一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ミロカロス


チャッカマン

ブラッキーと並んでテレビを見ていたミロカロスが立ち上がった。

立ち上がったミロカロスを見上げたブラッキーは驚きながら、まだ途中のテレビとミロカロスを交互に見やる。

 

「これだー!!

「え?ちょ、え?まだテレビ終わってないけど…え?ミロちゃーん?」

 

部屋を出て行ったミロカロスを見送ったブラッキーは呆然としつつも視線をテレビに戻す。

 

<嘘よっ、いつも都合の良い事ばっかり言って!!>

<嘘じゃないさ!>

<もう貴方なんて信じられない!!>

―バチン!!

 

放送されているドラマ。

男が女に平手打ちをくらったのを見てブラッキーはアハハと笑った。

 

*

 

部屋を飛び出したミロカロスは勢いよくシンヤの部屋の扉を開けた。

バーン!と勢いよく開けられた扉に驚いたシンヤが慌てて振り返る。

 

「な、なんだ…!!」

 

部屋へと入って来たミロカロスがそのままシンヤの隣まで移動する。

異様な雰囲気にシンヤは黙ったままミロカロスの様子を窺った…。

 

「シンヤ!!」

「…」

「仕事と私、どっちが大切なのよ!!」

「は!?」

 

…私?なの、よ?

ミロカロスらしくない言葉遣いに驚くシンヤ、だが少し考えた後に「ああ」と小さく言葉を漏らす。

コイツ、また変なテレビ見たな…と。

呆れた表情を浮かべるシンヤに対してミロカロスの表情は期待が籠もっている。

どうしよう…と考えるシンヤはとりあえずの言葉を返す事にした。

 

「勿論…お前の方が大切だぞ?」

「わ!!」

 

えへへ、と喜ぶミロカロスを見てシンヤも苦笑いを返す。

 

「嬉しいか」

「嬉しい~」

「じゃあ、出てけ。これ終わらせたいから」

 

ヒラヒラと手で追い払うシンヤ。

視線を再び書類に戻してしまったので、ミロカロスの眉間に皺が寄る。

 

「俺様の方が大切って言った!」

「大切なお前の為に仕事してるんだろ…」

「え~…、なんか違う!!ダメ!!」

「後で構ってやるから…」

「ダメ!!仕事ダメ!!」

 

ガクガクと揺さぶられたシンヤは眉間に皺を寄せる。

満足な返事を返すだけじゃダメだったのか…。

ペンを置いてミロカロスに向き直ればミロカロスは笑みを浮かべる。

 

「何が望みだ」

「さっきテレビで見たやつ!!」

「私は見てないから分からん!!」

「ヒトミさん、キミの方が大切に決まってるじゃないか!!ぎゅ~!!!って」

「…」

 

また、ありきたりなクソドラマをブラッキーと見てたんだな。とシンヤは溜息を吐く。

見てないけど、絶対にそんな事言う男はヒトミに振られるぞ。とは言わずにシンヤはミロカロスをぎゅーっと抱きしめた。

 

「…」

「…」

「よし、もう良いだろう」

「え~…なんかダメ!!!」

「何がだ!!」

「タカオがヒトミを抱きしめた時はもっとなんかブワワ!!ってなって素敵な音楽が流れた」

「テレビだからな」

「タカオみたいにやって!!」

「タカオじゃないから無理だ」

 

それに誰だタカオ。

仕事を片付けてしまいたいシンヤはチラリと書類に視線をやる。

 

「なんか凄かったの!!」

「お前そのテレビ全部見たのか…?」

「ううん、ブワワ!!ってなったからシンヤにやってもらおうと思って」

 

無茶振りも大概にしろこの野郎。とシンヤの怒りゲージがじわじわと上がっていく。

いまだにタカオがタカオがと喚くミロカロスを見てシンヤはグッと奥歯を噛み締めた。

 

「(ダメだ…!!ここで怒ったらコイツは泣く!!泣いたら余計に鬱陶しい!!ここは我慢だ!!)」

 

深呼吸をして自分を落ち着かせたシンヤはミロカロスに向き直る。

 

「ミロカロス、私はタカオじゃないからタカオみたいには出来ないんだ…」

「…でも…」

「ミロカロスはそんなに私よりタカオが良いのか?」

「え!?違うよ!!ヤダよ!!タカオやだ!!だって浮気してたし!!」

 

