水中ポケモンショーに向けてピエロ特訓中……。
なんて言うと遊んでるみたいだけど、ちゃんとしたミッション中の僕。ヤマトは現在、ウパー達と戯れてます。
遊んでてごめん。
「ウパー」
「ウパッ」
「かーわーいーいー!!」
ウパーの可愛さに身悶えているとゲシと背中を蹴られた。
振り返ればピエロ姿のジャッキーが僕を睨んでいる。
遊んでてごめん。
「迷子になった子供達と会ったらしい、一緒に行動することになるみたいだから顔だけでも会わせとくだろ?」
「こんな広野で迷子かー、大変だっただろうねぇ…」
苦笑いを浮かべながらジャッキーが指差した先を見れば見覚えのある子供達の姿。
くるり、とジャッキーの方へと視線を戻して僕は首を横に振った。
「知ってる子達…」
「うわ、めんどくせぇ…!!」
まさかのサトシくん達だった。ピカチュウが相変わらず可愛いけど、ここでサトシくん達と会うのはマズイ。
ポケモンレンジャーだって知ってるんだからこんな所でピエロやってたらミッション中だってすぐにバレるよ!!
はい、と渡されたピエロのお面を付けてからサトシくん達の様子を見る。
「シンヤが居なくて正解だったかも…」
「すぐにバレるもんな」
「うん」
*
マリーナ一座の水中ポケモンショーを無事に済ませて、僕の存在もサトシくん達にバレることなくミッションは順調。
次の街までサトシくん達も一緒に行くことになったのでそれまで気は抜けないけど、ジャッキーがなるべくサトシくん達の周りをウロウロしてくれてるおかげでサトシくん達の意識は僕の方に向いてはいない。
次の日の朝、ヒロミちゃん達がサトシくん達を連れて外で朝ご飯を食べることになった。
サトシくん達の前で面を取れない僕への配慮だろう。僕もマリーナ一座のポケモン達と一緒にゆっくり朝ご飯を食べることが出来た。
ジャッキーも外に行っちゃったし、マナフィのタマゴの様子だけ見て置こうかと立ち上がった時。
誰かの話し声が聞こえた。
「誰だ!!」
「ピ、ピエロニャ!!」
「早く逃げるわよ!!」
「おう!!」
うろたえる男の口から何処かで聞いたことのある可愛い声。そして逸早くトレーラーから飛び降りたニャースにマナフィのタマゴを持った女が続く。
「タマゴ…!!!」
ロケット団だった!!
ファントムばっかりに警戒してたけどまさかロケット団まで来るなんて、くっそ!!喋るニャース可愛いな!!!
「ニャースごめんね!!」
ユキワラシをボールから出して冷凍ビームの指示を出す。カチーンと凍ったニャースを見て男が悲鳴をあげた。
「ニャーが氷漬けニャー!!!」
「ムサシィイイ!!」
なーんか、可笑しなことになってる気がする…。
でも今はそれどころじゃない。
「タマゴを返せ!!」
「ユキィ!!」
「あ、あの色違いのユキワラシ…」
「嫌なことしか思い出さないニャ…」
顔を青褪めさせる男と女。
氷が解けたらしいニャースが「逃げるのよー!!」と女の声で叫んだ。
「待てー!!!」
「ひぃい!!アイツ、シンヤの知り合いのポケモンレンジャーだろぉおお!!!」
「シンヤが居たらヤバイニャー!!!コワいニャー!!」
「タマゴだけは絶対に死守すんのよコジロウ!!」
シンヤは不在だよコノヤロー!!
「ユキワラシ、あの女の人からタマゴを奪い返してこーい!!」
「ユキー!!」
ぶん、とユキワラシを女に向かって投げる。
背中にユキワラシの頭が直撃した女の手からタマゴが飛んだ。
それをキャッチで受け止めてユキワラシにもう一度「冷凍ビーム」の指示を出す。
「「「ぎゃああああ!!」」」
カチーンと凍ったロケット団。
このままニャースだけ貰ってジュンサーさんに突き出してやろうと思っていれば後方から電撃が飛んで来てロケット団は凍ったまま空の彼方へと消えて行った。
「あああ!!!タマゴが!!!」
ジャッキーの情けない声。
隣でサトシくんとピカチュウが慌てていたけど、そのジャッキーに「おーい」と声を掛けてマナフィのタマゴを見せてやる。
「…ぁ、良かった…!!」
「遅いよ、ジャッキー…」
「悪い」
っていうか、ロケット団を結局逃がしちゃったけど…、まあしょうがないか。
キョトンとしたサトシくん達と面越しだけど目が合った気がして僕は首をかしげて見せる。
「その、色違いのユキワラシ…」
あ。
「シンヤさんの幼馴染のヤマトさんだぁ!!」
えぇぇぇええええ!?
