〈G〉「――ミズS。ここのところ、帝国華撃団は失態が目立つな」
帝劇の支配人室で、プレジデントGがすみれに対して高圧的に糾弾をしていた。
〈G〉「降魔怪獣に追いつめられることはほぼ毎回。輸送作戦はしくじり、華撃団大戦の開幕式では上級降魔の襲撃を許し、未確認物質もあと少しで強奪されるところだった。こんな体たらくで、よく臆面もなくいられるものだ」
プレジデントGからの嫌味に、すみれは無言を通しているが、表情はひどく苦々しかった。
〈G〉「ウルトラマンゼットとかいう、どこの誰とも知れぬ輩などに助けられてようやく首の皮をつないでいるようなものだ。やはり荷が重いのだよ。華撃団というシステムに、限界が来ているのだ。最早帝国華撃団に、幻都は任せられん」
そう語って、すみれの前ににじり寄ってきたプレジデントGが、詰問する。
〈G〉「帝鍵は……どこにある?」
〈すみれ〉「……さぁ、存じ上げませんわ」
すみれはひと言で返しながら、プレジデントGから離れた。
〈すみれ〉「わたくしは、もう現役を退いておりますもの。二都作戦にも参加していませんでしたから」
プレジデントGはふぅー……とため息を吐くと、再びすみれに呼び掛ける。
〈G〉「二都作戦は確かに成功した。だが覚えているはずだ。犠牲は、あまりにも大きかった。残された力では、未だ現れ続ける降魔怪獣に対抗できんのだ」
〈すみれ〉「……わたくしたちには、特空機がありますわ」
〈G〉「そんなもの、この地球の外から来た、確かな素性も分からん連中が造ったものだろう。ウルトラマンとかいうのも、どこまで信用できる? もしも奴らが裏切った時は、一体どう責任を取るのかね? ミズS」
詰ってくるプレジデントGに、すみれは反論することが出来ない。人が確実に裏切らないということを、どうやって証明しろというのだ。
〈G〉「故に我々は、この地球上に生きる全ての“人間”の力を結集する必要がある。バラバラの華撃団ではなく、一つの、強大な力を持った華撃団にする。それこそが世界統一華撃団構想であり、今回の華撃団大戦のルール変更の理由なのだ!」
押し黙ったままのすみれに対して、プレジデントGは熱弁する。
〈G〉「純粋な戦闘力で優劣を決め、最後に勝ったチームを中核とした、かつてない力を持ったWLOF華撃団を立ち上げる。そして帝鍵も特空機もWLOF華撃団が徹底管理し、残存する降魔どもを殲滅する。これ以上、地球外の馬の骨どもの介在を必要としないようにな。それでこそ、真に世界が守られるのだよ!」
〈すみれ〉「危険ですわ。降魔相手に、こちらから攻めようなどとは……。どれほどの犠牲が出るか……」
〈G〉「ふッ……守るだけでは何も解決せんよ。どの道、事態は否応なしに変化していく。私と君、どちらの言い分が正しいか、それはいずれ情勢が教えてくれよう。ハハハハハッ!」
冷徹に直立したままのすみれを尻目に、プレジデントGは高笑いを残して支配人室を後にしていった――。
(OP:檄!帝国華撃団〈新章〉)
第
花 十
偽 組 一
り 分 話
の 裂
忍 !?
者
「ダァーッ!」
帝都の中央で、ウルトラマンゼット・カグラスマッシュが巨大怪獣の顎にアッパーを食らわせた。一瞬のけ反った敵だが、然して効いていないように首を戻す。
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
半身を鈍色の鋼鉄で機械化された、巨大な二本角の怪獣。それは以前ゼットが、ジードとゼロとともに撃破したスカルゴモラに酷似していた。
レッドキングと、ゴモラの生体構造を模倣したロボット怪獣メカゴモラ、更にかつて陸軍の反乱分子が降魔を改造した『降魔兵器』の一種である閃光の三種類から作り出された、降魔融合獣ヨ式メカスカルゴモラである!
「ゼアッ!」
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
ゼットが大槌を出してヨ式メカスカルゴモラに叩きつけるが、鋼鉄の装甲で覆われたメカスカルゴモラにはこれも通じない。反撃にヘッドバットをもらって悶絶した。
「グアッ!」
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
更にヨ式メカスカルゴモラの全身からミサイルが発射され、ゼットに集中する。
「グワァァァァァァッ!」
連続的な爆撃を食らい、ゼットが吹っ飛ばされ倒れ伏した。これに大笑いする摩上。
〈摩上〉[「ハッハハハハハハハ! いいじゃねぇかぁこりゃ! ちと操作にゃてこずるが、戦闘力は申し分ねぇぜぇ!!」]
〈ロソス〉『ふふ……扱いづらい分、強力ということだ……。さぁ兄弟、今の内に畳みかけろ……』
〈摩上〉[「おうよ兄弟!」]
メカスカルゴモラが倒れたままのゼットへ、角先からメガスカル超振動波を放とうとする。
その時、どこかからロケット弾が飛んできてメカスカルゴモラに炸裂した!
