その日は早朝から、花組に召集命令が発せられた。
〈さくら〉「はっ……はっ……!」
さくらが劇場の廊下を走っていると、劇場内の生体照合システムが自動で天宮さくら本人であると認識。壁にある姿見の下に隠された地下への直通ルートが開き、丸い入口に飛び込む。長いスライダーを抜ける途中で、自動で戦闘服へ着替えさせられ、司令室に掛けられている己の肖像画の下から華麗に着地した。
〈すみれ〉「みんな、そろったわね」
司令室に帝国華撃団の主要メンバーが集結すると、早速すみれが今回の怪事件についての作戦会議の開始を指示する。司会を務めるのはカオルだ。
〈カオル〉「昨日深夜、帝都・品川の住宅地において、複数の民家が突如として崩壊する異常事態が発生しました。先に申し上げますと、この時刻には如何なる災害も確認されていません」
〈初穂〉「それどういうことだ? 何もなしに、建物がいくつも崩れるなんてことあるのかよ?」
〈こまち〉「普通はないから異常事態っちゅうことやろ」
思わず聞き返した初穂に、こまちが突っ込んだ。
〈カオル〉「これは昨晩の被害現場の記録映像です」
カオルがモニターに現場の映像を再生する。確かに、家屋が次々に突然崩壊していっている。どれも劣化などは起こしておらず、瓦礫も異様な勢いで弾け飛んでいる、明らかに不自然な倒壊だ。
〈アナスタシア〉「これは、確かに……」
〈あざみ〉「どうも、上から何かに押し潰されてるみたい」
〈カオル〉「はい。また、現場の地面には左右入れ違いに並んだ一定の形状の陥没も確認されています」
これらの情報から、分析担当のデュエスが原因を究明する。
〈デュエス〉「陥没は明らかに生物の足跡だ。そのサイズと記録映像から得られる情報から類推するに、身長はセブンガーとほぼ同等。いわゆる透明怪獣の仕業だな」
〈さくら〉「透明怪獣……! 目に映らないということですね」
〈クラリス〉「それなら説明がつきますね」
〈カオル〉「ですが、レーダーにも反応がありませんでした」
とカオルが言うと、対策担当のナシルマが返答する。
〈ナシルマ〉「多分、光線を含んだあらゆる波長の電磁波を回折、透過してるんだろうねー。だから目にも見えないし、レーダーにも引っ掛からない。このままだと、正確な位置を捕捉するのは困難を極めるね」
〈すみれ〉「対策は出来ているのかしら」
〈ナシルマ〉「もっちろん! 昨晩報告を受けてから、すぐに取り掛かりましたよ」
〈ミースア〉「じゃーん! これです~」
ミースア取り出したのは、特殊な形状の霊子兵装用の弾丸であった。
〈神山〉「それは?」
〈ナシルマ〉「特殊スペクトル弾! 弾丸にマイクロコンピュータが仕込んであって、これを撃ち込んだ対象の表面の光の屈折率、反射角度を自動で操作し、可視領域に入れてしまう。まぁ要するに、見えない物体を見えるようにするって訳」
〈ミースア〉「これの発射は、アナスタシアさんにお願いするです~」
ミースアが弾丸を、アナスタシアの前に置いた。
〈ミースア〉「一発しかないから、十分気をつけてです」
〈初穂〉「何だよ、ケチ臭せぇな」
〈ナシルマ〉「昨日の今日だよ? 一発あるだけでもありがたいと思ってよ」
〈アナスタシア〉「一発あれば十分だわ。外さないから」
頼もしい発言のアナスタシアに、神山たちも勇気づけられる。
〈すみれ〉「透明怪獣が次にいつ、どこに現れるかは分かりません。帝都全域には既に厳戒態勢が敷かれているわ。花組も、出現報告があった際に即座に出撃できるよう、待機を命じます」
〈花組〉「「「了解!」」」
〈すみれ〉「司馬くん、霊子兵装の整備状況は?」