そこはポケモンレンジャーのヤマトさんだぁ!!って言って欲しかったんだけどぉおお!!!
「結局、僕ってシンヤのオマケ…」
「ぁ、いや、そういうわけじゃないんですけどぉ…」
慌てるハルカちゃんに「良いんだよ、もう言われ慣れてるから」と返事を返す。
幼馴染が有名過ぎるってなんかヤだ。便利だけど。
結局、サトシくん達にバレちゃったのでジャッキー共々、サトシくん達に正体を明かす。
そして今回のミッションの内容も説明して、このマナフィのタマゴがどれだけ大事なものかも説明した。
ジラーチの時同様この子達なら何かあったとしても協力してくれるだろう。勿論、危険な目に遭わせるつもりはないけど。
「なーんか、ヤマトさんのピエロイメージが強くなっちゃったかも…」
「えぇー…、ピエロになるのまだ二回目なのに…?」
「シンヤさんが居ないのは残念だなー」
マサトくんって正直な子だね。
お兄さん、ちょっとズキンと来たよ今の。
小さく溜息を吐いた時、サトシくんの肩に乗っていたピカチュウが威嚇しだした。
慌てて顔を上げればヘリコプター。
ヘリからスピアーが二匹放たれた。次から次へと忙しいなぁ…。
「こんな所にもお出ましか…!!」
「さあ、大急ぎでトレーラーに戻るんじゃ!!」
シップさんの言葉にジャッキーが「急げ!」とサトシくん達を急かす。
ミサイル針を放ってくるスピアーの一匹にユキワラシの冷凍ビームを当てて僕もトレーラーへと向かい走る。
転びそうになるマサトくんの背を押してからシップさんに攻撃を仕掛けたスピアーに向かって、ユキワラシの冷凍ビームを放つ。
「早く!!」
ジャッキーの姿を見失ったことに気付いてはいたけど、ここはまずシップさん達をトレーラーに避難させるのが先だね。
マナフィのタマゴはジャッキーに任せよう。
*
シップさんがトレーラーへと入ったのを見届けてジャッキーと合流する為、来た道を戻る。
ファントムの姿を見付けた時、辺りを赤い光が覆った。
「ハルカ!!それを僕に!!」
慌てて走るジャッキー。そのジャッキーをファントムが羽交い締めにして止める。
そのファントムを止めようとマサトくんとサトシくんがファントムに飛び付いた。
けど、マズイ!!
「ハルカちゃん!!」
そう名前を呼んだ時、目も眩むほどの光りがタマゴから放たれた。
「フィィイイイ!!フィィイイ!!!」
ああ…。
泣くマナフィを慌ててあやすハルカちゃんを見て呆然としているとトレーラーが近くまでやって来てくれた。こっち、と手を振るヒロミちゃんを見て僕はジャッキーの名前を呼ぶ。
「ジャッキー!!」
「ああ、行こう!!」
サトシくん達をトレーラーに乗せて自分もトレーラーへと飛び乗る。走り出したトレーラーから体を出して手を伸ばし、走って来たジャッキーの手を掴んだ。
トレーラーの中ではマナフィの泣き声が響く。
ジャッキーの方へと視線をやればジャッキーは眉を寄せて表情を曇らせた。
「よーしよしよし、泣かないでマナフィー。大丈夫よー」
「フィ…、マナ」
「お、笑ったぞ!!」
「良かったぁ!」
うーん、
困った事になって来たなぁ…。
マサトくんの次はハルカちゃんか…、僕もことごとくツイてないというか…なんというか…。
ハルカちゃんから離れると泣き喚くマナフィを見て僕は小さく溜息を吐く。
こういう時にシンヤが居てくれたらなぁ…。
*
トレーラーに乗り込んだ後もしつこく追いかけて来るファントム。
ファントムからの攻撃に止むを得ず、後方のトレーラーを捨て僕らは水の民の遺跡へとやって来た。
水の民の造った神殿、アクーシャ。
海と同化して人の目では見ることは出来ない。でもそのアクーシャへ、生まれながら本能的に行くことの出来るマナフィ。
