(大帝国劇場売店前)
〈さくら〉「特空機三号の完成はいつ頃になるでしょうね、神山さん」
〈神山〉「ナシルマたちが張り切ってるからな。もう数日後には出来上がるみたいだ」
〈さくら〉「相変わらず仕事が早いですよね。本当にありがたいです!」
〈こまち〉「はーい、まいどおおきにー!」
〈さくら〉「あれ? あそこ……売店にいる人って……」
〈神山〉「エリスさん! 伯林華撃団の……」
〈エリス〉「あっ……! あ、あなたたちか……」
〈さくら〉「今日はどうされたんですか? 支配人に何か御用でしょうか」
〈エリス〉「い、いや、そういう訳ではなくてだな……」
〈こまち〉「エリスさん、ウチのブロマイド買いにちょくちょくいらしてるんよ」
〈エリス〉「あっ! そ、それは……!」
〈こまち〉「ええやないですか。ここにいるの見られたからには、もう隠せまへんって」
〈神山〉「ブロマイドを? 意外ですね……エリスさんが集めてるなんて」
〈エリス〉「すまないが、このことはあまり言いふらさないでほしい……。華撃団大戦期間中に、隊長職の者がよその華撃団の劇場を何度も訪れているというのは、褒められたことではない」
〈さくら〉「それはいいですけど、エリスさんは誰のブロマイドをお買いになってるんですか? やっぱりアナスタシアさん?」
〈エリス〉「それは……」
〈こまち〉「これや。店頭に出したばかりの新商品」
〈さくら〉「……え。これに写ってるのって……」
〈神山〉「ウルトラマンゼット! この前の時の……」
〈さくら〉「エリスさん、ゼットさんのファンなんですか!?」
〈エリス〉「ああ……実はそうなんだ……」
〈さくら〉「けど、またどうして……」
〈神山〉「確かにウルトラマンゼットは人気は高いですが……ちょっと意外ですね。こう言っては失礼ですけど、素性が不明なゼットを、バリバリの華撃団のエリスさんがそこまで好きになるとは……」
〈エリス〉「それはだな、何と言うか……私は日本の文化に興味があるのだが」
〈さくら〉「そうだったんですか」
〈神山〉「そう言えば、歌舞伎座でよくお見掛けしますね」
〈エリス〉「それでゼットさ……ゼットの戦う姿を目にした時に……彼から日本の侍の魂を感じた」
〈神山〉「さ……」
〈さくら〉「侍……?」
〈エリス〉「ああ。これを見てくれ!」
(ウルトラマンゼット・サクラエッジのブロマイド)
〈さくら〉「これって……」
〈エリス〉「遠い宇宙の果てからやってきた人が、刀を用いて戦うというのには驚いたが、それだけではない。彼の立ち姿、戦いぶりは、確かに私が憧れる侍の精神を感じるのだ!」
〈神山〉「そ、そうなんですか……」
〈エリス〉「ゼット様はどこで侍の精神を学ばれたのか……。思えば彼はたった一人で、遠く離れた異国の地で、誰とも知らない人々のために戦っている……戦士として、私は尊敬するばかりだ……。先日の戦いも、卑劣な宇宙海賊相手に剣客として格の違いを見せつけて……実に見事であった……」
〈さくら〉「へ、へぇ~……ゼット様って……」
〈エリス〉「ああ、ゼット様……私も、あなたと肩を並べて戦いたい……はっ!」
〈神山〉「……」
〈エリス〉「ごほん……すまない、伯林華撃団隊長の私があまり長居するべきではないな。これで失礼させてもらう」
〈さくら〉「は、はい。お気をつけて……」
〈エリス〉「大葉さん、また新作を入荷したら、お知らせ下さい。では」
〈こまち〉「まいど~」
〈こまち〉「……ゼットさんから、侍の精神かぁ~。けどそれは、ゼットさんやなくて神山さんのもんなんやけどな」
〈神山〉「素のゼットを知ったら、ガッカリしないだろうか」
〈スマァトロン〉『それわ銅云う忌みですか』
〈神山〉「しかしそうなると、エリスさんの憧れの相手って……」
〈さくら〉「誠十郎さぁ~ん……?」
〈神山〉「ひッ!?」
〈さくら〉「いや~、誠十郎さんは人気ありますねぇ……あのエリスさんから、あんなに夢中になってもらえるだなんて……部下のわたしも鼻が高いですよぉ……」
〈神山〉「さ、さくら!? どうしたんだ!? 鼻が高いって顔じゃないぞ!」
〈さくら〉「誠十郎さん、ちょっとお話があります……。こっちへ、一緒に来て下さい……」
〈神山〉「ま、待て! 引っ張るなって! うわ何だ!? 面識もないはずの、真宮寺さくらさんの姿がさくらに覆い被さって見えるッ!! うわ―――――!!」
〈こまち〉「……やれやれ。色男は大変やなぁ」