ウルトラサクラ大戦Z   作:焼き鮭

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第八話「石破天驚!神秘の力」(A)

 

 華撃団大戦の開会式が、降魔の襲撃によって中断された日の晩、花組と彗星組は司令室に集まって相談をしていた。

 

〈クラリス〉「……大変なことになりましたね」

 

〈初穂〉「華撃団大戦、どうなるんだ? やっぱ中止なのか?」

 

〈神山〉「どうだろうか……。一体、あの仮面の女は、何者なんだ」

 

〈ミースア〉「何か、ゲントがどうとかテーケンが何とか言ってたですけど……」

 

〈モフロ〉「夜叉、とそう名乗ったのう」

 

 開会式を滅茶苦茶にした実行犯の夜叉について話し合っていたら、さくらがぽつりとつぶやいた。

 

〈さくら〉「違う……そんな……そんな、名前じゃない……」

 

〈あざみ〉「さくら?」

 

〈アナスタシア〉「どうしたの? 開会式から、何だか様子がおかしいわよ」

 

 異様な様子のさくらに戸惑う一同に向けて、さくらが言い放つ。

 

〈さくら〉「あれは……あの人は……真宮寺さくらさんです!」

 

 その名に、場にいる一同に衝撃が走った。

 

〈神山〉「真宮寺……さくら?」

 

〈ナシルマ〉「それって確か、旧帝国華撃団の……」

 

〈さくら〉「そうです! あの姿……あの声……どう見たって、真宮寺さくらさんじゃないですか!!」

 

 声を荒げて立ち上がるさくらを、デュエスたちがなだめようとする。

 

〈デュエス〉「おい落ち着け。姿形が似てるってだけだろ? 宇宙じゃこういう時、偽者って相場が決まってんだ」

 

〈ナシルマ〉「大方ババルウ星人かアトランタ星人が化けてるんだよ」

 

〈さくら〉「適当なこと言わないで下さいっ!! 何を証拠にそんなことを……!!」

 

〈初穂〉「おいさくら……!」

 

 しかし感情が荒ぶっているさくらに怒鳴り返され、思わず首をすくめた。

 だがそんなさくらを更に鎮めるように、すみれが透き通るような声で断言する。

 

〈すみれ〉「いいえ。お二人の言う通り、あれはさくらさんではありませんわ」

 

〈さくら〉「すみれさん……?」

 

〈すみれ〉「何年も共にいたわたくしには分かります。……それに、あの人は今、帝都にはいません。幻都にいるのよ」

 

 謎の言葉がすみれからも出てきて、神山たちが聞き返す。

 

〈神山〉「幻都? 夜叉も言ってましたが、それは一体……」

 

〈デュエス〉「そもそも疑問だったんだが、十年前の降魔大戦の時は、どうやって降魔怪獣を倒したんだ? いくら華撃団の最盛期とはいえ、何体も現れたのを……」

 

〈すみれ〉「……いいでしょう。ここで皆さんに話しますわ、二都作戦のことを――」

 

 そしてすみれは語った。十年前、デビルスプリンターが呼び起こしたのは降魔怪獣だけではない。最強最悪の降魔『降魔皇』も復活しかけ、世界は史上最大の危機を迎えた。そこで帝国・巴里・紐育の三大華撃団は力を結集し、神器『帝鍵』を用いてもう一つの帝都、幻都を作り出し、降魔皇たちをそこに封印したのだった。現在現れている降魔怪獣は、絞りカスのようなものでしかないのだ。

 だが、幻都を作り出した代償は大きく、作戦途中に霊力が尽きてしまったすみれを除いた全隊員が一緒に幻都に封印されてしまった。それがかつての華撃団の消滅の真相なのであった。

 

〈神山〉「そんなことが……」

 

〈すみれ〉「そういうことだから、さくらさんが封印を抜け出て、帝都に戻ってきているはずはないのよ、天宮さん」

 

〈さくら〉「……はい」

 

 さくらがこの説明で納得したかは定かではないが、とにかく静かになって席に座り直した。

 

〈ミースア〉「夜叉が真宮寺さくらさんじゃないのは良かったですけど……封印された旧華撃団の方たちが心配ですー」

 

