一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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トゲキッス


24時間の内の秘め事

おやすみなさい、と早寝早起きなトゲキッスとチルタリスが早々にボールの中へと戻る。

特にいつもと変わらない行動だったが、空っぽになったカップを覗きんだシンヤがぼそりと呟いた。

 

「トゲキッスの奴、普段なにしてるんだ…?」

 

主人であるシンヤの突然の一言。

彼の中でチルタリスの行動は容易く想像出来たようだが、どうにもトゲキッスの行動は想像出来なかったらしい。そういえば一緒に居ない時は何をやっているんだろう…と何気なく思ったようだ。

チラリと隣に居たミロカロスに視線をやったシンヤ。しかしそのシンヤの視線に気付いたミロカロスは首を傾げるだけ。

 

「そーいや、家に居ないことあるよな」

 

ミロカロスとは違いシンヤの言葉に返事をしてうんうん、と頷いたミミロップ。

サマヨールが「そういえばそうだな…」と相槌を打つ。

基本的に家に居るミミロップ、サマヨール、エーフィ、それにチルタリス。

ブラッキーは何処に行って来たーといちいち報告してはエーフィに怒られている。

 

「サーナイトは知ってますか?」

 

エーフィの言葉にサーナイトは考えるように口元に手を当てた。

 

「ワタクシが本屋さんに行った帰りにたまに会ったりしますけど…それまでに何をしているかまではわかりませんわ」

「基本的にアイツも一人で居るの好きだよな」

 

シンヤの言葉に何が面白いのかブラッキーがアハハと笑った。

 

「何笑ってるんですか」

「いてて」

 

エーフィに頬を抓られたブラッキーが顔を歪ませる。

しかし、抓られたままでも気にせずにブラッキーはキリリとした表情に変えてシンヤへと視線をやった。実に間抜け面である。

 

「オレは分かるぜ!!女が居る!!」

「……マジか」

「シンヤさん、らしくない言葉遣いやめてください」

 

エーフィに訂正されてシンヤはこほんと小さく咳払い。

ブラッキーの自信ありげな発言にミミロップは「証拠でもあんのかよ」と口を尖らせる。

 

「誰にも報告せずに一人でお出掛けなんて逢引というもの以外に何がある!!」

「…シンヤ、あいびきってなに?」

「デートのことだ」

「おお!俺様もシンヤとしたい!!あらびき!!」

「それ肉だ」

 

あれ、と首を傾げたミロカロスを無視してシンヤは空っぽのカップの底を見ながら思った。

 

「(とりあえず、おかわり欲しい…)」

「明日、トゲキッス尾行してみようぜ!!絶対に女だから!!」

「賭ける?」

「じゃあ、明日のおやつを賭けて!オレが勝ったらお前らのおやつはオレのもんだー!!」

「乗ってやんよ!!ワタシは散歩でもしてるに賭ける!!」

「男が散歩とかワロス!!」

 

ケラケラと笑うブラッキー。

何故か勝手に盛り上がりだした連中を見てシンヤは眉間に皺を寄せた。

 

「(ワロス…?)」

「自分はよく散歩に行くけどな…」

「真夜中に散歩って言うんですか?」

「徘徊なんじゃないですの?」

「せめて見廻りにしてくれ…」

 

エーフィとサーナイトの言葉にサマヨールが肩を落とす。

そんなやりとりをしている連中を眺めていたシンヤに急に視線が集まった。

 

「シンヤは?」

「は?」

「だから!シンヤはどっちだと思う!?女か、散歩か!!」

「二択なのか…、まあどっちでも良いとは思うけどな…」

「シンヤも賭けろよ!!」

「賭けごとは嫌いだ」

「出た。嫌いだ、嫌だ、なんてシンヤの口から出たらもう参加しないパターン!!」

「頑固ですものねー」

 

ミミロップの指摘にシンヤは黙りこむ。

長い付き合いなだけに行動パターンを読まれつつあるようだ。

 

