一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ミロカロスの体調も戻った。

休養中だった時に溜まった仕事もほとんど片付け終わった。

さてと、

 

「よし、帰るか」

 

私の一言でリビングに居た連中がこちらへと視線を向けて来た。

少し戸惑いながら、そしてとても残念そうな目で私を見ながらブラッキーが言う。

 

「シンヤ…疲れてるんだな、ここが家だぜ?」

 

大丈夫?とミロカロスに言われながら顔を覗き込まれる。

そのミロカロスのおでこをビシと指で弾いてブラッキーに視線をやった。

 

「実家に帰ろうと思う」

「「「!!!!」」」

 

私の一言でうろたえだす面々。

そんなものは当然無視だが、別に家族に会いたくなったとかではない。

良い年してホームシックじゃあるまいし……。

シンオウに戻って調べたいことが色々とある。まずディアルガとパルキアにこちらから接触するにはシンオウ地方に行くのが一番だ。

それにディアルガとパルキアのことならギラティナにも相談したい。というか、アイツは元気にしているのだろうか…。

ズイにまず帰るか?

実家に帰ったら帰ったで色々と面倒だから、まずテンガン山か…?

それよりも、反転世界に行けるならそちらに直接行きたいが……。

 

「ギラティナとどうやって連絡を取れば良いのか分からん…」

「シンオウに戻ったら嫌でも接触して来るんじゃねぇの?なんだかんだで、シンヤが戻って来てからシンオウに帰ってねぇし」

 

そう言えばそうだな。とミミロップの言葉に頷く。

 

「でも、なんで急に帰るわけ?なんか用事?」

「ディアルガとパルキアに会いたくてな…」

「アイツらと会うのって難し過ぎねぇ?まずギラティナに会って、ギラティナに呼んで来て貰うってのが一番簡単だと思うけど」

「やっぱりそうだよな…」

 

うんうん、と頷くミミロップ。

ギラティナに会うというのも難しいことなんだけどな…。裏ルートは行くまでが面倒過ぎるし…。あと反転世界に行けたとしても迷う。ギラティナが居ないと確実に迷う。

 

「仕方ない、直接…実家に帰るか…」

「ノリコが居ませんように、ノリコが居ませんように…ブツブツ…」

「シンヤせんせーい!!エーフィちゃんが可笑しくなってまーす!!」

 

ブラッキーが挙手して言った。

誰が先生だ。教鞭を執った覚えは無いぞ…。

 

「てか、オスなんだからエーフィ"くん"だろ…」

「ミミロップさん!!それは酷いですわ!!心が乙女なら女の子扱いして下さるべきですもの!!そこはちゃん付けでお願いしますわ!!」

「だっ、誰の心が乙女なんですか!!」

「エーフィさんは乙女ですもの」

「勝手に私の心を決めないで下さい!!」

「言ってやれ、もっと言ってやれそこのオカマにもっと言ってやれ」

「ミミロップさん!!オカマはやめて欲しいですわ!!オトメですもの!!」

「踏め!!ワタシも手伝う!!オトメの足を踏みまくれ!!」

「右足は任せて下さい!!」

「左足死ねゴラァアアア!!」

「痛いですわぁあああ!!!」

 

なんの喧嘩だ。落ち付け。

 

「シンヤせんせーい!!女子連中が騒いでまーす!!キッスー、お前止めて来いよー」

「え!?あ、はい…、え?」

「トゲキッスを巻き込むな、ブラッキー」

「でも、シンヤ先生。女子の喧嘩が止まりませーん。女子マジこわいわー、パネェわー」

 

その先生をいつまで引っ張るんだ。

あとうちに女子は居ない!!!

 

「主…、否、シンヤ先生…帰郷は何時頃を予定しているんだ…?」

 

言い直さなくて良いんだぞ、サマヨール。

 

「明日の朝には出たいと思ってる」

「シンヤ先生、おやつはいくらまでですかー」

 

おやつ?

