どこも怪我しては、なさそうね」
「うん」
エリカはどうもハジメに怒鳴ったり、叱る気にもなれなかった。呆れた、というのとは少し違う。ハジメの体をポンポンと軽く触り確かめる。
エリカ自身も具体的には分からないのだが、「ハジメは絶対に生きてる。そして帰ってくる」という確信に近い強い信頼、狂信めいた想いが生じているからだと思われる。心配よりも安心の感情が明らかに大きかったのだ。
(アンタがいなくなったら…?もしもの話だとしても、考えたくない)
本物であれ偽物であれ、ハジメという実物…視覚でだけでも認識できればエリカは安心感を得られる。
今回は、ハジメは変身する際、イルマと入れ替わることを忘れていたことも重なり、余計にエリカを心配させたのだ。
仮に、もしここでハジメが少し姿を現すのが遅かったり、戦いに敗北して姿を消すことになっていたら、エリカの心理状態は悪い方向、依存状態に入っていたかもしれない。
近頃のエリカは怒ることすら難しくなっていた。辛うじて今はまだ留まっているのだ。最近の非日常から来る負担の蓄積が、言動を変えてしまうほどの影響を与えるまでに至っていた。
エリカは大きく息を吸って、心底安心したかのように息を吐いて一言呟く。
「……よかったぁ」
「エリさん?」
いつもの反応ではないとハジメも気づいたのだろう。心配そうに、それでいて__親が怒っているかどうか遠回しに聞く子供のように__恐る恐るエリカの顔を覗くハジメ。今だけはまるで小動物のようだ。
「…何そんな顔してんのよ。心配する立場なのは、わ・た・しの方。なんでアンタがそんな顔すんのよ」
「え、っと…いつもなら、エリさんは手を出してくるか説教してくるかだったから……」
「なに?ハジメ、アンタ私にこっ酷く叱ってほしかったわけ?」
失礼な言い草だと、エリカは思った。
こちらも好きで毎回怒りのボルテージを上げてやってるのではない。なんなら、根本的な原因はハジメ側にあるのだ。
ハジメにMっ気があるのかと疑い聞き返したエリカに対して、ハジメはぶんぶんと勢いよく首を横に振る。逆にそうだと言ってくれれば清々しかったものを。
「…………まあいいでしょう。ハジメも見つけたことだし、ほら、西住隊長たちのとこに行くわよ。みんなにアンタの無事知らせなきゃね」
ハジメとのいつも通りのやり取りを経たことによって、エリカもなんとか平常に戻ったように見える。
ハジメの腕を掴み、引っ張ってまほ達の元へと人混みの中を進む。
(
しかしながら、彼女自身の中に、今回の出来事から新たに生まれた、若しくは以前から持っていた疑問や葛藤、苦悩といった感情が再び騒ぎ出していたのだった。
まほ達がいる場所にとにかく行こうと、目先のやるべきことになるべく意識をエリカは向けるようにした。
エリカとハジメが合流したその後、二人はあんこうチームと久子、まほのいる場所へと無事辿り着いた。
全員で海岸病院へと戻る久子と麻子の付き添いとして行き、幸い院内部の動力や機器は無傷であったため、本日中に復旧することができたのだった。
特殊生物出現に伴い、大洗町はここから一週間ほどは復興地域としてだけでなく、自衛隊の"要巡回区域"なるものに指定され、陸自や特自隊員や関係車輌を目にすることが増えるらしい。
また、大洗港には大洗女子学園艦は停泊してはいなかったため、みほ達も何も問題なく帰路に就けるとのことであった。
妹やその友人らに関しての心配は要らないと分かったまほ達も、黒森峰学園艦へと帰った。
今度は、戦車道の決勝戦で会おうと約束を交わして。
「次から次へと忌々しい者どもが……まだ足りぬのか。しかしいつか必ず、ウルトラマンを抹殺してやろうぞ…!」
☆★☆★☆★
おまけ 『努力をする者、見ている者』
「46…47…48!……49…!50……!!――」
時系列は7月24日より数日前の日本時間午後8時過ぎ。
黒森峰学園高等部側の戦車道格納庫横に併設されているトレーニングルームには、夜に入り辺りは暗闇に包まれている中で灯りが灯っていた。
トレーニングルームからは、ぼつぼつと誰かが数字を数える声が聞こえてくる。肉体鍛錬…腕立てや上体起こし、懸垂にスクワット、ベンチプレスといったものの回数をカウントしているようである。