「じゃあ、もうシンヤおやつ作る係な」

「いつも作ってるんだが…」

「明日は早起きして尾行だー!!」

「「おー!!」」

「早起きは苦手だな…」

「本当にやるんですね…」

「おー?」

 

わけのわからないままサーナイトとミミロップを真似て返事をするミロカロス。

なんとなく発した一言が面倒なことになった、と思いつつシンヤは空っぽになったカップを片手にキッチンへと向かった。

 

*

 

次の日の朝。

まだ日も昇りきらないうちにシンヤは起こされた。

体を起こせば珍しく朝から元気なブラッキーがニヤリと笑ってシンヤに着替えの服を突きつけた。

 

「行くぜ!!」

「ぇ…私も行くのか…?」

「当たり前だろ!!」

 

おやつ作る係なのに…?と思いつつシンヤは着替えて身支度を済ませる。

リビングへと行けば朝から勢揃いな面々にチルタリスが驚きながらもシンヤにコーヒーを出した。

 

「おはようございます、ご主人様」

「おはよう」

「朝からお出掛けなのですか?なにかご用意をしなくても大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だ、放っておけ」

 

ふわぁ、と欠伸をしながらチルタリスに返事を返したシンヤ。

尾行されるらしいトゲキッスはすでに早くから出掛けたようだ。

 

「早く行くぞ!!見失っちまう!!」

「朝苦手なのにこういう時は元気なんですね…」

「サマヨール!!お前起きてんのか!?置いてくぞ!?」

「置いて行ってくれ…」

 

ふらふらのサマヨールを引き摺ってミミロップが玄関を飛び出した。

 

「それでは、行ってきますわね!」

「はい、行ってらっしゃいませ」

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい」

 

手を振ったミロカロスに手を振り返したシンヤ。

さりげなくこのまま家に残ろうと思っていたシンヤだったが残念なことにサーナイトに「もう!」なんて言われながら腕を引っ張られて失敗に終わった。

 

「皆さん、お気を付けてー」

「アイツ微塵も疑問に思わないんだな…」

 

チルタリスに手を振ったシンヤは少し不安になった。

泥棒とか詐欺とか来ても信用して笑顔で迎え入れそうな勢いだな…。

 

*

 

トゲキッスから距離をとり歩く集団。

逆に目立ってそうだと思いながらもシンヤは更にその後ろを歩く。

 

「どこに行くつもりなんですかね…」

「この方向だと、公園だな…」

「朝っぱらから公園で待ち合わせかー、やるなー」

 

ブラッキーの言葉に何が?とは思いつつもシンヤも黙ってトゲキッスの様子を見守る。

 

「今日な、公園で掃除するんだ。俺様はめんどくさいから断ったけどな」

「…へぇ」

 

シンヤの隣を歩いていたミロカロスが笑顔でそう言った。

へぇ、と相槌を打ったもののなんでコイツがそんなこと知ってるんだと…シンヤはミロカロスに視線をやる。

 

「お前、トゲキッスがいつも何してるか知ってるんじゃないのか?」

「いつも?」

「朝からいつも掃除してるのか?」

「ううん、掃除は毎週日曜日。水曜日は朝からじいちゃんばあちゃんの手伝いしててな、土曜日はちびっ子と遊んでる。他の日は野生ポケモンの友達に会いに行ってる」

「…よく知ってるな」

「水曜と土曜、俺様も一緒に行くし。他の日も暇なら一緒に行くんだー。日曜はシンヤが休み多いから家に居るけど」

「…」

「…?」

 

ミロカロスに視線をやってからシンヤはその場で立ち止まった。

 

「よし、その辺でコーヒー飲もう。アイス買ってやるぞ」

「わーい!!」

 

その辺の喫茶店に入ったシンヤとミロカロス。

コーヒーを啜りながらべらべらと喋るミロカロスの話に相槌を打つ。

 

「カンタじいちゃんがな、腰悪くなって買い物行けないからキッスが代わりに行ってるんだ。そしたらマツエばあちゃんが自分も足悪いから買い物行ってーって言うから俺様も一緒に手伝ってんの。だから水曜日にいっぱい買い物するんだ」

