ウルトラサクラ大戦Z   作:焼き鮭

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第九話「悪戦苦闘!メダル護送指令」(A)

 

 ――帝都の外れの山間部に建つ、WLOF管理下の秘密研究所。ここにプレジデントGが腹心の部下を数名引き連れながら訪れていた。

 研究所の一室で彼をお辞儀で迎えた研究員たちが、テーブルの上に置かれたアタッシュケースを手の平で示した。

 

〈研究員〉「例の物は、こちらでございます」

 

〈G〉「おお……」

 

 アタッシュケースの中には、三つの小さいケースが並んでおり、その一つ一つにそれぞれ絵柄の異なるメダルが収められている。――ウルトラメダルだ。

 ウルトラマンゼットの地球での初戦闘時、撃破されたゲネガーグの体内からは、光の国から奪われたウルトラメダルが爆風に乗って帝都各地に飛び散っていた。WLOFは地球外物質で出来たこのメダルを、帝国華撃団とは別に密かに回収し、集めていたのであった。

 

〈G〉「ご苦労だった。これは私が預かる」

 

 研究員たちがケースの蓋を閉じると、プレジデントGが部下にケースを持たせようとする――。

 その瞬間に、所内に突如警報が鳴り響いた。

 

〈G〉「何だ!?」

 

 直後に室内を襲う大きな揺れ。そして窓の向こうに現れたのは、極彩色の怪光を放つ巨大なシルエット。

 

〈G〉「な、何ぃッ!?」

 

 突然の出来事に激しく動揺するプレジデントGたち。研究所の外にそびえ立つ巨影は、窓に向かって三本指の腕を伸ばしてきた。

 

〈G〉「ま、まさかッ!?」

 

 プレジデントGが何かを指示しようとしたが、遅かった。巨大な影の腕は窓ガラスを突き破って研究室の中に荒々しく突っ込んできた!

 

「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――ッ!!」」」

 

 合唱される悲鳴。研究室を破壊した腕は、メダルを収めたケースを掴んで引き抜かれる。

 首のない巨大な人型の影は、グワアッシ……グワアッシ……と不気味な音を立てながら、両眼より怪光線を放って研究所を破壊した――!

 

 

 

(OP:ご唱和ください 我の名を!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   第

  悪 九

メ 戦 話

ダ 苦

ル 闘

護 !

 

 

 

 帝国大劇場の司令室――。

 

〈神山〉「世界華撃団大戦の最中だというのに、帝都は休まる暇がないな……」

 

 中央の長テーブルの上に広げられた新聞に目を落としていた神山が、険しい顔つきでつぶやいた。

 新聞の見出しには『WLOF日本支部研究所、襲撃される!!』との文字が大きく載せられている。

 

〈すみれ〉「その新聞にもある通り、昨晩WLOFの研究施設が何者かに襲撃され壊滅しました」

 

 すみれが司令室に集った面々に向かって告げた。

 

〈すみれ〉「その際、三枚のメダルが強奪されたということですわ」

 

〈さくら〉「メダル!? それってもしかして……!」

 

 さくらたちの目が神山に集中する。神山も思わず腰のホルダーを見やった。

 

〈ナシルマ〉「まぁ十中八九ウルトラメダルだよね。まだ見つかってない分の」

 

〈クラリス〉「WLOFも集めてたのですか……」

 

〈初穂〉「そんな話、こっちは全然聞いてねーぞ! 宇宙のことなら、ここにはこんだけの専門家がいるってのによぉ!」

 

 初穂が憤然と腕を組んだ。

 

〈すみれ〉「WLOF側は、未確認物質のため無用な混乱を避ける目的で、発表は控えていたと説明していますが」

 

〈デュエス〉「はんッ。だといいんだがな」

 

 白けたようにぼやくデュエス。それを信じる者は、この場にはいない。

 

〈カオル〉「WLOFが秘密裏に保持していたメダルを奪った犯人は、監視カメラにメッセージを残していました」

 

