一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ズイタウン、ポケモンセンター。

実家に居ると親がうるさいので簡単に言うと避難して来た。知り合いがポケモンセンターに泊まるから一緒に泊まって来るって言って出て来たが母さんは頬を膨らませ不満気だった。

あれはもうミロカロスを見ないと納得しないだろう。

 

「ノリコ、居るんですよね…」

「ポケモンセンターのベッドわりと良いよなー」

 

ワハハ、と笑うブラッキーにエーフィがパンチを食らわせていた。

エーフィはコンテストが好きでコンテスト演技もバトルも得意、そんなエーフィを連れて行こうとノリコがずっとエーフィをしつこく勧誘しているんだが…。

エーフィはノリコが苦手。エーフィいわく演技の要求がとんでもなく頭の悪い発想、らしい…。私の妹にとんでもないことをズバッと言ってくれるものだ。

 

「近々、ミュウツーと一緒に戻りの洞窟に行くぞ」

「そうなの?結局、そっちルートにしたわけ?」

 

ミミロップの言葉に頷く。

私が頷けば「まあ、ツーなら余裕で行けそうだよな」とミミロップも頷き返してくれた。

 

「ギラティナに会った時、お前達にも大事な話をする」

「大事な、話?」

「それは…今では駄目なのか…?」

「ああ、ギラティナと一緒の時だ」

 

ギラティナが居て、ミュウツーが居て、ちゃんと大丈夫な状況を作ってからじゃないと余計な心配を掛けるからな。

 

「話!!何!?すぐ話してー!!」

「ちゃんと後で話すって言ってるだろ」

「俺様にだけ!こっそり!!」

 

こっそり、と言って耳を寄せて来たミロカロスの耳に息を吹きかけてやればミロカロスは転がるように逃げて行った。

 

「隠し事しないでちゃんと話してくれるなら俺は良いですよ」

「ん、話す。今度はちゃんと、な」

 

私の言葉にみんなが困ったように笑った。

 

「やべぇ状況報告とかだったらどうするよ」

「その時はその時だ…、腹を括って待とう…」

「シンヤの話、大体難しいからオレ苦手だわ~」

「ブラッキー、だらだらしない!!」

「へぇ~い…、あ、チル、お茶欲しい」

「あ、はい!」

 

だらーん、とベッドに横になったままチルタリスに声を掛けたブラッキー。そんなブラッキーをまたエーフィがベシンと叩いた。

コポコポとチルタリスがお茶を淹れていると今まで大人しく黙っていたサーナイトが大きな溜息を吐く。

 

「はあ~…」

「…」

「はぁ~……」

 

うるさい。

そして、ミュウツーが物凄く鬱陶しそうに眉間に皺を寄せた。

 

「ツーさん、イケメンですわ~…」

「見るな」

「見ても減るもんじゃあるまいし!!目の保養に見たって良いじゃないですの!!」

「減るから見るな」

「減りませんわ!!」

 

イケメンのミュウツーを見て楽しむサーナイト。何が楽しいのかさっぱりだが本人が楽しいなら良いだろう。

 

「出会いが欲しい!!」

「今度、ギラティナと会うだろ」

「ギラティナさんもイケメンですわね。でも、違うんですの!!だってギラティナさんはシンヤ馬鹿!!ワタクシのことなんか見てくれませんわ!!」

 

私が馬鹿みたいに言わないでくれ。

 

「キッスさんも顔は凄く好きですわ!!」

「え?あ、ありがとうございます…?」

「でも、シンヤ馬鹿!!」

 

完全に私が馬鹿みたいだ。

 

「ヨルさんも好きですわ!!」

「……」

「でもやっぱりシンヤ馬鹿!!」

 

馬鹿馬鹿…言われてる…。

 

「ミロさんもミミローさんもチルくんもシンヤ馬鹿!!」

「ほぁー」

「うぜぇ…」

「えーっと…」

 

オレは?と自分を指差して首を傾げたブラッキー。

サーナイトがビシリと指を差した。

 

「色魔!!」

「ひでぇ!!!!!」

「フィーさんは同志ですわ」

「一緒にしないでください!!!」

 

オレ、色魔かよぉ~と嘆くブラッキーに同志にされてキレるエーフィ。

シンヤ馬鹿、シンヤ馬鹿と言うなら私はどうなる。と私は自分を指差して聞けばサーナイトはうーんと少し考える仕草を見せた。

 

「ミロさんが居ますもの…、愛人募集してるなら…いや、やっぱり駄目ですわ!!一途な愛に生きたい!!!」

 

馬鹿か、とミュウツーが吐き捨てた。

 

「ツーさん、募集してません?」

「ふん、なら私もシンヤ馬鹿だ」

「…くっ…!!!」

 

畜生ですわ!!とその場で蹲るサーナイト。

本当にただの馬鹿だ、コイツ…。

ミミロップが冷たい目でサーナイトを見ていた…。

 

