これは、落ちこぼれだった一人のモエタランガが、なんやかんやあって、行く先々の学園艦に住む人々に元気を分けていくお話。
オレはヒューズ。モエタランガ星系人だ。オレはそこの侵略宇宙軍並行次元派遣隊の一員として、宇宙警備隊や
そして、本部が用意したニホンの偽造パスポートや身分証明用のID、擬態装置などを使って潜伏することに成功した。一応木星あたりでワームホールジャンプをやめたのも良く働いているのかもしれないな。
んで、オレは凡そ5年程ここ、ニホンエリアで潜伏していた。
待て待て! ただイタズラに時間を浪費していた訳では断じて無いぞ!この5年間で若い地球人たちが生活する"ある場所"に合法的に侵入できる職業に就いたんだ。なぜならば侵略の為に伝染させる"モエタランガウィルス"は若い地球人にはより効果的であると別の派遣隊の報告で判明していたからだ。
だがその仕事に就けたのはオレ自身の力でだからな!
「あっ、掃除のおじさんだ!」
「おはよー!おじさん!!」
「ああ、おはよう。あのなぁ…だからオレはまだおじさんって呼ばれるほど歳は取ってねぇんだぞ!」
「わー!おじさんが怒ったー!!」
「逃げろ逃げろー!!」
「たくっ……」
今、オレは"学園艦移動清掃員"と言う職業に就いている。定期的にこんなクソでっかい船を移動して活動するこの仕事はオレの任務上とても相性が良かった。そしてかれこれ仕事に就いて半年ぐらいになった。今じゃ清掃のコツは先輩方よりも上手いって自慢できるぜ。
んで、オレが今週乗り込むよう言われたのは黒森峰って言う船だった。ここらにいる中坊あたりのガキどもは登校中だってのに俺を見つければちょっかい掛けてきやがるのさ。それで遅刻しても俺は知らねぇからな!
本部が用意したのは俺の身分証明と侵入方法、必要な道具だけで、オレが現地でなんとかやりくりしなくちゃいけなかったんだ。
ん?……なぜ本格的な侵略活動を開始していないのか、だと?
「………ここにもアルミ缶捨てやがって…このハコはペットボトルだっての……!」
…………オレは、自身でモエタランガウィルスの散布が出来ねえ。所謂、落ちこぼれってこった。だから辺境派遣隊とか言う部署に配置されたのも分かるし、逆にそんなオレに侵略軍としての任務を与え、他の並行宇宙と比べて大して技術が進んでいない次元の地球の侵略を、オレの担当にしてくれたのには感謝していた。まあ、乗り気ではなかったけども。それに、正直なぜ地球にそこまで拘るのかは知らんが。
それらの理由でオレはウィルス散布のためのカプセルも準備してもらい、任意のタイミングで活動を開始するよう通達されていた。
だがなぁ……
「あらぁ〜!清掃員のお兄さん! 朝からご苦労様〜!」
「あっ、ドモっす…」
「いつもいつもありがとねぇ〜。今度はどこの学園艦に行くんだい?」
「えっとですね…来週はサンダースっす…」
「佐世保の方にいくのね、身体に気をつけるのよ」
「頑張ってねぇ〜おばあちゃん達、応援してるから〜」
人から感謝されるのって、気持ち良いよな。
実はな、ここでぶっちゃけると、正直もう地球侵略とか面倒くせぇんだなこれが。オレも地球での生活に慣れちまったし、気づいちまったんだが、オレは特異体質だったんだ。どこが特異かって聞かれるとだ、オレは生命体の体内時計を早めるモエタランガウィルスじゃなくて、一時的ながらも生命体に気分の高揚とプラス思考を与える光の粒子を出すことが出来ることに気づいた。
これは一月ぐらい前に、知人と喧嘩しちまって落ち込んでた当時の同僚に、声をかけた時はじめて分かった。
「ほらこれ、自家栽培でとった茄子と胡瓜!持ってって家で食べて」
「梨と苺も持っていきな!」
「あ、あざっす…いつもすんません……」
だからこれを使って"人助け"ってやつをやりながら何気ない日常の中で生活していきたいって思った。
本部と連絡取らなくても多分大丈夫だと思う。
なんせ制圧し次第帰還して報告せよって言われてんだ。…情報のホウ・レン・ソウがちょっとガバってるとこは笑えるか?
つまり、俺が本星に帰らなければ任務を遂行中であると判断されてそのまま放置に近い状態になるだろうし、報告に行っても制圧の優先度は低いからすぐに来ることはないだろう。しかも俺よりも重要なとこにいるやつらが腐るほどいるからな、俺の経過報告見たらすぐに他の方に目を向けるはず。
…安心しろよ、オレたちと地球人の体感時間の差ってのは三桁以上差があるからな、1500年ぐらい黙ってても大丈夫だと思うぜ?
