ウルトラサクラ大戦Z   作:焼き鮭

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セブンガーが嬉し過ぎて、つい書いちゃったぜ☆


第一話「ご唱和ください!我の名を」(A)

 

 ――太正十九年。帝都・東京に“悪魔の隕石”が落下。

 飛び散った隕石の破片は、謎の魔力によって降魔を増殖、凶暴化……巨大化させた。

 

「ギアァッ! ギギギィッ!」

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

「キョロロロロ! ギュイィィィ―――――!」

 

 未曽有の危機に、帝都・巴里・紐育の華撃団が立ち向かい、後に「降魔大戦」と呼ばれる史上最大の戦いの末に、世界を救った。

 

 彼ら勇敢なる華撃団、その全員の消滅と引き換えに――。

 

 それから十年の時が過ぎ――太正二十九年。

 

 

 

「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

「きゃあああああ――――――――っ!」

 

 帝都・銀座大通りに大勢の帝都市民の悲鳴が鳴り渡る。

 ここは今、出没した降魔の群れの襲撃を受けているのだ。

 

「ギャアアアアッ!」

「シャアアアアッ!」

 

 無数の獣脚類型の降魔が牙を剥き、逃げ惑う人々を追い立てる。

 凶悪な鉤爪を振り回す怪物たちに、弱き人々はなす術を持たない……。しかし、彼らを守り恐ろしい悪と戦う力を持った者たちも、ここ帝都にいるのだ。

 

『はぁっ!』

 

 市民たちを追い回す降魔の群れの前に、颯爽と着地して立ちはだかったのは、首が無く胴体にモノアイが付与している、一頭身の人型ロボットが五機。それぞれ桜色、赤、緑、黄色、青と色とりどりのカラーリングであり、武装も種々多様である。

 人間が持つ霊力と世界で普遍的に用いられている蒸気エネルギーの併用によって駆動する、対降魔用亜人間型重機の霊子甲冑、及び最新型の霊子戦闘機だ。

 

『『『『『帝国華撃団・参上!!』』』』』

 

 先頭に立つ桜色の霊子甲冑、三式光武が抜刀すると、搭乗している少女が、残り四機の霊子戦闘機、無限を駆る仲間たちとともに堂々宣言した。

 彼女たちは十年前の降魔大戦を境に姿を消した旧帝国華撃団に代わり、帝都防衛の任のために集められた新たなる戦闘部隊、新生帝国華撃団・花組である!

 

『帝都の平和はわたしたちが守る! 天宮さくら、参りますっ!』

 

『東雲初穂、行くぜっ!』

 

『アナスタシア・パルマ。ここから先には行かせないわ』

 

『クラリッサ・スノーフレイク。一匹たりとも逃がしません!』

 

『望月あざみ、参る!』

 

 それぞれ名乗りを上げた五人の乙女たちが霊子兵装を操り、帝都民を背に降魔の大群へ立ち向かっていく!

 

〈さくら〉『はぁぁぁっ!』

 

〈初穂〉『うらぁぁぁっ!』

 

〈アナスタシア〉『ふっ……!』

 

〈クラリス〉『はぁっ!』

 

〈あざみ〉『やっ!』

 

 群がる降魔を刀で切り伏せ、ハンマーで叩き潰し、傘型の大砲で撃ち抜き、魔導書からの魔法弾が薙ぎ払い、ばら撒かれた炸裂弾が焼き払う。知性を持たず、本能のままに襲い掛かるしか出来ない降魔たちは帝国華撃団の連携に手も足も出ず、片っ端から消滅させられていく。

 

〈初穂〉『へへっ、どんなもんだ!』

 

〈さくら〉『初穂、油断しないで!』

 

〈あざみ〉『近い……大きな気配が……!』

 

 勝ち誇る初穂にさくら、あざみが警告した直後に、ビルの陰から巨体がヌッと現れてきた。

 

「アアオオウ! アアオオウ! シャウシャ――――――!」

 

 降魔や、霊子兵装よりも数倍も大きい怪物……体高は二十メートルにも届こうかという、降魔たちとは異なり毛皮と真っ赤な両眼を備えた大怪物が、華撃団に立ちはだかった!

