一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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リビングのソファに座って、ずずずとお茶を啜る。

同じようにお茶を啜ったミロカロス…。二人。

出掛けたミロカロスがツバキの所から色違いのミロカロスであるイロを連れて帰って来た。なんでもイロが私に会いたいから連れて行ってくれとミロカロスに頼んだらしい。

…で、用件はなんだ。

 

「ああああああ、あの…っ」

「…なんだ」

「ご、ご相談がっ、あり、まして…」

「言ってみろ」

「はいっ、あの…その…えっと…ですね…」

 

早く言えよ、とミロカロスが目を細めて呟いた。

どうやら頼まれたから連れて来たものの用件はミロカロス自身も知らないらしい。

 

「実はっ!!」

「「うん」」

「エンペラーさんのことが、好きなんです!!」

「…そうか」

「ふーん」

 

顔を真っ赤にして言ったイロは可愛いと思うけど、だからどうしたな内容に私は再びお茶を啜った。あ、もうぬるい。

 

「チルー、お茶淹れてくれー」

「はーい、すぐにご用意しますー」

 

キッチンの方に居たチルタリスが急須とまんじゅうをお盆に乗せてやって来た。湯呑みに注がれた熱いお茶の湯気を眺めてまんじゅうを頬張る。

隣で同じようにまんじゅうを食べたミロカロスが「これ美味しいね」と話かけて来たので頷いて返す。

 

「ツキさんがお土産に買って来てくれたんです。何処に行っていたかは存じませんが」

「黄色あんこ!!」

「黄身あん」

「きみあーん」

 

ミロカロスが二つ目のまんじゅうに手を伸ばした時、イロがテーブルを叩いた。

 

「相談に乗って下さいぃいい!!」

「どーでもいい、帰れ」

 

ずば、とミロカロスが斬って返す。

ミロさんのバカーとイロが泣きだした。

 

「イロ、私にどうしろと言うんだ」

「…どうしたら良いか教えて欲しいんです…」

「知るか」

「うええええええん!!」

 

泣かれても困る。どうしたら良いか聞いたのに、どうしたら良いか教えろってどういうことだ。もう意味が分からん。

 

「じゃ、じゃあ!!エンペラーさんは私のことどう思ってると思います!?」

「ツバキの手持ちだと思ってる」

「色違いだと思ってる」

 

私とミロカロスの答えにイロが再び泣いた。

 

「な、なら…、エンペラーさんに好きな人って居ると思いますか…?」

「……ツバキ?」

「かなぁ?」

 

しらね。っていうかどーでもいい。とミロカロスがまたズバリと斬り捨てた。

 

「私、ツバキ博士のお手伝いしてるうちに…傍に居るエンペラーさんのこと気になって来ちゃって…。最近は気付くと目で追ってて…、エンペラーさんって何が好きなのかなぁとか…考えちゃうんです」

「そうか…」

「俺様、送ってあげる。帰れ」

 

にこりと笑ったミロカロスにイロが再び泣く。お前達、意外と仲良くやってるんだな…。

 

「ミロさん!!真剣に聞いて下さいよ!!私、本気なんです!!真面目に話してるんです!!」

「だって、どーでも良いもん」

「この前、綺麗な洗濯物の畳み方教えてあげたでしょ!?次は私のお願い聞いて下さい!!」

「ぶー!!!わかったよ!!じゃあ、俺様がエンペラーに聞いて来るよ!!」

「直接とかダメダメダメー!!!」

 

さてと、途中の仕事を片付けてしまおうかなと湯呑み片手に立ちあがればガシと腕を掴まれた。

 

「…ん?」

「シンヤさん!!お願いします!!それとなーく、探って下さい!!エンペラーさんが私のことどう思ってるか!!」

「えぇぇー…」

 

ツバキの所に今、用事無いし…。いや、話すべき大事な事はあるけど…。

ツバキに関しては家族が集まった時についでに来て貰って話す予定だしな…。個別に説明するとかめんどくさい。

 

「シンヤさん…!!お願いします!!」

 

大きな目に涙を溜めて頼まれるとなぁ…。可愛いからなぁ…、くそぅ…。

 

「まあ、ツバキの所までの移動に時間を取るわけじゃないからな…少し顔を出すくらいなら…」

 

ツバキの所まで直通でギラティナに繋げて貰えば良いだけだし。

 

*

 

ちょっと時間が出来たので遊びに来ました。とぎこちなく言えばツバキは両手をあげて歓迎してくれた。

そのツバキの隣に居たエンペラーは「槍でも降って来るの?」と真顔で言った。

 

「遠路遥々いらっしゃいませ。エンペラー、お茶!!」

 

いや、徒歩2分だった。とはまだ言うつもりがないので黙ったままソファに座る。

 

「はい、お茶」

「ありがとう」

「……あれ?あたしには?」

 