それにな、第一、オレはこの地球には異星人や怪獣に対してロクな技術も力も持ってないって言われて来たんだ。本来なら平和で邪魔するような奴がいない場所で侵略するって手筈だったんだ。
……だが最近、さまざまな宇宙で星間同盟とか言うやべー奴らがここらの銀河系で動いてるらしい。戦闘力も並以下で、モエタランガウィルスさえ扱えないオレが敵うわけないだろ?
だから結局オレは地球人として生きていくことを決めたのさ。しっかり掃除して、学園艦の人達と交流して、カップ麺食って、寝て、の繰り返しよ。あー、生き甲斐って改めて考えるとこんな風でも良いんだなって思うぜ。これで事実上、侵略活動は無期限の延期ってことになったってこった。
……ここまでが今に繋がるオレの話だ。
「おー、さみーさみー…春先だがまだまだ冷えるなぁ……缶コー買って、ベンチに座って、水平線に沈む夕日を見る!これほど風流なのはねぇだろ…」
そして今は夕方。仕事もひと段落し、自分へのご褒美に缶コーヒーを買ってやった。右舷艦上展望区域にあるベンチに座って夕日をのんびりと見るってのがこれまた楽しい。潮の香りと海の風を感じることが出来て、気分も良い。
「そういやどっかの異星人も言ってたなぁ………地球の夕陽ほど美しい景色は無いとか…確かに、分からなくはないぜ……………ん?」
なんだ、オレの斜め右のとこに茶髪でツインテールの、黒森峰の女子生徒が手すりを掴んで、海の方を見て立っていた。
少し距離があるからか、それとも気付いてないのか、溜め息ばっかついて夕日を見ている。おいおい、その夕焼けの見方はナンセンスだぜ……しょうがねぇ、少し話しかけてみるか。若干にゃ怪しまれると思うけどな。
「おい、何がダルくてそんな溜め息ついてんだよ」
「ふぇ?」
コイツ、オレのこと気づいてなかったな。まあいい、オレは湿っぽい雰囲気の中で飲むコーヒーは嫌なんでね。オレは飲みかけのコーヒーを持ったまま、生徒の方へと近づいて話しかける。
「夕陽を見ながら溜め息なんかついたら、一日の終わりが締まんねえだろ」
「えっと……お兄さんは清掃員の人、ですか?」
「ああ、悪いな。突然話しかけてよ」
「いや、なんかこっちもすいません…」
お前は何も悪いことしてねぇだろーが……なんでこう、すぐに謝るのか……それが分かんねぇな。
「…………お前と初対面のオレが言うのはおかしいとは思うが……溜め息ばっかついてよぉ、なんかあったのか? 住民の不満も拭き取るのも、オレたち清掃員の役割だと勝手に思ってるからよ、良かったら話してみてくんねえか?無理して言わなくていいけどよ」
「…いいんですか?」
「もちろん」
「…………最近、戦車道で…みんなに実力じゃ追いつけないって思うようになっちゃって…」
「センシャドーでか……」
センシャドー……あー、戦車道か。戦争に使うための兵器を使った不思議なスポーツだな。オレも最初地球にやってきて、それを研究がてら見ようとしてぶったまげた記憶がある。そういや、ここの学園艦も戦車道の強豪だったか……
「うん……幼馴染のエリカちゃんや友達もどんどん上手くなっていって一軍に行っちゃって…私は二軍のままで……チームのみんなと、周りのみんなとの間に見えない壁があるような…そんな感じ。」
そうか………コイツも、悩んでんのか。環境の中で自分の存在意義や目標を、見失ってるのか。
んなら、オレがその見失ったもの、探すの手伝ってやるか。
「あははは……戦車道、私に向いてなかったのかなぁ…エリカちゃんがやってたから、入っただけだったから……本気でやってる人たちよりも、センス無かったのかな〜……」
「いや、それは違うぜ」
「え?」
「いいか、オレに一つ言わせろ。……センスってもんはな、生まれながら身についてるもんじゃねぇ。
それは、何度も何度も自分がやりたいって思ったことを失敗して、でもその内何回かは成功して…そういった繰り返しの中で、自分のカラダに染み込ませたもんが……センスだ。だからな、センスセンスって言うんだったら今からでも全然つくぞ。やった分だけ力になる。長くなっちまったが、努力=センスってことだ。まだ諦めるには早いと思うぞオレは。」
「そうなのかな?」
「そんなもんだ。悔しいと思って何度も、何度も何度も挑戦して、それをやめないヤツが、相手が一番嫌がるような手強いヤツになるんだよ。だからよぉ、認めさせろよ…振り向かせろよ、周りを、その幼馴染を、友達を!俺はお前らに追いついたんだって、そしてこれから追い抜いてやるぜってな!負けねーぞってな!! そうしたらきっと、お前自身にも、周りにも、ぜってー良い刺激になるぜ。オレが保証してやる」
「…………でも…全然やる気っていうか、気合いっていうか…それも湧かなくて…」
顔を見るに、あともう少しでコイツは前を向ける。自分で走っていけるようになる。よし、最後の仕上げだ。一呼吸おいて俺はコイツの肩を、少し強くポンと叩く。
「………スゥー…………闘魂注入〜!!」ポンッ!