 

〈初穂〉『あいつがこの群れの大将みたいだな……!』

 

 霊子兵装の六倍近いという巨躯の怪物を前にして、華撃団は得物を握り直した。

 

 

 

 帝国華撃団の指令室で、戦闘現場の様子がモニターされている。

 指令室の中央の椅子に腰を下ろす和装の美女の左側に並ぶ三人の男女が、ひと際巨大な怪物に対してコメントする。

 

「原子哺乳類ゴメテウス――通称ゴメス。新生代第三紀から現在まで、地底で休眠状態にあった個体がデビルスプリンターの影響で降魔化し凶暴化したようだな」

 

「はえ~……そんなに長くおねんねして生き続けてたなんて、生き物ってすっごいですぅ~」

 

「ふッ……どんな奴にせよ、僕たちの特空機の敵じゃないさ」

 

 

 

「アアオオウ! アアオオウ! シャウシャ――――――!」

 

〈さくら〉『きゃあっ!』

 

〈初穂〉『うわぁぁっ!』

 

 降魔怪獣ゴメスの振り回す尻尾が、さくら機と初穂機を打ち払う。ゴメスは体格差に物を言わせ、華撃団の五機を寄せつけない。

 

「わぁぁぁぁぁ――――――!」

 

 市民の避難はまだまだ完了しておらず、戦闘現場から多くの人たちが必死に離れていっている。

 

「うへあッ!?」

 

 その人波の中の一人の男が、足をもつれさせて転倒した。すぐに周りの紳士や婦人が手を貸して彼を助け起こす。

 

〈紳士〉「大丈夫か!」

 

〈婦人〉「立てますか?」

 

「あ、ああ。ありがてぇ……」

 

 今一つ身なりが綺麗ではない男が、彼らにペコペコ頭を下げた。

 そんな人々を背に守っている華撃団は、暴れるゴメスを懸命に食い止めていた。

 

〈クラリス〉『さくらさん、初穂さん、無理をしないで下さい!』

 

〈あざみ〉『あざみたちは、時間を稼ぐだけで十分』

 

 さくらと初穂を諫めた二人に続いて、アナスタシアが告げる。

 

〈アナスタシア〉『見て。もうキャプテンが到着するわ』

 

 顔を上げると――空の一画から、鉄色の巨大な何かが背面の二基のブースターよりジェット噴射を効かせながら、ゆっくりと降下してくるところであった。

 どこからか警報が鳴り響く。

 

『セブンガー、着陸します。ご注意下さい』

 

 ゴメスの更に倍以上もあるサイズの、円筒を組み合わせたような外観の巨大ロボットが着陸すると、その内部で操縦をしている青年の男性が司令室に通信で報告する。

 

『こちら神山誠十郎、特空機一号セブンガーにて現着! これより攻撃を開始します!』

 

 巨大ロボット・セブンガーがぐっと腕を振り上げると、機体の各部からプシューッ! と蒸気が噴き出した。

 

 

 

 指令室でサンダルを履いた男が、セブンガーを操縦する花組隊長・神山に忠告する。

 

「神山! 改めて言うが、セブンガーの実用行動時間は三分が限度だ。それ以上は人間の霊力じゃ耐えられねぇ。くれぐれも三分以内に勝負を決めるようにな」

 

〈神山〉『了解!』

 

 

 

「アアオオウ! アアオオウ! シャウシャ――――――!」

 

 それまで猛威を振るっていたゴメスも、自分以上の巨体のセブンガーには怖気づき、背を向けて逃走を図る。それを追いかけ出すセブンガー。

 

〈さくら〉『待ちなさい!』

 

 さくらたち五人の霊子兵装もまた、ローラーダッシュでゴメスを追跡する。

 