〈司馬〉「当然、全て完了してますよ、すみれさん。誠十郎の機体もね」
〈すみれ〉「モフロさん、特空機の修理はどうかしら」
〈モフロ〉「問題ありませんぞ、支配人。いつでも出せます」
〈ナシルマ〉「今回の担当誰だっけ」
〈デュエス〉「天宮だな」
特空機は通常の霊子兵装に比べてあまりに巨体すぎるため、行動時間をたった三分間に限定していても、その大質量の駆動で操縦者に掛かる負荷は大きい。そのため、先日は神山の霊子戦闘機がまだ整備中だったので連続の搭乗になったが、通常は花組六名によるローテーション制の乗り換えで極力負担を軽減しているのであった。
〈神山〉「さくら、分かってる通りセブンガーは俺たちの主力だ。もちろん無理はいけないが、くれぐれも頼んだぞ」
〈ミースア〉「さくらちゃん、頑張ってです~!」
〈さくら〉「は、はい! お任せ下さい!」
神山とミースアの激励に、さくらが胸の前でぐっと手を握って応じた。
〈すみれ〉「風組は翔鯨丸の出撃用意を」
〈こまち〉「了解や!」
〈カオル〉「あっ……最後に一つ、気になる点があるのですが……」
作戦会議の最後に、カオルが告げた。
〈カオル〉「倒壊した民家からは、貨幣や貴重品などの金品が粗方喪失しているという報告が上がっています。警察に盗難届が提出されているようでして……」
〈あざみ〉「金品が……?」
〈クラリス〉「それはおかしな話ですね……」
〈初穂〉「怪獣が盗ってったってことか?」
初穂のひと言に、デュエスが大きく肩をすくめた。
〈デュエス〉「まさか。宝石とかならともかく、怪獣が人間の価値に興味を見出す訳ねぇ。火事場泥棒でも出たんだろ」
――その頃、摩上は隠れ家で、昨晩に破壊した民家から強盗した無数の貨幣や貴重品を腕に抱えて、大笑いしていた。
〈摩上〉「ウヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ! すっげぇー!! 一回の仕事でこんなに収穫があるなんて、初めてだぜぇ~!」
両手にすくった貨幣をバラバラと自分の頭に降らせて悦に浸る摩上に、ロソスが呼び掛ける。
〈ロソス〉『どうだ、俺の言ったことは本当だっただろう……』
〈摩上〉「ああ! 全く恐れ入ったぜ!」
〈ロソス〉『それで、俺の申し出は忘れてないだろうな……』
摩上がニタリと顔を歪ませて、ロソスに応じた。
〈摩上〉「おうよ! こんなにザックザックお宝が手に入るんなら、いくらでもやってやるぜぇ!!」
〈ロソス〉『フッフッフッ、それを待っていた……』
ロソスも摩上の内部で、ニヤァと目を歪ませる。
〈ロソス〉『それじゃあ俺たちは今から兄弟だ……。俺たちの力は、まだまだこんなものじゃない……。早速次の仕事に取り掛かろうか、兄弟……』
〈摩上〉「いいぜぇ兄弟! 今度は昨日以上の収穫を上げてやらぁ!!」
摩上が意気揚々と、ライザーを取り出して構えた――。
大帝国劇場にけたたましく警報が鳴り響いた。再び透明怪獣による被害報告が発生したのだ。
霊子兵装用格納庫へ走る神山。すると彼の専用機の前で、デュエスが待っていた。
〈デュエス〉「来たな、神山」
〈神山〉「デュエス? 俺に何か用か?」
〈デュエス〉「ウルトラマンゼットたるお前に、これを渡しとく」
デュエスが差し出したのは、五枚のメダルだ。
〈神山〉「ウルトラメダルか? ……いや、これは……!」
メダルに描かれているのは、ウルトラ戦士ではない。さくら、初穂、クラリス、あざみ、アナスタシアの横顔だ。
〈デュエス〉「こないだ借りたウルトラメダルを解析し、天宮たちのデータを組み込んで新しく作った、名づけて花組メダルだ」
