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僕の名前はヤマト。
誰が何と言おうと一流のポケモンレンジャーだ。
相棒は色違いのユキワラシ。親友であるシンヤが幼少の頃にゲットした子なんだけど駄々を捏ねて譲って貰った。同僚には明かせない秘密である。
そして、現在の僕はといえば、
ミッションが無くて暇なのでポケモンセンターでゴロゴロしてたりする。どうしよう、体が鈍っちゃうね…。
「暇だー」
「ユキー」
なんでミッションが無いか、それを考えると2秒と掛からず答えは出る。
上に「シンヤは現在、体調不良などが重なり休養中です」って言ったら「じゃあ、シンヤくんが復帰するまで待機してろ」って言われちゃった。
僕、いつシンヤとセットになったのさ!!
でも、シンヤもシンヤだ!!
何が「ちょっと神になったり、ミロカロスが餓死寸前になったりした上にめんどくさいのに呼ばれて出掛けるから暫く仕事は休む…」だよ!!
ちょっと神になったりってなに!?ミロカロス、なんで餓死寸前なの!!!めんどくさいのってなに!!僕よりめんどくさい存在が居るって言うのか!!…あ、ここは良いや。
本当にもう!!相変わらず行動がわけわかんないよ!!!
「もう暇過ぎるから、散歩行こう」
「ユキ」
「野生のポケモンと戯れよう」
よいしょ、とユキワラシを抱きかかえて部屋を出る。
野生ポケモンと戯れるとか言っても基本寄って来ないけどね、野生ポケモンだから。キャプチャーしないと戯れられないからね。
それなのになんでシンヤにはあんなに野生ポケモンが群がるのやら…、普通は野生ポケモンの縄張りに足を踏み入れた時点でボッコボコにされるのに…。
甘いミツでも塗りたくってんのかな…、毎日、甘いミツ風呂とかに入って体にミツ染み込ませてるとか…?
うーん、こうして考えるとシンヤは甘い匂いがしてたかもしれないな。ありえるんじゃないのか…?
…ちょっと、やってみようかな…、どれぐらいミツ買えば良いんだろう。財布の中身スッカラカンになる気がするけど野生ポケモンに友好的に囲まれるなら挑戦してみてもいいかもしれない…。
財布の中身を思い浮かべながらエントランスへとやって来るとジョーイさんに呼び止められた。
「ヤマトさん!」
「はい?」
「丁度良かった、今から呼びに行こうとしてたんです」
「なんですか?」
「お電話ですよ」
シンヤから!?
よっしゃ、ミッションに行けるぜー!!と意気込んで電話に出たらシンヤじゃありませんでした。
「ああ…なんだ…」
<「あからさまにガッカリした顔しないでくれるか…?」>
「いや、ごめん…なんか期待した分ガッカリ感がハンパなかった…」
<「何の期待をしてたのかはしらないけど…、今フリーだろ?手が空いてるんならオレのミッションに協力してくれよ」>
「え!!ミッション!?行く行く!!もう暇過ぎて頭から甘いミツ被って草むらに突っ込もうと思ってた!!」
<「どういう状況!?」>
画面の向こうでオロオロする同僚にテヘと笑い返す。
いやぁ、危うく血迷ってジュンサーさんが駆け付ける事態を起こしかねなかった。危ない危ない反省しないと。
ポケモンレンジャーが変質者扱いとかクビが飛んじゃうよね。
<「ほら、前にサーカスのピエロやったって言ってたろ?」>
「ああ、うん、それが?」
<「一緒にピエロやってくれ!!」>
「えぇー…」
<「水中ポケモンショー、マリーナ一座のピエロだぜ?」>
「え!!水タイプのポケモンに囲まれたお仕事!?素晴らしい!!」
<「(アンタならこれで一発だと思ってたよ…)」>
「やりたーい!!」
<「詳しい内容は会って話すぜ、ヤマト大喜びのミッションなのは間違いないからな!!そんじゃ、すぐに来てくれよ!!」>
「イェッサー!!」
これは久しぶりにワクワクのミッションだ!!
早速、準備して出掛けないと!!