〈神山〉『セブンガーが入れないような道に逃げ込まれたら厄介だ。みんな、先回りして奴を足止めしてくれ!』

 

〈さくらたち〉『了解!!』

 

 神山からの指示により、五人は連携してゴメスの行く手に回り込んで、逃げ道を封じ込む。

 

〈初穂〉『おっと、ここから先は通行止めだ!』

 

〈クラリス〉『お引き取り下さい!』

 

 さくらと初穂でゴメスの両足を攻撃し、クラリス、あざみ、アナスタシアで三方向からの脚部への集中砲火を浴びせる。

 

「アアオオウ! アアオオウ! シャウシャ――――――!」

 

 脚に集中攻撃を食らったゴメスがたまらず立ち止まった。

 

〈神山〉『今だッ!』

 

 そこにすかさずセブンガーの一撃が繰り出される!

 

〈神山〉『いっけぇぇぇぇぇぇ――――――――ッ!』

 

 セブンガーが前に出した右腕がランチャー方式で切り離されて射出され、直後にロケット噴射で加速、ゴメスに衝突した!

 

「アアオオウ!! アアオオウ!!」

 

 ロケットパンチを食らったゴメスがそのまま空高くに押し上げられていき、空中で爆散を果たした。

 

〈初穂〉『よっしゃあ!』

 

〈あざみ〉『討伐完了』

 

〈アナスタシア〉『流石キャプテンね』

 

 降魔の撃滅に成功した帝国華撃団がその場で戦闘機から降り、セブンガーの前方に集まる。

 

〈さくら〉「それじゃあ、いつものアレやりましょう! アレ!」

 

〈クラリス〉「ええ!」

 

〈さくら〉「せーの!」

 

 セブンガーをバックにした乙女たちが、ピシッとポーズを取った。

 

「勝利のポーズ、決めっ!」

 

 

 

(OP:檄!帝国華撃団〈新章〉)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第

  ご 一

我 唱 話

の 和

名 く

を だ

  さ

  い

  !

 

 

 

 帝国華撃団の本拠地・大帝国劇場の地下に設けられた特空機用大型格納庫にて、花組の面々が、整備を受けているセブンガーをキャットウォーク上から見上げていた。

 

〈初穂〉「……しっかし、いつ見ても締まりのない顔だよな」

 

 セブンガーの顔面部分の作りに注目した初穂がポツリとつぶやいた。待機状態のセブンガーの眼は、まぶたが下がっていて覇気が感じられない。

 

〈初穂〉「もうちょっとこう……強そうな見た目には出来なかったのかよ?」

 

〈さくら〉「初穂、そんなこと言っちゃダメだよ。特空機はわたしたちの大事な仲間なんだよ?」

 

 肩をすくめる初穂をさくらが咎めた。神山もうなずいてつぶやく。

 

〈神山〉「ああ。特空機は、風前の灯だった帝国華撃団をここまで持ち直した立役者だからな」

 

「そうそう! その特空機を造った僕たち彗星組にも感謝してよね♪」

 

 神山たちの傍に、人懐こそうな雰囲気の青年がひょっこりと顔を出してきた。

 

〈さくら〉「ナシルマさん」

 

〈ナシルマ〉「ロボットにルックスなんて二の次! 必要なのは何よりも性能だよ。霊子兵装だって、シルエット的にはセブンガーと大差ないじゃん?」

 

〈アナスタシア〉「それはそうね」

 

〈ナシルマ〉「その点で言えば、特空機は活動時間を除けば地球最高峰! 現行の霊子戦闘機のどれをも大きく突き放してる。それをこうも簡単に造り上げたサーリン星の科学技術はすごいもんでしょ~。ねぇ?」

 

 花組に慣れ親しく同意を求めるナシルマという青年の後方から、サンダルを履いた足が近づいてくる。

 

「あんま調子に乗るな、ナシルマ。特空機の建造に使われた技術はサーリン星のものだけじゃねぇだろ」

 