〈神山〉「そうか、それで……」
〈デュエス〉「必要ねぇならそれでいいが、備えあれば患いなしとは地球の言葉だろ。とりあえず持っときな」
〈神山〉「分かった、ありがとう」
デュエスの親切心に礼を返して、神山が己の専用機、白い塗装の二刀を提げた無限のコックピットに飛び乗った。
〈神山〉『うおおおおおおッ!! 行くぞッ!!』
抜刀して動作確認し、出撃態勢に移る。
――台東区浅草では、浅草北駅の看板が動き、「緊急警報」の文字に変わった。そしてサイレンとともに浅草仲見世商店街の地面が跳ね橋のように開いていき、地下から全長130メートルに及ぶ藍色の飛行船が浮上する。
帝国華撃団・花組が劇場から離れた現場に速やかに移動するための飛空輸送艇・翔鯨丸である。
〈さくら〉「はっ!」
そしてさくらは、特空機用格納庫でセブンガーの喉元の搭乗口からコックピットに入り、霊子機関と接続。セブンガーの頭上のゲートが横にスライドして開いていく。
『フォースゲートオープン! フォースゲートオープン!』
『特空機が発進致します! 駐車場利用のお客様はご協力願います!』
特空機の発進口は、劇場横に設けた大型駐車場だ。緊急出動の報を受けて駐車していた自動車や馬車が退いていき、開いたゲートからセブンガーがせり上がってくるのを、野次馬の都民がオオーッと見上げていた。
『防火壁閉鎖! 離陸準備完了!』
〈さくら〉『特空機一号セブンガー、離陸!』
セブンガーの背面のブースターが点火し、ロケット噴射によって離陸。上空で翔鯨丸と合流し、並んで品川方面へ急行していった。
セブンガーと翔鯨丸が現場上空に到着すると、眼下の市街地の一部が既に崩壊し、火の手が上がっているのが確認できた。
〈神山〉『あの辺りは高級住宅街だな。……偶然か?』
カオルが言っていた、被害現場での金品喪失の話を思い出して、神山は眉をひそめた。
〈カオル〉『市民の避難は既に完了しています』
〈さくら〉『了解! セブンガー、着陸します!』
翔鯨丸から五機の無限が投下されるとともに、セブンガーも着陸する。
『セブンガー、着陸します。ご注意下さい』
着陸したセブンガーがプシューッ! と蒸気を噴出して身構える。実用行動時間のカウントが、四分から始まった。
〈ミースア〉『さくらちゃんの霊力は特に大きいので、行動時間を一分延長できるです~!』
〈デュエス〉『あと十秒あればやっつけられたって時でも安心だな!』
〈初穂〉『それ、かなり限定された状況じゃねぇか?』
五人の無限が散開して周囲の警戒を行うが、いるはずの怪獣はやはりどこにも姿を見つけられない。
〈クラリス〉『やっぱり、怪獣は視認が不可能みたいです』
〈すみれ〉『皆、気をつけて。民家の破壊は今しがたまで起こっていた。必ず近くにいるはずよ』
〈ナシルマ〉『質量が消える訳じゃない。動けば絶対痕跡が生じるよ。頑張って捜してくれ!』
〈初穂〉『ところでさ、隊長はウルトラマンゼットに変身して戦った方がいいんじゃねぇのか?』
初穂の素朴な疑問に、ゼット本人が通信に入ってきて答えた。
〈ゼット〉『ギリギリまで頑張って、俺と誠十郎の気持ちがグッ! と噛み合わないと、変身できないんでございますよ』
〈初穂〉『微妙に使いづらいな……』
〈神山〉『大丈夫だ。俺も花組隊長として、どんな時も限界まで己の力で戦う所存だ』
〈ゼット〉『ああ、その意気でごわす!』
などと話しながらも周囲に気を配っている内に、あざみが目を細めて振り返った。
〈あざみ〉『殺気……!』
その方向で、民家の庭の樹がいきなりへし折れた!