〈ナシルマ〉「何とか救出できないのかな」

 

〈デュエス〉「それには、無数の降魔怪獣と降魔皇とかいうのを倒す必要があるぞ。今の戦力じゃ正直……」

 

〈ゼット〉『それなら俺にいい考えがございますよ!』

 

 モニターにゼットの姿が現れて、そう主張した。

 

〈神山〉「ゼット! いい考えって?」

 

〈ゼット〉『ああ! 俺からゼロ師匠やジード先輩に頼んで、降魔をやっつけてもらう!』

 

〈クラリス〉「あのお二人に!?」

 

 司令室が一瞬どよめいた。

 

〈ゼット〉『師匠たちは宇宙を揺るがす巨悪をいくつも倒したウルトラすごい戦士だ! 二人がいれば、これはもう勝ったも同然でございますよ!』

 

〈ナシルマ〉「なるほど~! その手があったかぁ!」

 

〈デュエス〉「確かに……ゼロは他のウルトラ戦士にも顔が利くしな。ウルトラ兄弟も動いてくれりゃ、万に一つの間違いもねぇだろうが……」

 

 自信満々のゼットであるが、そこへ神山が言う。

 

〈神山〉「けど、リクくんたちは別の星のデビルスプリンターの退治に行ったばかりじゃないか」

 

〈ゼット〉『あッ……! そ、そうだった……。すみれさん、期待させてウルトラすみませんッ!!』

 

 バッと腰を折るゼットに、すみれが苦笑を浮かべる。

 

〈すみれ〉「いいえ。わたくしのために親身になって考えて下さったこと、誠に感謝致しますわ、ゼットさん」

 

〈ゼット〉『すみれさん……!』

 

〈デュエス〉「まぁ、デビルスプリンター問題が片づけば実現するし、今は目下の問題だよな。話戻すが、華撃団大戦は結局どうなんだ?」

 

 今一番の疑問に、すみれが答える。

 

〈すみれ〉「それについては、ちょうど今からプレジデントGの発表があるそうよ」

 

 そのひと言を合図とするように、モニターの表示がゼットからプレジデントGのものに切り替わる。

 

〈G〉『諸君、お待たせしてすまなかった。ここに、改めて、世界華撃団大戦の開会を宣言し……一つ重大な決定を伝える』

 

 仰々しい前置きをするプレジデントG。果たして、その内容とは――。

 

 

 

(OP:檄!帝国華撃団〈新章〉)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第

  石 八

神 破 話

秘 天

の 驚

力 !

 

 

 

 ――帝都の闇の中に構えた、摩上の隠れ家に、ある二人の宇宙人が訪れていた。

 

〈アネモ〉『例のもの、お届けに来たわ』

 

〈モネフィ〉『手に入れるの大変だったんだからね』

 

 夜叉が立ち会う中、ピット星人の姉妹が、抱えているケースを開いて中身を摩上、ロソスに見せる。

 

〈アネモ〉『超古代竜メルバと、宇宙戦闘獣超コッヴの細胞よ』

 

〈ロソス〉『……ふむ、確かに……』

 

 二本の、怪獣の血液が詰まったカプセルであった。

 

〈アネモ〉『さ、報酬の700万ガネーを支払っていただきましょうか』

 

〈摩上〉「金はそいつから受け取ってくれ」

 

〈モネフィ〉『ああそう』

 

 カプセルを手に取った摩上が夜叉を指すので、ピット星人姉妹が振り向く。

 その瞬間、夜叉は手の平から二人に妖力の波動を浴びせかけた!