 ナシルマがうッと言葉を詰まらせて振り返る。

 

〈ナシルマ〉「デュエス……」

 

〈デュエス〉「それに感謝なら、お前こそするべきじゃねぇのか? 神崎支配人に」

 

 サンダルを履いた、紅玉色の瞳の青年がため息交じりにナシルマの胸を指差した。

 

〈デュエス〉「宇宙から降ってきた未知の怪人として、銃殺刑にされかかったお前たちをかばい立てしたのはあの人だぜ」

 

〈ナシルマ〉「まー……あの時はマジ殺されると思ったね、実際。まさかあんな目に遭うなんてねぇ」

 

 やれやれと首を振ったナシルマが、デュエスの顔をジトッとにらみ返した。

 

〈ナシルマ〉「けど、言われなくたって分かってるよそんなの。ルパーツ星人はホント口うるさいな」

 

〈デュエス〉「ハッ、何とでも言えよサーリン星人」

 

 デュエスが鼻で笑い飛ばし、持参した『MAX COFFEE』と書かれた飲料缶をゴクゴクとあおった。

 彼らは特空機整備担当兼、特殊兵器開発担当のナシルマと、降魔怪獣分析・研究担当のデュエス。一番の特徴は……彼らが地球外の知的生物のみが所属する特殊な班、帝国華撃団・彗星組のメンバーということである。

 

 

 

 十年前、激闘の末に世界の危機を救った帝国華撃団であるが、それから数年の状況は悲惨のひと言であった。主力戦闘部隊であり、華撃団の顔と言える旧・花組の全員を一挙に失った帝国華撃団は、その後も散発的に出現する降魔の脅威から帝都を守る力も完全に消失。帝都防衛は他の華撃団に頼り切る状態にまで陥り、世間の風当たりも年々冷たくなり、降魔大戦後に発足した世界華撃団連盟“WLOF”からは何度も解散をちらつかされるありさまであった。

 そんな状態を変えたのが、降魔大戦の折に“悪魔の隕石”の被害で地球に墜落した円盤群に乗っていた、宇宙人の遭難者たちであった。戦後の混乱もあって地球人たちから恐怖され、排斥されかかった彼らを、元帝国華撃団員であり戦後の大帝国劇場支配人に就任した神崎すみれが保護。すると宇宙人たちは、私財を投げ打ってでも帝国華撃団存続に苦心する彼女への恩返しのために力を合わせて、凶悪化した降魔と互角以上に戦える新たな力を造り上げた。それこそが“対降魔用特殊空挺超大型霊子戦闘機”略して“特空機”……その第一号のセブンガーだ。

 セブンガーは完成するとすぐに、帝都を襲う降魔に対して圧倒的な戦闘力を見せつけ、すっかり落ちぶれていた帝国華撃団の復活を世界中に強くアピールした。それとともに、すみれのたゆまぬ尽力によって新しい世代の人材も集まっていき、今では最盛期とまでは行かなくとも、最早過去の存在ではないことを世間に印象づけるほどに帝国華撃団の名誉が回復しているのである。

 

 

 

 神山がナシルマとデュエスに対して頭を下げる。

 

〈神山〉「当時は地球人が君たちに大変ひどい真似をしてすまなかった。代表して謝罪する」

 

〈ナシルマ〉「おいおい、よしてよ隊長さん。別に怒ってるんじゃないからさ、もう過ぎたことだし」

 

〈デュエス〉「俺の方は、別に何もされてねぇしな」

 

 謝る神山に、ナシルマとデュエスが快活に笑い飛ばした。ちなみに、デュエスは他の遭難者たちとは異なり、“デビルスプリンター”の対処の宇宙指令を携えて自らすみれに接触してきたという経緯を持つ。

 神山が顔を上げると、周りを見回したクラリスが彗星組に尋ねた。

 

〈クラリス〉「ところで、モフじいさんはどうしたんでしょう? お姿が見えませんが……」

 