〈あざみ〉『いた! 三時の方角!』
〈神山〉『アナスタシア!』
〈アナスタシア〉『任せて』
アナスタシアの無限が番傘の先端を、指示された方向に向けた。
〈アナスタシア〉『特殊スペクトル弾、発射!』
番傘から撃たれた弾丸が唸りを上げて飛び、空中で静止した。
〈アナスタシア〉『ヒット』
〈クラリス〉『流石です!』
〈初穂〉『やったぜ! さぁ、その面拝ませてもらおうじゃねぇか!』
スペクトル弾が作動し、光を透過させて姿を消していた巨大怪獣の全貌を花組の前にさらけ出させる。
「キイイイイイイイイ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
露わになった怪獣の姿に、花組はそろって目を見張った。
〈さくら〉『あれは!?』
〈あざみ〉『何だか、妙……!』
並んだ二つの山脈のように隆起した背面と、白黒の斑模様の胴体を持った、鋭い牙の獰猛な怪物。目のある場所には代わりに回転するアンテナ状の角が生えていて、尾は長くムチのようにしなっている。両腕には鋭い鉤爪が生え……胸部には禍々しく赤い球体が埋め込まれてあった。
怪獣の全身から発せられているおどろおどろしい気配に、花組は思わず身震いする。
〈クラリス〉『この嫌な感じ……降魔の妖力ですか!?』
〈神山〉『降魔怪獣か……しかし、こんな肌が震えるほどの妖力は感じたことがない……!』
司令室では、露わになった怪獣の姿にデュエスらが衝撃を受けていた。
〈デュエス〉「あれは自然発生した怪獣じゃねぇ! 複数の怪獣の要素を組み合わせて作られた、融合獣だ!」
〈すみれ〉「見た限りでは、下級降魔の要素も含まれているようですわね」
〈デュエス〉「いわば、降魔融合獣ってとこか……。そんなもんが何で……」
〈さくら〉『攻撃開始します!』
さくらの駆るセブンガーが足を踏み出し、降魔融合獣イ式サンダーキングへ向けて進撃。その横面に鉄拳を浴びせた。
「キイイイイイイイイ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
重い一撃に殴り倒されたサンダーキングだが、回転する角から高圧電流を発し、セブンガーに食らわせる!
〈さくら〉『きゃあああああっ!?』
操縦席が激しいスパークに襲われ、さくらが悲鳴を上げる。セブンガーが後ろに倒れ込んだ。
〈神山たち〉『さくら!!?』
セブンガーの損傷状況をモニターしたナシルマが顔を青くした。
〈ナシルマ〉『ああやばいッ! 蒸気供給管が破裂した!』
〈ミースア〉『駆動系統に異常! セブンガー、起き上がれないですぅっ!!』
〈神山〉『みんな、援護するぞッ!』
〈初穂たち〉『『『『了解!!』』』』
無限が走り、イ式サンダーキングの足に斬撃、打撃を浴びせ、体表に手裏剣や光弾を降り注ぐ。
〈初穂〉『おらぁっ! こっち向きやがれ!』
しかしサンダーキングは彼らを無視して、セブンガーに追撃の電撃を放とうとしている。
〈クラリス〉『駄目です、効いてません!』
〈アナスタシア〉『先にセブンガーを破壊するつもりだわ!』
〈モフロ〉『さくらくん、離脱するんじゃ! それ以上は危険じゃ!』
警告するモフロだが、さくらは必死にセブンガーを動かそうとしていて、聞き入れない。
〈さくら〉『セブンガーはわたしたちの仲間です! 壊される訳にはいきません……! わたしは、最後まであきらめませんっ!!』
さくらの危機に、神山の決意が高まった。
〈神山〉『さくら……! その意志、俺が引き継ぐッ!』
自然にウルトラゼットライザーを取り出していて、トリガーを押していた。
無限の前に光のゲートが現れると、ハッチを開いた神山がその中へ飛び込む!