「へぇ」

「そんでな買い物したらまんじゅうとかようかんとかくれんの」

 

毎日、大体ボランティア活動に勤しんでるらしい。ついでにミロカロスを連れて行く辺りトゲキッスの優しさを感じる。

本当に良い子に育ったもんだ…。今度から小遣い持たせてやろう。

他の連中は金くれ金くれ、って言ってくるけどトゲキッスは言ってこないからな。アイツだけ小遣い制にしよう…。

 

「でもな、この前からシマじいちゃんが居なくなったんだ」

「…」

「キッスに聞いたら"シマさんは見えなくなっただけでずっと居るんですよ"って言ってた。シマじいちゃん多分ポケモンだったのかも」

「…ッ」

 

色んな意味で泣きそうだ。

 

「シマじいちゃんなんで見えなくなったんだろうな」

「お亡くなりになったんじゃないのか…」

「おなくなりになった、ってなに?おなくなりってポケモン?」

「あー、死んだってことだ」

「…シマじいちゃん死んだの!?」

「お前、本当に頭が残念だな」

「死んだなら死んだって言ってくれれば良かったのにな」

「お前がそんな反応して周りのじいちゃんばあちゃんに無遠慮な態度取るからだと私は思うがな」

「…じゃあどんな反応したら良い?」

「そうだな…。悲しくて泣くとか…」

「俺様、悲しくないから泣けないなー」

「素直なヤツって残酷な生き物だ…」

 

ミロカロスの態度が分かっていたであろうトゲキッスはあえて言わなかったんだろう。

私も人の事は言えないが、ミロカロスの他人に対しての情とか本当に無いよな…。

 

「…シマじいちゃんじゃなくて私が死んだらどうする?」

「シンヤが…、うわああああああ!!やだぁああああ!!」

「わかった!!わかったから黙れ!!」

 

今更ながらなんで自分だけこんな特別扱いされてるのか甚だ疑問である。

喫茶店で時間を潰すこと数時間。もうそろそろ昼食時だ。

 

「あ、キッスだ」

「ん?」

 

窓の外でこちらに気が付いたトゲキッスが手を振っている。

手招きをすればトゲキッスが喫茶店へと入って来た。

 

「珍しいですね、シンヤがお出掛けなんて」

「ミロとデートだな」

「デートだったの!?やったー!!」

 

喫茶店でコーヒー飲みながら本読んでて、ミロカロスはアイス食べた後に軽く寝てたけど…。

 

「お前は何してたんだ?」

「俺ですか?俺は公園の掃除をしてました、毎週日曜日はボランティア活動の人たちと一緒に掃除をするんです」

「へぇ」

「俺たちと同じ人型のポケモンも混ざってたりしてて面白いですよ」

「ふむ…、彼女とか居たりしないのか?」

「居たら素敵ですけどねー」

 

ニコニコと笑うトゲキッス。

ブラッキーの女が居るっていうのは残念ながら外れたらしい。アイツおやつ抜きだな。

 

「一緒に家に帰るか?」

「そうですね」

「お昼ご飯食べたいなー」

 

三人で喫茶店から出れば背後から誰かが飛びついて来た。咄嗟に背負い投げをすれば更に後ろから悲鳴が聞こえる。

 

「なぁあああ!?!?ツキー!!!!」

「いてぇええええ!!!」

「…なんだお前か」

「絶対にちょっと分かってて投げたろ!?格闘タイプかコノヤロー!!!」

 

地面を転げ回るブラッキーにエーフィが駆け寄った。

はて何のことかな?と首を傾げてやればブラッキーは両手で顔を覆って泣き真似を始めた。エーフィ以外、完全に無視するけどな。

 

「皆さん揃ってお出掛けだったんですね」

「……あ、うん、そう」

 

トゲキッスの言葉に気まずげに視線を逸らすブラッキー。

ミミロップがニヤニヤと笑っているがその横に居るサマヨールは立ったまま寝てるんじゃないのか…?大丈夫かアイツ…。

 

「キッスさん!!」

「な、なんですか?」

「日曜日の朝っぱらからボランティア活動でゴミ拾いなんて枯れてますわ!!」

「枯れ…?」

 