〈デュエス〉「モフじいなら今日は休ませてるぜ。あの人歳だからな」

 

〈ナシルマ〉「確か二十万歳超えてるんだっけ? モフじい」

 

〈デュエス〉「俺たちはまだ数千歳程度なのにな」

 

〈ナシルマ〉「長生きだよね~」

 

〈初穂〉「……話の前提が地球の常識を軽く超えてやがる……」

 

〈あざみ〉「宇宙人の感性は、よく分からない……」

 

 宇宙人間のとんでもない会話に、地球人の花組は冷や汗をかいていた。

 そこに作業服姿の、神山と同年代程度の青年が階段を上がってきた。

 

「おーい、彗星組~。特空機の整備はどうだ?」

 

〈神山〉「令士」

 

 彼は帝劇技術部の、霊子兵装の整備を担当する技師長の司馬令士。花組の非戦闘時の任務である、帝国大劇場の芸能活動の際に用いる舞台装置の開発・整備も担当している。

 

〈神山〉「霊子兵装の方の整備はもう終わったのか?」

 

〈司馬〉「ああ。それで手が空いたんで、こっちの手伝いに来たんだが……」

 

〈ナシルマ〉「ありがたいけど、こっちも大丈夫だよ。もうすぐ終わりだから……」

 

「お兄ちゃ~ん!」

 

 言いかけたナシルマの下へ、耳をイヤーマフのようなアンテナで覆った少女が、ジェットパックでセブンガーから飛んできた。

 

「セブンガーの霊子過給機の調整、完了したです~!」

 

〈司馬〉「ミースアちゃん!」

 

 少女がキャットウォーク上に着地すると、すかさず司馬が喜色満面に駆け寄った。

 

〈司馬〉「相変わらず仕事が早いね~。明日は何か予定ある? 実は花やしきのチケットがあってさ」

 

〈ミースア〉「え? 花やしきに連れてってくれるですか? わーい、司馬さんいい人です~!」

 

 ミースアという少女にデレデレとしている司馬に、ナシルマが苦い顔で呼び掛ける。

 

〈ナシルマ〉「あのね、技師長さん……何度も言ってるけど、ミースアは人間じゃないんだよ。アンドロイドなの」

 

〈司馬〉「アンドロイドだろうがあんころ餅だろうが関係な~い! オレの愛は止められやしないぜッ!」

 

 聞く耳を持たない司馬に、ナシルマたちははぁぁ……とため息を吐き出した。

 ミースアはナシルマの妹という名目だが、本当は全身機械仕掛けのアンドロイド少女なのである。

 

「何だか盛り上がっているみたいね」

 

 更にこの場に、眼鏡の女性を引き連れた、壮齢の和装の美女もやって来た。ただ歩いているだけでも目を奪われるような艶やかさが作り出す濃厚なオーラに、皆がすぐその存在に気がつく。

 

〈さくら〉「神崎支配人!」

 

 彼女こそが帝国大劇場のトップであり、現帝国華撃団の総司令である神崎すみれ。今の帝国華撃団があるのは、偏に彼女の手腕によるものである。

 すみれは一番に花組に賞賛の言葉を向けた。

 

〈すみれ〉「花組の皆さん、本日は素晴らしい働きでした。すっかりと帝都の防人としてふさわしい様相になったわね」

 

〈神山〉「ありがとうございます、支配人」

 

〈さくら〉「そ、そんなことありませんよ! わたしなんか、さくらさんに比べたらまだまだで……」

 

 神山たちは素直に賞賛を受けるが、さくらは大いに照れて謙遜した。彼女はかつて花組のエースであった真宮寺さくらに強い憧れを抱いているのだ。

 すみれは次いで、司馬や彗星組を労う。

 

〈すみれ〉「司馬君や彗星組の皆さんも、いつもご苦労様。花組の活躍は、あなたたちの仕事ぶりのお陰ですわ」

 

