ウルトラサクラ大戦Z   作:焼き鮭

10 / 31
第四話「艱難辛苦!二号ロボ起動」(A)

  

 特空機用格納庫に集まった花組を前に、完成した特空機二号機のお披露目会が行われていた。

 

〈ミースア〉「じゃ~ん! これが特空機二号、ウインダムです~!」

 

〈花組〉「「「おお~!」」」

 

 ミースアが下ろした垂れ幕の向こうに鎮座する銀色の巨大ロボットに、花組がため息を漏らした。頭部にはニワトリのようにトサカやクチバシ状のパーツがあるが、円筒体型のセブンガーに比べると、甲冑を着込んだ人間のように見える。

 彗星組がウインダムのスペックを説明する。

 

〈デュエス〉「セブンガーより軽量化した上、全身に設けた噴射口からの蒸気噴射によって機動力を大幅上昇。ジェットパックなしの飛行も可能だ」

 

〈ナシルマ〉「主武装は額からのレーザーショット! 更に各部パーツの換装によって、各隊員の戦闘スタイルに合わせた副武装も装備できるよ!」

 

〈モフロ〉「霊子機関もわしらが独自に開発した新型を搭載して、実用行動時間がセブンガーからの二分延長に成功したぞい」

 

〈初穂〉「おおっ! 至れり尽くせりじゃねぇか!」

 

〈神山〉「これは期待できそうだな……!」

 

〈さくら〉「皆さん、どうもありがとうございます!」

 

 想像以上の出来栄えを聞かされて、嬉々と喜ぶ花組であったが……。

 

〈ナシルマ〉「……だけど、一つだけ、重大な問題があるんだよね」

 

〈あざみ〉「問題……?」

 

〈アナスタシア〉「それは一体?」

 

 聞き返しに、デュエスが単刀直入に答えた。

 

〈デュエス〉「動かねぇ」

 

 花組はそろって、目をぱちくりさせた。

 

〈花組〉「「「……え?」」」

 

 

 

(OP:檄!帝国華撃団〈新章〉)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第

  艱 四

二 難 話

号 辛

ロ 苦

ボ !

 

 

 

〈さくら〉『はぁぁぁ~! 動けぇ~!』

 

 さくらがウインダムのコックピットに乗り込んで、ありったけの霊力を注ぎ込むが、ウインダムは指先一つ動かなかった。

 

〈ミースア〉「う~ん……ウインダムの霊子水晶に反応はなしです~」

 

〈さくら〉「はぁ、はぁ……こ、これ以上は限界です……」

 

〈神山〉「うーん……さくらで無理なら、普通に霊子機関と接続するだけじゃどうにもならないな……」

 

 さくらが息を切らしながら降りてきたので、神山が眉をひそめてうなった。

 

〈初穂〉「何でこんなことになっちまったんだよ」

 

 ぬか喜びさせられた初穂が呆れたように尋ねると、彗星組は申し訳なさそうに答えた。

 

〈ナシルマ〉「実は……予算が足りなくて、あちこちごまかして建造したんだよね。規格の違うパーツを無理矢理合わせたり」

 

〈デュエス〉「そしたら霊力供給にかなりの無駄が生じちまったみてぇで、どうやっても霊子機関が起動しねぇんだよ」

 

〈モフロ〉「じゃから、先に説明したのは全て、まだ額面上だけのものなのじゃ」

 

〈クラリス〉「何だ、そうだったんですか……」

 

〈あざみ〉「がっかり……」

 

 ろくでもないオチに、がっくり肩を落とす花組。

 

〈ナシルマ〉「いや~参ったねホントに」

 

 ナシルマが笑ってごまかしていると、

 

〈カオル〉「いや~参ったね、ではありませんよ……」

 

〈ナシルマ〉「ひッ!?」

 

 背後にカオルがゴゴゴゴ……という擬音が出ていそうな形相で立っていた。

 

〈カオル〉「あれだけ予算を使って、出来上がったのが場所を取るだけの銅像なんてことは許されません……。早急に何とかして下さい。いいですね」

 

〈彗星組〉「は、はい……」

 

 言外の圧を掛けて立ち去っていくカオル。彗星組はタジタジと頭を下げるしかなかった。

 花組はその様子を、冷や汗混じりに見つめていた。

 

