一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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カイリューの背に乗るツバキとヤマト、トゲキッスの背に乗る私。

そしてエアームドの背に乗るカズキとノリコ。

ご馳走を作って待っているらしい母と、家族が揃うのを楽しみにしている父が待つズイへと帰っている途中なのだが……。

 

「……ブツブツ…」

「…ノ、ノリコ。オレの腕掴まないで…痛い…」

 

カズキが情けない声を漏らした。

助けを求めるように視線を向けて来たカズキから私は視線を逸らす。ヤマトとツバキも同じように何処か遠くへと視線をやった。

コンテストバトル、アラモス大会でノリコは見事に一次審査での敗退。見てて逆に潔い負けっぷりだった。

キュウコンの火炎放射と神通力のコラボ技が失敗してノリコを追いかけ回している様は会場全体に笑いを誘った…。ある意味、注目は浴びたよな…とフォローにもなってない言葉しか出なかったのは仕方ない。

しかも、私が会場で見てるのを良い事に司会のモモアンがノリコを私の妹だと紹介してしまったので私まで注目された。

その事もあってノリコも焦ってしまったんだろうな…。一応、トップコーディネーターの称号を持ってる兄の名前を出されたわけだし…。私は自分であって自分じゃない気がしているので他人事だが。

 

とりあえず、見事に恥をかいたノリコが暗雲を背負い先程から何やら呪文のように独り言を呟いているわけだ…。暗い。気まずい。かける言葉も無い。

オマケに帰り際、とどめを刺すかのようにサトシ達が「シンヤさんの妹だけど、ノリコさんって普通の人なんですねー」なんて悪気もなく言ったものだからカズキが少し泣いて、ノリコがその場から逃走した。

本当に異質な兄で申し訳ないなぁと心から思った。

会話も無く気まずい空気のまま、ズイへ帰って来た。

家の玄関で出迎えてくれた母さんがノリコを見て笑顔のまま固まった。また重い空気が流れた時、空気を読めない父さんが勢いよく私に飛び付いて来た

 

「シンヤー!!久しぶりだなー!!元気だったか!!父さんは元気だったぞ!!」

 

ずっとテレビとかで見る度に会いたかったんだからなー!!と頬ずりまでしてくる父と距離を取ろうと静かな攻防を繰り返しているとボソリとノリコが呟いた。

 

「どうせ、のんはテレビにも雑誌にも乗らない凡人だよ……」、

「「……」」

 

何が?とよく分かってない父が首を傾げたが空気は凄く重い。重過ぎて息苦しい。

 

「いつだってお兄ちゃんと比べられるんだ…、どうせ普通だよ…、むしろ普通以下のクズコーディネーターだよ…。お父さんもお母さんも、のんよりお兄ちゃんが可愛いんだ…。そりゃお兄ちゃんは何でも出来るし…頭良いし、バトル強いし、トップコーディネーターで美形でお医者さんになっちゃうくらいだもん…そりゃ自慢の息子だよね…」

 

俯いていたノリコが顔をあげた。

ビシ、と私を指差してノリコが声を荒げる。

 

「お兄ちゃんのせいでずっと比べられるんだからね…!!お兄ちゃんが出来過ぎるから…!!」

「ノリコ…」

「まあ、自慢だけどね!!自慢のお兄ちゃんだけどね!!カッコイイから好きだけどね!!っていうか、大好きだけどね!!」

「…オイ」

 

カズキがノリコの肩を掴んだ。

 

「のんはお兄ちゃんと結婚したかったのに…!!」

「お前と双子である事実を今この場で消したいぞオレは」

 

その場にしゃがみ込み喚くノリコに怒るカズキ。

さてと、と手を叩いた母さんがニッコリと笑った。

 

「ご飯出来てるから!!みんな手を洗ってらっしゃい!」

「「はーい!」」

 

ツバキとヤマトが手をあげて返事を返した。

 

「シンヤ、最近どうだー?父さんに色々教えてくれ、珍しいポケモン見た?」

「内緒」

「なんでだ!!なんで内緒にするんだ!!父さんとシンヤの仲だろう!?」

 

どんな仲だ。

そして、父として双子の間に入って何とかして来てくれれば良いのに。

 

「カズくんのバカー!!嫌いだー!!カズくんは嫌いだー!!」

「オレだってお前が嫌いだブスー!!」

「カズくんのハゲー!!」

「ハゲてねぇー!!!」

 

双子は確実に父親似だよな。

 

*

 

食事中、アラモスタウンでパルキアとディアルガ、そしてダークライまでも見たと自慢するツバキに父さんが大興奮。

それにヤマトが便乗して、ノリコもアラモスタウンで起った事を鼻息荒く語る。最後に「まあ、アラモス大会は大恥かいたけどね…」で一回テンション落とすのやめてくれ。

 

「くそー!!オレも見たかったー!!」

「外の状況、どうなってたの?」

「え?なんか消えてた。アラモスタウンだけ綺麗に無かったよ」

「へー…パルキアの力って凄いなー」

「まあ、あたし達も全く外に出れなかったもんねー」

 

