一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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「あ、この時期に帰って来るってことはコンテストでしょ?呼ばれたんでしょ!当たりでしょ!!」

 

アイスを片手に人を指差したシロナの手をぺしんと叩き落とす。

 

「ハズレだ」

「なーんだ、アラモスタウンでコンテストが開催されるって聞いたからてっきりそれだと思ったのに…」

 

アイスを頬張るシロナを見て小さく溜息を吐いた。

ポケモンセンターに一泊したシロナとシンジ。シンジの方は朝早くにポケモンセンターを後にしたのだがシロナの方はアイスを奢ってもらわなきゃーなんて言って私の後をついて来た。鬱陶しい。

礼儀正しく挨拶していったシンジを見習えチャンピオン。

 

「アラモスタウン行ったことない?」

「無いな」

「行くべきよ。昨日の夜に言ってたでしょ?ディアルガとパルキアについて教えて欲しいって」

「だからなんだ」

「あそこには時空の塔があって、時と空間を司るディアルガとパルキアについての歴史が残ってるわ」

「お前、昨日の夜に聞いた時はそんな事言わなかったよな…」

「コンテストで思い出した!」

 

テヘ、と笑ったシロナを睨んでから少し考える。

時空の塔…か、確かにそこなら"近付ける場所"である可能性はある。

私が世界のはじまりの樹に行った時のようにディアルガとパルキアの言っていたオレらに近付ける場所。そこに行けば二人に会うことは出来るかもしれない。

でも、ディアルガとパルキアに弾き出された側の私の考えだと今のアイツらだと私に気付かない可能性がある。というか、喧嘩の真っ最中かもしれない。

そうなるとやはりギラティナの方から行って、ギラティナ経由で二人と接触した方が良いと思う…。

うん、ギラティナにまず相談したいしな…。神うんぬん…、私の死亡=世界の消滅についても…今の状態だと危険だ。

 

「どうしたの?眉間に皺寄ってるけど」

「うーん、いや、やっぱり先にズイに向かうことにする」

「あらそう?シンヤさんが良いなら別に良いんだけど」

 

アイスを食べきったシロナがぽんとお腹を叩いた。

よし、と頷いたシロナに視線をやればにっこりと笑みを向けられた。

 

「じゃ、そろそろ行こうかな!」

「さっさと行け」

「ツレないわねぇ…、まあ良いわ。それじゃまたね!」

 

手を振ったシロナに軽く手を振り返す。

シロナの背を見送って私もカバンを肩に掛け直した。

ズイに行こう。

久しぶりに会う家族の顔を見てからテンガン山に行って、ギラティナとの接触を試みてみる。まずこれだな。

トゲキッスをボールから出して、その背にトンと飛び乗った。

 

*

 

真っ黒の世界で睨み合う。

逃げまどうアンノーン達に目も向けずパルキアは雄叫びをあげる。

 

「マジでお前ムカつくわぁあああああ!!!」

「…」

「長い付き合いだけどもうキレた!!今回はマジ!!もうブチギレ!!!」

「長年、こちらが貴様の馬鹿に我慢してやっていたというのに…」

「上から目線やーめーろー!!!」

「フン、まあいい…。この際、どちらが優れているか決めようじゃないか」

「上等だ…」

 

神と神の領域が激しくぶつかる。

この勝負で、勝った方が…所有兼を手に入れることが出来る。

世界を手に入れた方が全てを統べる。

 

 

「「シンヤは、俺/オレが貰う!!」」

 

 

*

 

 

「っくしゅん!!」

「あら、風邪ですか~?」

「あ゛~…、くそ、ズイに着いてそうそうお前に捕まるなんて…」

「私とシンヤさんの中じゃないですか~、挨拶も無しで居るつもりだったなんて酷いですね~」

「おのれズイのジョーイ…お前だけは天敵だ!!」

「天敵だなんてそんな酷いですよ~、長い付き合いじゃないですか~」

 

人を小馬鹿にした態度と口調にますます腹が立つ!!

ズイに着いて、さあ実家は目前だというところでばったりとジョーイに遭遇。ポケモンセンターから出てくるな…。

 

「私は大事な用があって帰って来たんだ!お前には付き合わないぞ!!」

「そ、そんな…!!仕事は山ほどあるというのに!?」

「だから何だ!!その芝居口調やめろ!!」

「…………、チッ」

 

この女、舌打ちしやがった畜生。

傍にいるトゲキッスがうろたえているのが分かるが今は構ってやれる状況じゃない。

目一杯ジョーイを睨みつければジョーイも睨みかえしてくる。上等だ、とことん相手してやる。私は負けないぞ!!

