一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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サマヨール


触れて伝わる

長い包帯を自分の体に巻いていると背後に誰かが立った。

影になり暗くなった手元を見てから後ろを振り返ると主が自分を見下ろして居た…。

 

「サマヨール」

「何だ主…?」

「手伝ってやろうか?」

「…仕事は良いのか…?」

「今さっき片付いて手が空いたんだ」

 

今日は早く片付いた、と嬉しそうな主。

自分に構ってくれるのは素直に嬉しいが…、自分よりも優先して構うべき対象は他に居るはずだ…。

 

「ミロカロスは…?」

「居ないみたいだが、それがなんだ?」

 

また間の悪いというか…、運が無いというか…。

溜息が出そうになるのを飲み込めば主が自分の前に座った。そして、自分の手から包帯を取り慣れた手付きで包帯を巻いていく。

まあ…他人にやって貰った方が巻き易いことは確かだ…。

ここは主の厚意に甘えよう…。

 

「…」

「…」

 

共に無言、黙々と包帯を巻く主の手元を見ていると主が言った。

 

「お前、本当に白いな」

「…」

「むしろ蒼白いな」

「…まあ…日に当たる機会が少ないから…」

 

焼ける要素は微塵もない。

というか、包帯で覆われていて焼けることがない…。

 

「夜行性のゴーストタイプが日焼けをしようとしたらどうなるんだ、溶けるのか?」

「溶けはしないと思う…」

「…ただれるとか?」

「いや…主と同じような感じになると思うが…」

「赤くなるだけか、つまらんな…」

 

また黙って包帯を巻き始めた主。

一瞬、ゴーストタイプに何を期待したのか…。

日に焼けて悶え苦しむゴーストタイプでも見たかったのだろうか…、主の思考は本当にたまに突拍子もない所に行くと思う…。

ぐるぐると巻かれていく包帯、顔に巻かれていく包帯と主の顔を見てから目を閉じる。

 

「…サマヨール」

「…」

 

包帯を口に巻いている途中で話かけて来るのか…、別に構わないが…。

 

「お前の右目は何処に行ったんだ」

「生まれた時から無いと思うが…」

「どのサマヨールにも無いのか?」

「無いとは思うが…、他に人の姿になれるサマヨールには出会ったことがないので絶対とは言えないかもしれない…」

「ちょっとこの右目開けてくれ」

「主…開かない…」

「頑張れば開くかもしれない」

「主…頑張っても開かない…」

 

不自然に縫われたそこは人型になる時に勝手に出来る。

ポケモンの時は右目、左目の概念なんて無いが…。人の姿には右目と左目があるのが普通だから一応両方あるのだろう…。

この人の姿になるのも不思議なものだ…。特に意識して考えたことはないが…、何故、人の姿になるのか…。

 

「主…」

「なんだ」

「自分たちポケモンは何故、人の姿になるのだろうか…」

「そんなの私が聞きたい。勝手に人の姿になったのはお前たちだろうが」

「…」

 

人の姿になったのはもう随分と前だ…。

あの時、人の姿になったのは…なろうと思ったのは…。

 

「巻き終わったぞ」

「…ありがとう、主…」

 

綺麗に巻けたと満足気な主を見て小さく笑みを浮かべた。

立ち上がった主の手を自分の手で掴むと主が少し驚いたような表情を浮かべて自分を見下ろした…。

 

「…」

「サマヨール?」

「主の手と…同じだ…」

 

ぎゅ、と握った主の手。

主の手ほどの体温は持ち合わせていないが、器用に包帯を巻けるこの手は同じ…。

 

「きっと…」

 

 

【触れて伝わる】

 

 

「同じである方が都合が良かったのだと思う…」

 

愛おしく尊い貴方と…。

違わぬ姿がきっと…欲しくて堪らなくなったのだ…。

 

*

 

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