「サナー、オレが色魔って酷いわ…」

「何も間違ってませんわ…」

 

納得がいかないとブラッキーが口を尖らせる。

ブラッキーとサーナイトの会話にミロカロスがねえねえと私の腕を掴んだ。

 

「シキマ、って何?」

「んー…、自分の欲に趣くまま沢山の女を騙して弄ぶ男ってところか。まあ、女たらしってやつだな」

 

私がそう言えばミロカロスが「ふーん」と返事を返す傍でブラッキーが「ほらぁ!!」と立ち上がった。

 

「何ですの…」

「今の聞いてたろ!?沢山の女を"騙して弄ぶ"って!!!オレ、そんなことしねぇもん!!!」

「…だから何ですの…」

「いや、だから色魔じゃないって…」

「女たらしは女たらしでしょ、ちゃんと知ってるんですのよ」

「ちーがーいーまーすー。友達になるだけですー、たらしこんでませんー」

「メスの尻を追いかけ回しといてよく言いますわね」

「追いかけ回してない!!友達!!つーか、可愛いと思った子と友達になって何が悪いんだよ!!友達多い方が良いだろ!!」

「友達友達ってそんなの向こうはそう思ってないかもしれないじゃないですの!!下心が無いなんて言わせませんわよ!!友達だって言い張るんなら一途に恋人つくって幸せにしてから言ってごらんなさい!!」

 

ビシッ、とサーナイトがブラッキーを指差した。

ミミロップが何故かガッツポーズをしたのはよく分からない。急に目が輝いたな。

 

「恋人つくって幸せにすりゃ良いの?」

「簡単なことではありませんわよ?だって、恋人が居るのに他のメス友達と仲良くしてたら恋人は不安になって幸せな気持ちになれませんもの~…一途に愛する、これが大事!!」

 

うんうん、とミミロップが頷いた。

 

「分かった。オレが色魔じゃない証拠として恋人つくって一途に愛して幸せにしてみせる…!!」

「…是非、お願いしますわ!!」

「おおっ!!」

 

ミミロップが笑顔で手を叩く。何故、拍手までするのか甚だ疑問だが便乗してミロカロスも手を叩いていた。

なのでとりあえず私も叩いておく。パチパチパチー。

 

「うん、じゃあ付き合おうぜ。サナ!!」

「…ふざけんなコノヤローですわ」

「このボケェエエエエエ!!!!」

 

ミミロップの見事な蹴りがブラッキーに命中する。

思いっきり蹴られたブラッキーは壁に激突した。凄く痛そうな音がしたが、まあタフな奴なので大丈夫だろう。

 

「正銘しろって言うから!!」

「だから、なんでワタクシなんですの。本当に頭悪いんですの?」

「はぁ?オレがお前を幸せにしてやるって言ってんじゃん」

「そのセリフ、ツッキーさん以外から聞きたかったですわ」

 

ワタクシのナイスパスをファールボールにするなんてこの男、本当にボケボケですわ!!と悔しがるサーナイト。

何がナイスパス?

 

「なんで怒るんだよ」

「相手が違いますの」

「種族的な?」

「まあ、そうですわね…」

 

コホン、とサーナイトが咳払いをすればブラッキーは頷いた。

 

「じゃあ、カズキのとこのサンダースとか?でもアイツめっちゃ気強くね?」

「他所のオスに手を出してどうするつもりですの!?」

「ああ…!!ノリコのとこのリーフィアちゃんかー!!おっとり系はあんまりだと思ってたけど、まあしゃーなしで」

「しゃーなし!?この駄目男!!!」

 

べしん、とサーナイトがブラッキーの頬を叩いた。

 

「痛ぇ…。サナが引っ叩いたー!!」

「手も出ますわコノヤロー!!」

 

首も絞めてしまえ、とミミロップがボキボキと指の骨を鳴らした。

お前ら何故に殺気立つ…。

 

 

「本当に心から好きな相手と一緒になるべきですの!!」

 

 

サーナイトがブラッキーの胸元を掴み上げた。男らしいぞサーナイト。

 

「…心から好きな相手…」

「そう!!共に生きていく人、自分にはこの人しか居ない!!そう思える相手が居るはずでしょう!?ずっと一緒に居たい人、心の奥底に押し込めていた気持ち…!!思い浮かぶ人は誰なんですの!?」

「…っ、でも…、ダメだろ…だって」

「ダメじゃありませんわ。最初からダメだって決めつける方がダメですわ!!ツキさんの気持ちは最初から決まってるはずです!!決まっているからこそ一緒に居るんでしょう!?」

「ああ…そうだよ、うん、そうだ…。他の奴なんて考えられない…」

「ですわよね!!」

「ここで言っちまえよ!!」

 

ミミローが再び拳を握った。

その場から立ち上がったブラッキーがゆっくりと息を吐く。

頑張れ、とミミロップが小さな声で応援した。さっきから喜んだり怒ったり応援したり…なんなんだ。

 

