「というわけで、戻りの洞窟に出発進行ー」
「「「おー!!!!」」」
「シンヤ、すげぇ棒読み」
ミミロップが余計な事を言ったが気にしない。
ブラッキーにやってくれって言われて渋々やったんだから良いだろ。他の奴は楽しそうだから良いじゃないか。
ミュウツーを先頭にワラワラと洞窟へと入れば野生のポケモン達が驚いて逃げていく。
「すぐ着くかなー?」
「どーだろ。でも、ギラティナの奴も迎えに来てくれれば良いのになー」
「なー」
ミロカロスとブラッキーが顔を見合わせて笑った。もうすっかり仲直りしたらしい。
寄って来たゴーストやドーミラーにポケモンフードを与えつつミュウツーの後を追う。
ひたすら進む、進む、進む。
どれだけ歩いたか…。
ミュウツーが立ち止まって腕を組んだ所でサーナイトが不安げにミュウツーに声を掛けた。
「ツーさん、迷ってますの?」
「迷ったな」
ガーン。とミロカロスとブラッキーが声を揃えて言った。何で口で言うんだ。
「どーすんだよ、戻る?」
「戻ってやり直しましょうか」
「どの部屋を通ったか覚えてないと駄目ですね…」
うんうん、と悩むミミロップ、エーフィ、トゲキッス。
私の周りにはルナトーン、ソルロックがうじゃうじゃいる。なんかいっぱい寄って来た。
「主…、集めるのは良くない」
「別に集めたわけじゃないんだが…」
これはこれで可愛いから良いじゃないか、とポケモンフードを撒く。多分、これが原因だろうけど。攻撃されるより良いからな。可愛いし。
「よっしゃー、月光軍隊長ブラッキー様について来やがれルナトーン諸君ー!!」
「「「ルナー」」」
「エーフィ、太陽軍隊長な」
「何遊んでるんですか、やめなさい」
シンヤさんもやめなさい。とエーフィに怒られた。
ソルロック、くるくる回したら凄い光る。楽しい。
「俺様も回す」
「こいつは右利きらしいから右回りの方がよく回るぞ」
「へー!」
*
一旦、洞窟の外へ戻る。
ミュウツーでもダメだったな、と零せばミュウツーに睨まれた。
「おかえりー」
「「「「!?」」」」
洞窟の外で待っていたのは人の姿をしたパルキア。
「ここに入るの察知したから待ってたんだよ」
「パルキア!お前!話は色々とあるぞ!」
「聞くよ、聞く聞く」
でも、その前に。とパルキアは何処から出したのか籠に入った花束をミロカロスに渡した。
「ミロちゃんにグラシデアの花束!」
「いらない」
「!?」
あげる、とミロカロスからサーナイトに渡された花束。サーナイトは「ありがとうございますわー」と喜んでいたがパルキアは凄く落ち込んでいる。
何しに来たお前。
「とりあえず、話をしようか」
「…はい」
*
「実はオレとディアルガの喧嘩で反転世界ぐちゃぐちゃになっちまったみたいでさー、ギラティナ激おこ!」
激おこ!ってなんだ。
テヘ、と笑ったパルキアを私を含めて皆が冷めた目で見つめた。
「すげぇ怒っててディアルガ追っかけ回してるっぽい。色んな所隠したり塞いだりしてるからこの道は今通れないんだよ」
「なんだ、ミュウツーが迷ったわけじゃなかったのか」
「フン」
ごめんな、と謝ってミュウツーの頭を撫でると横からミロカロスの頭突きが飛んで来て痛い。
「だから、シンヤに間に入ってもらって説得しようと思ってさ」
「土下座でもして謝れば良いだろ」
「なんであのガキんちょに土下座しなきゃいけないんだよ、ヤだよ」
コイツらめんどくさいな。
そもそもパルキアからギラティナに対して申し訳ないという気持ちが伝わって来ない。反省ゼロか。
「シンヤが言えば一発だろ?ちょっと機嫌直せって言ってやってよ」
「ギラティナの機嫌を直しても私の機嫌は直らないぞ、パルキア」
「え?なんか怒ってんの?」
首を傾げたパルキアの言葉にひくりと口元が引き攣ったのが分かった。
反省ゼロだな!