そんな男の真似させるなよ、と思いつつもシンヤはミロカロスにニッコリと頬笑み掛ける。

 

「じゃあ、もう良いな?」

「…うん」

 

よっしゃ!!と内心でガッツポーズをしつつミロカロスの頭を撫でて再び書類へと視線を戻す。

ペンを手に持ったところでミロカロスが「はあ」と大きな溜息を吐いた。

さすがにそれにカチンと来たシンヤはミロカロスを睨む。

 

「俺様、もっとシンヤと一緒に居たい…」

 

ぐ、とシンヤの言葉が詰まる。

落ち込んだ様子のミロカロスを見てシンヤの中に少しばかりの罪悪感…。

 

「シンヤ、毎日仕事してるし…」

「それは、仕方ないだろ…」

「俺様のこと邪魔って思ってる…」

 

思ってない、とは言い切れない。

気まずさにシンヤはペンを置いて再びミロカロスの方へと向き直る。

コホン、と咳払いをすれば俯いていたミロカロスが顔をあげた。

その目には今にも零れそうな涙が溜まっていて。さすがのシンヤも胸が痛んだ。

 

「わ、悪かった…」

「…」

 

そっぽを向いたミロカロスが部屋の隅っこに座り込む。

ああ、もう鬱陶しい体勢に入りやがって…とは思いつつもシンヤはミロカロスの傍へと移動して顔を覗き込む。

 

「ミロカロス…」

「一緒に居たいだけだもん…」

「分かってる、ごめんな?私が悪かったから…」

「シンヤに仕事してほしくない。でも、困らせるのもヤだ…」

「…」

「どうしたら良いか、分かん、ない…ッ」

 

ぼろぼろっとミロカロスの目から涙が零れ落ちた。

それにぎょっとしたシンヤは慌ててミロカロスの手を握る。

 

「…ミロ、」

「シンヤー…」

 

抱きついて来たミロカロスの頭を撫でて頬を伝う涙に唇を寄せる。

恥ずかしげに身を捩ったミロカロスを見て、そのままシンヤはミロカロスの口を自分の口で塞いだ。

 

「ん、」

「ミロカロス…」

 

は、と小さく息を吐いたミロカロスにもう一度キスをしようとシンヤはミロカロスの顔を覗き込む。

頬を赤くするミロカロスにキスをしてからミロカロスの首筋にちゅ、とわざと音を立ててキスをする。

 

「…~ッ、シンヤ…」

「…」

 

がぶ、と鎖骨に甘く噛みついたところでミロカロスがシンヤの頭を押さえ付けた。

 

「ッ…!!」

 

ガクンと首を下に向けられたシンヤは「オイ…」と怒気の籠もった声でミロカロスに返事を求める。

 

「どうしようシンヤ!!」

「何がだ!!」

「シンヤに頼まれてた洗濯物、洗濯機に入れっ放しだ!!」

「はぁ!?」

 

そんなもん、もう一回洗濯したら良いだろうが!!と言い返す前にミロカロスが部屋を飛び出した。

 

「うわああああ!!また言われた事も出来ない馬鹿だってミミロップに怒られるぅうう!!」

「…ッ」

 

バタバタと足音が遠ざかって行った。

どうにも出来ない気持ちが湧き上がって来たシンヤだったが、それをグッと飲み込んで椅子に座り直しペンを握った。

逆に考えろ…!これで心置きなく仕事に専念出来る…!!

 

「……」

 

くしゃ、と左手に力が入り書類に皺が寄る。

 

「………」

 

ミシ、と右手に力が入りペンが音を立てた。

 

「…………ッ」

 

クソが…!!と呟いた独り言は誰にも聞かれる事は無かった。

 

 

【チャッカマン】

 

 

「はぁ…」

 

リビングでコーヒーを飲んでいるシンヤを見掛けたミミロップが首を傾げながら近付いて来た。

 

「今日中に片付けたい仕事があるから部屋に籠もるって…言ってなかったっけ?」

「今日はもう無理だ」

「集中力切れたの?珍しいじゃん」

 

コーヒーを啜りつつシンヤが視線を庭にやれば洗濯物を干しているミロカロスが居た。

結局、もう一回洗濯したんだろうな…と思いつつシンヤはぐっとコーヒーを飲み干した。

 

「生殺しはさすがに…私もタカオになりたくなる…」

「は?生殺しって何が?っていうか…タカオって誰?」

 

*

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