〈摩上〉[「ぬあッ!? 何だぁ!?」]
〈ロソス〉『あれは……!』
発射を止められたメカスカルゴモラが顔を上げると、空から巨大ロボットが猛スピードで飛来し、滑りながら着陸するとともに背面よりミサイルを連発。メカスカルゴモラに浴びせた。
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
鋼鉄と一体化した堅牢な肉体を揺るがしたのは、頭部がそのまま胴体に乗っかっている白と黒のロボット。顔面に上下に並んだ二つのレールアイが左右に走り、機体の各部からプシューッ! と蒸気を噴出した。
これこそが鹵獲したキングジョーを解体、再構築して建造した特空機三号。そのお目見えであった!
〈ナシルマ〉「やったーかっこいい!」
〈ミースア〉「決まったですー!」
司令室で、特空機三号の活躍にナシルマ、ミースアがはしゃいでいた。三号の初陣を見守る司馬も高揚を抑え切れていない。
〈司馬〉「すさまじい機動力と攻撃力だな! ウインダムまでとは大分違う!」
〈ナシルマ〉「そりゃそうだよ! 霊子水晶とペダニウムを合成した新動力源、ペダニウム霊子核の搭載により、出力は何とウインダムの約五倍! それこそが帝国華撃団の新たなる力、特空機三号こと
〈デュエス〉「はしゃぎ過ぎだろ、お前……」
〈モフロ〉「若いのう」
ナシルマの熱の入りように反して、すみれやカオルはあくまで平静でいた。
〈カオル〉「元の機体から随分様変わりしましたね」
〈デュエス〉「元々のキングジョーは都市制圧に特化してて、防衛戦にゃ不向きだからな。一から作り替えた方がいいって判断だ」
〈すみれ〉「アナスタシアさん、初穂さん、クラリスさん、あざみさん。城武の実戦投入は初めてとなりますが、四人力を合わせ、是非初陣を華々しい白星で飾って下さいね」
すみれが通信で、城武を操縦する四名に対して激励を向けた。
〈初穂〉『任せてくれよ、すみれさん!』
〈アナスタシア〉『問題ないわ』
〈クラリス〉『城武のシステム、全て正常。このまま行きましょう!』
〈あざみ〉『参る……!』
城武はオリジナルのキングジョーと同様に四機のパーツから構成され、それぞれに操縦席を設けた複座式の導入によって桁違いの出力を実現している。そのために四人がかりの操縦で動かしているのだ。
城武は立ち上がったゼットと並び、共にヨ式メカスカルゴモラに挑んでいく!
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
メカスカルゴモラは両手を回転させ、発射することでゼットと城武を同時に攻撃する。
「ゼアァッ!」
〈初穂〉『ペダニウムハンマー! 行っけぇぇぇーっ!』
飛んでくる拳を、ゼットは大槌で、城武は胸部の初穂の操縦による伸長するアームパンチではね飛ばした。メカスカルゴモラが大きくそれた拳を、チェーンを巻き上げて戻すが、その隙に榴弾を撃ち込む。
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
「イィィィヤァッ!」
銃撃とゼットの大槌の打撃がメカスカルゴモラを押していく。しかしメカスカルゴモラ側も破壊光線クラッシャーメガで撃ち返してくる。
「ゼアッ!」
光線をかわすゼットと城武だが、城武は少し動いただけで機体のバランスを崩してつんのめった。
〈初穂〉『うわっわっわっ!? コケるコケるっ!』
〈クラリス〉『反応が速すぎます!』
〈アナスタシア〉『あざみ、しっかりして!』
〈あざみ〉『ご、ごめん……!』
歩行・走行を担当する脚部のあざみが謝った。動揺する四人へナシルマが忠告する。
〈ナシルマ〉『みんな、落ち着いて! 城武は反応速度もウインダムの三倍! 複座なのも合わせて、操縦性は今までと全く違うんだ! 集中してないと振り回されるよ』
〈初穂〉『分かったぜ……!』
〈ナシルマ〉『霊力同調担当のクラリスちゃんは特に重要だからね! 何があっても落ち着いて対処を!』
〈クラリス〉『は、はい!』
腹部のクラリスが顔を引き締めた。霊力同調に失敗すれば、城武を流れる四人の霊力が逆流して、戦いどころではなくなってしまう。
「イヤァァッ!」
城武がよろけている間に、ゼットはサクラエッジにウルトラフュージョンして、二刀でメカスカルゴモラに斬りかかっていく。だが斬撃も強固な装甲を突破できず、角で刀を弾き返されていた。
〈アナスタシア〉『ゼットの攻撃が通っていないわ。あの装甲を破らないといけないわね!』
〈初穂〉『チマチマやってても埒が明かねぇ! 主砲を食らわしてやるぜ!』
城武が右腕の26口径粒子砲を構えるが、メカスカルゴモラはミサイルを乱射してゼットたちを纏めて吹き飛ばそうとしてくる。
「ゼアァァァッ!」
ゼットがミサイルを斬り払いながら回避行動を取り、城武も反対方向へローラーダッシュしてかわす。が、
〈あざみ〉『くっ、このっ……! 言うことを聞け、じゃじゃ馬……!』
あざみがスピードを制御し切れず、城武がとうとう横転してしまう。
〈初穂〉『うわぁぁぁっ!?』
〈クラリス〉『きゃああ!』
〈あざみ〉『あうっ! み、みんな……!』
倒れた城武へ、メカスカルゴモラが超振動波を放ってきた!