そのカウントのペースは常人の1.5〜2倍ほど早かった。
「
トレーニングルームの一角、床にはトレーニングマットを敷き、腕立て伏せの一つである負荷をさらに上乗せしたもの__ナロープッシュアップをしている男子生徒、ハジメがいた。ここ最近は、校舎の管理人に予め断ってトレーニングルームの鍵を借り受けて、機甲科生徒らも帰宅した夜間に鍛錬を重ねている。無論他のチームメイトらには話していない。
トレーニングのセットを一つ終えたのか、息を吐き無言でタオルに手を伸ばして顔の汗を拭いている。
室内にはハジメ以外いない。そう室内には、である。
(……驚いたわ…。こんな時間にグラウンドの方が明るかったから、今日の自主練組が消灯忘れていたのかと思っていたけど……ハジメがなんでトレーニングなんてしてんのよ……)
戦車道格納庫…ガレージ側に繋がる通路から、エリカが室内のハジメを見ていたのである。当然ハジメは気づいていない。
整備科の生徒であるハジメは、エリカが認識している範囲内で言うならば、彼が整備等で使うだろう筋肉量は足りている。それに競技に直接参加することの無い男子生徒たるハジメが何故トレーニングをする必要があるのか。
眠れないからとか、そんな簡単なものが理由なわけないとエリカは思った。休憩を取っていながら、ハジメのその目は鋭いままだった。何か、ハジメはハジメなりの目的目標を持って臨んでいることがわかったからだ。
(あんな真剣な顔、まるで怪獣とか宇宙人が出た時みたいな……ハジメが
エリカが室外より見ているのには気付かぬまま、ハジメはトレーニングを続ける。
同棲中の義弟であるシンゴがいないことから、シンゴの迎えに行って諸々の家事をして、シンゴが就寝してからハジメはここに来たのだろう。
(あわわわ……な、なんで逸見さんが来たんだろう…!?僕動けなくなっちゃった……ここは退散しとこうかな)
なお、エリカも気付いてないのだが、実は出入り口横の自販機の陰にイルマが光学迷彩で隠れていたりする。ハジメが心配であるのはエリカだけでは無かったわけである。
そんなことをエリカは知らず、ただ黙々とトレーニングに勤しむハジメを見守る。
「ふっ、ふ……1、2、3ッ、――」
休憩のインターバルが過ぎたハジメは、今度は右腕…片腕で懸垂を始めた。
余談であるが、ハジメの今の服装は黒いアンダーシャツに黒森峰学園のジャージ長ズボンだ。上は半袖のシャツであるが故に、鍛え抜かれた筋骨隆々の引き締まった半身が見てとれる。
(いつからあんなに……ハジメはどっちかと言えば、ひょろっとしてたのに………あ!!)
そして、次にエリカが気づいたのは、ハジメの身体…露出している部分、主に腕や首筋の後ろなどであるのだが、そこに重ねて付いている痛々しい傷跡だ。
見たところどの傷も塞がってはいるが、大きいものから小さいものまで所狭しと跡があるのだ。
以前にも何度か傷について問い質したり、実際に
(……前に見た傷の上にまた新しくできてる…?いつ、どこで…?怪獣が出た時?人助けに行った時?いつもそれとなくはぐらかして、私には教えてくれない。上手く誤魔化してるつもりなんだろうけど、丸わかりよ…)
古傷だと言う時もハジメはある。しかしエリカが記憶してる古傷の場所とは明らかに違う。ハジメとの想い出の中でも、傷の手当てをした記憶というのはよく覚えている。幼馴染みんなでヒーローごっこをした後、よくみほと共に絆創膏を貼ってやったりして傷跡の場所の把握をしていたからだ。そういったものからも、ハジメは何かを隠しているのは明白なのだ。
(ハジメは…何のためにトレーニングしてるのかしら…。自分自身のため?いや、もっと誰かを助けれるように?……分からない。目指してるところも、理由も分からない)
想い寄せる幼馴染はどこへ向かおうとして、何を成すために鍛錬に取り組んでいるのか…ハジメの一番の理解者と自負していたエリカの心が揺らぐ。
このまま、どこかに……エリカの知らない、どこか遠くへ一人で行ってしまいそうな感覚に陥りそうになる。
(アイツの見ている景色が分からない……私には見えないのかしら……教えてくれないの?なんで、なんで…?)