 カオルがそのメッセージというものをモニターに流す。

 司令室の画面に、WLOFの研究員の顔がアップで映された。その頭頂を、人間のものではない異形の手の平が覆っている。

 

〈研究員〉『諸君が宇宙の秘宝を他にも隠していることは知っている』

 

〈あざみ〉「人間がしゃべってる……?」

 

〈デュエス〉「脳波を操って代弁させてんのさ。地球人の言語を発声できない奴か、あるいは身元を隠したい宇宙人がよく使う手さ」

 

 解説を挟むデュエス。

 

〈研究員〉『力ずくで奪うことは容易い。しかし、我々は無意味な破壊は好まない。速やかに渡した方が賢明だ。さもなければ、我々の強力なロボットによる徹底的な攻撃に、諸君の星は晒されるだろう』

 

 それでメッセージは終わりであった。神山がデュエスに尋ねる。

 

〈神山〉「この手の正体は分からないか?」

 

〈デュエス〉「この映像だけじゃなぁ。指先しか映ってねぇ」

 

〈カオル〉「なお、この脅迫に対してプレジデントGが声明を発表しています」

 

 モニター画面がニュース番組における、プレジデントGの会見映像に切り替わった。

 

〈G〉『これは全華撃団に対する挑戦であるッ! 我々華撃団は如何なる存在からの、如何なる暴力にも決して屈しない! 総力を挙げて抗戦し、残る未確認物質を死守することをここに誓う!!』

 

〈ナシルマ〉「……無事だったのか。一緒に潰されちゃってればよかったのに」

 

〈デュエス〉「よせ。誰かに聞かれたら事だぞ」

 

 ナシルマの問題発言を、デュエスが一応たしなめた。

 

〈アナスタシア〉「今、残る未確認物質と言っていたけれど……」

 

〈すみれ〉「ええ。WLOFは他にも三枚、メダルを保有しているということですわ。それは別の場所にあるので、まだ無事のようです」

 

〈さくら〉「でも、それもいつ狙われるか分からないですよね……」

 

〈初穂〉「って言うか、どうにかしてアタシらの元に来させらんねーかなぁ。元々ゼットたちの物だろ? 神山隊長が持ってるのが筋ってもんだぜ」

 

 初穂がそうぼやくと、すみれが得意げに微笑んだ。

 

〈すみれ〉「それならご心配なく。既に交渉によって、残るメダルはこの帝劇で保管することを承諾させましたわ」

 

〈神山〉「本当ですか!?」

 

〈すみれ〉「ええ。わたくしも、普段寝て過ごしている訳ではありませんのよ」

 

〈カオル〉「以前よりの根回しが功を奏しましたね」

 

 扇子を開いてホホホと笑うすみれ。

 

〈ミースア〉「メダルをここに運び込めば、隊長さんの物に出来るですー!」

 

〈デュエス〉「後はまぁ、WLOFには適当な研究結果を上げとけばいいだろ」

 

〈さくら〉「やりましたね! これでまたウルトラメダルが増えます!」

 

 ぐっと手を握るさくらを神山がなだめる。

 

〈神山〉「喜ぶのはまだ早い。メダルを帝劇に運び込むまでに奪われてしまっては元も子もないんだ」

 

〈すみれ〉「神山くんの言う通り。花組にはこれより、WLOFの研究所よりメダルをこの帝劇まで護送してもらいますわ」

 

 新しい任務を前にして、花組の六名が表情を引き締めた。

 議題は作戦の概要に移る。

 

〈ナシルマ〉「ウルトラメダルからは特殊プラズマエネルギーが含まれてて、強奪犯はこの電波を感知して位置を特定してると思われるね」

 

〈クラリス〉「だから極秘裏に集められていたメダルの所在を突き止められたんですね」

 

〈あざみ〉「じゃあ、輸送してるのもバレバレ……」

 

〈ナシルマ〉「うん。だから電波を遮断するケースを用意した」

 