〈神山〉「うおおおおおおッ!!」
ゲートをくぐって亜空間に移動。ウルトラアクセスカードを手に取り、ゼットライザーに差し込んだ。
[SEIJŪRO, Access Granted!]
腰のホルダーから三枚のウルトラメダルを取り出す。
〈神山〉『「宇宙拳法、秘伝の神業!」』
ライザーに素早くセット、スキャンする。
[ZERO! SEVEN! LEO!]
神山の背後にゼットの姿が立ち上がった!
〈ゼット〉『ご唱和ください、我の名を! ウルトラマンゼーット!!』
〈神山〉『「ウルトラマン! ゼェ―――ット!!」』
ゼットライザーを掲げて、トリガーを押す!
『ハッ!』
『デュワッ!』
『イヤァッ!』
[ULTRAMAN-Z! ALPHA-EDGE!!]
「ゼアッ!」
サンダーキングの電撃が放たれた瞬間、セブンガーの前に飛び込んで防御した!
〈さくら〉『きゃっ!?』
一瞬生じた閃光で視界を潰されたさくらが、ゆっくり目を開けると……モニターに大きく映っていたのは、ウルトラマンゼット・アルファエッジの顔であった。
〈さくら〉『……神山さん……!』
ゼットは抱え上げたセブンガーをゆっくり下ろすと、猛然とイ式サンダーキングに突撃していく!
「ゼアッ!」
「キイイイイイイイイ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
サンダーキングの方も地を蹴って迎え撃ちに行くが、ゼットはふた振りのスラッガーをヌンチャクにし、乱撃を叩き込む!
〈神山〉『「うおおおおおおおおッ! 食らええええぇぇぇぇぇぇぇッ!!」』
ゼットの吹き荒れる猛攻にサンダーキングはなす術なく、全身を切り刻まれる……。
そのはずであったが!
〈神山〉『「何!?」』
サンダーキングの裂傷は、入れられる端から高速でふさがって消えていくのだ!
〈初穂〉『嘘だろ!? 何でゼットの攻撃まで効かねぇんだ!?』
〈あざみ〉『そうか、降魔だから……!』
妖力を持つ降魔の邪気は、霊力を用いなければ祓うことが出来ない。もちろん神山も霊力を保有してはいるのだが……。
〈神山〉『「くッ……! 俺の霊力じゃ、ゼットの力になるには足りないのか……!」』
「キイイイイイイイイ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
サンダーキングは電撃を纏った鉤爪を振るい、ゼットにお返しする。
「ウワァァァッ!」
高圧電流を乗せた一撃を叩き込まれ、後ずさるゼット。相手にダメージを与えられないのでは、勝負にならない。
〈神山〉『「くそぉッ……! 俺は、さくらの意志に応えることすら出来ないのか……!?」』
己の不甲斐なさを感じ、神山は悔しさに歯がみした。
しかしそこに、デュエスからの指示が飛ぶ。
〈デュエス〉『神山! 花組メダルを使ってみろ!』
〈神山〉『「花組メダル……!? はッ、そうか!」』
何かに気づいた神山が、出撃前に受け取った花組メダルの内の一枚、さくらメダルを取り出した。
〈神山〉『「さくら……! きみの力を借りるッ!」』
強い念を込めたメダルを、レオメダルと交換した。
〈神山〉『「上手く行ってくれよッ!」』
新たに三枚のメダルで、スキャンし直す。
[ZERO! SEVEN! SAKURA!]
ゼットの姿が再び神山の背後に立ちあがって、腕を広げた。
〈ゼット〉『ご唱和ください、我の名を! ウルトラマンゼーット!!』
〈神山〉『「ウルトラマン! ゼェ―――ット!!」』
ゼットライザーのトリガーを押し、メダルの力をゼットの身に宿す!