〈司馬〉「いえいえ、それほどでも」

 

〈ナシルマ〉「支配人さんのためなら、安いもんですよぉ」

 

 部下を褒め称えるすみれだが、同時に忠告も行う。

 

〈すみれ〉「ですが、今の帝国華撃団が全面的に認められている訳ではありません。世間では、新生帝国華撃団は特空機頼りとの意見が大きく、連盟からの目も未だ冷ややか。悪評を払拭し、帝国華撃団ここにありと広く世間に知らしめるには、やはりこれまでにない大きな成果が必要です。つまり、世界華撃団大戦での優勝よ」

 

〈神山〉「世界華撃団大戦……!」

 

 神山たち花組が、その名前にゴクリと息を呑んだ。

 世界華撃団大戦は、連盟が二年に一度開催する、華撃団同士の腕を競い合う全世界規模の大会である。今年で第三回を迎えるこの大戦で見事優勝を果たすことが出来れば、今の花組に文句をつける者はいなくなることだろう。

 

〈すみれ〉「大戦優勝の暁に、帝国華撃団は真に復活を果たしたことになる。皆さん、心を一つにして、この険しい壁を乗り越えましょう!」

 

〈花組〉「「「「「「はいッっ!!」」」」」」

 

 すみれからの訓示に、花組は開催までまだまだ遠い世界華撃団大戦への意気込みを新たにした。

 

 

 

 地上では、降魔の群れから救われた帝都市民が、帝国華撃団の活躍を口々に称えていた。

 

〈女〉「帝国華撃団、今日も大活躍だったわね!」

 

〈男〉「特空機もすげぇ強さだ!」

 

〈老人〉「いやはや、一時期落ちぶれとったのが嘘のようじゃわい」

 

〈中年〉「大帝国劇場ももうおしまいだと思ったもんだがなぁ」

 

〈若者〉「帝国華撃団! ワイは信じとったで!」

 

 称賛しながら元の日常に戻ろうとしていた民衆であったが、その間から急に悲鳴が上がった。

 

〈紳士〉「あれッ!? 私の財布がない!!」

 

〈男性〉「俺のもだッ!!」

 

〈婦人〉「わ、わたくしの大事な指輪がなくなってるわぁーっ!!」

 

〈女性〉「あたしのブローチも! どうして!?」

 

 貴重品を失ってパニックになっている数名の人たちの悲鳴に、周りの人々は何事かと注目を集めた。

 そして貴重品を無くしたのは皆、先ほど転倒した男に手を貸した人たちであった。

 

 

 

「三十円……こっちは二十円か……。このブローチはあんま高けぇモンじゃねぇな……シケた女だ」

 

 その男はいつの間にか路地裏に身を隠すと、複数の財布から金を抜き取り、宝石や装飾品を値踏みしていた。

 全て、元々の男の持ち物ではない。転んだ振りをして、助け起こしてくれた人たちから盗み取った物である。

 

「へへッ……降魔が出ると仕事がやりやすくて助かるぜ」

 

 盗品を懐にねじ込んでほくそ笑む男の名は、摩上沙太郎(まがみさたろう)。最近帝都に巣食うようになったコソ泥である。

 

〈摩上〉「さーて、纏まった金も手に入ったことだし、お宝を質屋に持ってったら久々にいいモンでも食うかぁ」

 

 好意で助けてくれた人たちからスリを働いて罪悪感の欠片も見られない摩上は、鼻歌混じりに帝都の闇の中に消えようとした。

 が、その時に、表の通りのスピーカーから警報が鳴り響く。

 

『帝都に隕石が接近しています。速やかに避難して下さい。帝都に隕石が接近しています。速やかに避難して下さい……』

 

〈摩上〉「隕石!?」

 

 反射的に上を見やれば、建物と建物に挟まれた空の光景に、燃え盛りながら地上へ落下してくる巨大隕石の姿が見えた。

 隕石は銀座の中央に、激しい震動とともに墜落! しかし質量の割には落下による被害は非常に少ないが……その代わりに“起き上がった”!