 ミースアがゴテゴテしたアンテナがついた黄色いケースを机上に置いた。

 

〈ナシルマ〉「これに入れてれば察知されない」

 

〈さくら〉「なるほど~!」

 

〈初穂〉「ここまでするくらいなら、研究所で隊長に渡しちまえばいいのに」

 

〈カオル〉「WLOFの目がありますから、帝劇に運び込んだという明白な事実が必要なのです」

 

 作戦の意義を説明するカオル。

 

〈すみれ〉「反応を消したとしても、敵も馬鹿ではないでしょう。研究所を出入りするものには目を光らせているはず。そこで輸送ルートですが……」

 

 カオルが帝都全域の地図を広げ、メダルが保管されている研究所とゴールの帝劇の地点に目印のピンを立てた。

 

〈すみれ〉「空路は危険ですので、陸路での輸送となりますわ。市街地を避けて山道を通りますが、途中にトンネルと狭い渓谷があります。敵が襲ってくるとしたら、障害物の少ないこの地域の可能性が高いですわ。トンネルに差し掛かったら、くれぐれも気をつけて」

 

 問題の地点を閉じた扇子で指し示すすみれ。

 

〈すみれ〉「出発は二時間半後。天宮さんはウインダムで、他の皆さんは無限での護衛をお願いします。天宮さん、格納庫へ移動を」

 

〈さくら〉「え? 今からですか?」

 

 あまりにも早い搭乗命令に、さくらが目を丸くした。

 

〈すみれ〉「WLOFの思惑はともかく、今回の作戦には帝国華撃団の面子が懸かっていますわ。成否を左右するウインダムに万に一つの事態も起こらないよう、動作確認は念入りに済ませて下さい」

 

〈さくら〉「は、はい……そういうことでしたら……」

 

 いささか腑に落ちないながらも、さくらが一人で特空機用格納庫へと移動していった。

 

 

 

 ――プレジデントGは会見後、密かに摩上と面会していた。

 

〈G〉「全く、昨日は酷い目に遭ったものだよ。もう少しで“素”が出てしまうところだった」

 

 うんざりしたように肩をすくめたプレジデントGが、摩上に向き直る。

 

〈G〉「あれは君たちの差し金ではないのかね」

 

〈摩上〉「んな馬鹿な。ただでもらえるって約束されたもんを、どうして窓から取ってかなきゃなんねーんだよ」

 

 摩上が呆れたように反論した。

 

〈ロソス〉『俺たちは何も関与していない……。恐らくは別にメダルを狙う宇宙人の仕業だろう……。こちらとしても迷惑な話だがな……』

 

〈G〉「迷惑は私の台詞だよ。あんまり宇宙(よそ)の問題を、この土地に持ってきてもらいたくないものだ。()()()()()()()()()のには苦労したというのに、宇宙人にはひっかき回されてばかりだよ。今回も、このままではメダルを帝国華撃団に取られてしまう」

 

 プレジデントGがじっ……と摩上に横目を向けた。

 

〈G〉「何か手はないかね」

 

〈摩上〉「くっくく……まぁ任せとけよ。他人のもんを横取りすんのは得意技なんでな……」

 

 摩上が頭の中にたくらみを巡らせて、押し殺した笑いを発した。

 

 

 

 二時間半後、帝劇を出発した花組と風組は、WLOFの研究所で三枚のメダルを受け取り、それらをケースに収め、折り返しで帝劇までのルートを走り出した。

 

〈神山〉『もうじき問題のトンネルに差し掛かる。全員、気を抜くなよ!』

 

〈初穂たち〉『『『了解!』』』

 

 崖の上の道路を、ケースを運ぶカオルとこまちの蒸気自動車が走り、その四方を神山たちの無限が並走して護衛している。

 

〈神山〉『さくらもよろしく頼むぞ』

 

 頭上の空では、さくらを乗せたウインダムが飛行して神山たちについてきていた。

 