 

〈アネモ・モネフィ〉『『うっ!?』』

 

 姉妹の目の色が変化し、意識を掌握される。催眠状態に陥った二人に、ロソスが命令を告げた……。

 

〈ロソス〉『残り二体の細胞も手に入れろ……』

 

 

 

 世界華撃団大戦のルール変更が宣言された翌日、花組は来たるべき初戦に備え、特訓を行っていた。

 

〈さくら〉『はっ! やぁっ!』

 

〈初穂〉『だぁーっ!』

 

 司馬が発明した戦闘シミュレーション装置『いくさちゃん』を使って、霊子兵装に乗った状態で訓練するさくらたちを、監督する神山が激励する。

 

〈神山〉「俺たちの初戦の相手は、あの上海華撃団だ! 一切の油断も出来ない相手だぞ! 試合までに、最高のコンディションにする必要がある!」

 

 特訓に励む花組の様子をながめながら、司馬、ナシルマ、デュエスが話し合う。

 

〈司馬〉「しかし、WLOFもまた大胆な決定をしたもんだ。いくら前代未聞の事態に直面したからってな……」

 

〈ナシルマ〉「だねぇ……。負けた華撃団を全部、優勝したとこに吸収合併させるなんて。巷は大騒ぎだってね」

 

 昨晩、プレジデントGは降魔の脅迫には一切屈しないことを宣言しながら、未曽有の事態を乗り越えるための手段として、華撃団大戦のルールにいくつかの変更を加えた。

 まず、試合内容は競技ではなく命を懸けた実戦とし、敗北した華撃団は即時解散し、優勝した団を代表とする世界統一華撃団に組み込み、全世界の華撃団を一つに纏め上げるというものであった。WLOFはこれによって、最強の華撃団を生み出すつもりのようである。

 

〈司馬〉「さくらちゃんたちも動揺を隠せなかったみたいだな」

 

〈ナシルマ〉「ま~、競技試合のはずがいきなり命懸けて戦い合えなんて言われればねぇ。いくら何でも無茶苦茶だよ」

 

 ナシルマが肩をすくめていると、デュエスが神妙な面持ちで尋ねかけた。

 

〈デュエス〉「なぁ……ちょっと変だと思わねぇか?」

 

〈ナシルマ〉「何が?」

 

〈デュエス〉「世界中の華撃団を一つに纏めてぇのなら、もっと他にやりようがあるだろ。いくらあんなことがあったとはいえ、ウルトラマンもいるってのにこんな強引なやり方で、しかも華撃団大戦の勝敗にまでつなげて。ここまでして何で解散にこだわる? いたずらに混乱を招くだけだ」

 

〈ナシルマ〉「あーまぁ、それは言えてるけど……。でも地球人のお偉いさんの考えることってよく分かんないし。もちろん支配人は除いてね」

 

〈司馬〉「ああ。すみれさんはいつだって俺たちのことを考えて下さってる。ワンマンなプレジデントGとは大違いだ」

 

 深くは考えずにすみれを称える司馬たちを置いて、デュエスは怪訝な顔を取り続けた。

 

 

 

 ――摩上はピット星人姉妹から取り上げたカプセルの血液をメダル製造装置に投入し、メルバメダルと超コッヴメダルの二枚を作り上げた。

 

〈ロソス〉『よぉし……早速運用実験に取り掛かろう……』

 

〈摩上〉『「おうよ兄弟!」』

 

 摩上がこの二枚に、狂骨の降魔メダルを加えて、ゼットライザーのスイッチを押した。

 

MAGAMI, Access Granted!

 

〈摩上〉『「地獄の門を開けようぜぇ!」』

 

 アクセスカードを挿入し、手の平の三枚のメダルをセットしてスキャン。

 

KYOUKOTSU! MELBA! SUPER-C.O.V!

 

 摩上の背後に、ロソスの歪んだ輝きの双眸が浮かび上がる。

 

〈ロソス〉『恐れ慄けッ! 俺の名に!!』

 

〈摩上〉『「ヒア――――ハッハッハァッ!!」』

 

 ライザーから生じた三枚のメダルのビジョンが摩上に吸い込まれ、その肉体を異形の大怪物へと変身させた!

 

PARASITE-ROSOS! WO-SHIKI TRI-KING!!

 

 

 

 銀座横丁の上空に怪しげな黒雲が渦巻き、太陽の光をさえぎって、降魔融合獣が轟音を立てて降ってきた!

 

「キィィィィッ! ヴァ――――――――!」

 

 大型降魔である狂骨の肉体をベースに、メルバの頭蓋と羽、超コッヴの下半身を持った巨大怪獣、ヲ式トライキングだ!