〈ナシルマ〉「……けど、実際どうする? これ」

 

〈ミースア〉「パーツを買い替えるお金なんてもうないです~」

 

〈ナシルマ〉「WLOFから予算分捕れたら、話は違ってたのに……あの白スーツめ」

 

〈モフロ〉「ないものをねだっても仕方あるまい。今あるものでの解決方法を考えるのじゃ」

 

〈ナシルマ〉「そうは言ってもモフじい……」

 

 頭を悩ませる彗星組に、初穂が思いつきで助言した。

 

〈初穂〉「内部がガタガタしてんだろ? だったらこう、ガンッ! と強い衝撃でも与えてみるのはどうだ?」

 

〈さくら〉「初穂、そんな古い蒸気テレビじゃないんだから……」

 

 さくらは呆れるが、デュエスは顎に指を掛けて、

 

〈デュエス〉「いや、それもありかもな」

 

〈さくら〉「え、ええ?」

 

〈初穂〉「おっしゃ!」

 

〈デュエス〉「何らかの圧力で霊力の通りを良くする。一度起動させられりゃ、その時のデータで最適な状態に調整できる。今必要なのは、とにかく起動させることだ」

 

〈ナシルマ〉「そんな簡単に言うけどさぁ、どうやるっての? そんなこと」

 

 嘆息するナシルマに、デュエスはこう返す。

 

〈デュエス〉「可能性なら、もう見つけてあるぜ」

 

〈ナシルマ〉「えッ、ホントに?」

 

〈クラリス〉「誰が、どうするというのですか?」

 

 デュエスの視線は、クラリスに向いていた。

 

〈クラリス〉「……って、ええっ!? わ、私がやるんですか!?」

 

〈デュエス〉「スノーフレイク、お前にゃ他の奴にはねぇ力があるだろう。それがありゃあるいは」

 

〈さくら〉「確かに……」

 

〈アナスタシア〉「クラリスの魔法の力ね」

 

 クラリスの生家であるスノーフレイク家は、代々強力な重魔導を継承しており、もちろんクラリスもその使い手だ。この技術は、クラリスに霊力の大小では測れない能力を与えている。

 しかし、クラリスは二の足を踏む。

 

〈クラリス〉「い、いきなりそう言われましても……心の準備が……」

 

〈ナシルマ〉「そこを何とか!」

 

〈ミースア〉「早く何とかしないと、カオルさんの雷が落っこちちゃうです~!」

 

〈クラリス〉「で、ですが……」

 

 すがりついてくるナシルマとミースアに困惑するクラリスを、神山がかばう。

 

〈神山〉「二人とも、そう困らさないでやってくれ。二人も知ってるだろう? クラリスの事情は」

 

 クラリスは長い間、戦いの場に駆り出されて多くの人間を傷つけてきた重魔導の力について思い悩んでいた。神山の説得で己の力と向き合う覚悟も固めたが、やはりそうすぐに気持ちの整理がつくものでもない。

 

〈神山〉「二人が焦るのも分かるが、クラリスに無理をさせてもきっといい結果にはつながらないだろう。少し待ってあげてくれないか」

 

〈クラリス〉「神山隊長……」

 

 説得する神山であるが、ここで事態は急変を迎える。

 格納庫内に緊急サイレンが響いたのだ。

 

〈さくら〉「! 降魔出現の警報!」

 

〈神山〉「みんな、行こう!」

 

〈さくらたち〉「「「「「はい!」」」」」

 

 一同はすぐに、指令室へと駆けていった。

 

 

 

 指令室のモニターに、帝都の地底から出現した降魔怪獣の姿が大きく映し出されていた。

 

『ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!』

 

 長く鋭いクチバシを持った、茶色い蛇腹状の皮膚のシャープな体型の怪獣。デュエスが名前と性質を皆に告げる。

 

〈デュエス〉「テレスドンだ! 地中深くに生息する、夜行性の怪獣だ。だがどうしてこんな真っ昼間に……」

 

〈すみれ〉「それを考えるのは後よ。神山くん!」

 

〈神山〉「はい。帝国華撃団・花組、出撃せよ!」

 

〈さくらたち〉「「「「「了解!!」」」」」

 

 花組は直ちに現場に向けて出撃を開始した。

 

 

 

