一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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一度、反転世界に一緒に来たヤマトはアグノムを連れてポケモンセンターの方に帰った。寝泊まりはそっちでしないと急に居なくなったらジョーイが驚くからな。

アグノムは勝手について行った。

そして、私はダイエットメニューをチルタリスとミミロップに相談して考えるわけなんだが…。

 

「ワタクシの分も明日からこれにして欲しいですわ」

「私も少し落としたいので…」

 

サーナイトとエーフィがダイエットメニューにして欲しいとチルタリスを困らせている。めんどくさいなお前達。

 

「とりあえず、一ヶ月のメニューと一週間サイクルのおやつで良いんじゃない?」

「お料理好きの方ならそこからアレンジメニューも作れるでしょうしね」

「問題は一ヶ月もポチエナの根気が持つか、だな…」

「そこだよなー」

「高カロリーの物が好きなら少し物足りない食事が続きますもんね…」

「ワタシ、一週間で飽きると思うな!」

「ご、ご主人様が考えたメニューなんですからきっと一ヶ月頑張れますよ!!」

「いや…私は三日だな」

「「えぇー…」」

 

おやつ自体も特別なものとはいえ、カロリーは低いしボリュームも無い。味は悪くないと思うんだけどな…。悪タイプの好きな味で…。

試作品、おやつを食べたブラッキーの感想が「美味い!けど物足りない!もっと!」だからな。

 

「ツッキーさん!ちょっと!夜中にそんなに食べないで欲しいですわ!!」

「試食中なんだから別に良いじゃん」

「目に毒!!」

「はぁ?」

 

耐えられませんわ!とサーナイトがボールに逃げる。眠たくなったエーフィも同じくボールに戻り、早寝のトゲキッスも早々に就寝。

チルタリスもそろそろ限界だろうな。

 

「後は私がやるからお前達は寝て良いぞ、チルももう寝ろ」

「はい~、ではお言葉に甘えてお先に失礼致します」

「おやすみ」

 

チルタリスがボールに戻る。

そういえばサマヨールが出掛けてから帰って来てないが、まあ大丈夫だろう。サマヨールだし。

 

「ワタシまだ平気」

「オレも全然平気っ」

 

ミミロップとブラッキーがケラケラと笑った。

床で丸まって寝ているミロカロスは…まあ、放って置いて大丈夫か。

使っていた膝掛けだけ貸してやろうと、ミロカロスの体の上にぽいと膝掛けを投げておいた。

 

「ワタシ、あんまり太るってことないからな~」

「オレもだわ…、食ってもそんな太らねぇもん」

 

同じく、私もだ。

元々あんまり食べる方じゃないっていうのもあるけどな。

まあ、この手の話をするとサーナイトに怒られるからサーナイトが居るところでは言えないが。

 

「でもさー、ダイエットってそもそも楽しいもんじゃないでしょ。美味しいご飯お腹いっぱい食べれないなんて地獄!!」

「身体壊して死ぬよりマシじゃん」

「それはそうだけど。ダイエットも楽しく出来ないの?」

「楽しく、か…」

 

*

 

翌朝、ポチエナ用の朝食メニューを持ってモモの家へとやって来た。途中で拾ったヤマトも連れて。

 

「おはよう」

「おはようございます」

「モモちゃん、おはよー!」

 

朝からヤマトのテンション鬱陶しいな。

家の中へお邪魔すれば、お腹を空かせたポチエナがぐったりと床に転がっていた。動く気力もないらしい。

そんなにか。

 

「朝食をポチエナにやってくれ…」

「はい」

 

ゆっくり食べなさいと言ったところでポチエナはがつがつと朝食を口いっぱいに入れて食べている。早食いは駄目だぞ。

 

「実は、ダイエットメニューの他に考えたことがあるんだ」

「なんですか?」

「うちのエーフィとサーナイトを預かってもらおうと思う」

「……え?」

「エーフィとサーナイトもダイエットメニューが良いらしい。ポチエナと楽しくダイエットしてもらおうと思ってな」

 

勿論、エーフィとサーナイトの許可は貰っているし、いつでも様子は見に来れるし一時帰宅も問題ない。反転世界の入り口はいつでもギラティナが用意するからな。

 

「みんなでダイエットすれば楽しい作戦かー!考えたね!」

「ポチちゃんにお友達が…」

「うちの連中は勝手にふらふら歩き回ってるからな、他の奴らも来ると思うが仲良くしてやってくれ」

「良いね!僕のユキワラシとも仲良くしてあげて!色違いの子なんだよ!」

「は、はい」

 

よし、と頷いてカバンからノートを取り出す。

 

