一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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「おかえり、シンヤ!!」

 

ギラティナの反転世界、懐かしの家を見上げたところでギラティナが飛びついて来る。

やっとここに戻って来た。

ずっと放置だった家の中が不安だ。ギラティナが掃除なんて器用な真似出来るはずもないし…。

 

「まずは掃除だろうな…」

「んー?いや、そこは大丈夫。ずっと住んでる奴らが居るから綺麗だと思うぜ?」

 

ギラティナの言葉にミミロップが「は?」と間抜けな声を漏らした。

玄関の扉を開ければ顔面に生温かい物体が飛んで来た。ぷにぷにしているその物体を鷲掴み引き剥がせばピンク色の耳なのか触角なのかがぴょこぴょこ動いていた。

 

「エムリット…」

< おっす! >

 

おやつくれ!と小さな手をあげたエムリットを見て苦笑いが零れる。

 

< シンヤさん、おかえりなさい >

「ただいま、ユクシー。待たせたな」

< 我達にはあっという間です >

「そうか」

 

エムリットとユクシーを両手に抱えたところで出遅れたらしいアグノムが口を尖らせてこちらを見ていた。あいつ、また半泣きだな。

 

< 我もハグっ…!! >

「よしこい」

< ハグゥウウ!!! >

 

三匹を抱きしめているとギラティナにキョトンと不思議そうな目で見られた。

 

「シンヤ、なんか甘くなったな…」

「…そう、か?」

「ポケモン限定でゲロ甘ですの」

「原型好きだよな」

「スキンシップ好きになりましたよね」

 

サーナイト、ブラッキー、エーフィの言葉にギラティナは「へー!」と珍しい物でも見るように目を見開いて私を見た。

 

「そういや、さっき抱き付いても確かに嫌がられなかった!」

「……」

 

嫌な時は嫌だぞ、と思いつつ部屋へと入る。

ユクシーがきっと綺麗にしてくれていたんだろう、家の中は記憶と寸分も違わないまま。

ギラティナに許可貰ってここに住み始めた頃が懐かしいな…。

 

< なあなあ、ヤマトは? >

「今度、紹介してやる」

< 我のこと忘れてるんだろ…、ヤマトはヤマトでも別人だもんな… >

「…」

< また仲良くなれるかなー… >

 

前以上に甘やかしてくれると思うけど…。

自分の尻尾を掴みながらくるくると空中を回っているアグノム。この様子を見て可愛いな、と思っている私も大分変わったんだろう。

 

「ご主人様ー、冷蔵庫が空っぽです!!」

< 我達は料理なんてしませんからね… >

「よし、誰か買い出し行って来い」

「あ、じゃあ俺が行ってきます」

「オレも行こーっと!」

 

トゲキッスとブラッキーが部屋を出て行った。ブラッキーの奴、絶対に余計な物まで買ってくるな…。

 

「主…、書庫が…埃だらけだ…」

「なんだと!?」

「マジか!?」

 

サマヨールの言葉に慌ててミミロップと共に書庫へ走る。書庫として使っている部屋の扉を開けると埃っぽい。

ユクシーは本は読みません~、なんて言って我関せず…。

 

「カビ臭い!!」

「ごほっ、ごほ…っ」

 

これは虫干しして貴重な本は薬用エタノールで拭かないとマズイな…。

 

「掃除だ!!掃除するぞ!!」

「き、貴重な古文書がぁぁぁ…」

「ミミロー、まだ動かすな…、マスクを取って来るまで待っていろ…」

 

帰って来てすぐに何遊んでんだよ、とエムリットにバカにされた。ハンと鼻で笑われた。

腹が立ったのでおやつは抜きだと鼻で笑って返してやったら、本気で泣いた。

リビングに戻れば、チルタリスがキッチンが汚い…と嘆いている。冷蔵庫が空っぽなうえに料理をしていないからキッチンも埃まみれだったんだろう。

ソファにどかりと座っているミュウツーと、埃を被った皿を拭いていたエーフィ、サーナイトのエスパー組に声を掛けた。

 

「書庫の本をサイコキネシスで外に運び出せ」

「「「……」」」

 

エスパータイプを何だと思ってるんだとミュウツーに怒られたが、貴重な本の危機だと言えばミュウツーは黙々と作業を始めた。

庭でごろごろしていたギラティナを叩き起してチルタリスの手伝いをするように指示を出す。やっぱりシンヤはシンヤだと何か文句を言いながらキッチンへと歩いて行った。

 

「ミロカロスは…その目で大丈夫か?」

「俺様、平気!!」

 

まあ、私も何故か痛みもなくて全然平気。

視界は多少悪いが包帯をすぐに外すわけにもいかないので我慢だ。

 

「ならミロカロスもキッチンで手伝いを頼む」

「わかったー」

 

天井付近をふよふよ浮いている三匹を見据えて積み上げられた皿をビシと指差す。

 

「エーフィとサーナイトの引き継ぎをやってもらおうか」

< えー!!なんでだよ!!! >

< 我、やりたくなーい!! >

< シンヤさんに逆らうのはやめておいた方が良いです… >

< めんどくさーい!! >

 