〈さくら〉『もちろんです! ……って』

 

 モニターで地上の様子を確認したさくらが、自動車に並走するはずの無限が一機足りないことに気づいた。

 

〈さくら〉『あざみが見えませんけど、どこ行ったんですか?』

 

〈神山〉『あざみには別働に当たってもらってる』

 

 短く答えた神山が、矢継ぎ早にさくらたちへ呼び掛ける。

 

〈神山〉『半ば個人的な理由になるが、みんなには注意してもらいたい奴がいる。上海華撃団からの報告をみんなも聞いてるだろうが……摩上という男だ』

 

〈さくら〉『摩上……確か、その人が降魔メダルを持ってたんですよね』

 

〈クラリス〉『隊長がご存じの人なんですか?』

 

 その質問に答えるように、司馬が通信に入ってきた。

 

〈司馬〉『摩上沙太郎……ろくでもない男だぜ。なぁ誠十郎』

 

〈神山〉『ああ……。まさか今になって、また名前を聞くことになるとは……』

 

〈アナスタシア〉『何だか因縁があるみたいね……』

 

 重々しくうなずく神山。

 

〈神山〉『摩上は俺たちの士官学校時代からの同期だったんだが……奴は海軍の軍資金を横領して、私腹を肥やしてたんだ』

 

〈司馬〉『奴の犯してた罪を、誠十郎が暴いたんだよな。あいつ決定的な証拠突きつけられても、最後まで見苦しく犯行を否定してたが』

 

〈初穂〉『マジかよ!』

 

〈神山〉『それだけじゃない。部下や後輩に対する日常的な虐待行為や、兵器の横流し、戦功の捏造など……数え切れない余罪が芋ずる式に発覚した。あの時は流石に絶句したよ……』

 

〈さくら〉『そ、そんなひどい人が、神山隊長の同期に……』

 

 さくらたち四人も、あまりの内容に閉口した。

 

〈司馬〉『監獄から逃げたってのは聞いてたが……まさか摩上が、降魔メダルを使ってる奴の正体だとは……。あいつは罪人ではあっても、ただの人間のはずだよな?』

 

〈神山〉『奴が宇宙人や降魔とどんな関係があるのかは分からない。今回の事件に関わってるのかもな……。ただ、はっきり言えるのは、これからは人間にも注意をしてほしいということだ。奴が人の中に潜伏していないとも限らない……』

 

 話している途中で、神山がハッ! と顔を上げた。

 

〈神山〉『みんなッ!』

 

 直後、彼らの無限の足元を怪光線が走ったので、一斉に急停止した。

 

〈アナスタシア〉『来たっ!』

 

〈さくら〉『はっ!?』

 

 怪光線はウインダムにも襲い掛かってきて、さくらは咄嗟にウインダムを横にそらして光線を回避した。

 

〈初穂〉『さくら!』

 

〈クラリス〉『さくらさんっ!』

 

〈さくら〉『くっ……!』

 

 必死に回避行動を取るさくらだが、怪光線の追撃は執拗で、遂に一発かわし切れずに食らってしまう。

 

〈さくら〉『きゃあぁぁっ!』

 

〈神山〉『さくら、大丈夫か!』

 

 ふらふらと落ちていくウインダムに振り返って叫ぶ神山。しかしそうもしていられなかった。

 

〈こまち〉『神山さん、前っ!』

 

 神山たちの前に金色の巨大ロボットが出現し、車を狙って腕を伸ばしてきたのだ!