「一ヶ月のメニューとダイエット用のおやつのレシピだ。健康的に美しく痩せるが目標だからな」

「頑張ります」

 

ノートを握りしめて頷いたモモ。

朝食を早々に食べ終えたらしいポチエナを見て、ボールからエーフィとサーナイトを出す。

 

「きゃう?」

「仲良くな」

「フィー」

「サナサナー!!」

 

サーナイトがポチエナの体を触る。

医療知識のあるサーナイトも観察したい対象ではあるよな。分かるぞ、私もとりあえず手が出たからな。

 

「サナー!!」

「きゃぅー」

「フィーフィ!」

 

楽しげに会話を始めた三匹を見下ろす。

可笑しい、エーフィもサーナイトもオスなのに会話が女子だ。ちなみにポチエナはちゃんとしたメス。

まあ、仲良く出来るなら良いか…。

ヤマトがボールから出したユキワラシもとことこと三匹の傍に寄って行った。

 

「ユキ!」

「きゃう!」

 

仲良く出来そうだねー、とヤマトがへらりと笑った。

 

「嬉しい、ポチちゃんにお友達」

「ユキワラシ、意外と女の子達と仲良く出来るんだよねー」

「……何で意外なんだ?」

「え、僕はあんまりだから」

「お前とユキワラシは関係ないだろ」

「まあ、そうだけど。同じ男としてちょっと羨ましいというかなんというか…」

「…ユキワラシ、メスだぞ」

「………」

「……お前…」

「……え、」

「…嘘だろ」

 

お前、何年相棒やって貰ってると思ってるんだ。こいつ酷いな、最低だな。

 

「…え…、いつから?」

「出会った頃から」

 

*

 

女の子だったなんて…、僕は…僕は…と一人嘆いているヤマトを放置しておいてモモに声を掛ける。

 

「これから仕事か」

「はい、夕方まで」

「ポチエナはいつもどうしてたんだ?」

「お留守番です。お昼ご飯たくさん置いてました」

 

好きな時に好きなだけ食べなさいってことか…。それは太る。

 

「エーフィとサーナイトが居る間は良いが…、今後はボールに居れて連れ歩くようにした方が良いな、昼食も一緒に食べると良い」

「ポチちゃん、あまりお外に出たがらないの…。お買い物は外でご飯が食べられるから好きなんですけど…」

「買い食いさせるからだ」

「欲しがるの…」

 

しょんぼりと肩を落としたモモ。

ポチエナの楽しみが食べることだけというのが太る原因の一つだろう。

そこで楽しく痩せる作戦その2がある。その1はダイエット仲間と一緒に痩せるだ。

 

「楽しく痩せる作戦その2」

「はい」

「健康的で美しい指導者と運動」

「健康的で美しい指導者…」

「誰それ!!」

 

ヤマトが食い付いた。が、無視。

痩せる為には見本となる存在が必要だ。周りに太った者が居れば安心感がある。自分はまだ大丈夫。そう思っている者の体重が減るわけがない。

この人のようになろう、そう思わせる為に健康的で美しい指導者が必要になるわけだ。

 

「その指導者の方はこちらです」

 

じゃじゃーん、と扉の方に手をやればヤマトとモモの視線が扉へと向く。

扉をバンと開けて仁王立ちするのはうちのミミロップことミミローくんだ。

 

「ミミローくんだね」

 

そう、ミミローくんだ。

 

「健康管理に厳しく、美しい身体を維持する為の運動を毎日しているミミローくんだ。普段から健康に気を遣い運動を怠らないミミローは自身で太りにくい体質を作りあげている」

「プロじゃーん!!!」

「私も隈を作ると怒られる」

「すごい厳しいね…」

「厳しい…」

 

ヤマトの言葉に私は頷いた。本当に厳しい。

健康第一、無病息災を本気で掲げてるからな…。医者の鏡だ。

 

「やるからにはとことんやるから覚悟しとけ肥満共!!」

「えぇー!!酷いっ!!」

「サナサナー!!」

「フィー…」

「サーナイトはとりあえず10キロくらい走って来い」

「サナァアアア!?!?」

 

苛めるのはやめてあげなさい。

仕事に行って大丈夫か、モモが本気で迷ってるから。

 

「シンヤさん…」

「大丈夫だ、私も付き添うから。気を付けて行って来い」

「はい…。では、いってきます」

 

よろしくお願いします、と家を出たモモをヤマトが手を振って見送った。

ポチエナは本当に軽い運動から、庭を転がってるくらいで十分だろう。とりあえず動かそう。

 