ツバキの言葉にヤマトが頷いた。

父さんが自分も体験したかったと口を尖らせる。

そんな光景を見つつ黙々と食事を食べていると食べている途中の皿に料理が追加された。顔をあげれば母さんが笑顔で私の皿に料理を乗せていく。

 

「母さん…」

「いっぱい食べなさい。シンヤ、細いわよ」

「父さんと比較してるならやめてくれ」

 

ごつい筋肉質な父のようになれと言っているなら勘弁して欲しい。シャツがピチピチになってるなんて私は嫌だ。

 

「普段ちゃんとご飯食べてるの?」

「食べてる」

「本当?ちゃんと栄養を考えて自炊してる?買ったお手軽料理なんて駄目なのよ?」

「栄養を考えて作ってくれてるから大丈夫」

「そう………、誰が?」

「チ…、ごほん、自分で作ってる」

「だ・れ・が?」

「自炊してます」

 

私の顔に鼻が付きそうな距離まで顔を近付けて来る母。そしてその母の距離に何も言わず食事を続ける私。

異様な光景にヤマトが顔を蒼くしていた。

 

「シンヤ、大人なんだから母さんにちゃんと紹介出来るわよね?」

「お母さん、美味しいご飯どんどん盛って下さい。いくらでも食べれます」

「シンヤちゃーん?良い子でしょー?」

「…」

 

無言で咀嚼。

ひたすら口の中に料理を入れ続けた。

そんな私を見て母さんは溜息を吐きつつ私から離れた。私が言わないと決めたら絶対に言わないのを分かっているからだろう。

料理をテーブルに置いた母さんはガシとヤマトの肩を掴んだ。「ひぃいいいい」とヤマトが悲鳴をあげた。

 

「ヤマトくん…、ヤマトくんは私の味方よね?」

「あの、その…えっと…」

「ヤマトくん…」

「シンヤのとこには、あの、なんて言うか…」

 

口籠るヤマト。

ここまで黙って聞いていたツバキが発言した。

 

「え?シンヤさんとこってお料理全部チルくんがやってくれてるんじゃないの?」

「「……」」

「ツバキちゃん、チルくんって誰かしら?それに"くん"ってなぁに?」

「チルくんはお掃除お料理大好きな凄く良い子であたしも家事してもらったことあります!!」

「シンヤとどういう関係かしら…」

「関係?主従関係ってやつでしょ。ね!」

 

ね、ってこっちに同意を求めるな…。

ヤマトが眉を寄せる。私はツバキから視線を逸らした。母さんがチルをどう捉えるか問題だな。会わせろ、家に招けと言われても「はいどうぞ」なんて言えないぞ…。

 

「主従?シンヤ、お手伝いさんを雇ってるってこと?」

 

給与とか無いけど、と思いつつ「そんな感じ」と頷いておく。

母さんは頬を膨らませて怒っている。

 

「母さんはね!!そんなことを期待してるんじゃないの!!孫の顔をね!!見たいのよ!!」

 

永遠に見れないよ。とは言えず黙ったまま料理を食べる。

 

「母さん、良いじゃないか。シンヤもその内、良い子を見付けるさ」

「もう25歳でしょ!!そろそろ良いじゃない!!」

「色々と頑張ってやる子なんだから、今の仕事が落ち着いたら次を考えるさ」

「…むぅ、結婚はまだ先なのね…」

 

いつ仕事が落ち着くというのか、そして次も何も恋人が同性でポケモンなんだがどうしたら良いんだ。

 

「結婚?シンヤさん、ミロちゃんと結婚するの?」

「「ぶっ!!」」

 

私とヤマトが盛大に料理を口から噴き零すとツバキが悲鳴をあげた。

母さんの目が怪しく光ったので慌てて立ち上がる。

 

「今、テレパシーで緊急の呼び出し来た!!」

「シンヤ、座りなさい」

「あー、はいはい!!今行くー!!」

「下手な演技は良いから座りなさい」

 

カバンを持って部屋から出ようとしたが母さんに腕を掴まれる。

 

「ツバキちゃん!!シンヤとミロちゃんはそんな関係じゃないでしょ!?」

「いや、恋人同士なんだよ?ヤマトさん知らなかったの?」

「えぇえええー!?」

 

そういや、言ってなかったと思いつつ腕を振り、何とか母さんの手を放そうと頑張ってみる。

シンヤ、どういうこと!?とヤマトまで詰め寄って来たところでピンポーンとチャイムが鳴った。

母さんが一度玄関を見たがすぐに私の方へ視線を戻す。無視する気か。

しかし、再びピンポーンとチャイムの音。母さんは渋々と玄関へと向かった。

 

「シンヤ!!僕、聞いてない!!」

「……」

 

ヤマトにチョップを食らわせたところで母さんが私を呼んだ。

「お客さん」と少し不満気に言った母さん。でも、実家の方に来る客って誰だ。そもそも私が実家に帰ってることを知ってる奴なんてジョーイくらいだぞ。

玄関へと向かえば真っ白な髪、紫の瞳、こちらを見つめるソイツを見て思わず親指を立てた。

 

「ナイス」

「何がだ…」

 