 格納庫の、己の三式光武の下へ走るさくら。彼女が近づくと、光武のハッチが自動でスライドして開いた。

 

〈さくら〉「ふっ!」

 

 さくらが操縦席に飛び乗り、ハッチが閉まると、霊子機関と接続して光武にエネルギーを充填させる。

 

〈さくら〉『はあああっ! 三式光武……起動完了っ!』

 

 腰の大太刀を抜いて動作確認し、機体ごと翔鯨丸に搭乗して現場に急行する。

 

 

 

「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」

 

 テレスドンはその巨体で建ち並ぶ住宅を押し潰し、我が物顔で町を蹂躙する。潰されていく町から、市民は必死に逃げていく。

 そこに翔鯨丸が到着し、五機の霊子兵装が地上に向けて投下された。

 

〈花組〉『『『帝国華撃団・参上!!』』』

 

『セブンガー、着陸します。ご注意下さい』

 

 次いでセブンガーもテレスドンの背後に着陸した。巨大な気配に気づいて振り返るテレスドン。

 今回セブンガーを操縦しているのは、あざみだ。

 

〈あざみ〉『セブンガー……参るっ!』

 

 セブンガーがテレスドンに飛びついて、一本トゲの生えた背面を抑えつける。

 

「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」

 

 しかしテレスドンは激しくもがいて逃れ、セブンガーから距離を取った。再度捕まえようとするセブンガーだが、テレスドンの身のこなしについていけずに手が空を切る。

 

〈あざみ〉『速い……!』

 

 セブンガーの側面に回り込んだテレスドンは、口から溶岩熱線を吐いて食らわせる。

 

〈あざみ〉『に、にんっ……!』

 

 火炎攻撃をまともに食らって、セブンガー内のあざみが苦悶する。熱せられたコックピットに警報が鳴った。

 

〈さくら〉『あざみが危ない!』

 

〈神山〉『みんな、援護するぞ!』

 

 神山の指示で、五人がテレスドンの足を狙って集中攻撃を浴びせる。

 

〈神山〉『おおおおおッ!』

 

 しかし彼らの攻撃は、テレスドンの皮膚に阻まれて全て跳ね返された。

 

〈初穂〉『固ってぇ!』

 

〈アナスタシア〉『鋼鉄の壁を相手にしているようだわ……!』

 

〈クラリス〉『こうなったら、私の重魔導で……!』

 

 クラリスが必殺攻撃を発動しようと霊力を集中するが、

 

「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」

 

 テレスドンが素早く尻尾を振り回して、五人を弾き飛ばした。

 

〈クラリス〉『きゃああっ!』

 

〈神山〉『くッ、固くて速い……厄介だな……!』

 

 生半可な攻撃は通らず、しかしセブンガーの速度では捉えられない。単純に強いテレスドンに手を焼く花組。

 

〈摩上〉「……クックックッ……」

 

 花組の苦戦の様子を、物陰に潜んでいる摩上がほくそ笑みながら観察していた――。

 

〈あざみ〉『やぁっ!』

 

「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!」

 

 セブンガーの鉄拳をかわし、クチバシを突き立てるテレスドン。

 

〈あざみ〉『あうっ!』

 

〈神山〉『あざみ!!』

 

 横転して追いつめられるセブンガーを目の当たりにして、神山はゼットライザーを起動した。

 

[SEIJŪRO, Access Granted!]

 

 アクセスカードをセットして、口上を上げる。

 

〈神山〉『「真っ赤に燃える、勇気の力!」』

 

 三枚のメダルをライザーにセットしてスキャン。

 

[ULTRAMAN! ACE! TARO!]

 

〈ゼット〉『ご唱和ください、我の名を! ウルトラマンゼーット!!』

 

〈神山〉『「ウルトラマン! ゼェ―――ット!!」』

 

 ライザーを掲げて、トリガーを押した!

 

『ヘアッ!』

『トワァーッ!』

『タァーッ!』

[ULTRAMAN-Z! BETA-SMASH!!]