「よし、行くよユキワラシ!!」
「ユキー!!」
「可愛いポケモン達が僕を待ってるー!!」
「ユ、ユキー…」
*
マリーナ一座のトレーラー前でヤマトと同僚のレンジャー。ジャック・ウォーカーことジャッキーは顔を合わせた。
いよっ、と片手をあげたジャッキーにユキワラシを肩に乗せたヤマトは手をあげて返す。
「ジャッキー!久しぶりー!!」
「久しぶり、オレの苦労話を聞かせてやりたいところだけど本題が先だ」
「ミッション内容だよね」
「ああ、今回のオレのミッションはコイツさ」
ジャッキーがヤマトに見せたソレは黒主体の筒状の物体。
首を傾げたヤマトを見てジャッキーは笑いながらカチと音を鳴らしてボタンを切り替えた。筒状の物体の中にはタマゴが…。
「これって!!」
「マナフィのタマゴだ。今回のオレのミッションはこのタマゴを孵化させてマナフィが無事に海底神殿アクーシャまで行くのを見届けること…」
「マナフィ、可愛いよね~」
「アンタはいつもそれだよな…」
ガクンと肩を落としたジャッキーにヤマトはごめんごめんと笑みを返す。
「水の民の末裔であるマリーナ一座に協力して貰って、タマゴを孵化させようと思ってる。しかも面倒なことにマナフィのタマゴはあのファントム一味に狙われてるんだ」
「ファントム一味か、また面倒な男が…」
「タマゴを孵化させるってなると、マナフィの面倒を見るのも兼ねてくるだろ?だから協力してもらおうと思って」
「愛しいポケモンの為なら協力は惜しまないよ!!」
「ははは…、まあ本当の事を言うとヤマトがシンヤさんを連れて来てくれるのを期待してたんだけど」
ジャッキーの言葉に今度はヤマトがガクンと肩を落とした。
「まさか不在だとは…」
「もぉぉぉ…どいつもこいつもシンヤのことばっかり…!!僕一人で十分だって!!」
「いや、別にヤマトの力量を疑ってるわけじゃないぜ?」
「でも、どっちかっていうとシンヤが良いんでしょ」
「まあ…。シンヤさん、万能だし?」
「ちょーっと…バトルが強くて、ブリーダー知識あって、異様にポケモンに懐かれるポケモンドクターなだけじゃん!!」
「十分過ぎるな」
「そうだね」
言葉にして言ってみると今更ながら僕の幼馴染は万能だった、とヤマトはうんうんと頷いた。
おまけに有名人で何処に言っても顔が利くとか…。
「僕の幼馴染、便利だぁー」
「……」
ジャッキーからじとっとした視線を向けられてヤマトは冷や汗を流す。
慌てて視線を逸らしてアハハと笑ってみせた。
「とりあえず、今回のミッション。よろしく頼むぜ」
「うん、オッケー!!」
ジャッキーからマナフィのタマゴを受け取ったヤマトはタマゴを空にかざしてニッコリと笑った。
「元気に生まれておいでー」
タマゴに声を掛けるヤマトを見てジャッキーは小さく笑みを浮かべた。
ポケモンレンジャーとしてはアクが強いヤマト。ジャッキーより年上であるがそのアクの強さで年下のジャッキーと立場上、同じ位置に留まっている。
真面目、人柄良し、ポケモンに向ける愛情も人並み外れているがその人並み外れている愛情のせいで昇級出来ないポケモンレンジャー。
ポケモンが関わると手段を選ばない問題児、なんて上から言われてるのを本人は知らないのだろう……。
「(止めてくれるシンヤさんが居ないのが不安要素だけど…ま、大丈夫だろう)」
「マナフィ可愛いよね~、あのツヤツヤのボディ…手触りどんなのだろう…」
「……」
「早く孵らないかな~!!」
「(…やっぱり不安かもしれない)」
*
「シンヤ、アンタにしか頼めないんだってマジでー…」
「ふ・ざ・け・る・な・!!」
「面倒なのは百も承知だけど、おれみたいなのに他に知り合い居ると思ってんの?」
「身内事は自分達でなんとかしろ」
「別に身内じゃないけどー…」
「私は行かない、めんどくさい!!」
「だから面倒なのは百も承知ー…って言ったじゃん。もう無理やり連れてっても良いけど、途中で暴れられてもなー…」
「今、私は色々と忙しいんだ…。どいつもこいつも何かある度に私のところに来るのはやめてくれ…」
「わりと面倒なだけってわけじゃないと思うけど…、そこのやつれて弱ってるミロカロス連れてくと良いよ」
「……」
「気分転換だと思って、おれの話に乗ってよ」
「…はあ、」
*