文句を言うエムリットとアグノム。ユクシーは小さな手で皿を拭き始めた。

 

< そんなのやったことねぇもん!皿割っちゃうかも! >

< 我、不器用だから! >

「お前たちもエスパータイプだろ。むしろ割って落とす方が可笑しい」

< まあな! >

< 浮かせとけば良いもんな! >

「さっさとやれ。おやつ抜きご飯抜きにするぞ!」

< 鬼だ! >

< 悪魔だ! >

 

エムリットとアグノムが文句を言いながら皿をびゅんびゅんと飛ばす。可愛いとは思うが私はヤマトみたいに全てを甘やかすわけじゃない。

二匹の頭に一発ずつ拳骨を落としておいた。

ぴーぴー泣きながらもエムリットとアグノムは皿を拭き始めたので小さく頷く。

 

< だから、我は言ったのに… >

< もっとちゃんと言えよ! >

< シンヤこわいー!!助けてヤマトー!! >

 

*

 

一通り終わった…。

はあ、とリビングのソファに座り込めばミミロップが床にべしょりと倒れる。

エスパータイプが多かったから作業が捗ったな。ミュウツーが出来る奴だから。

 

「あー…ははは、なんか凄い一日だったな」

 

ミミロップの言葉にサーナイトが「全くですわ」と返事を返す。

そういえば、ミミロップ達は私の左目移植手術をやったんだったな…。

 

「ミミロップ、お前…移植手術なんてよく出来たな」

「…え、いや、ワタシは口で言ってただけで執刀したのはツーだよ」

「でもちゃんと指示を出せたってことだろ?成長したな」

「っ!!、それはほら!!シンヤの手術するの見てたし!!まだちゃんと視力あるか分かんねーし!!」

 

顔を真っ赤にして首を横に振るミミロップ。

照れて居た堪れないらしい。そんなミミロップを見てブラッキーが必死に笑いを堪えていた。

 

「胸を張って良い、的確な素晴らしい指示だった」

「執刀医が褒めてるぞ、ミミロップ」

「ううっ…、いや、そんな…!!」

 

ミュウツーがニヤリと笑ったのを見たブラッキーを筆頭にみんなの顔がニヤニヤと悪い顔になっていく。

 

「ミミロー超頑張ってたよ!!マジかっこよかったって!!」

「本気の目が素敵でしたものね!!」

「私に回復技、あさのひざしを指示してキッスにはにほんばれを指示…。あの状況で素晴らしい判断でしたよね」

「俺もお手伝い出来て嬉しかったです!」

「チルへ、しんぴのまもりを指示し…自分達の混乱を防いだのも…素晴らしかった…」

「そうですよね!チルはそんなこと咄嗟に思い付けませんでした!」

 

わざと褒めているブラッキー達とは違って、純粋にミミロップを褒めているトゲキッス達も居るんだが…。ミミロップにはほとんど拷問に近いんだろう。

ミミロップの目にだんだんと涙が溜まってきた…。もうやめようかな、私が言い出したことだけど…。

 

「いつも意地悪言うからミミローのこと嫌いだったけど、今日は凄かった!!ありがとうっ、ミミロー!!」

「も、もうっ、やめろぉおおおお!!!!」

 

うわぁああああん!!とミミローが部屋を飛び出した。

キョトンとするミロカロスの隣でブラッキーがゲラゲラと腹を抱えて笑う。

 

「ミミローさんったら可愛いですわっ!!…うふふっ」

「ほんと、珍しいもの見れましたよ、…あははっ!!」

「やべぇ!!腹痛い!!だめ!!死んじゃう!!助けてミミロー!!…ぶはっ、ははははははっ!!!」

 

全く、しょうがない奴らだな…。

 

「後でミミロップに謝っておけよ」

「「「はーい」」」

 

*

 

チルタリスとトゲキッスが食事の用意をするとキッチンへ向かい。二階に逃げてしまったミミロップが部屋から出て来ないからとサマヨールが様子を見に。ブラッキーとエーフィ、サーナイトが謝りに二階へ向かった。

 

「私は反転世界を見て来る」

「え…、見たいの?下手に触られると困るんだけど…」

「なら、お前も来い」

「なんだテメェ、偉そうにしやがってやるかコラ」

「負ける気はしない」

「上等だ、表出ろ」

 

良い勝負しそうだなお前達…。

仲良くしろよ、と声を掛けたらミュウツーとギラティナは揃って片手をヒラリと振ったのでまあ上手くやるだろう。

 

< 我も行く! >

< ヤマト見れるか!? >

< …それじゃあ、我も… >

 

エムリット達がギラティナについて行った。

ユクシーまでついて行ったのは何でだ。と思ったが、ミロカロスがテレビの電源を入れたことに「ああ」と一人納得した。

 

「別に気を遣ってくれなくても良いのにな」

「ん?」

「軽く、寝る…」

「え!?じゃあ、テレビ消す!!」

 

ブチ、とテレビを消したミロカロスが私の肩に頭を置いた。重い、邪魔、とは思ったが振り払おうとまでは思わなかった。

眠た、い…。

 

「あ、仲良く寝ちゃってますね」

「うーん、ならご飯は少し後にしようか」

「ですね!」

 

*

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