「ジェアッ!」

 

 無限から飛び出し、変身したウルトラマンゼット・ベータスマッシュは猛然とテレスドンに突進し、首にラリアットを食らわせた。

 

「ウオォーッ!」

「ギャアオオオオオオウ!? オオオオウ!」

 

 不意打ちをまともに受けてばったり倒れるテレスドン。ゼットはその頭をむんずと掴む。

 

「ドオアッ!」

 

 そのまま大きく首投げ! 投げては叩きつけ、投げては叩きつけを繰り返す。

 

「ギャアオオオオオオウ! オオオオウ……!」

 

 ゼットのパワフルな猛攻に、テレスドンはどんどん弱っていく。そして大きくよろめいた隙を突いて、ゼットがとどめの一撃を繰り出す。

 

〈神山・ゼット〉「『ゼスティウムアッパー!!」』

 

 ゼットのアッパーパンチがテレスドンの顎を捉え、粉砕した!

 

「ギャアオオオオオオウ!! オオオオウ!!」

 

 テレスドンは粉々に砕け散って、破片が周囲に散らばった。

 ――その一つを、摩上が拾い上げた。

 

〈ロソス〉『なかなかやるもんだ、ウルトラマンゼット……。しかし、これで目的は達した……』

 

 摩上とロソスは何やらたくらみながら、テレスドンの破片を回収して姿を消していった……。

 

 

 

 テレスドンは撃破されたが、花組には反省点が残る戦闘結果であった。

 

〈あざみ〉「申し訳ない、隊長……お役に立てなかった。ゼットにも、申し訳ない」

 

 指令室に帰投後、助けられたあざみが神山とゼットに謝罪する。

 ゼットはスマァトロン越しにあざみに返答した。

 

『鬼にし内でくだ犀 これガオれのや区割です』

 

〈神山〉「あー……気にするなって」

 

 すみれたちは、今回の戦闘の記録映像を見返して、問題を見出す。

 

〈すみれ〉「やはり……セブンガーでは、操縦者の違いで戦績に大きなムラが出ますわね」

 

 各個人の特性に合わせて機体ごとに調整がされてある通常の霊子兵装とは違い、一機を乗り回しているセブンガーは、隊員ごとに得手不得手がはっきりと出る。特にあざみは素早い立ち回りでの遊撃を得意とするので、鈍重なセブンガーとの相性は特に悪いのである。

 

〈カオル〉「ですが、操縦者を限定してしまいますと、個人の負担に大きな偏りが出てしまいます」

 

〈すみれ〉「ええ……。それに今回のような動きの速い相手だと、操縦者に関係なく対応が困難ね」

 

〈カオル〉「やはり、これ以上の問題が発生する前に、二号機の起動に成功する必要があります」

 

〈モフロ〉「こちらもどうにか手段を講じております」

 

〈ナシルマ〉「色々手を加えて調整してるんですけどねぇ……」

 

 成果があまり芳しくなさそうな彗星組の様子に、先ほどの頼みごとをされたクラリスは、逡巡したように目を伏せた。

 

 

 

 その晩、クラリスは一人で特空機用格納庫を訪れていた。

 未だ沈黙したままのウインダムを見上げて、眉をひそめる。

 

〈クラリス〉「……私の力ならば、あなたを目覚めさせられるかもしれない。だけど……重魔導は破壊の力。もし失敗してしまったら……」

 

 デュエスの言った通りに成功すればいいが、もしものことがあったら……自分の力で、ウインダムは起動不可能な損傷を負ってしまうかもしれない。それが、クラリスの一番の不安であった。

 その不安をぬぐい切れぬまま、ウインダムに背を向けるクラリス。そうして格納庫を立ち去ろうとするが……キャットウォークを降りたところで、人の気配があることに気づいた。

 

〈クラリス〉「……モフじいさん!」

 

〈モフロ〉「おお、クラリスくん」

 

 モフロがまだ格納庫に残っていた。

 

〈クラリス〉「まだ作業されてたんですか? もうお休みになって下さい」

 

〈モフロ〉「何、年老いた身と言え、まだまだこれくらいは平気じゃ。クラリスくんも、ウインダムのことを気に掛けてくれているから、ここにおるんじゃろう?」

 

〈クラリス〉「ええ、まぁ……」

 

〈モフロ〉「……ちょうど夜食が出来たところじゃ。半分どうかね?」

 

 モフロが焼き芋をクラリスに差し出す。

 

〈クラリス〉「いえ、それはモフじいさんの分ですし……」

 