『ハッ!』
『デュワッ!』
『やぁーっ!』
ゼロとセブンのビジョンが飛び、抜刀するさくらのビジョンとともに一つの光となる!
[ULTRAMAN-Z! SAKURA-EDGE!!]
そして渦巻く桜の花びらのような光の中から現れたのは!
「ゼアッ!」
桜色のカラーリングが追加されたウルトラマンゼット・サクラエッジである!
〈クラリス〉『姿が変わりました! あの力の感じは……!』
〈さくら〉『誠十郎さん……!』
ゼットがスラッガーを両手に握ると、スラッガーが伸び、太刀のように変形を果たした。
「ハァッ!」
二刀流となったゼットが、斬撃をサンダーキングに入れる。
「ゼアァッ!」
「キイイイイイイイイ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
サンダーキングの体表に刀傷が走る。今度は再生しない!
〈神山〉『「よしッ!」』
〈ゼット〉『おおッ! 効いてるぞ! ウルトラいけるぜぇッ!』
花組メダルの効果でゼット自身のパワーを霊力に変換しているのだ。これで降魔融合獣の強力な妖力も突破できる!
「ゼアッ! ゼェアッ!」
二刀の猛攻撃を振るうゼット。サンダーキングも鉤爪で応戦するが、一方の刀で弾かれたところにもう一方の刃を叩きつけられ、爪をへし折られた。
「キイイイイイイイイ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
すっかり攻守逆転して追いつめられるサンダーキングであったが、右手の爪を、スペクトル弾を撃たれた箇所に突き立てると、刺さった弾丸を引き抜いてしまった!
〈ナシルマ〉『あー! まずいッ!』
スペクトル弾が抜かれたことでサンダーキングに透明化能力が復活し、ゼットの目の前で姿がかき消えてしまう。
「デュワッ!?」
思わず足を止めたゼットの背後から電撃が飛び、背中を撃たれる。
「ウワァァァッ!」
振り向きざまに刀を走らせるが、空を切った。これではサンダーキングを捉えることが出来ない!
〈ゼット〉『このままじゃヤバみを感じます……!』
〈神山〉『「……武の道は、見えるものだけを追いかけるに非ず……!」』
〈ゼット〉『えッ、何だって?』
〈神山〉『「いいから、意識を集中するんだ! 目を閉じてッ!」』
言いつけると、自らが目を閉ざして精神を集中する。
〈神山〉『(……!)』
視界からの情報がなくなったことで、周りの空気の流れが、鮮明に感じ取れるようになる。
その時に、背後の空気の流れの不自然な変化を感知した!
〈神山〉『「そこだぁぁぁぁぁッ!!」』
「ゼアァァァッ!」
ゼットの薙いだ刀が、サンダーキングの角を斬り落とした!
「キイイイイイイイイ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
〈ゼット〉『ウルトラすごい! 天宮剣術、秘伝の神剣ってところだな!』
サンダーキングが残った角から電撃を飛ばすが、ゼットは電流を回り込むように飛び、相手に肉薄。
〈神山〉『「縦横無刃・嵐!!」』
神山の必殺技たる神速の連続斬撃がサンダーキングを襲い、残った角も爪も細切れにした。
「キイイイイイイイイ!! ゲエエゴオオオオオオウ!!」
だがサンダーキングも死にもの狂いで抵抗し、長い尾をゼットに巻きつけて最大電力の電流を食らわせる。
「ウワァァァッ!」
互いに一歩も譲らぬ激闘により、ゼットのカラータイマーが点滅する。
〈アナスタシア〉『ゼットが危ないわ!』
〈初穂〉『けど、これじゃ近づけねぇぜ!』
サンダーキングの電撃が周りにもほとばしり、無限は射程範囲まで接近することが出来ず援護できない。
しかし、サンダーキングの顔面にロケットパンチがめり込む!
「ゲエエゴオオオオオオウ!」
〈神山〉『「今のは……!」』
セブンガーのパンチを飛ばしたのは、残った力を振り絞ったさくらだ。
〈さくら〉『これが精いっぱいです……! 後は頼みます、ゼットさん……隊長……!』
さくらから託された想いを、しかと受け止める神山!