[ピッギャ――ゴオオオオウ! ギャオオオオオオオオ!]
〈アナスタシア〉『はっ!?』
〈初穂〉『やべぇっ!』
よけられない。初穂たちは咄嗟に身構えたが、
「ハァッ!」
ゼットがマギカフューチャーとなり、魔法陣を通って空間移動。バリアを張って超振動波を防いで城武を救った。
〈初穂〉『ほっ……』
〈クラリス〉『助かりました……』
〈あざみ〉『……』
そしてゼットはウルトラゼットライザーを出し、メカスカルゴモラに反撃する。
[COSMOS! NEXUS! MEBIUS!]
〈神山・ゼット〉「『ライトニングジェネレード!!」』
天から降り注ぐ雷撃が、メカスカルゴモラを貫いた!
[ピッギャ――ゴオオオオウ……!]
電撃によって内部機構が破壊されたメカスカルゴモラの動きが鈍くなり、城武がその隙に起き上がった。
〈アナスタシア〉『今よ!』
〈初穂〉『ああ! 75サンチペダニウム粒子砲っ!!』
今度こそ粒子砲を発射! とてつもない威力の光線がうなり、ヨ式メカスカルゴモラの装甲を砕いて貫通!
[ピッギャ――ゴオオオオウ!! ギャオオオオオオオオ!!]
これがとどめとなって、メカスカルゴモラは完全に爆散して消滅したのであった。
戦闘終了後、帝劇に帰投するとあざみが神山たちに対して大きく頭を下げた。
〈あざみ〉「申し訳ない……! あざみのせいで、もう少しでやられるところだった……!」
責任を感じているあざみを、神山たちが慰める。
〈神山〉「気にするな、あざみ。これまでとは操縦性が大きく異なる機体での初の実戦だったんだから、トラブルが起こるのはむしろ当然さ。何事もなかったのが幸いなくらいだ」
〈あざみ〉「だけど……」
〈アナスタシア〉「キャプテンの言う通りよ。済んだことを悔やんでも仕方ないわ」
〈クラリス〉「あざみさんは反応速度の違いが一番出る部位を担当してたんだから、無理もないですよ」
〈初穂〉「次に上手く出来るようになりゃいいじゃねーか!」
皆の言葉にさくらも同調する。
〈さくら〉「あざみはよくがんばったよ。だから気を落とさないで」
〈あざみ〉「……」
〈初穂〉「まー、今回はさくらが何か言える立場じゃねぇけどな。一人だけ戦闘にも参加してなかったもんなー」
おちょくってくる初穂に、さくらがむくれた。
〈さくら〉「ちょっと、こっちも大変だったんだけど! 今までは三、四人でやってた市民の避難誘導や救助を、たった一人でやってたんだからね! あっちこっち駆け回って……!」
〈初穂〉「分かった、分かったって! 冗談だよ! だからそんな怒るなって」
ムキになるさくらに、一同が思わず破顔した。
しかし神山がふと振り向くと……いつの間にか、あざみが忽然と消えていた。
〈神山〉「あれ……あざみは? さっきまでここにいたのに」
〈クラリス〉「あっ、いませんね……」
〈初穂〉「どっかに行ったんじゃねぇか? あざみ、気がついたらいなくなることがしょっちゅうあるだろ」
他の面々はあまり気にしていないが、神山は心配する。
〈神山〉「けど、さっきのことがあったばかりだから……気に病んだばかりに、姿を消してしまったんじゃ……」
〈アナスタシア〉「考え過ぎよ、キャプテン。そんなに弱い子じゃないはずだわ」
〈さくら〉「ええ。いつも気がついたらひょっこり戻ってますし、今回だってその内、何食わぬ顔で戻ってきますよ」
〈神山〉「そうだろうか……」
一抹の不安は残しつつも、あざみのことはそのままにして、神山は意識を別のことに向けていった。
今回の戦闘の報告書を提出後、神山はミースアと話をしながら帝劇内を移動していた。