エンペラーから受け取ったお茶を啜る。うーん、渋い。淹れ方が下手だな…。

おいこら、とエンペラーの腕を掴んだツバキ。そんなツバキを無視してエンペラーが首を傾げた。

 

「シンヤさん、トゲキッス連れてる?カバン持ってないけど」

「え…」

 

やばい、そういえば身一つで来た。徒歩2分で来たから。出てすぐだから…。

 

「そういえば手ぶらだねぇ」

「すぐ帰るから置いて来たんだ…」

「すぐ帰るって言ったって…、ポケモンセンターに置いて来たの?不用心じゃない?」

「まあ、大丈夫だから気にするな」

「シンヤさんが大丈夫って言ってるから大丈夫だよ」

 

ね、とエンペラーに言ったツバキ。それでも疑わしげに見て来るエンペラー。

最終的にはまあ良いけど…と無理やり自分を納得させたらしい。カバンは持ってくれば良かったな…。

 

「それでシンヤさん!!わざわざ来てくれたってことは何かあるんでしょ!?そうなんでしょ!?どんな話をしてくれるのかなー!!わくわくー!!」

「え…、うーん…そうだな…、エンペラー」

「なに?」

「好きな食べ物はなんだ?」

「……」

「……え、っと…急に言われると出て来ないけど…」

「じゃあ、考えてくれ」

 

こくりと頷いたエンペラーが眉を寄せて考え出した。

そんなエンペラーと私を見比べてツバキが大きな声を出す。

 

「何をしに来たのかなー!!!」

「エンペラーとお喋りしに?」

「あたしも居るんだけどなー!!!」

 

怒ってるらしいツバキ。いや、だって…用事っていう用事は無いし…。

 

「好きな食べ物は…、ゼリーとか。つるっと食べられる系?」

「あたしと一緒だね」

「っていうか、ここではそんなのばっかり食べてるから」

「あたしが好きだからね」

 

冷蔵庫の中身、大丈夫か…?

あと素麺も好きかな、とエンペラーが言えば。あたしと一緒だね。とツバキが笑った。

食の好みはツバキとほぼ一緒…。

 

「じゃあ、嫌いな物は?」

「ピーマン」

「あたしも嫌いー」

「お前達、なんでも一緒か…」

「仲良しなので」

「不本意だけど付き合い長いからね」

「二人は付き合ってるのか?」

「「……は?」」

 

凄い嫌な顔で返された…。

 

「あたしにはジョシューさんという未来の旦那さんが居るのですがー」

「未来があると良いね」

「うっさい!!想いは伝わる!!」

 

いつかラブラブなのよ!!と拳を握ったツバキを見てエンペラーが鼻で笑った。

いつか…、ねぇ…。

 

「っていうか、シンヤさん」

「なんだ?」

「シンヤさんが人の色恋に口出すとか珍しいね」

「…ちょっと気になって」

「ミロちゃんと喧嘩でもしたの?」

「いや、そんな事はないが…」

 

きょとんとした表情のツバキの横でエンペラーがじとりと私を睨んだ。

 

「僕、鈍い男じゃないんだよね」

「何が?」

「…」

「イロに頼まれたんでしょ?」

 

うーわー。

ばれたー!!

 

「イロちゃん?なんでよ?」

「だって、アイツ。なんか僕に気があるみたいだし」

「はぁ?自意識過剰なんじゃないの?」

「毎日、鬱陶しいくらい視線感じるし声掛けると顔真っ赤にして逃げられるし。変に意識されちゃったなぁって思ってたんだよね」

「シンヤさん、この男、頭可笑しいです。診てあげて」

「…」

 

私が黙り込めば、ツバキが「マジか」と大きく口を開ける。

やっぱりね、とエンペラーが溜息を吐いた。

 

「えぇぇぇえー…、どうしよう…。あたしの可愛いイロちゃんが…!!」

「シンヤさん、僕はポケモンのメスとか無理だって伝えといて」

「おい!!やめろ!!イロちゃんが傷付くでしょ!!」

「いや、だって人の姿になるとはいえポケモンを恋愛対象に見るとか無理だし」

「やめてあげて!!目の前にポケモンのオスを恋愛対象に見てる人いるから!!!」

「…」

 

ぐさぐさ刺してくるな…。別に良いけど…。

ああ、ごめんね。と思い出したかのように、けろりと謝ったエンペラー。

 

「こんな男の何処が良いの!!イロちゃんのお馬鹿!!」

「っていうか、シンヤさんの所のミロはオスだからって思ってたけど。イロも薄いから、ミロカロスってポケモンは総じて薄いものなのかな。僕、もうちょっと欲しいんだよね」

「なんの話?」

「ツバキくらいならまあ良いんじゃない?」

「何がよ」

「胸」

「シンヤさん!!コイツ最低です!!」

 

まあ、確かにイロはうちのミロカロスと並んでも大差無いくらい…。

………、なんて表現したら良いんだろう…。

 