「じゃあ、シンヤ」

「ん?」

「着替えて。はい、服」

「私もか」

「ついでにシンヤも運動したら良いと思って。デスクワーク鈍るし」

 

ここで私だけサボってるわけにはいかないしな…。渋々、ミミロップから服を受け取った。

あ、ジャージだ。

 

*

 

ジャージに着替えた私とミミロップ。

ヤマトがポチエナを抱えて庭へと降ろした。ずっしり感が凄いな。

 

「移動させました!先生よろしくお願いします!」

「よし、ひたすら転がす作業を始めろ!」

「…え、僕が?」

「転がされてるだけでも筋肉使うから、とりあえずそこから」

 

早く転がせよ。と急かされてヤマトはポチエナをコロコロと一生懸命転がし始めた。

ポチエナを無理に走らせたりすると足に負担が掛かるからな。ボールに手足生えてるみたいになってるし…。

 

「私もストレッチでもして体をほぐすか…」

「フィー」

「サーナ、サーナ」

 

え、僕はひたすらポチエナ転がすだけ?とヤマトが疑問を口にしたが無視しておいた。

 

「そういえばー、シンヤー」

「なんだ」

「ミロちゃん今日は連れて来てないの?」

「ああ、寝てたからな」

「起きた時、怒るんじゃないのー?」

「朝早くに出るって言ってたのに起きないアイツが悪い」

「彼女にそれは冷たいんじゃないのー?」

「彼女じゃないしな」

「え!?」

「男だし」

「ああ、そういう意味か…。でも、彼女でしょ。恋人同士なんだから」

「男同士で彼氏彼女なんて言い方するもんなのか?」

「…いや、僕は知らないけど」

「私も知らん」

 

ぐーっと前屈しながらヤマトに返事を返す。

あ、なんか硬くなったかもしれない。運動不足だな…。

 

「シンヤ、転がすの代わってよ。僕、疲れた…」

「もうか?」

「重いから腕が疲れるんだもん…」

 

腕がだるいとヤマトが横になった。ポケモンレンジャーのくせに情けないな。

仕方ない、とヤマトの代わりにポチエナを転がす。重量ハンパない。

 

「なんだこの作業感…、もう嫌になる…!」

「あ、でもポチエナ可愛いよ。ポチちゃん、ごろごろされて気持ち良いね~」

「きゃう~」

「「…可愛いっ!」」

 

コイツ可愛いぞ、重量感も愛しいねとヤマトと楽しく転がしていたらミミロップに冷たい目で見られた。

 

「真面目にやってくれる?」

「はい…」

「すみません…」

 

*

 

転がるのは楽しいと思わせる為にヤマトがポチエナと一緒にコロコロと芝生の上を転がる。

ポチエナも楽しそうに転がっているから順調だな。

ミミロップに扱かれてサーナイトがバテた。エーフィは木の陰でサボっている。ポチエナに悪影響だから、だらけるのはやめてほしい。

エーフィも一緒に転がってこいと声を掛けて、嫌ですと返事が返って来た時。家のチャイムが鳴った。ピンポーンという音にヤマトが体を起こす。

 

「誰か来たね」

「出て来る」

 

私が玄関へと行けば頬を膨らませたミロカロスが居た。おそよう、ねぼすけ。

 

「起こしてよ!!」

「声は掛けた」

「嘘だ!!」

「本当だ」

 

ちゃんとトゲキッスが声を掛けた。アイツは優しいから無理に起こしたりしないんだよな。

起きなかった俺様が悪いのか…、と肩を落としたミロカロスの後ろからブラッキーが顔を出した。

 

「順調?」

「今の所な、楽しく転がってるぞ」

「転がってんの!?なんだそれ!転がる運動しか出来ないくらい太ってヤバイわけ?超ウケる!!」

「これぐらい丸い」

 

これぐらいとミロカロスが両手で表した。まあ、それぐらい丸いなと私も頷く。

 

「それデカイな!!オレもそのポチエナ見たい!!何処に居んの?」

「庭だ」

 

楽しそうに庭の方へと歩いて行くブラッキーの後を追いかける。そろそろ昼食の用意しないと…。

「あ、ツキくん」とヤマトの声。その後にブラッキーのよく分からない奇声が聞こえて来た。

 

「どぅええええええ!?」

「どえ?」

 

ミロカロスが首を傾げる。

 

「ポチ、ポチエナ…!!!」

 

ポチエナを指差しながらブラッキーがこちらを見たので、うんと頷いて返してやる。うん、ポチエナだな。

 

「女の子じゃん!!!」

「だから何だ」

「ちょ…っ、かなり可愛いんだけど。このフォルム、すごいエロいし!!!」

「…へえ」

 

ポケモン目線だとそんな風に見えるもんなのか…?