私のテレパシーが届いたんだな、と言ってやれば知らんと返された。

とりあえず、何故か実家の方にやって来たミュウツーに今は感謝しておこう。

 

「で、どうしたんだ?」

「異変が起こっただろう?シンヤなら関わっていると思ってな」

 

見逃した、と舌打ちしたミュウツー。

興味心でしか動かないのかお前は。そして異変ある所に私が居ると思うなよ。全く関わってないわけじゃなかったけど。

いや、でもミュウツーならディアルガとパルキアに接触出来る方法を知ってるかもしれない。

 

「ちょっと出ようか。相談もある」

「?…まあ、構わない」

 

頷いたミュウツー。

ちょっと出て来る、と母さん達の方に言えば「えー!!」とブーイングが飛んだが無視だ。

ノリコの「お兄ちゃんの友達でイケメンって居たんだー!!」の声の後にヤマトが「…え!?」と驚いた声を出していたがそれも無視だ。

 

*

 

家から少し離れた場所でミュウツーと向かいあう。

アラモスタウンで起きた事はパルキアが原因だと言ってやれば興味ありげに目を輝かせていた。

 

「そのパルキアなんだが、実は原因は私にある」

「ほお」

「パルキアとディアルガがどちらが優れた者か、なんて言って喧嘩をしだしたんだ」

「優れた者を決めるのにお前が関係あるのか」

「私は、この世界の神に近しいものになった…らしい」

「………」

「というより、世界そのものに近いそうだ。私が死ねば世界も消える、とも言われたがそこはまだハッキリと聞けてない。だが、世界そのものの私を管理するというか…優劣をハッキリと決めたくなったのか…。

ディアルガは私に永遠の時間を与えられるから私のことを自分の所有物だと言って。パルキアは自分の所持する世界空間と一体となったんだから私のことを自分の所有物の一部だと言い出して…。本気で喧嘩しだしたんだ…」

「お前は本当に面白いことに巻き込まれる男だな」

「面白くない…」

 

愉快だと笑うミュウツーを見て小さく溜息を吐く。

 

「まずはディアルガとパルキアに会って、話を付けたい」

「ふむ」

「アイツらに接触出来る方法を知らないか?」

「私に交友関係があるとでも?」

「いや、何か特殊な道とか無いのか」

「知らんな」

 

むしろ知ってたら行ってる、と返された。

ああ、お前はそういう奴だよなと頷いてしまった。

 

「だが、お前の悩みは一つ解決出来るぞ」

「?」

「ディアルガとパルキア、どちらが優れていてどちらが世界を支配出来るか喧嘩していると言っただろう?」

「ああ」

「お前が支配すれば良い。ディアルガもパルキアも世界も全て、お前が手にしてしまえば時の神も空間の神もお前の犬同然だ」

「……」

「万事解決」

 

余計ややこしくなるに決まってるだろうが…!!

 

「ツー、私はな…人間なんだ。お前みたいに攻撃技を放ったり出来ない、力の無いただの人間なんだぞ…」

「だからなんだ。そう言うならディアルガもパルキアもただのポケモン…。力は強いかもしれないが力で倒せないものじゃない」

「だから私には出来ないと言ってるだろ」

「お前に出来なくても私は出来る」

「……」

 

お前が出来てどうする。

 

「私は出来る、私以外のポケモンも皆出来る」

「…?」

「シンヤ…お前は自分を卑下し過ぎている」

 

そんなことは無いと思うぞ、と眉を寄せてやれば溜息を吐かれた。

 

「ディアルガとパルキアが共に力を手にするために声を荒げようとも他のポケモン達は力を貸したりしない、どちらかについて行こうとも思わない」

「…」

「でも、シンヤ…お前が声を掛けた時、どれだけのポケモンが力を貸すと思う?」

「…、」

「お前は自分を低く評価しているが、私を含めたポケモン達はお前を高く評価している。お前自身に力は無くとも世界に生きるポケモンの数だけがお前の力となる。

お前には世界を統べる力がある」

「…」

 

うぐ、と口籠ればミュウツーは笑った。

 

「そう硬くなるな。世界を統べる力があれどお前にそこまでの欲が無いことは知っている」

 

でも、そういう所がまた気に入られるんだろうな。と笑ってみせたミュウツー。

気恥ずかしくなって思わず視線を逸らした。

 

「ディアルガとパルキアの争いが納まらない時の手段の一つだ。力を力でねじ伏せる」

「あー…分かった。世界の危機になった時は、お前達に頼んでみる」

「いつでも協力してやる」

「………、ツー…お前そんなに私のこと好きか」

「わりとな」

 

苦笑いを零せばミュウツーはニヤリと笑った。

どうやら手持ち以外に私と共に頑張ってくれる連中は沢山、居るらしい…。

この世界と共に生き続けることになったとしても、この世界にポケモン達が存在し続けるなら…私はきっと、

 

「なあ、ツー」

「なんだ」

「反転世界に行く方法が一つあるんだが、一緒に行ってくれないか?」

「反転世界…」

「きっとお前なら迷わない」

 

私はきっと、

孤独に悩むことはなくなるだろう…。

 

 

*

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