 

「キィィィィッ! ヴァ――――――――!」

 

 ヲ式トライキングは腹部にある超コッヴの顔面から無数の光弾を乱射して、街を攻撃し始める。帝都の人々は瞬く間に恐慌のどん底に突き落とされた!

 

〈ユイ〉「シャオロン、司令! 大変だよ! 降魔怪獣!!」

 

 銀座横丁にある上海華撃団の駐在地『神龍軒』から、騒動を聞きつけたユイたち上海華撃団が外へ飛び出してきた。

 

〈シャオロン〉「また派手に暴れやがる奴が出てきたな……!」

 

〈蛇倉〉「市民が危険な状態だ。市民の安全確保を優先しろ!」

 

〈シャオロン・ユイ〉「「了解!」」

 

 蛇倉の命令を受けて、上海華撃団は襲われる帝都市民の救助活動に当たる。

 

 

 

 当然帝国華撃団も事態を聞きつけ、緊急出動していた。

 

『着陸します、ご注意下さい。着陸します、ご注意下さい』

 

 神山がセブンガー、クラリスがウインダムに搭乗してトライキングの前に降り立つ。他の四名は三式光武、無限で避難する市民の防護に当たる。

 

〈神山〉『帝国華撃団・参上! 行くぞクラリス!』

 

〈クラリス〉『はい!』

 

「グワアアアアアアア!」

 

 セブンガーが前進してトライキングに殴り掛かっていき、ウインダムは魔法弾を発射して援護射撃を行う。

 

〈神山〉『おおおおッ!』

 

〈クラリス〉『はぁぁっ!』

 

「キィィィィッ! ヴァ――――――――!」

 

 だがトライキングの皮膚は魔法弾を弾き、セブンガーの突撃を剛腕で受け止めて投げ飛ばした。

 

〈神山〉『うわぁッ!』

 

〈クラリス〉『神山隊長! このっ!』

 

 ウインダムが両腕を回転させて竜巻を放つが、狂骨の口から吐き出された火炎で打ち消されて、メルバの両眼からの光線がウインダムを撃ち返す。

 

〈クラリス〉『きゃあぁっ!』

 

「キィィィィッ! ヴァ――――――――!」

 

 特空機を二体纏めて圧倒するヲ式トライキングを、蛇倉がジッとにらんだ。

 

〈蛇倉〉「大型降魔をベースにして、更にパワーを引き上げたか。厄介だな……」

 

 ――その手の中で、三枚のメダルをこねくり回している。

 

〈蛇倉〉「こんな時……戦士ならどう戦う?」

 

 その内の一枚――ダイナメダルをつまみ上げて、そう問いかけた。

 

「キィィィィッ! ヴァ――――――――!」

 

〈神山〉『ぐわぁぁぁぁぁ――――――――ッ!』

 

 メルバの光線がセブンガーを撃ち、激しく倒れるセブンガー。その衝撃で神山がコックピットから投げ出された。

 

〈クラリス〉『隊ちょぉぉうっ!! よくもっ!!』

 

 クラリスが憤って、最大出力の攻撃を放つ。

 

〈クラリス〉『Arbitre dènfer!!』

 

「キィィィィッ! ヴァ――――――――!」

 

 大量の魔法弾も、超コッヴの光弾で相殺されてしまって通用しない。途切れたところに火炎を食らってウインダムが倒れる。

 

〈クラリス〉『きゃあ――――――っ!!』

 

〈神山〉「クラリスッ! こうなったら……!」

 

 神山が最後の手段としてゼットライザーを取り出そうとしたが……。

 

〈神山〉「ん!? ないッ!!」

 

 さっきまで持っていたはずのゼットライザーが、いくら探しても身の周りにない。

 

〈神山〉「しまった、さっきの衝撃でどこかに飛んでいってしまったか! どこだ、ゼット!!」

 

 神山が慌てて落としてしまったゼットライザーを求め、駆け出した。

 さくらたちはトライキングに追いつめられるクラリスを助けようと、連絡を取り合う。

 

〈初穂〉『クラリスが危ねぇ! アタシたちでどうにか奴の気を引きつけようぜ!』

 