サーナイトに詰め寄られたトゲキッスは首を傾げた。

 

「若い殿方がなんですの!!もっとブイブイ言わせるべきですわ!!」

「ぶいぶい…?イーブイですか?」

 

ブイブイって…。

サーナイト、お前…年いくつだ。

 

「これだから今時の男性は!!!草食系ですわね!!」

「テメェも男だろーが!!あとワタシたち種族的にみんな草食系だボケ!!」

 

ミミロップがサーナイトを怒鳴りつける。

オレ、雑食よ。と良い顔で発言したブラッキーはエーフィに本気で殴られていた。

 

「皆さん、喧嘩しないでください~」

「原因はキッスさんですのよ!!」

「お、俺ですか?」

「ワクワクドキドキしながら尾行したのに…!!まさかゴミ拾いしている様子を観察するだけに終わるなんて…!!」

「尾行…?」

「アハンウフンな展開を期待…っ」

「黙れカマ野郎!!!」

「なっ!?ミミローさん!!言うに事書いてカマ野郎なんて酷いですわ!!結局、男じゃないですの!!嫌ですわ!!」

「男だろーがァアアア!!!」

「お、お二人とも喧嘩は駄目ですってばー!!」

 

睨みあうミミロップとサーナイト、その二人を止めようとするトゲキッス。

こんな公衆の面前で何やってるんだコイツらは…。

 

「いい加減にしろ!!」

「「…!!!」」

 

声を張り上げればミミロップとサーナイトがこちらへと視線をやった。

 

「サナ、トゲキッスが普段なにをしてようとトゲキッスの勝手だ。放っておけ!!それにミミロー、お前は人を侮辱する言葉を控えろ、少々度が過ぎるぞ!!」

「「すみません…」」

 

これでなんとか納まったな、と思ったのもつかの間…。

 

「でもやっぱり枯れてますわ!!」

「しつけぇ!!!」

「休日に色事の一つや二つ起こさない男は枯れてますわ!!」

「じゃあ、お前なんかしてんのかよ…」

「ワタクシ、清純派な女ですし」

「はぁあああああ!?まさかの清純派気取りで女発言!?」

「乙女の象徴ですもの」

「オスじゃん!!!!」

 

もう駄目だ、こいつらどうにかしてくれ。とエーフィの方に視線をやれば「嫌です!」とまだ言葉を発していないのに断られた。

 

「キッスさんはどう思うんですの!?」

「えーっと、色事のことですか?」

「そう!!休日にやることと言ったらもうね!!ですわよね!!」

 

なにが?

 

「んー…そうですね…、えっと…、一生を共に過ごして行く人が出来たら…そういう休日があるのも素敵ですね」

「健全…!!!」

 

いやぁああああ!!!と悲鳴をあげるサーナイトを見て首を傾げるトゲキッス。

本当にトゲキッスは良い子に育ったな…。

 

「はあ…健全で真面目なキッスさん…それに比べて…なんですの!!!」

「今度はなんだよ…」

「仕事仕事仕事、休みにデートとか言いながらその辺で散歩か買い物!!とことん手抜き!!!しかも夜は一人部屋で即就寝!!!なんですの!!!枯れ切ってますわ!!」

「…」

 

チラリ、とミミロップの視線がこちらに向いた。

ええぇぇぇぇぇー……。

 

「ミロさんが可哀想ですわ!!!」

「え、俺様!?なんで!?」

「純真無垢な可愛いお馬鹿さんを適当にあしらって相手にしてあげないなんて!!シンヤ、男じゃないですわね…。絶対に可笑しいですわ…、溜まるもん何処に溜まってるんですの?」

「?????」

「………」

「サ、サナさん…!!ここ公衆の場ですよ…!!」

 

絶対に可笑しい!!見張ってるのに!!と喚くサーナイト。

そのサーナイトの口を塞いだミミロップがそのままサーナイトを絞め落とした。いつの間にそんな技を…!!