「初めて会った時から、オレはコイツと生きて行くんだって思ってた」

「……」

「ずっと一緒に居たい、いや、ずっと一緒に居るつもりなんだけど…。ずっと一緒に居るなら別に今のままでもオレは良いと思ってた。でも、それじゃダメだって…サナが言うから…」

「……」

「でもな、本当にオレはダメだと思ったんだ。今のままでも幸せだし、一緒に居られないなんてことにはならないと思う。だからオレがここで素直に言っちまうと…関係が壊れると思う…」

「ツッキーさん!!」

「馬鹿野郎!!ここで決めなきゃいつ決めんだよ!!」

 

サーナイトとミミロップの言葉にブラッキーは眉を寄せた。

 

「友達で居たい、仲間で居たいって思うのはダメなのかよ…」

「……」

「それで譲れるんですの!?ずっとそのままで良いって本気で言うんですの!?初めて会った時に抱いたその気持ちは、他の誰にも抱けない気持ちでしょう!?」

「男なら潔く生きろ!!今のお前、かっこ悪ぃぞ!!!」

「…っ!!」

 

ブラッキーが顔をあげた。

サーナイトとミミロップがうんと頷いた。

 

 

「オレの気持ちに嘘は無ぇ!!初めて会った時から好きだ!!この気持ちは負けてねぇ!!

シンヤー!!オレと付き合ってくれー!!」

 

 

なんだ、結局さっきのシンヤ馬鹿がどうたらの続きか…。

 

「ツキさん、死ねば良いんですわ」

「お前には幻滅した…」

「はぁ!?お前らが言え言えって言ったんだろ!?オレだってミロと友達で居たいから言うの嫌だったんだぞ!?」

「シンヤは俺様のだああああ!!!」

「イテェ!!ミロ、この野郎!!やんのか!!一番最初にシンヤに目付けたのそもそもオレなんだからな!!オレの一目惚れ歴の方が長いんだぞ!!!」

「バーカバーカ!!ツキのバーカ!!」

「うっせー!!どんだけ喚こうがオレの方がシンヤを好きな期間が長いんだよ!!ミロは最初なんとなくで貰われただけだしな!!」

「違うもん!!俺様はシンヤが好きになったから貰われたんだ!シンヤも俺様が好きになったから貰ってくれたに決まってる!!」

「その後、捨てられただろ!!」

「あああああああ、うるさいぃいいい!!!!」

 

ミロと取っ組み合いの喧嘩を始めたブラッキー。

ミュウツーがうるさいと文句を言いながら部屋を出て行った。耐えかねたらしい。

 

「シンヤを一番好きなのは俺様だぁあああ!!」

「オレの好き度合いが分からない癖にそんな事言うなー!!オレの好きの方が勝ってる可能性だってあるだろうがー!!」

「無い!!!絶対に無いぃいい!!」

 

う、うるさい…!!

低レベルな争いを見守っているとミミロップが再びブラッキーを蹴っ飛ばした。

 

「蹴るなよ!!」

「お前!!フィーの事好きって言ったじゃねぇかよ!!!」

「…は?」

 

ビシ、とミミロップに指を差されてブラッキーが眉を寄せる。

 

「言っただろ!?」

「言ったよ」

「それなのに何でシンヤに行くんだよ!!」

「いや、オレはみんな好きだけど…」

「あぁ!?」

「みんな好きだって。そん中でもシンヤが特別好きで、考えてみたらシンヤ以外のトレーナーは考えられねぇなぁって…」

「トレーナーな。トレーナーの入れ替えは無しな」

「当然だろ」

「じゃあ、メンバーは?ワタシ達の入れ替えは誰なら有りで誰なら無し?」

 

ほらほら!!と急かすように手を動かしたミミロップ。

周りの連中を見渡したブラッキーはヘラリと笑った。

 

「いや、メンバーも入れ替え無しが良いよ」

「…」

「みんな好き」

「…じゃあ、シンヤとメンバーどっちかしか選べないとしたら」

「シンヤ」

「……」

 

ミミロップが大きな溜息を吐いた。

 

「結局、揃いも揃ってシンヤ馬鹿…」

 

お前ら、一体何の話をしてるんだ。

懐き自慢大会か。凄く懐かれてるのはひしひしと感じたからもうそろそろ静かにしてほしい。

 

「じゃあ、」

「まだあんの?」

「シンヤとフィーだったら」

「シンヤだよ、当たり前だろ」

「…お前、マジ…クソ野郎だわ…!!」

 

ミミロップが足を振り上げた。

ブラッキーが「げ」と声をあげた時、ミミロップの肩にエーフィが手を置いた。

 

「…」

「…フィー、」

「良いんです、私もどちらかをと言われたら…きっとシンヤさんを選びます」

「…」

「頑張ります」

「フィー…」

「まだ私も素直にはなれませんから、頑張ります」

「分かった…」

 

サーナイトがエーフィに飛び付いたのを見て私は首を傾げた。

結局、なんなんだ。

 

*

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