〈神山〉『「ありがとう、さくら……! これでとどめだッ!」』
ゼットが振りかざした刀身に、桜色の光が渦巻く。
〈神山・ゼット〉「『ゼスティウム桜吹雪!!」』
吹き荒れる桜吹雪がサンダーキングを突き抜け、大きなZを刻みつけた!
そしてイ式サンダーキングは爆発四散!
〈初穂たち〉『『『やったぁぁぁ―――――――――っ!!』』』
「シュウワッチ!」
悪を打ち倒して帝都を守ったゼットが、Zの軌道を描いて飛び去っていった。
――そうして戻ってきた神山と、救出されたさくらは仲間たちとともに、華撃団の伝統で戦いを締めたのであった。
〈花組〉「勝利のポーズ、決めっ!!」
――花組とゼットの前に撃破されたイ式サンダーキングから元の姿に戻った摩上は、町の陰に身を隠しながら、ギリギリと歯ぎしりしていた。
〈摩上〉「ちっくしょう、ウルトラマンゼットとかいうの……! よくも邪魔しやがって……!」
〈ロソス〉『そう荒れるな、兄弟……』
激しく悔しがる摩上を、ロソスがなだめる。
〈ロソス〉『今は実験段階みたいなものだ……。これから戦いの経験を積んでいく度に、俺たちの闇の力はどんどん強まる……。もっと強力なメダルも扱えるようになるさ……』
〈摩上〉「本当か?」
〈ロソス〉『当然……。そして闇の力が究極に高まった時、俺たちを止められる奴なんかいなくなる……俺たちが世界を、宇宙をこの手に掌握するのさ……! それまでの辛抱さ……』
〈摩上〉「ハハハ……兄弟の野望はホントでっけぇなぁ。面白れぇ……! こうなりゃとことんつき合ってやるぜ!」
ロソスに合わせてほくそ笑んだ摩上が、ゼットたちに向けて吐き捨てる。
〈摩上〉「今に見てろウルトラマンゼット、帝国華撃団……! いずれ地獄に叩き落としてやるぜ……! ヒッハハハハハ……!!」
邪悪な笑いを残して、摩上は帝都の闇の中に消えていった――。
また、この戦いの一部始終を、黒い外套を纏った仮面の女が密かに見届けていた――。
「……」
(ED:桜夢見し)
『花組のウルトラナビ!』
神山「今回紹介するのは、ウルトラセブンだ!」
初穂「セブンは初代に続く、主役級のウルトラ戦士の第二号だな! 作品として出来の高さから、ファンからの人気は初代に並ぶほどだ!」
初穂「後のシリーズでの出番もかなり多いぜ! 番組内で使われるアイテムでの顔出しの機会も多いし、最近の『ウルトラファイトオーブ』じゃ息子のゼロと一緒に重要な役割を果たしたな!」
初穂「ウルトラマンレオとは直々に鍛えた師匠と弟子の関係だ。このゼロ、セブン、レオのセブンつながりの三人のメダルで変身するのがアルファエッジだ!」
ゼット『そして今回の華撃団隊員は神崎すみれだ!』
初穂「元帝劇のトップスタァの、現在の帝劇の支配人だ! 光武から続く霊子兵装シリーズを作ってる神崎重工の息女でもある、帝国華撃団とは切っても切り離せねぇ関係だ。かつては中の人の事情で引退してたが、『新』だと旧シリーズから唯一続投してるレギュラーだぜ」
初穂「じゃ、次回もよろしくな!」
初穂「眠ってる降魔怪獣を無人島に輸送するだぁ? 大丈夫なんだろうな。っておい! 起きちまったじゃねぇか! ゴモラとゼットのガチンコ勝負だ!」
「次回、『多事多端!怪獣輸送大作戦』。太正桜に浪漫のZ!」