1人の武装した男が必死の形相で、鬱蒼とした深い森の中を疾走している。
倒木を飛び越えたり、背丈を軽く越える草に紛れたりする。
たまに後ろを恐怖の面持ちで振り返っているので、何かに追われているのは確かだ。
「ぐぉ…っ!」
いきなり木の影から、力強い何かが伸びて男の首を掴み、空中に持ち上げた後に豪快に地面に叩き付けた。
疲労が貯まっている上に全身を強打され、その男は息が止まる。
そんな男の前に、半透明の人型らしき陽炎が悠々と立っていた。
背後の風景に擬態する何かが、明らかに男を見下ろしている。
するとまるでライトのように、陽炎の目が一瞬だけ煌めいた。
男はその陽炎を知っているのか、這いずりながらも逃げようとするのだが陽炎は逃走を許さない。
「おぐっ…くそ!離せバケモノめ!」
歩み寄って再度、男の首を片手で掴み、軽々と持ち上げる。
男はなんとか脱出しようともがくが、陽炎の力は凄まじく、ビクともしない。
ならばと男は腰に装着された2本の短かい剣で、陽炎の体を切り裂きに掛かる、だが
『ゴツッ! 』
なんとも鈍い音が辺りに響く。
頭突きを食らわされた男は意識が飛んだ。
陽炎は鋭利な2本の刃物を右手から生やし、重厚な鎧を纏う男の胸に突き立て、心臓を2つに裂く。
即死し、身動きしなくなった男の脊髄ごと頭蓋骨を引き摺り出した。
素手で人間の脊髄から頭蓋骨を引き抜くとは、とんでもない握力である。
陽炎は引き抜いた頭蓋骨を、まるで戦利品でも見るようにマジマジと観察していると、血の匂いが辺りに充満した為か、小型の竜が無数に現れた。
青い皮膚、赤い爪と鶏冠(とさか)を持つ鳥竜種、決して強くはないが集団で襲い掛かってくると鬱陶しい存在、『ランポス』である。
半透明とはいえ陽炎の体には先程の男の血が大量に付着しており、それを森の中に浮かび上がらせているので居場所はバレバレだ。
既に回りはランポスに囲まれており、陽炎には逃げ場は無い。
しかし、
「何処にいるんだーーー!」
「返事をしてーーー!」
「おーーーーい!」
人間の声が3つ、こちらに近付いてくる。
ランポスの意識が声の方に向いた事を確認すると陽炎は、地面を強く蹴って10㍍を垂直に跳躍、大木に貼り付くとスルスルと登っていき、姿を眩ました。
残されたのはランポスと、半透明に殺された男の死体のみ。
そこに先程の声の主がやってくると
「あの双剣と鎧!?まさか!」
「そんな…、ランポスごときに…」
「くそっ!雑魚ともがブッ殺してやる!」
死体の仲間は、犯人と思わしきランポスを駆逐し始める。
太刀、ライトボーガン、そしてハンマーが暴れ回る場面を、陽炎は頭上から終始観察。
ランポスは群れのリーダーである
『ドスランポス』迄も呼び出すが、3人の男女はそれを易々と駆逐、ランポスは殲滅された。
3人は周囲から脅威が去った事を確認して仲間の亡骸に歩み寄ると、その死体がランポスにやられたモノでない事に直ぐに気付く。
「うっ…見てこの傷、これは明らかにランポスの爪や牙じゃないわ」
「親玉のでもなさそうだぜ」
「ただのモンスターが、こんな鮮やかな手並みでハンターの心臓を正確に切り裂き、背骨ごと頭蓋骨を抜き取る訳が無ねぇ
……となると」
「もしかして新種?」
「かもな……くそっ、それにしても暑い
こんなに暑い日々は今までになかったぜ」
パタパタと手で顔を扇ぐ大きなハンマーを持つ男、すると彼は森の匂いと血の匂いの他に、何かの匂いに気付く。
「あれ?」
「どうしたの?」
「いや…なんか、海老臭いような
……がっ!!」
「え?」
「お、おい!?」
匂いに気付いたハンマーの男が急に大きく痙攣し、苦しみながら空中に浮かび上がる。
すると彼の腹部から、2本の刃物が突如として生えた。
絶叫をしながら口から大量の血を吐いた男は、今度は重力に逆らうように、真横に吹き飛ばされる。
まるで、怒り狂う轟竜に吹き飛ばされた時と同じ位に。
「ちょ、ちょっと!なんなの!?」
「……っ!!」
どしゃりと音を立てて、男の体が大木に叩き付けられて地面に倒れて、少し痙攣した後に全く動かなくなった。
それを見ていた2人の男女は、獣が唸るような声を聞いて、そっちを向く。
キラリと、ライトのように目を光らせる血を浴びた陽炎が確かに見えた。
「…っ!」
ハンターとしての直感から、ライトボーガンの銃口を瞬時に向ける女ハンター。
しかしそれは赤い3本の光の帯と、轟音と共に放たれた光の矢によって阻まれる。
女ハンターの利き腕は、光の矢によって無惨にも切り落とされたのだ。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
ライトボーガンを握ったままの腕が地面に落ち、その衝撃が文字通り『引き金』となってボーガンの引き金を引くと、虚しく乾いた音と放たれた弾丸が地面を抉る。