 

「グアアァァ――――! ギャアアァァァッ!」

 

 墜落した物体の正体は、岩石ではなかった。サメとサイを合成したような形態をしている、巨大生物であった!

 

「わぁぁぁぁぁ―――――――――!!」

 

「逃げろぉぉぉぉぉ――――――――!!」

 

 正体を晒してすぐに暴れ回り出す巨大生物から、帝都民が悲鳴を合唱させて逃げていく。

 

〈摩上〉「マジかよまたかよぉぉぉ――――ッ!!」

 

 摩上もまた、本日二度目になる災害に巻き込まれて、今度は本当に必死になって逃げ出した。

 

 

 

 緊急事態に対して、すみれたちはすぐに指令室に再集結して現場の状況をモニターで確認した。

 

『グアアァァ――――! ギャアアァァァッ!』

 

 銀座のビルを体当たりで薙ぎ倒しながら侵攻する巨大生物の姿を目にして、デュエスが思わず叫んだ。

 

〈デュエス〉「宇宙鮫ゲネガーグ!」

 

〈ナシルマ〉「知ってるのかデュエス!」

 

 振り向いたナシルマに、小さくうなずく。

 

〈デュエス〉「目についたものは小惑星だろうと吞み込んじまう危険な宇宙怪獣さ。こりゃ厄介なことになりそうだな……」

 

〈すみれ〉「花組はどうしているかしら」

 

 すみれに問われた秘書の竜胆カオルが答える。

 

〈カオル〉「既に総員出撃しています」

 

 

 

「グアアァァ――――! ギャアアァァァッ!」

 

 銀座を我が物顔で蹂躙する宇宙鮫ゲネガーグの前に、五つの鋼鉄の装甲が颯爽と駆けつけた。

 

『『『『『帝国華撃団・参上!!』』』』』

 

 次いで再発進したセブンガーも、ゲネガーグの正面に着陸する。

 

『セブンガー、着陸します。ご注意下さい』

 

〈神山〉『セブンガー、現着!』

 

 セブンガーのまぶたがキリッと持ち上がり、戦闘モードに切り替わった。

 花組は先ほどのゴメスとは桁違いの、セブンガーと同等の巨体のゲネガーグを強く警戒する。

 

〈初穂〉『また大物が出てきやがったな……!』

 

〈アナスタシア〉『これほどのサイズは、十年前の大戦以来になるかしら』

 

〈クラリス〉『こんなに大きいのの相手は、初めてですね……』

 

〈あざみ〉『手強そう……』

 

〈さくら〉『どれだけ大きくても関係ない! わたしたちの任務、帝都防衛を果たすだけっ!』

 

 ともすれば怖気づいているような仲間たちを激励するように、さくらが宣言した。神山も指令室へ告げる。

 

〈神山〉『攻撃を開始します!』

 

〈カオル〉『待って下さい!』

 

 しかしカオルに制止される。

 

〈カオル〉『その地点にもう一つ、飛行物体が接近しています!』

 

〈すみれ〉『今日は賑やかですわね』

 

 すみれのひと言の直後に、花組とゲネガーグの間に青く光る巨大な何かが降ってきた!

 

〈初穂〉『うわっ!? まぶしっ!』

 

〈クラリス〉『な、何!?』

 

〈神山〉『何事だ……!』

 

 あまりのまばゆさに、カメラ越しでも目がくらむ花組。光が徐々に収まっていくと……セブンガーを駆る神山の目に飛び込んできたのは、銀色の後頭部であった。

 

〈さくら〉『あ、あれは……!?』

 

 花組の前に新たに現れたのは……セブンガーやゲネガーグにも劣らぬほどの巨体の、青と銀色の体色で彩られ、頭頂部にはモヒカンのようなトサカを生やし――そして胸部の中央に『Z』の形の輝きが浮かび上がる発光体を持った、巨人であった。

 

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