声を掛けに行く勇気が無かった。
尋ねる勇気が無かった。
確かめる勇気が無かった。
ハジメと向き合う勇気が持てなかった。
「…………」
このまま何もしない方がいいのではないか?ハジメにとっても、エリカにとっても、それが最良かつ最善なのではないか?今の関係が崩れることを恐れているのだ。結局、エリカは止まってしまったのだ。踏み出せなかったのだ。
「私は…………っ」
やるせなくなり、自分が嫌になったエリカは踵を返し出入り口前から離れた。そこからは学園寮へと一目散にわき目も振らずに走った。
「……? 誰かいるの?」
ハジメの声がトレーニングルーム内に響く。
問いに返してくる声はない。
「…………気のせいだったか」
ハジメは再び鍛錬に意識を向けたのだった。
一見些細にも見えるすれ違いが、大きな歪みに変化している可能性もある。
はい。皆さんお久しぶりです。いろいろやることやり終えて安心している投稿者の逃げるレッドです。
実はですね、周りの方の協力等もあり、地元企業さんから内定を貰うことができたことを報告致します。やりました。やったぜ。
また、重い偏頭痛持ちであることもあり、季節の変わり目である最近は
なかなか筆が進みませんでした。一ヶ月近く投稿期間が空き申し訳ありません。
取り敢えず、ピイスケの変化と登場はお見せできたので、これはホントに良かった…
そろそろ架空兵器の活躍回を書かねば…
※ここからの後書きの内容は劇中でのキャラクター等に関する蛇足の話です。見ない方はすっ飛ばして次回予告へどうぞ。一応、最低限の補完として現在更新している怪獣図鑑の方は見てほしいです。よろしくお願いします。
さて、今回は投稿者が嗜んでいるTCG、デュエル・マスターズより投稿者最推しカードのドルゲユキムラを登場させました。シノビってカッコよくないですか?ちなみに投稿者の最多使用の種族とデッキはドラゴンです。
デュエマはマナを使って戦うゲームということもあり、そこで繋げたかったのと、せっかく向こうでもマルチバースの話があるんだから、やりたいと思い、今回出しました。
劇中に登場したユキムラの住むパンドラ・スペースもまた並行世界のものなので、デュエマ背景ストーリー上のように崩壊を起こしていません。ハザマについては、端的に言えば全ての文明…五色全てのシノビが集まった連合集団です。デュエマの背景ストーリーも中々面白いので、良ければ読んでみてください。
本作のユキムラに"超次元"が付いているのはお察しの通り、"覚醒"を経て進化サイキック・クリーチャーへと成ったためです。このユキムラは激しい修行や戦い…並行世界のドラゴン・サーガや革命編__ランド大陸の動乱等にも顔を出したりしていたりするので、めっちゃ強くなってます。
次にユキムラの使った技についてですが、剣技とゼロカゲの力以外は実際に存在する呪文カードより採用しました。次元の雷球と水霊の計、ですね。龍脈や龍素系のカードは結構好きです。後者はともかく、前者の呪文なんて現環境では絶対使われない…。
………ノーチラス級原子力潜水攻撃母艦"パンドラ"と超次元系の関わりはまったく無いです。無関係です。一応ここでも書いておきます。
その他の設定につきましては、怪獣図鑑の方に書いてるのでそちらへ。
"覚醒"、"革命"、"侵略"、"決断"…このデュエマのワードは今後本作では重要になってくるかもしれません…。
まあなんやかんやあっても超次元関係は何かと便利だし、融合獣…ディスペクターなどのカッコいいやつらもデュエマにはいますので、シノビ以外のクリーチャーも今後ちょくちょく出るかもしれないですね。
これからも逸見エリカのヒーローをよろしくお願いします。
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次回
予告
激化する対特殊生物戦。世界各国は、反転攻勢へと移るべく、その先鋒としてギャオス並びに小型中型特殊生物群の掃討作戦を開始する。
そして、忌避されるべき太古の大いなる邪神が星の外より訪れた者たちの手によって掘り起こされる。
狂った運命の歯車は、またしても動き出す!
次回!ウルトラマンナハト、
【災影掃討、邪神胎動】!
サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)
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紗希のトモダチ
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ミチビキさん サンダース編
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ミライVSマホ カレー対決
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ハジメ、迷い家にて