ファントムの狙いはアクーシャに眠る秘宝、海の王冠。マナフィにアクーシャまでの道のりを案内させ宝を手に入れるというのが目的なんだろう…。
皆既月食の時、アクーシャは人の目にも見えるようになる。その時が唯一…ファントムが宝を手に入れるチャンスってわけだ…。
「キミたちには礼を言う。ここまで力を貸してくれて感謝する。だが、この地下水路を出たらお別れだ…。これ以上キミたちを巻き込むわけにはいかない」
小舟に揺られ地下水路を進んでいる時にジャッキーがそう言った。
ポケギアが圏外なので一生懸命振って電波を探していた僕はジャッキーの言葉に固まる。
「でも…」
「これは、ポケモンレンジャーのミッションなんだ」
地下水路を抜けた先は海だった。
*
「ヤマト、船が来たぞ!!」
「あ、うん!!」
ポケギア片手にジャッキーの傍へと駆け寄る。
これから水の民の末裔であるマリーナ一座の人達と僕らポケモンレンジャーは海の神殿アクーシャを目指す。
サトシくん達を連れてはいけない、と言い張るジャッキー。でもハルカちゃんが居ないと色々とまずい気がするんだけど…とは思いつつも言い返せずに黙りこむ。
悲しげな表情を浮かべるハルカちゃん達の視線が痛い。
「連絡は取れたのか?」
「ううん、ポケモンセンターに連絡しても来てないって…。家に連絡しても出ないし…」
まあ、お留守番してる子が居たとしても電話には出ないようシンヤが言ってるだろうし…。
参ったなぁ、ハルカちゃん達とここで別れるならさすがにシンヤに協力してもらわないと…。
結局、シンヤに頼ってる自分が嫌になるけどさ…。
船が出港した。
ジャッキーが抱きかかえるマナフィはよく眠っていたけど、急にぐずって泣きだした。
横で慌てるジャッキーを見て、やっぱりなぁと溜息を吐く。
「ん…、なんだこれ?」
「え!?その声、サトシくん!?」
「フィー!」
慌てて視線をあげればサトシくんがジャッキーの声で喋って手を振っている。
「オーイ!!オレはこっちだー!!停めてくれー!!」
「わーお」
「マナフィ…お前がやったのか…!!」
「マナマナー!!」
マナフィの技、ハートスワップによって入れ変わったサトシくんとジャッキーが元に戻った。
キャッキャッとハシャぐサトシくん達を見て、ポケギアに視線を落とす。
シンヤが来てくれたら…マナフィもハルカちゃんと離れても大丈夫だと思うんだけど…。多分。
サトシくん達も同行しての船の旅。
一緒に遊んでサトシくん達のポケモンと戯れて、楽しいんだけど…ジャッキーの表情はたまに険しい…。
分かってはいるんだけどねぇ…、でも、この子達なら大丈夫だと思うんだよ。
マサトくんと目が合ったのでにこりと笑みを返す。
まだ、シンヤとは連絡が取れない。
「マナ!!」
「元気だね、マナフィ」
「マナマナー!!」
「あ、そうだ。良い物あげるよ、おいでー」
手招きすればマナフィは少し警戒してなのかハルカちゃんの後ろに隠れてしまった。
…ふっ、…ポケモンに懐かれないのは相変わらずだね、僕…。
「だいじょーぶ、ヤマトさんは優しいのよ」
「カモ…」
「これ、シンヤのとこから貰って来た水タイプ用のおやつだよ」
「へぇー、なんでそんなの持ってるんですか?」
「水タイプのポケモンにはよくお世話になるからねー、背に乗せて貰った時とかお礼にってあげる用」
はい、とハルカちゃんに渡せばマナフィは匂いを嗅いでから目を輝かせた。
タケシくんも欲しがったので分けてあげれば「さすがだなぁ!」と言ってタケシくんはうんうん頷いていた。
シンヤ印、売ったらかなりの儲けになると思うな。今のところ、シンヤの作ったおやつがポケモン達に不評だったことって無いし。
「おいしー?」
「マナ!!スキ!!スキー!!」
「気に入ったみたいだねぇ、マナフィ可愛いなー!!」
「フィー!!」
*