 

「ふぅ…、もう帰ろうぜ…」

「…そうだな」

「俺様、なんで可哀想…?」

 

*

 

その日は結局、全員おやつ抜き。

疲れたと言いながらさっさと眠る為、部屋へと戻るシンヤを見送ったトゲキッスは「おやすみなさい」と小さく声をかけた。

パタンと閉じたリビングの扉を見ながらトゲキッスは呟く。

 

「シンヤの気が休まる時ってあるんですかねぇ…」

 

今日も休日のはずなのに大変だったろうなぁと思いながら何気なく呟いた一言。

その言葉に「確かに…」とミミロップが言葉を返した。

 

「基本、誰かさんが纏わりついてるしな」

 

リンゴジュースを飲んでいたミロカロスに視線が集まる。

ゴクン、とジュースを飲み込んだミロカロスは大きな目を更に大きくして首を傾げた。

 

「?」

「本当に…、普段何をやってるんですの!?」

「仕事だろ」

「違いますわ!!ミロさんとシンヤがナニをやってるのか気になるんですの!!」

「そっちかよ!!」

「(恋人同士の情事に関してはそっとしておいた方が良いんじゃないかな…)」

 

いつも盛りあがる話題はシンヤについて、今日も一日賑やかだったなと思いながらトゲキッスは小さく欠伸を漏らした。

 

「ミロ、ぶっちゃけどうなの?」

「ぶっちゃけ?」

「ヤッた?」

「ヤッター?ワーイワーイ?」

「いや、それ違うから」

 

両手をあげたミロカロスを見てブラッキーが溜息を吐いた。

 

「もうマジ分からーん!!」

「誰相手に質問してるんですか、当然でしょう…」

「そうだよなー…。もう寝よ」

「賛成です」

 

リビングを出て二階へと向かうブラッキーとエーフィ、それを見てサーナイトも「これ以上夜更かしすると肌が荒れますわ!!」と少し不機嫌になりながらリビングを出て行った。

 

「ワタシも疲れたから寝よ、おやすみー」

「おやすみなさい」

 

ヒラリと手を振って部屋を出て行ったミミロップを見送ってからトゲキッスはテーブルに並ぶカップを片付け始める。

カチャンカチャン、と音を立てながら片付けているとサマヨールが言った。

 

「…自分は、聞き方が悪いと思う…」

「え?」

「ミロは…自分の知っている知識の中でしか答えを返せないのだから…。質問の仕方に問題があったな…」

「???」

 

サマヨールの言葉にミロカロスが首を傾げた。

首を傾げるミロカロスに視線をやったサマヨールは聞いた。

 

「主と交尾したか…?」

「…ッ~~~~~!!!」

 

ぼっと顔を真っ赤にしたミロカロスがその場で視線を泳がせる。

 

「(…む、どっちか分からない…)」

「(この反応って、どっちなんだろう…)」

「キッスさーん、お皿洗ってしまいますね!!」

「あ、うん、お願いするよ」

 

 

【24時間の内の秘め事】

 

 

欠伸を漏らしながらリビングへと入って来たこの家の主にトゲキッスは挨拶をする。

 

「シンヤ、おはようございます」

「ああ、おはよう」

「コーヒー、どうぞ」

「ありがとう」

 

コーヒーを啜りながら新聞を開くシンヤを見てからトゲキッスは窓の外へと視線をやった。

良い天気ですねぇ、と呟けば適当ながらも「ああ」と返事が返って来る。

 

「シンヤ…」

「…」

「ミロさんと交尾しました?」

「ぶっ!!!!」

「わわわわわ!?」

 

げほごほと咽るシンヤはコーヒー染めになった新聞を床に叩きつけてトゲキッスを睨みつけた。

 

「急になんだっ!!!」

「(…あ)」

 

そのシンヤの顔は真っ赤だった。

 

「(幸せな愛を感じる…)」

 

 

 

………、俺の1日は今日もきっと賑やか

 

 

「トゲキッスに変なこと吹きこんだのは誰だー!!!!」

「わー!?何ー!?」

「シンヤが朝からキレてるんですけどー!?」

 

*

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