絶叫を上げながら膝を着く女ハンターを、守るように太刀を抜きながら陽炎に迫る男ハンター。
彼の目は、血にまみれた陽炎の姿を捉えていた。
渾身の一撃と仲間の無念を、この抜刀に乗せる。
『ザンッ!』
当たった。確かな手応えを感じる。
今まで何度も味わってきた敵を斬った感触が、太刀から腕に伝わった。
鮮やかな『緑』の血が地面を濡らすと、まるで稲妻のような現象が陽炎に起きると、半透明となっていた体の全貌が明らかにされた。
見たこともない金属のヘルメットと装甲、毛髪はドレッドヘア、装甲の下には網目状のスーツ、左肩には小さな砲頭、そして緑色の血を流す強靭な肉体。
「ソレがお前の正体か!」
目の前で仲間を殺した陽炎が幽霊のようなものならどうすることも出来なかったが、こいつは幽霊ではないし、人型であっても人間より少し大きい程度、これまで小山サイズのモンスターと何度も対峙してきたハンターにとっては、物足りないサイズ感だ。
そして何より血が出るなら殺せる。
その事に気付いた男ハンターは、斬擊を続けて繰り出す。
しかし斬りつけられるソレは、その図体から想像も出来ない程に素早かった。
長く、重い太刀の遅い攻撃が全く当たらない。
ならばと太刀を収め、またも抜刀攻撃をしようとするが、納刀の最中に距離を一瞬で詰められてしまう。
(早っ…)
キリンと同じか、それ以上の跳躍力と瞬発力、そして自身に迫る2本の刃物を振りかぶった巨体。
それが、男ハンターがこの世で見た最後の景色となったのである。
近年稀にみる熱気と、静けさを取り戻した森の1ヶ所に、普通の人間が見たら卒倒しそうな光景があった。
それは全身の皮を剥がされた、人間の男女のモノと思われる逆さ釣りの死体と、抜き取られた内蔵が森の虫や野鳥によって食い尽くされる光景である。
行方不明となった4人のハンターは、ギルドの捜索ミッションによって発見され、後日この残虐な行いをするモンスターの捜索と、狩猟のミッションがギルドから発注されるのだが。
そのミッションはいかなる手練れのハンターであっても達成する事が出来ないばかりか、生きて帰る事すら出来ないと直ぐにハンターの中で有名になった。
事態を重く見たギルドはそのモンスターが現れると噂の森を封鎖するが、たまに森の近くでのミッションや、大規模なモンスターの到来があると、正体不明の陽炎がミッション中に乱入し、ハンターもモンスターを問わずに全てを殺戮していくのである。
しかし冬の到来と共に、ソレの脅威は唐突に去る。
一体あれは何だったのか、様々な憶測がギルドやハンターの間で飛び交うが、生き延びたハンターがそもそも存在しないので、それを知る者はいない。
ただ1つだけ確実に言える事は『アイツ』は生きていて、またこの世界にやって来る。
それだけであった。
完
やりたい放題しただけの作品になりました。
もしもモンハンやってて、プレデターが出てきたらオモシロソーという能天気な発想から、こんな作品を作ってみました。
モンハン好きな方々、プレデター好きな方々、お気にさわったら御容赦ねがいます。
個人的には形見のヘビーボーガンを持った黒人の屈強なハンターに、これでもかと乱射して貰いたかったですが…作者の想像力が至らずにカット。
因みにですが、なんでも今回の暑さの関係でモンハン世界は北極の氷が溶け出し、氷山の中から古代神殿が発掘されたらしく
その調査に乗り出したチームと、彼等を護衛する海兵隊が、寄生型モンスターとその仲間の黒くて尻尾の先が尖ってて血液が酸性な涎ダラダラのモンスターによって行方不明になったらしいです
ならばとギルドの幹部『ディロン』が、かつての旧友に助けを求めてたり、生き残った海兵隊の、特に赤いバンダナを巻いた女兵士が暴れて回ったりする話とか、気が向いたらソッチも書いてみたい
ありがとうございました!
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2度目のは木霊だよ。中でホラ
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YOU-SON-OF-A-BITCH
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やることが派手だねぇ
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災難だと、諦めな
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いたぞおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!