〈アナスタシア〉『さくらはキャプテンに代わってセブンガーを!』

 

〈さくら〉『分かりましたっ! って、あれ……』

 

 だが戦闘が途中にも関わらず、ヲ式トライキングはいきなり消え失せ、同時に空も元通りに晴れ渡った。

 

〈あざみ〉『消えた……?』

 

〈初穂〉『何でこの状況で……』

 

〈アナスタシア〉『ともかく、キャプテンとクラリスを救助しましょう』

 

〈さくら〉『は、はい!』

 

 原因はひとまず置いて、さくらたちはそれぞれ特空機の元へと走っていく。

 

 

 

 市民を逃がしていたユイは、戦闘が終了したことで手を止め、難しい表情となっていた。

 

〈ユイ〉「怪獣の方から消えたからいいものを、帝国華撃団、あと一歩のところまでやられて……不甲斐ないなぁ。いや、それだけ怪獣が強力になってきてるのかも……」

 

 ぼやきながら周囲を確認する目に、ふと奇妙な物が映り込む。

 

〈ユイ〉「あれ? 何これ?」

 

 瓦礫の中に埋もれた、青いプレートのようなものを拾い上げる。――神山の手から離れたゼットライザーであった。

 正体が分からずに小首を傾げるユイの近くを通りがかったさくらが、その光景に驚いて、光武から飛び降りてユイに駆け寄っていく。

 

〈さくら〉「ユイさん! そ、それは!!」

 

〈ユイ〉「さくら! これが何か知ってるの? 何か変な形してるの」

 

〈さくら〉「え、えぇーっと、それはぁ~……」

 

 何と説明したら良いものか……と悩んでいるところに、

 

〈モネフィ〉「見つけたよ、ウルトラマンゼット」

 

 地球人の女に変身したピット星人の妹が、二人に近づいてきた。

 

〈ユイ〉「え? ウルトラマンゼット? 私が……?」

 

〈モネフィ〉「とぼけるの? それを持ってるってことは、あなたがウルトラマンゼットでしょ?」

 

〈ユイ〉「これそういうものなの? すごい! 大発見!」

 

〈さくら〉「え、えっとユイさん……」

 

 興奮してはしゃぐユイだが、ピット星人が痺れを切らしたかのように彼女に飛びかかってくる。

 

〈モネフィ〉「やぁーっ!」

 

〈さくら〉「はっ! 危ない!」

 

 咄嗟にさくらがユイを突き飛ばし、ピット星人から逃がした。キックからかばわれたユイが我に返る。

 

〈ユイ〉「いきなり何するの! はいやーっ!」

 

〈モネフィ〉「うっ!?」

 

 ユイの後ろ回し蹴りがピット星人を押し返した。彼女を敵と見たさくらも抜刀する。

 

〈さくら〉「誰だか知りませんが、これは渡しませんよ!」

 

〈ユイ〉「そうだそうだー!」

 

〈モネフィ〉「面倒な……!」

 

 二人して構えるさくらとユイに、ピット星人は側転キックを繰り出す。

 

〈モネフィ〉「はぁ―――っ!!」

 

 同時に足から放たれる衝撃波がさくらたちを襲った!

 

〈さくら・ユイ〉「「きゃあっ!?」」

 

 首に衝撃波を浴びせられたさくらたちは急速に失神し、その場に倒れ込んだ。さくらの手からは刀がこぼれ落ちて、地面を滑っていく。

 ピット星人は、さくらの刀は放置して、気を失った二人とゼットライザーを引きずっていった。

 

 

 

〈神山〉「さくら! さくら! 応答してくれ!」

 

 ゼットライザーを探しつつ隊員たちの状況を確認していた神山だが、さくらからの応答がないことに焦りを深めていた。

 

〈神山〉「誰か、さくらの行方を知らないか!?」

 

〈アナスタシア〉『キャプテンの元へ向かってたはずだけれど……!』

 

 通信で連絡を取り合っていると、シャオロンが通信に割り込んできた。

 

〈シャオロン〉『ユイも応答しねぇ! あいつらに何かあったみたいだ!』

 

〈神山〉「何だって……!? まさか二人が降魔に……!」

 