「私のことで喧嘩してたんじゃないのか?」
「ああ、そうだな…」
「その時、私のことを忘れて放りだしただろう?」
「あ、ああー…、あれは何か…ごめんね?」
あはは、と苦笑いを零すパルキア。
笑い事じゃない、とミロカロスが怒って睨めばパルキアはすみませんと頭を下げた。
「その事に関しては謝罪だけで許してやろう」
「おー」
「ただ、お前とディアルガの喧嘩で私が死にかけた事についてはどうしてくれる?」
「……へ?」
「ぶっ倒れた」
「う、嘘ぉ?」
「こんな嘘を吐くか!」
私とパルキアの会話にミミロップが眉間に皺を寄せて、「どういうこと?」と疑問を口に出す。
「シンヤ、いつ倒れたの!?」
「今は黙ってろ」
私がそう言えばミミロップは口を閉じた。
パルキアが頭を抱えて「ヤバイ」と言葉を零した。
「そこまで酷いのか…、てことは管理してるオレらに何かあっても影響がシンヤに行くかも…」
「!」
「ギラティナとディアルガ止めないとマズイ…、オレら下手なこと出来ねぇ!」
*
とりあえず反転世界に行こう。
そのパルキアの言葉に納得いかないと口を尖らせるミロカロス達をボールに戻した。
後でちゃんと話す、と約束して…。
「反転世界にどうやって行くんだ?」
「無理やりこじ開けて入る、けどソレでシンヤに影響があるかは分からない」
「頭痛くらいですむなら構わないが…」
「ハッキリ言って予想外だ…。シンヤが死んだら世界が消えるって言ってた通り、シンヤに何かあったら世界に影響がある。そう思ってた」
「逆だった、って事だな」
ミュウツーの言葉にパルキアが頷く。
「人間の起こした些細な事なら問題ないと思う。ただ、オレら役割りを担うポケモンが起こした事に関してかなりの影響を受けるとなるとシンヤの寿命がごりごり削られていく…」
「私が死んだら世界は消えるって言うのは無しになるか?」
「消えるっていうより大きく歪む。オレが死ねば空間が不安定になると思うし、ディアルガが死ねば時が不安定になる。まあ、死んだことないからハッキリとは言えないけど影響は必ずある。シンヤはオレらの一部だ。同じく大きな影響は出る」
「シンヤだけお前達の起こした問題の代償を受け続けるのか。それはあまりにも酷だろう?シンヤが背負うには重すぎる」
「分かってる。いや、今、分かったことだから。バカやっちまったって思ってる。オレらのどっちがシンヤを所有するかとかそんなのじゃない。オレらは自分の半身とも言えるシンヤを守らないと…。空間も時も守れない…」
私はパルキア、ディアルガの半身になったのか?
なんかどんどん人間離れしていくな…。
「なんなんだ、結果的にお前達はシンヤをどうしたいんだ」
「いやぁ…ややこしいもん誕生させちゃったなぁと思ってるけど」
私もややこしいものにされたなぁと思ってる。
「シンヤを創ったのか…?」
「まあ、創ったっていうと創ったね。一から」
「…自分が何故こんなにもシンヤに肩を持つのか分かった気がする」
「?」
「私は何があってもシンヤを庇護する。そしてシンヤを創ったというお前達にも責任を持ち協力してもらうぞ…!」
「わ、分かってるよ…!シンヤはちゃんと守るよ!」
シンヤ、安心しろ無駄に死なせる真似はさせない!と何故かミュウツーが意気込んでいる。
よく分からんが強力な味方がついた。
コイツ、マジでこわい。とパルキアがミュウツーに怯えている姿が面白いので笑っておくことにしよう。
じゃあ、反転世界行くぞ!と言ったパルキアに「おー」と返事を返したらミュウツーに怒られた。
あそこ無理やり入るの難しいんだよな、とパルキアが文句を言っている時に空からズシンとディアルガが降って来た。
「おお」
「…」
「お前ー!!」
ポケモンの姿から人の姿へと変わったディアルガが眉間に皺を寄せて深い息を吐いた。
「ギラティナの奴、かなり怒ってるぞ…。めんどくさい」
「ディアルガ!大変な事になった!すぐにギラティナと話をしねぇと!」
「アイツなら反転世界に閉じ込めておいた。あそこで一生ループしてれば良い」
何をやったんだ、ギラティナ。ディアルガ怒ってるぞ。
不機嫌なディアルガにパルキアが掴みかかる勢いで迫る。鬱陶しかったのかグーパンチで距離をとられていたが。
「シンヤの事なんだけど!」
「?」
騒がしく説明するパルキア。途中、唾が飛んだのかディアルガが眉間に皺を寄せたが事情を把握した途端、ディアルガは顔色を悪くした。
「ギラティナが下手に暴れる前に回収しないとマズイな」
「お前が怒らせたんだろ!」
「アイツが先に攻撃して来たんだ!」
「それはオレらが暴れて反転世界めちゃくちゃにしたからだろ!」
「じゃあ、お前が謝って来い」
「ディアルガが行けよ!オレはアイツに頭下げんの嫌だ!」
「俺はもっと嫌だ」
「なっ!?なら、オレはもっともっと嫌だ!」
「もっともっともっと嫌だ」
「!?、もっともっともっともっと嫌だ!」
相変わらずの漫才だな。
隣で聞いていたミュウツーが「いい加減にしろ」と苛立ったように止めた。
「なんにせよ、喧嘩は止めだ」
「おう」
「アルセウスを叩き起こすことも考えよう」
「お、おう…」
「お前が起こせ」
「嫌だ!」
「俺も嫌だ」
「オレの方が嫌だ!」
「いい加減にしろ!!!」
トリオ漫才か?
ギラティナが暴れる前に止めるんだろ!ここで馬鹿な会話をしている場合じゃないだろう!とミュウツーに本気で説教される神二体。
情けない。こんな奴らに任せていて大丈夫なのだろうか…。
「さっさと反転世界へ行くぞ!道を作れ!」
「はい!」
ビシとパルキアが敬礼した。
ミュウツーがそんなに怖いのか…。
不満気なディアルガの背を押したところでズキンと頭の左側に痛みが走る。
ズキン、ズキン、………。
あ、これ危ない奴じゃないか?と思った瞬間、ギラティナの苦しむ声が頭に響く。
目の前のディアルガの背を皺になるほど握った。痛い、痛い、痛い…!
「シンヤ…?」
ぐるぐるぐる、目の前が回る。
痛い、苦しい、気持ち悪い…!
「ぅぐ、っ…」
我慢出来ずに胃の中のものを吐き出した。
「シンヤ!!」
「急に何だ!?」
「ギラティナが暴れてるんじゃねぇか!?」
「俺が見てくる!!パルキア、お前はシンヤを移動させろ!!」
「わ、わかった!」
*