〈モフロ〉「遠慮することはない。老人は食べる量が少ないからの。まぁ、こんな老いぼれの相伴など退屈じゃろうがのう」

 

〈クラリス〉「そう卑下なさらないで下さいよ、モフじいさん」

 

 苦笑して、モフロの隣に腰掛けるクラリス。焼き芋を受け取る彼女に、モフロが尋ねかけた。

 

〈モフロ〉「まだ己の持つ力の扱いに、悩んでおるのかね?」

 

〈クラリス〉「はい……。神山さんたちは、自分を信じられない私のことを信じてくれてます。だけど……私が私の力を、誰も傷つけることないよう使いこなせるかは、まだ自信をもっては……」

 

〈モフロ〉「……これが何だか分かるかね?」

 

 思い悩むクラリスに、モフロは唐突に焼き芋を乗せている網を指し示した。

 

〈クラリス〉「この網ですか? 何だか、変わった形ですが……」

 

〈モフロ〉「これはセブンガーのダクトカバーじゃよ」

 

〈クラリス〉「えっ!?」

 

〈モフロ〉「古くなって取り換えた物を、取っておいたんじゃ。何か別のことに使えるかもしれんと思ってな」

 

〈クラリス〉「別のことに……」

 

 網を例に出してから、モフロが説き始める。

 

〈モフロ〉「これだけではない。どんな物も、使い方は一つだけではないのじゃよ。使う人次第で、いくらでも変わる」

 

〈クラリス〉「使う人次第で……」

 

〈モフロ〉「セブンガーとて、実はナシルマくんの母星、サーリン星で造られ、破壊されたロボットの残骸を再利用して建造したんじゃ。ナシルマくんが提供してくれてな」

 

〈クラリス〉「そうだったんですか!? 確かに、資産が尽きてた帝劇で、どこから材料を調達したんだろうって不思議でしたが……」

 

〈モフロ〉「そしてそのロボットは、昔サーリン星人に反逆し、大量虐殺を行ったものなのじゃ」

 

〈クラリス〉「……!」

 

 まさかの告白に、息を呑むクラリス。

 

〈モフロ〉「それが今では、帝都の人命を防衛する戦士に生まれ変わっておるのだ」

 

〈クラリス〉「……ナシルマさんは、自分の同族を殺したロボットを再利用すること、何とも思わなかったんでしょうか」

 

〈モフロ〉「当然、心中は複雑じゃったろう。しかし彼もああ見えて、半端な気持ちでここにおるのではない。それでもすみれさんや、君たちのために、決断をしてくれたんじゃよ」

 

〈クラリス〉「……そう、なんですか……」

 

〈モフロ〉「物自体に、善悪はない。良いことに使うのか、悪い方向に向けてしまうか……活かすも殺すも、物の価値は人間が決めるという話じゃて」

 

〈クラリス〉「……」

 

 モフロの話を、クラリスは揺らめく焚き火を見つめながら聞き入っていた。

 

 

 

 ――深夜の帝都の片隅で、闇夜に紛れて、摩上がライザーのトリガーを押して超空間のゲートを作り出した。

 

〈摩上〉「ククク……」

 

 それをくぐり、亜空間に隠れると、その内部に設置されている奇怪な装置の前に立つ。

 

〈ロソス〉『さぁ兄弟、始めよう……』

 

 ロソスに促されて、摩上は装置の口に、肉片を投入する。――先日起きた戦いの際に、密かに回収していたゴモラの破片だ。

 装置に満ちている液体の薬品がゴポゴポ泡を立て、摩上がハンドルを回すと、プシューッ! と装置から蒸気が噴き出し、下部の口からメダルが一枚出てきた。

 その表面に描かれているのは、ゴモラの横顔だ。

 

〈ロソス〉『よぉし、次だ……』

 

 同様の手順で、もう三枚のメダルも作り出す。二枚目に作り出したのは、今日手に入れた破片を投入したテレスドンのメダル。三枚目はエリマキのついた怪獣のもの。四枚目には、毒々しい色彩の降魔が描かれていた。

 

〈ロソス〉『上々だ……早速明日にでも使ってみようか……』

 

〈摩上〉『「クッククク……ウルトラマンゼットめ、目に物見せてくれるぜ……!」』

 

 摩上は暗い笑みをとともに、作り出したメダルたちを手の平に並べて見下ろした――。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。