 さくらとユイが同時に姿を消したことで動揺する神山に、デュエスが連絡を入れる。

 

〈デュエス〉『天宮の光武の反応はある。そこに行きゃ何か掴めるはずだ』

 

〈神山〉「そうか、分かった!」

 

〈デュエス〉『俺もそっちに行く。中華男もそこで合流な』

 

〈シャオロン〉『中華男って何だよ! 俺の名前はヤン・シャオロンだ!』

 

 さくらの光武を追って、神山、シャオロン、デュエスが移動していく。

 

 

 

〈さくら〉「う、ん……」

 

 ――さくらが目を覚ました時には、ユイと一緒に、手枷を嵌められた状態で吊るされていた。

 

〈さくら〉「はっ!? ユイさん、ユイさん!」

 

〈ユイ〉「ん……? ええ!? 何これっ!」

 

 ユイも気がついて、すぐに置かれている状況に驚愕した。

 周りの光景は見慣れない洋風の屋敷のもの。身動きが取れない状態の二人を、ピット星人の妹が見張っている。

 

〈さくら〉「あなたはさっきの! すぐわたしたちを解放して!」

 

〈ユイ〉「じゃないとウチの隊長たちが黙ってないよ!」

 

〈モネフィ〉「うるさい!」

 

 さくらとユイの視界から隠れた場所では、摩上がピット星人の姉から隕石を渡されていた。

 

〈アネモ〉「ガンQとレイキュバスの細胞を含有した隕石です」

 

〈ロソス〉『よし、これでトライキングは完全な状態になる……。しかし……』

 

 摩上が扉から顔を半分だけ出して、さくらたちを確認した。

 

〈ロソス〉『あいつらはウルトラマンゼットではないな……。ゼットライザーをたまたま拾っただけだろう……』

 

〈摩上〉「紛らわしいことしやがって……。ライザーはどうすんだ?」

 

〈ロソス〉『せっかく回収したのだからな……』

 

 ロソスが摩上の手を使い、ゼットライザーに×型の錠を掛けて、使用できないようにしてしまった。

 

〈ロソス〉『これで変身できない……』

 

〈摩上〉「なぁるほどぉ! 本物が取り返しに来ても、歯ぎしりするしかねぇってこったな。流石兄弟だぜ!」

 

〈ロソス〉『では、心置きなく実験を続行しようじゃあないか……』

 

 錠を掛けたゼットライザーを辺りに放り、摩上が屋敷の外へと移っていった……。

 

 

 

 三式光武の反応をたどって、さくらとユイが誘拐された現場にたどり着いた神山たちは、そこでさくらの愛刀が転がっているのを発見した。

 

〈神山〉「さくらの剣だ! これだけが抜身のまま放置されてるということは……さくらたちはどこかへ連れ去らわれたのか……!」

 

〈シャオロン〉「くそぉッ! どこ行ったか突き止められねぇのか!?」

 

 デュエスがさくらの刀を神山から預かり、こう告げる。

 

〈デュエス〉「こいつがあるなら、追跡は簡単だ」

 

〈シャオロン〉「ど、どういうことだ!?」

 

〈デュエス〉「この刀はいわゆる霊剣だ。尋常じゃねぇ、それも天宮のに近い質の霊力が宿ってる。だから天宮の手から離れてても、持ち主と共鳴して反応する。魔術をチョイと使えば、刀が天宮の居場所を示す羅針盤になるぜ」

 

〈神山〉「れ、霊剣……! さくらの剣、そんなすごいものだったのか……。知らなかった……」

 

 デュエスが手の平の上に刀を寝かせると、それ自体が勝手に動いて、切っ先がさくらの現在地に向くように方向を変えた。

 

〈デュエス〉「あっちだな」

 

〈神山〉「よし、すぐ行こう!」

 

〈シャオロン〉「しかし、何で持ち主のものに近い霊力が刀にあるんだ?」

 

〈デュエス〉「そこまでは知らねぇよ。天宮の先祖が鍛えたからとかじゃねぇか?」

 

 今はそこは重要なところではないので、気にすることなく神山たちは追跡を始めていった。

 

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