〈ミースア〉「隊長さん、城武のバランサーの調整をしたですー。これで少しは操縦しやすくなったはずですよ」
〈神山〉「ありがとう。これでもうあざみも気を落とすようなことが起きなくなるといいが……」
そうしてロビーを通り過ぎようとしたところで……不意に誰かから声を掛けられた。
「帝国華撃団・花組隊長、神山誠十郎だな」
〈神山〉「はい?」
振り向くと、黒ずくめのスーツで身を固め、屋内なのにサングラスを掛けた男がそこにいた。神山には男の顔が、以前に見た覚えがあった。
〈神山〉「あなたは確か、プレジデントGと一緒にいた……」
〈I〉「ミスターIと呼びたまえ」
〈神山〉「は、はぁ……。そのミスターIさんが何の用ですか?」
プレジデントGの取り巻きらしい人物が一人で帝劇にいることを訝しみつつも、尋ねかける神山。すると、ミスターIはこんなことを言い出す。
〈I〉「プレジデントGの遣いで来たのだよ。ある人物の、身柄を拘束する任務を受けてね」
〈神山〉「えッ!?」
穏やかならぬ発言に、神山のみならずミースアも驚愕した。
〈神山〉「身柄を拘束って……一体、誰を?」
〈I〉「君もよく知る人物。望月あざみだ」
〈ミースア〉「あざみちゃん!?」
まさかの名前に、衝撃を受けるミースアと神山。
〈神山〉「な、何故……どうしてなんですか!」
〈I〉「望月あざみには、降魔のスパイの疑惑が掛かっているのだよ」
〈神山〉「あざみが、スパイ!? そんな馬鹿な!」
〈ミースア〉「な、何の証拠があってそんな失礼なこと言うですか!」
〈I〉「ふん……これを見ろ」
ミースアの抗議に、ミスターIは一枚の写真を見せることで答える。
それには、あざみが仮面を着けた見知らぬ人物と一緒にいるところが写っていた。
〈神山〉「これは……あざみ? この仮面の男は誰だ……?」
〈I〉「これは先日、元上海華撃団に依頼して撮ってもらったものだ。華撃団大戦の開幕式を襲った降魔、夜叉は特徴的な仮面を身に着けていた……。時を同じくして発見された、この奇妙な仮面の男……無関係だと思うかね?」
〈神山〉「そ、それは……」
はっきりとした物証を見せられて、神山も言いよどむ。
〈I〉「つまり、その不審な男と密会を続ける望月あざみは、降魔のスパイと考えられる訳だ」
〈ミースア〉「そ、そんなはずは……!」
ミースアもショックを禁じ得ないが、神山は意を決して、ミスターIに反論した。
〈神山〉「そんなはずはありません! あざみは、俺たちの仲間ですッ!」
〈I〉「ふん……」
だがミスターIには、まともに取り合うつもりはないようだった。
〈I〉「すぐにでも拘束したいところだが……まぁいい、まだ調査の途中だ。私はミズSにこの件を知らせてくる。……また会おう」
ミスターIが踵を返し、支配人室に向かっていった。
〈神山〉「あざみが……降魔と会ってる? そんな馬鹿な……」
ミスターIがいなくなって、改めて動揺する神山に、ミースアが必死に呼び掛けた。
〈ミースア〉「あざみちゃんがスパイなんて、そんなことないですよね! きっと何かの間違いです!」
〈神山〉「あ、ああ……そうだ! あざみの無実を証明して、疑いを晴らさないと!」
気を持ち直して、あざみに掛けられた疑惑を解消するために行動することを決意する。
〈神山〉「そのためには、あざみから話を聞かないと……。あの写真の、仮面の男が誰なのかも確かめなければ……」
〈ミースア〉「あざみちゃんはまだ戻ってないです。捜しに行くですよー!」
〈神山〉「ああ! ミスターIより先に、あざみを見つけ出さなくては……!」
あざみに迫る、予想外の危機に際して、神山はミースアとともにあざみの捜索のために帝都へ繰り出していった。