そうなのか?とミロカロスに聞けば、「超デブ」と返って来た。

 

「ポ、ポチエナちゃん、こんちはっ!」

「きゃうっ」

「ぐおおおおお!!激かわあああああ!!!」

「ポチちゃん可愛いよね~」

「可愛すぎてヤバイ!!」

「くぅん…」

「オレ、ブラッキー!!!シンヤの手持ち!!よろしくね!!!今度、一緒に遊びに行こうぜ!!!」

「…きゃう」

「ご飯!!ご飯行こう!!」

 

ダイエット中だぞ。やめろ。

がし、とブラッキーの頭を掴んで力を入れればブラッキーは「あああああ」と悲鳴をあげた。

 

「食事制限中だ」

「あー…」

「痩せないとポチエナの身体に悪いからな。病気になったら可哀想だろう?」

「うん、確かに。でも、今でも十分可愛いから、もうちょい体重落とすくらいで全然オッケーだよ!ポチちゃん!!」

「きゃぅ~」

「シンヤの許可でたら一緒に遊びに行こう!!」

「がうっ」

「しゃぁっ!!!面白いとこ探しとくから楽しみにしといて!!!ポチちゃんもその代わり頑張って、早くシンヤの許可貰ってくれよな!!」

「がぅがぅ!」

 

びし、と親指を立てたブラッキーにゴンとわりと大きめの石が飛んできた。石はブラッキーの頭に当たったがブラッキーは頭をぽりぽりとかいただけ。丈夫だな。

石っていうかもう岩っぽいぞ、この石。

 

「なに?」

「サナサナー!!!」

「帰れ、クソ野郎!」

 

サーナイトとミミロップが石とか草を投げて来る。やめて、私にも当たる。

ゴッ、と鈍い音を立てて石がヤマトに命中した。ヤマトはその場に倒れた。流血沙汰はやめてほしい。

 

「いたーい!!」

「シンヤ、なんかアイツら石投げてくるんだけど!!」

 

なんで喧嘩するんだお前たちは。

 

「サナー!!」

「ツキ、こういう時の為に覚えたワタシの"きあいだま"を食らえ」

「えええええ!?ちょい待ち!!それヤダ!!!やめて!!こわい!!」

 

ポケモンの姿に戻ったミミロップが技を放つ為に構えた。アイツ、本当に打つ気だ!!

慌ててポチエナを抱きかかえてその場から離れる。

ミミロップの放ったきあいだまは結果、外れた。命中率高くないからな…。

外れたことに怒っているミミロップがブラッキーに飛び掛かりそうだったので慌てて捕まえる。

 

「ミミィ!!」

「人の家で暴れるんじゃない…」

「…サナ…」

「なんだよ!!なんで怒るんだよ!!あっぶねぇ!!めっちゃあぶねぇ!!!」

 

心臓バクバクしてる。と胸を押さえてうずくまるブラッキー。まあ、きあいだまだったしな。

 

「サナサナー!!」

「えー?遊びに行っても良いじゃん。痩せた後のお楽しみっての?」

「ミミィ!!」

「なんで?みんなで遊びに行こーよ!!なあ!ポチちゃん!!」

「きゃうきゃう!!」

「ほら!!みんなで行きたいって!!」

「サ、サナ…」

「…ミィ」

「???」

 

サーナイトとミミロップが溜息を吐いた。

こういう奴だったか、こういう男でしたわね、と何故か二人で項垂れている。一体なんなんだ。

 

「よく分かんねぇけど、オレも一緒に運動したいから公園行こーよ」

「今日は庭だけだ」

「狭いじゃん」

「今は狭くて良いんだ、また今度にしろ」

 

もっと広い所で走り回ろうよー、他のポケモン達も居るしー!!と文句を言うブラッキーをエーフィが我慢しなさいと宥める。

 

「オレは遊びに行く!!」

「フィー…」

 

ブラッキーが庭から飛び出して行った。協力する気はゼロだな。

やれやれと溜息を吐いたが足元を見れば尻尾を振ったポチエナ。

 

「きゃうきゃぅ!!」

「……」

 

早く痩せてお外で遊びたい!そう言って目を輝かせたポチエナには自由なブラッキーの姿がこうなりたいと思う目標となったのかもしれない。

 

「よし、まずは健康的な食事だ」

「がぅ!」

 

でも、ブラッキーのようになるのは…どうかと思うけどな。

遊び回ってモモに迷惑を掛けないと良いが…。女の子だから大丈夫だと思いたい。

 

「……」

「きゃぅ?」

 

*

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