 

「……」

「……」

 

バチバチと火花を散らす勢いでジョーイと睨み合っているとドサドサと何か物が落ちる音がした。

トゲキッスが鳴き声をあげたのでジョーイと共に視線を音の方へと向ける。

 

「に、兄ちゃん…!!」

「カズキ…」

 

ポケモントレーナーになり冒険の旅へと出た私の弟、カズキ。日に焼けた褐色の肌なのに頬が赤らんでいるのが分かる。

 

「こんな道の真ん中でジョーイさんとチューしようとするのはどうかと思う!!!」

「あらやだ、カズキくんったら~…。ポケモンセンター出入り禁止にされたいの…?」

「カズキ、バトルしようか…。お兄ちゃん今なら本気以上の力が出る気がする…」

「えええええええ!?」

 

トゲキッスがカズキを庇おうとカズキに飛び付いた。

トゲキッスの羽毛を抱きしめながらカズキもブルブルと震えているが、私の方も怒りで拳が震えるんだが…、どうしてくれる。吐き気までするじゃないか…。

 

「反吐が出ますね、シンヤさん」

「お前ならヘドロくらい出せる」

「鳩尾、いれますよ?」

「その瞬間、私の右ストレートが飛ぶからな…」

 

「ひぃぃぃい!!!母さん、助けてぇえええええ!!!!」

 

*

 

ジョーイと威嚇しあっていたがラッキーが迎えに来たのでジョーイは引き摺られるようにポケモンセンターへと戻って行った。

最後までガン飛ばして帰ったなあの女…、いつか泣かす…。

まあ、そういう私もカズキに腕を引っ張られ久しぶりの実家に帰って来た。

 

「カズキも帰って来てたんだな」

「うん、ノリコのコンテスト見に行くって約束したからさ。コンテスト行く前にこっちに寄ったんだ」

「コンテストってアラモスタウンのか?」

「そーそー、面倒だけどさー、約束しちゃったし…」

 

溜息を吐いたカズキが「ただいまー」と言いながら家の中へと入って行く。それに続いて私も靴を脱いで久しぶりの実家へと足を踏み入れた。

 

「あら、二人揃っておかえりなさい!」

「ただいま、母さん」

「シンヤ、この前また新聞に載ってたわね!!」

 

なんかそんなのあったな…と適当に返事をしながらソファに座る。

その向かいのソファにカズキが座った。

 

「兄ちゃん、今度テレビとかで俺のこと話してよ!!」

「テレビなんて出てないだろ」

「前出てたじゃん!!」

「知らん」

「最初はシンヤの弟!って思われんのヤだなー、とか思ってたけど…。ズイ離れたら、俺…シンヤの弟だって信じてもらえないんだよ…。マジショック…」

「なんでだ?」

「顔が似てないから?」

「…同じように目と鼻と口が、」

「付いてるけども!!」

 

コトン、とテーブルに母さんがお茶を置いてくれたのでそのお茶を啜る。

 

「そうね、私たち夫婦の良い所だけをとって生まれたような子だったもんね~。母さんも昔…自分の顔と見比べて似てるところ探したわ~…。二重とか母さんと似てるのよ!!」

「そ、そうか…」

「俺も二重だけど…なんか違うわ…」

「パーツって大事よね!!」

「母さんに言われるとなんかヘコむ…やめて…」

「あら、ごめんなさい」

 

ソファに蹲ったカズキを見て母さんがケラケラと笑った。

小さく溜息を吐けば「そうだ」と母さんが私に視線を向けた。

 

「シンヤは何か用事で帰って来たの?」

「まあ、私用で…知り合いに会いに行こうかと…」

「そう。シンヤも定期的に連絡くれないと母さんたち寂しいんだからね!!ちゃんと電話してくれないと!!」

「シンヤも?カズキとノリコは連絡してるのか?」

「俺、あんまりしてない」

「カズキとノリコも!連絡して頂戴!!」

 

頬を膨らませて怒る母さん。

も、って…じゃあ、誰が定期的に連絡してるんだ…。父さんか?

 

「定期的に連絡くれるのヤマトくんだけなんだからね!!」

「ヤマト兄ちゃん、マメだな~」

「そういう問題じゃないだろ…!?」

 

アイツ、なんで人の実家に定期的に連絡してるんだ!!馬鹿なのか!?

 

「仕事の合間に寄ってくれたりするのよ、お土産持って」

「なんなんだアイツは!!」

「良い子じゃない!!母さんの唯一の癒しよ!!」

「癒しって…」

「ツバキちゃんもわりと電話くれるのよ~、忙しいのに良い子よね~」

 

いや、ツバキは基本的に暇だろ。仕事はエンペラーがやってるようなものだから。

 

「あ、イツキさんに電話しなきゃ!シンヤが帰って来てるって言ったらきっと飛んで帰ってくるわ!!」

 

普段も飛んで帰って来てるだろ、ピジョットで…。

 

「ノリコは帰って来れないのかしら?」

「アイツ、今頃アラモスタウンでコンテストに出る準備してると思う」

「そう…、じゃあコンテストが終わった後なら家族団欒でご飯食べれそうかしら?」

 

チラリと母さんの視線がこちらに向く。

いや、ギラティナに会いに行かないといけないからな…。うーん…。でも、せっかくの機会でもあるしな…。

 

「分かった、暫くここに残る」

「やった!!」

「アラモスタウン、一緒に行こうぜ!!ノリコ、超びっくりするって!!」

「仕方ないな…」

「ついでに私の弟と妹がお世話になってます、とか愛想振りまいてよ!!俺の知名度を上げる為に!!」

「アホか!」

 

*

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