 

 

 

 司令室で現場の状況をモニターしているナシルマが声を張り上げる。

 

〈ナシルマ〉「キングジョーだぁ! ペダン星のスーパーロボット! まさか帝都でお目に掛かれるなんて~!!」

 

〈ミースア〉「お兄ちゃん、喜んでる場合じゃないですー!」

 

 ミースアが咎めている隣で、デュエスが怪訝な顔を取った。

 

〈デュエス〉「変だな……映像の手は、確実にペダン星人のものじゃあねぇぞ……」

 

 

 

〈神山〉『くッ……!』

 

 腕を伸ばしてくるキングジョーに対して、神山たちは車を守るべく臨戦態勢を取った。しかし、

 

「グワアアアアアアア!」

 

 ウインダムがキングジョーの背後まで回り込んできて、羽交い絞めにして崖から引き離した。

 

〈神山〉『さくら!』

 

〈さくら〉『わたしに構わず、行って下さい!』

 

〈こまち〉『助かったで、さくらさん!』

 

 ウインダムが食い止めている隙に、神山たちが再発進してトンネルに近づいていく。

 さくらは必死にキングジョーを抑えつけているが、ウインダムから伝わってくるキングジョーの抵抗に歯を強く食いしばった。

 

〈さくら〉『何て馬力……! うっ!』

 

 とうとう振り払われるが、右腕のスリットからブレードを伸ばしてキングジョーに斬りかかる。

 

〈さくら〉『ここは行かせませんっ! やぁぁーっ!』

 

 気合い一閃、刃を叩きつけるが、

 ベキッ!!

 

〈さくら〉『お……折れたぁぁーっ!?』

 

 ブレードは根元からポッキリと折れて、吹っ飛んでいってしまった。

 

〈ナシルマ〉『アンシャール鋼の剣が! やっぱりペダニウム合金の方が硬度は上なのかぁ!』

 

〈さくら〉『感心してる場合ですか!? くぅっ!』

 

 剣を失っても、ウインダムは再び後ろから飛びついて、上腕を掴んでキングジョーを抑えつける。

 

〈さくら〉『絶対、隊長たちは追いかけさせませんっ!!』

 

〈デュエス〉『おい! 腕だけ抑えんな!』

 

〈さくら〉『え?』

 

 ポンッ!

 と軽快な音を立てそうな勢いで、キングジョーの頭部が腕ごと胴体から外れた! 勢い余ったウインダムが真後ろに倒れ込む。

 

〈さくら〉『ええぇ―――!!? 取れたぁ!?』

 

 残ったキングジョーの胴体は、胸部、腹部、脚部の三つのパーツが円盤に変形し、神山たちを追って飛行し出す!

 

〈初穂〉『おいおい!? バラバラに分かれやがったぞ!』

 

〈ナシルマ〉『キングジョーはロボット形態と四機に分離した飛行形態を使い分けることで有名なんだよね!』

 

〈さくら〉『そういうこと、もっと早く言って下さいよ~!!』

 

 神山たちはトンネルの中に入っていくが、腹部パーツの円盤も後を追ってトンネルに侵入してきた。

 

〈こまち〉『わぁー!? 来よったでぇ!?』

 

〈クラリス〉『くっ……!』

 

 円盤が撃ってくる怪光線を、車の後方を走るクラリス機が振り向いて魔法陣で防御した。

 

〈初穂〉『ここはアタシとクラリスがっ!』

 

〈クラリス〉『隊長たちは早くトンネルを抜けて下さい! 挟み撃ちにされる前に!!』

 

〈神山〉『すまない! 初穂、クラリス!』

 

 反転して円盤に反撃していく初穂機とクラリス機を残して、神山たちは最高速度まで加速していった。

 

〈さくら〉『くっ! このっ!』

 

 キングジョーの頭部を捕らえていたウインダムだが、頭部の円盤は腕の中からすり抜け、神山たちに先回りしようと飛び去っていく。

 

〈さくら〉『逃がさないっ!!』

 

 ウインダムも蒸気噴射を利かせて飛び上がり、円盤を追いかけていく。

 

「グワアアアアアアア!」

 

〈さくら〉『たぁぁぁ―――っ!』

 

 どうにか追いついて再度円盤を捕まえるが、揉み合ったことで落下し、山の斜面をゴロゴロと転がっていく。

 

〈さくら〉『わっ!? わっ!? わぁ―――――!?』

 

