一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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スイクン


笑うアナタは花のよう

買い物帰りに冷たい風が吹いた。

強い風に目を瞑り、ばさばさと暴れる自分の髪をかきあげる。

 

「シンヤ…」

「お」

 

犯人はお前か。

突然、目の前に現れたスイクン。

人の姿なので傍から見れば美人な女にしか見えないが、残念なことに正真正銘の男だ。

以前にあの美しさは罪だとかどうとかヤマトが叫んでいた気がする。

 

「今日はどうした」

「特に…用事はないよ」

「あんまり人の多いところに行くとまたライコウに怒られるぞ」

「…それは嫌だな…」

 

苦笑いを零すスイクン。

ここの過保護は相変わらずらしい。

買い物袋片手にスイクンと並んで家への帰路を歩く。

隣を歩いていたスイクンがカサカサと揺れる買い物袋を見て首を傾げた。

 

「何を買ったの…?」

「大したものじゃないぞ、ドレッシングと…安売りしてた砂糖と…」

 

袋の中を見せながら答えればスイクンはうんうんと相槌を打った。

今日の夕食は何にしようか、なんて喋りながら歩いているとすれ違った年配の女性にクスと笑われた。

何事かと私とスイクンは年配の女性へ視線をやる。

 

「羨ましいわ、仲の良い素敵なご夫婦ね」

「「…」」

 

小さく会釈をして歩いて行ってしまった女性を見送ってスイクンと顔を見合わせる。

買い物帰りで夕食の話なんてしてたもんだから…。

お互いに暫く固まっていたがスイクンが苦笑いを浮かべたので私も苦笑いを返す。

男同士で夫婦に見られるとは…。

というか、私はミロカロスと歩いてて夫婦に見られたことはないがな…。

あれが歩きながら子供みたいにハシャいでるからだろうか…。

 

「シンヤ…私、そんなに女に見えるのか…?」

「今更な質問だな…」

「見える、のか…」

 

少し肩を落としたスイクン。

女顔を気にしていたとは意外だ。

そういうことに関心が無さそうなんだけどな…。

 

「どの辺が見える…?」

「どの辺!?」

「うん」

 

いや、むしろ男である要素を探す方が大変というかなんというか…。

女顔を気にしてるというなら全体的に女っぽいとは言い難いしな…、どう言ったら良いんだ…。

 

「そう、だな…」

「うん」

 

じー…っと、スイクンの視線を横から感じる。

熱い視線が刺さるようなこの感覚は、居心地が悪い!!

 

「どの辺が…と言うと…」

「うん」

 

ど、どの辺って言うと…。

だらだらと冷や汗が流れ出した。上手い説明の仕方が分からん、もう全てが女みたいだと言ってやって良いのか…!?

いや、さすがに駄目だろ。そこは私でも気を遣うことくらいするべきだろ私…!!

でも、気を遣った事が無いに等しいので気の利いた言葉が出て来ない…。

頭を抱えたくなった時、

突然、私たちの前に男が現れた。

 

「お前!!」

「スイクン…!!テメェは懲りずにこんな所で何してやがんだぁああああ!!!」

「ライコウ…!!」

 

人の姿ではあるがバチバチとライコウの体から放電しているのが分かる。触ったら感電しそうだ。

凄く怒ってるライコウ。そのライコウの後ろからエンテイが現れて私に向かって小さく会釈をしてくれた。

おお、パパだ。と思ったが口には出さなかった。

 

「この人間がぁああ、今度こそ消し炭にしてやるぜぇえええ!!」

「落ち付け、ライコウ」

 

ライコウの肩にエンテイが手を置いた。

命を狙われている状況だが、ナイスだライコウ!!

 

「ライコウ、良い所に来た!!」

「あぁ!?んだよっ、近寄んじゃねぇよ!!」

 

ライコウの傍へと駆け寄って、エンテイが掴んだ反対側の肩に私も手を置いた。

 

「スイクンの何処が女っぽいと思う?」

「はぁあ!?」

 

エンテイがキョトンとしたように私を見たが、その視線を無視して再度「どの辺が女に見えると思う?」と問うてみた。

その私の質問を聞いてスイクンも思い出したようにライコウへと聞く。

 

「女に間違えられた、私のどの辺が女に見える…?」

「っええぇ!?」

 

私はこの場から逃げることに成功した。

スイクンの視線は一心にライコウに向かっている。すまんライコウ、ありがとうライコウ!!

