一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

107 / 221
エーフィとブラッキー


心の中が読めたら良いのに

「はぁ…」

「どうした?」

 

その細腕にどっさりと書類を抱えたミミロップが首を傾げた。

溜息を吐いた張本人、エーフィはそんなミミロップをチラリと見てからもう一度深い溜息を吐いた。

 

「昨日からブラッキーが帰って来てないんです…」

「またかよっ!!」

「この前に朝帰りして来た時、あんなに…あんなに言い聞かせたのに…!!」

 

頭を抱えるエーフィを見て、

あんなに言い聞かせた状況をミミロップは思い出す。

 

「二度目はありませんよ!!」

「ほい!」

「貴方が帰って来ないと玄関の鍵も閉められないし、晩ご飯だって残って困るのはシンヤさんなんですからね!」

「了解です!」

「次に朝帰りなんてしたら家には入れませんし、晩ご飯も無しですから!!」

「以後、気を付けます!」

 

アイツ、絶対にちゃんと聞いてなかったよ。

そうは思っても口には出せないミミロップはもごもごと口を動かすだけに終わる。

はあ、と溜息を吐いたエーフィ。

そのエーフィになんと声を掛けていいものかと迷うミミロップ。

 

「つい最近のことなのに…もう約束を…ッ」

 

ミミロップがおろおろと困っているとミミロップと同じように書類を抱えたシンヤが通り掛かった。

 

「何やってるんだ」

「あー…、ブラッキーが帰って来ないらしくてさ」

「アイツならツバキのところに行ってるんだぞ?聞いてなかったのか?」

「え!?聞いてませんよ!?」

 

シンヤさん、ブラッキーをツバキのところに送ったなら送ったと報告して下さい!!とエーフィに詰め寄られてシンヤは一歩後ろに下がる。

 

「いや、ブラッキーが行きたいと言い出したから…送ってやったんだ。お前達も知ってるものだと…」

「聞いてません!!」

 

バンとテーブルを叩いたエーフィ。

ビク、とシンヤとミミロップが肩を揺らした。

今日の昼過ぎに帰って来る、と付け足してシンヤはそそくさとその場から逃げるように部屋から出て行った。

ピリピリしたエーフィにこれ以上触れたくないらしい。一方、逃げるタイミングを逃したと書類を抱えたミミロップは冷や汗を流す。

 

「まあ、何しに行ってたか帰ってから聞けば良いじゃん」

「そうですね…」

「た、大したことじゃないって…」

「そうでしょうね…」

 

エーフィが不機嫌なまま、ブラッキーが帰って来る昼過ぎになった。

ブラッキーを受け取る為に電話の前に座るシンヤの後ろで腕を組みピリピリと殺気を放つエーフィ。

背中が痛い、なんか痛い…とシンヤは早く電話が鳴れと無意味に念じた。

電話が着信を告げる

ワンコールで出たシンヤに電話の向こうのツバキが驚きの声をあげた。

 

<「早っ、どうしたんですかシンヤさん!!」>

「早くブラッキーを返せ、すぐに返せ、今すぐ返せ!!」

<「そんな人が勝手にとったみたいな言い方して!!送って来たのシンヤさんの方からでしょーが!!」>

「御託は良い!!さっさと送れ!!」

<「わ、わかりましたよ…。おくりまーす」>

 

ツバキがブラッキーの入ったボールをシンヤのもとへと送る。

ボールを受け取ったシンヤは即行でボールをエーフィに差し出した。

 

「私は仕事が残ってるから部屋に戻る」

「あ!ワタシも手伝うっ!!」

 

傍から様子を見ていたミミロップも弾けるようにシンヤの後を追いかける。

ブラッキーのボールを握りしめたエーフィはブラッキーのボールを目の前に投げた。

ボールから出て来たブラッキーはすぐに人の姿になって大きな欠伸をしながら伸びをする。

 

「ふわぁああああ…つっかれたぁー!!」

「ブラッキー…」

「ん、ぉお!?エーフィ!!ただいまっ!!」

 

パッと笑顔になったブラッキー。

その笑顔を見て一瞬、ぐ…と怯むエーフィ。しかしそれも一瞬ですぐに表情を厳しいものに戻す。

 

「ツバキのところに何しに行ってたんですか?」

「よくぞ聞いてくれた!!見てくれ!!」

 

ボールの中に入れていたのか紙袋を取り出したブラッキーはその中身をエーフィの目の前で取り出した。

じゃじゃーん、と効果音を付けてブラッキーがエーフィの前に出したのはバラの花束。それもとても良い香りのする美しいもの。

 

「な、なんですこれ?」

「ツバキのところにロズレイドが居るって聞いてさー、頼みに行ったんだ!!」

「え?」

「エーフィ、花好きだろ?だから花束の作り方教わりに行ってきた!この前は心配掛けてごめんな?怒ってただろ?」

 

はい、と渡された花束を受け取ってエーフィは思わぬ事態にうろたえる。

この前とは勿論、朝帰りのことだろう…。

ニコニコと笑うブラッキーを見て、悔しい気持ちを抱きながらもエーフィは花束を抱きしめて苦笑いを浮かべた。

 

「全く、しかたのない人ですね…」

「喜んでくれた?」

「嬉しいです」

「なら良かった!!」

 

にっこりと笑顔を向けたブラッキーから視線を逸らしてエーフィは照れたように頬を染めた。

本当に、どうしようもない。

これが惚れた弱みってやつでしょうか、勝てないんですよね…。

困ったように笑みを浮かべたエーフィ。

ただいまー、と言いながら走って行くブラッキーを見送って小さく溜息を吐いた。

 

 

心の中が読めたら良いのに

 

 

「ただいま、シンヤ!!」

「ああ、おかえり」

「ロズレイドにな、花束の作り方教わりに行ってきたんだぜ!!」

「そうか」

「そのロズレイドがまた美人でさー!!」

「そ、そうか…」

「楽しかったー!!」

 

そうか、それは良かったな…と小さな声で返事を返しつつ後退り逃げるシンヤ。

そのシンヤを見てブラッキーは首を傾げた。

 

「シンヤ?」

「すまん…、仕事が…」

 

すまん!!そう言って逃げたシンヤを見送ったブラッキー。

シンヤは逃走2秒後にブラッキーの悲鳴を聞いた。

 

*

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告