「わひゃっ!?」ビクッ!!
叩いた肩にほんのりと橙色の粒子のような物が、全身に伝播していき、仄かな光に一瞬包まれるとそれは収まる。
「…………ビックリしたぁ!いきなり何するんですか!」
「悪い悪い……で、どうだ?闘魂、みなぎってきたか?」
「…え、えっと…あれ?……たしかに、気持ちがみなぎってくるような………こんな感覚はじめてかも……」
「…まだやれそうか?戦車道」
「………うん、お兄さん。私、もう少し頑張ってみる…」
どうやら成功したようだな。少しホッとしたぜ。
「フッ。そうか、頑張れよ戦車道。あと勉強もな」
「……なんかお父さんみたいなこと言うね、掃除のお兄さん」
「うるせぇ。文武両道をしっかりやれってことだよ!」
「あはは!了解致しました、ありがとうお兄さん。私、自分に負けずに頑張っていくよ!!」
さっきまでの暗い雰囲気をどっかに吹き飛ばしやがった。見てるこっちが清々しい気分になるぐらいの笑顔で俺にお礼を言ってくれた。やっぱ人の笑顔って見てて良い気分になるな。最高だぜ。
「あ、私の名前言ってなかったね……。私は、レイラ!楼レイラだよ! 今日はありがとね、お兄さん!」
「おう、じゃあな…………恋愛も、しっかり相手のハート掴んでけよ」
「えっ///!?なんで好きな人いるって分かったの!?」
「バッグに写真入りキーホルダー下げてたら普通分かんだろ。ほら、早く帰った帰った。この時間からもっと寒くなるぞ」
「もー……。それは分かったけど…お兄さんの名前は?私は教えたから、そっちも教えてよ!」
「あ?俺か…………俺は、
オレはこれからも、仕事で色んな学園艦に乗り込んで、色んな人間と出会うだろう。
それが続く限り俺は平凡に働きながら、そこに住む人達が明るく前に進めるような手助けが出来るような……
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「………あ、ばあちゃん達から貰った野菜と果物が入った箱、ベンチに置いてきちまった…」
地球にやって来た落ちこぼれの侵略者、モエタランガ・フューズ。彼は人の温かさに触れて、本当の姿を隠しながらも、この星で新たな人生を歩み出した。
自分だけが持つ、前へと進もうとする思いを加速させる不思議な力を片手に、彼は人を導く導火線となるべく、生きていくだろう。
「…晩のカップ麺どーすっかな………カレーかシーフードか、へへっ、腹減ってきたぜ」
彼の渡り歩きは続く。
まずは番外編。活動報告で四月からとか抜かしてましたが、もう…我慢できない(ダディ)。そこ、オッパゲドン!(早期投下)
本編はゆっくりこれから出していきます。今のところストックは10話分ですかね。
ファンタジー系もそうですが、地球にやってきた異星人が地球文化に浸るのが好きです。
マックスのメトロンしかり、オタ芸メトロン兄貴しかり…。マックス本編に登場したモエタランガ兄貴はホント声が兄貴だったし、言葉遣いがキッチリしていて礼儀正しかった。幼少期の初見時はとても驚きましたよ。
フューズ君の地球人の姿は、髪色を赤色にした『べるぜバブ』の男鹿兄貴です。
番外編アンケートへの協力、よろしくお願いしナス!
そしてTwitterにてF鷹兄貴がウルトラマンナハトのイラストを描いてくれました!ありがとナス!
兄貴のイラストは主人公設定のところに貼っておきました。是非どうぞ!F鷹兄貴はハーメルンでガルパンss『ラン・アット・フルスピード』を執筆しています。そちらもよろしく!
それでは次回も、お楽しみに!
サイドストーリー アンケート(基本ほのぼの)
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ミチビキさん サンダース編
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ミライVSマホ カレー対決
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ハジメ、迷い家にて