 

「ど、どの辺って…なんだよ、女に間違えられたからってなんだっつーんだよ!!」

「私は男だから、間違えられるのは悲しい」

「…ぇぇぇ…、気にしてたのかよぉ…」

 

ぼそり、と小さい声でライコウが呟いた。

スイクンは首を傾げるだけだったので聞こえなかったのかもしれないが、ライコウたちもスイクンが女顔を気にしてるのを知らなかったのか…。

口籠るライコウをスイクンが見つめる。

そのスイクンの視線から逃れようとライコウは視線をさ迷わせるが、当然、逃げれない。

 

「ねえ」

「うぅ…、えーっとだな…、その」

「うん」

「ぁー…、人間!!じゃなくて、シンヤ!!お前はどう思う!!」

 

な ん だ と !?

にっこりと初めて見た笑顔で声を掛けられた私は当然驚いた。

 

「お前!!急に親しげに話しかけて来るな!!!」

「るせぇ!!助けろよ!!つーか、お前!!オレに押し付けただろぉ!!!」

「なんのことだか分からんな!!」

「とぼけんじゃねぇよ!!」

 

私の腕を掴むライコウの手を振り払おうと暴れてみるがライコウは離れない。

ガッ、と肩に腕を回されたかと思うとボソリと小さな声で話し掛けられた。

 

「女顔を気にしてるスイクンになんて言や良いんだよ…っ」

「私だって困ってたんだ!!お前、仲間なんだから気の利いた言葉くらい掛けてやれ…!!」

「そう言うならお前なんて医者じゃねぇか!!悩んでるポケモンの相談乗ってやれよ…!!」

「カウンセリングは苦手なんだ…!!というか、私が他人に気を遣える人間だと思うな!!」

「偉そうに何言ってんだお前!?」

 

ライコウと言い争っているとちょんと背中を突かれた。

私とライコウの肩が揃って跳ねる。

 

「嬉しい…」

「「…は?」」

「ライコウとシンヤがこんなに仲良しだったなんて、私知らなかった…嬉しい」

「「はは、は…」」

 

ふにゃりと柔らかく笑ったスイクンに私とライコウは引き攣った笑みを返す。

そういう笑い方もまた女に見えてるぞ、とは言えないが…。

 

「嬉しい、今度からみんなでもっと仲良く出来るな…」

「そ、そうだな!!オレも今度からスイクンと一緒に遊びに来るかなー!!」

「ぇ…人間嫌いだろお前…、大丈夫か…?」

「るせぇ!!乗れよ!!今の話題を全力で変えろ!!」

 

ライコウがボソリと発した言葉に私もピンと来て慌ててスイクンに相槌を返す。

私の肩に腕を回すライコウを見てスイクンはもの凄く嬉しそうだ…。

良いぞ、このままさっきの質問を全て忘れてしまえ!!

私とライコウの気持ちは一緒だったに違いない。

 

「じゃあ、今日はみんなでシンヤの家でご飯食べたい。良い?」

「勿論だ」

「ぅげ、人間の飯とか…」

「せっかくだから、ライコウの好きな物作ってやるか!!」

 

表情の崩れたライコウのわき腹を肘で突く。

 

「っ…、ワーイ、やったぜー」

 

引き攣りながらも笑顔を浮かべたライコウ。

人間嫌いのくせにスイクンの為にわりと頑張るなコイツ…。

 

「今日は凄く、良い日。嬉しい…!」

「良かったな」

「いやぁ、オレもウレシイナー…」

 

棒読みだぞ…。

 

 

【笑うアナタは花のよう】

 

 

よし帰ろう。さあ帰ろう!!

何処かぐったりしたライコウの腕を掴み、買い物袋をもう片手に持って家へと帰る為に足を踏み出した。

その時にエンテイが言葉を発した。

 

「私なりに考えてみたが、スイクン…お前は全体的に女みたいだな…」

「「!?」」

「全体、的…」

「というか、男に見えないな」

「そっか…」

 

肩を落としたスイクンを見てライコウが声にならない悲鳴をあげていた。

あからさまにガッカリした様子のスイクン。ライコウがエンテイに掴みかかったのを見て私は慌ててスイクンに声を掛けた。

 

「女みたいだって言うのは否定出来ないが、私はそういうスイクンが好きだぞ!!」

「…ホント?」

「ああ!!」

「そっか、シンヤが好きって言ってくれるなら私は女みたいでも良いかな…うん」

 

にこりと笑ったスイクンを見て胸を撫で下ろした。

なんだ、最初から素直に言っておけば良かったんじゃないか…無駄な労力と気を遣ってしまった…。

 

「…シンヤ…、よくやった…!!」

「お互いにな…!!」

 

ライコウと握手を交わした。

そして、後で二人でエンテイに殴り掛かりに行こうと思う。

 

*

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