 

「ナナの実はおやつに入りますかー?」

 

ナナの実、そのまま食べるのか?あれ硬いぞ。

というか……。

 

「お前はベリブの実が好きで、ナナの実の味は嫌いだろ」

「定番のノリはしとくべきかと思って」

「は?」

 

わけの分からないことを言ってニヤニヤするブラッキー。

エーフィとミミロップはまだサーナイトの足を踏みつけようと追い回してるし…。

ああ…、トゲキッス。放って置いて良いんだぞ。止めに入ったらお前の足が踏まれるから…。

 

「シンヤ先生、俺様のおやつもある?」

「いつまで続けるんだ、その学校ごっこは…」

「ミロちゃんマジ、マドンナー!!ヒュー!!今日も可愛いぜー!!」

「ぅえ!?」

「先生と生徒なんて…マジ禁断だわー、オレも保健室の美人先生とイケない恋しちゃいたい…」

 

ああ、また何か変なドラマやってるの見たんだな…。

 

「え、保健室の先生って…むしろ、シンヤが保健室の先生なんじゃないんですか?」

「……それはヤだ。美人先生が良い。女医。」

「ジョーイさんですか?」

「それも違うんだってぇえええ!!ジョーイさんはジョーイさんで可愛いかもしれないけど、俺的には…そうだな…、ブースターちゃん可愛くね?てか、全体的にブースターちゃんってレベル高くね?」

「いや、あの、分からないですけど…」

「マジで、イーブイ進化系で言うとやっぱブースターちゃんは可愛いし色気あるっていうか、そりゃ他の子も可愛いんだけど、やっぱブースターちゃんが」

 

ブラッキー、後ろ後ろ。

と、声に出さなかったので当然ブラッキーには伝わらず…、ブラッキーはエーフィから痛い拳骨をくらう。

 

「でぇええ!?!?ちょ、エーフィ…今のめっちゃ痛い…!!」

「はぁ?」

「ぇ…いや、すみません…、あの、…すみません…」

 

二回言ったな。

 

「ほーら、乙女心ですの!!」

「潰れろ左足!!」

「っ…、いたぁああい!!」

 

「ご主人様、コーヒーのおかわりお持ちしました」

「ああ、ありがとう…」

 

*

 

「よし、っと…で?」

 

サーナイトの左足を踏みつぶしたミミロップが満足気に頷いてから私の方へ視線を向けた。

で?、と聞かれても分からず私は首を傾げる。

 

「ディアルガとパルキアに何の用事?」

「…………、色々」

「めっちゃ考えたな…、まあ言いたい事が山ほどあるのは分かるけど」

「それにギラティナにも会いたい」

「あー…、うん、確かに。反転世界に住んでる方が移動が楽だもんな」

 

あはは、と笑ったミミロップの額を小突く。

 

「ギラティナの奴が寂しがってたらどうするんだ」

「アイツらの寿命ハンパないから、時間の感覚分かんねぇーよ」

「…そうか、…そうなのかもしれないな…」

「ん?」

「いや、支度を始めようか」

「オッケー」

 

頷いたミミロップが荷物を纏める為にリビングを出て行った。

ソファに座り直した私は小さく溜息を吐く。

 

「シンヤ?どーしたの?」

「ミロカロス、ここ座れ」

「膝!!」

「横だ、横」

 

ぽんぽん、とソファを叩けばミロカロスがソファに座った。

ソファに座ったミロカロスが私の顔を覗き込む。

 

「ミロカロス…」

「んー?」

「…」

 

言葉が出なかった。

発することの出来る言葉が思い付かない。

何を言えば良い?私は何を伝えたい?

 

「なに?」

「…」

「シンヤ?」

「傍に、居てくれ」

「え?」

「私の傍に居て欲しい、…」

「い、居るよ!?俺様ずっとシンヤと居るよ!?」

「ずっと…」

「え?うん、ずーっとずーっとずーーっと!だよ!!」

 

ずっと、って…いつまでなんだろうな…。

奥歯を噛み締めて黙り込む。

胸の辺りがざわざわして無性に…不安になった…。

 

「シンヤ…」

「…ッ」

「大丈夫?何か、こわい顔してる…」

 

私の右手を握ったミロカロスの手を握り返して深く息を吐いた。

 

「シンヤ、また居なくなるの…?」

「いや…、ずっと居るよ」

「ホント?」

「ああ…」

 

ずっと、ずーっと…居ることになるのかもしれない…。

 

「嘘吐いてない?」

「吐いてない」

「ホントにずっと一緒?」

「…お前が死ぬまで一緒だ」

「死んでからも一緒に居たいなぁ」

 

へらりと笑ったミロカロスに笑みを返す。

出そうになった涙を必死に堪えて、歯を食いしばった。

 

「ミロカロス、チルタリスの手伝いを頼めるか?」

「うん、分かった!」

 

キッチンへと走って行ったミロカロスを見送ってから

ず、と鼻を啜った。

 

こわい…。

 

「…、ッ…」

 

 

どうしたら良いんだ…私は…!!

 

*

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