 神山たちがトンネルを抜けたところで、ウインダムは谷底へ真っ逆さまに転落していった。

 

〈神山〉『さくらぁッ!』

 

〈アナスタシア〉『キャプテン、こっちにも来たわ!』

 

 先回りしていた胸部と脚部の円盤が神山機とアナスタシア機に襲い来る。

 

〈神山〉『くッ! うおおおぉぉぉッ!』

 

〈アナスタシア〉『はぁぁっ!』

 

 刀と銃撃で迎え撃つ神山とアナスタシアだが、円盤の装甲には通らず、体当たりされて崖から突き落とされる。

 

〈神山〉『うわあぁぁぁぁぁッ!!』

 

〈アナスタシア〉『あああぁぁぁっ!!』

 

〈こまち〉『神山さん! アナスタシアさんっ!』

 

 腹部の円盤にしがみついてでも止めようとしている初穂機とクラリス機も、振り払われて崖を転げ落ちていった。

 

〈初穂〉『わぁぁぁぁぁぁ―――――――!!』

 

〈クラリス〉『きゃあああああっ!!』

 

 全機落とされてしまって、車は無防備の状態でダムの上を走る。

 

〈カオル〉「皆さん、やられてしまいました……!」

 

〈こまち〉「カオル、前っ!!」

 

 前方に振り返ったカオルが急ブレーキ。進行先を、胸部の円盤がふさいでいるからだ。

 更に後方には腹部の円盤が陣取り、左右も残る円盤で固められてしまった。

 

〈こまち〉「か、囲まれてもうた……」

 

〈カオル〉「……ここまでですね……」

 

 カオルとこまちはやむなく車を降り、ケースを抱えたまま立ち尽くす以外になくなる。

 そして円盤から放たれたトラクタービームが、こまちの腕からケースを奪い取り、機内に収容してしまった。円盤四機は、そのまま飛び去っていってしまう……。

 ――その後に無限が全機谷底から這い上がってきて、さくらも皆の元へ駆けつけてくる。

 

〈さくら〉「申し訳ありませんっ……! わたしが抑えられなかったばかりに、メダルを奪われてしまって……!!」

 

 責任を感じて唇を噛みしめるさくらに、こまちが優しく声を掛けた。

 

〈こまち〉「さくらさん、ええんやで」

 

〈さくら〉「良くないでしょう!? 絶対に失敗してはいけないと、すみれさんから念を押されたのに……!!」

 

 思い詰めるさくらに、初穂があっけらかんと言う。

 

〈初穂〉「あれな、偽物」

 

〈さくら〉「……へ……?」

 

 さくらの目が綺麗に真ん丸になった。

 

〈カオル〉「あのケースは、電波を遮断していたのではなく、電波を出していたんですよ。ナシルマさんが二つ用意していたのです」

 

〈さくら〉「ええっ!?」

 

〈神山〉「本物のケースは、あざみが別ルートで運んでる。俺たちは陽動だったんだ」

 

〈さくら〉「ええええ――――――――――――っ!!?」

 

 ビックリ仰天のさくらだった。

 

〈初穂〉「あざみは別働だって言ってただろ?」

 

〈さくら〉「そ、そうだけど……みんな、これ知ってたんですか!? 知らなかったの、わたしだけ!?」

 

〈クラリス〉「ごめんなさい、さくらさん……。さくらさんが抜けた後で、この本当の作戦を教えられたんです」

 

〈神山〉「さくらはすぐ顔に出るからな。囮だとバレる訳にはいかなかったから……」

 

〈アナスタシア〉「舞台に立つからには、もっと芝居が上手にならなくては駄目よ? さくら」

 

〈さくら〉「そんなぁ~! みんなひどいぃ~!!」

 

 ぷく~とむくれるさくらに、神山たちは思わず笑いがこぼれた。それからカオルが時刻を確認する。

 

〈カオル〉「あざみさんの速度ならば、もう到着した頃でしょうか……」

 

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