「スレンダー?っていうんじゃないのか?」

「そーだよー!!そーそー!!スレンダー!!素敵な響き!!足とか細くて長くてスーテーキー!!」

「僕、もっと丸い方が良いな。抱き心地が良い感じの。ね、シンヤさん」

「確かに…」

「シンヤさんゴラァ!!どっちの味方だぁああ!!」

「いや、私も細すぎるのはちょっと…」

「だよね。分かる分かる。なんか骨と皮ってどうなの?みたいな」

「だよなぁ…。うちのミロももうちょっと肉を付けさせようと頑張ってはいるんだが…アイツ、すぐに痩せるんだ…」

「シンヤさんが一緒に食べてあげないから」

「私、そんなに食べれない」

「似た者カップルだね」

 

あはは、とエンペラーと笑えばツバキに怒鳴られた。

 

「イロちゃんの気持ちを考えろぉおお!!」

「す、すまん…」

「僕の気持ちも考えて欲しいな」

 

エンペラーの言葉にツバキがふむと腕を組んだ。

どうぞ、言ってみなさいよ。と何故か偉そうに指示されたエンペラー。少し眉を寄せたが頷いて言った。

 

「ポケモンのメスとヤるとか無いわー」

「シャラァアアアップ!!!」

 

Shut up!…な。

エンペラーの胸倉を掴んだツバキ、そのツバキの腕を必死に掴む私。

 

「落ち付けツバキ!!」

「エンペラー!!アンタねぇ!!!ここにポケモンのオスとヤッてる人が…!!」

「Shut up!!」

 

ツバキの頭に拳骨を落としてエンペラーと向き合う。

 

「なんかごめんね、シンヤさん」

「もっと心を込めて謝れ…」

「本気のグーだった…、クソ痛い…っ」

 

冷めたお茶を飲み干して溜息を吐く。

このままイロに報告して良いものか…、エンペラーは全くイロに対して興味が無いらしいし…。

 

「イロの事は放って置けば良いよ。その内、また別の男を気にし出すだろうし。アイツ、尻軽っぽいしさ」

「オイ!!どういうイメージだそれは!!あたしの可愛いイロちゃんになんて事を!!」

「だって、アイツ…ちょっと前までミロの事が好きだったでしょ?」

「そうなの?」

「そうだよ。で、喋ってる内に冷めたのか知らないけど今は全く男として意識してないし」

「仲良しだけどねぇ…」

「絶対にビッチだよ」

「や・め・ろ!!」

 

ガッ、とツバキが再びエンペラーの胸倉を掴んだ。エンペラー、口悪いな。

…まあ、尻軽とは言わず。惚れっぽいらしいイロ。

報告は上手く聞けなかったと謝っておけば良いか…。わざわざちゃんと報告して傷付ける必要も無いだろう…。

言い争いを始めたツバキとエンペラー。もう帰るからな、と声を掛ければ文句を言われたが無視して外に出る。

そして、徒歩2分で家に帰宅。

ツバキが近くのポケモンセンターに行ったとして…私が居なかったら疑問に思うだろうか…。まあ、その時はその時だな。

 

「ただいま」

 

ガチャリとリビングへの扉を開ければソファに座っていたミロカロスが「おかえり」と言って手を振った。

そのミロカロスの向かいのソファに座ったイロと…、ギラティナ。

 

「ギラティナさん…あの、ご趣味は…?」

「は?…え、趣味?あー…、人間観察?」

「素敵なご趣味ですね!!」

「…いや、悪趣味だって自分でも思ってるんだけど…」

「他人に理解されずとも私は理解出来ます!!」

「いや、自分で理解してるって言ったよ…?」

 

ミロカロスの隣に座ればミロカロスは小さく溜息を吐いた。

 

「シンヤが出掛けた後さー、ギラティナが来て…それからずっとこの調子…」

 

俺様、無視されて暇だった。とミロカロスが項垂れた。

 

「私の趣味は…最近、お菓子作りに凝ってまして」

「え!?聞いてねぇけど!?」

「ツバキ博士がゼリー好きなのでゼリーのレパートリーばっかり増えちゃうんです!!」

「まさかの話続行!?え、ちょ、シンヤ…コイツなんなの…!?」

 

オレ、こわい!!とギラティナが少し泣きそうな顔で言った。

少し考えた私は頷いてソファから立ち上がる。

 

「よし、ミロ。外におやつでも食べに行こう」

「えー!?マジでー!?やったー!!」

「喫茶店で良いな」

「良いよ!!」

「ちょ!?え、オイコラ!!シンヤ!?ねえ、ちょっと!!」

 

もう、付き合うのがめんどくさい。

 

「コイツ、蹴り出して良い!?反転世界から蹴り出して良い!?」

「「どうぞ」」

「あ、良いんだ」

 

*

 

しくしく、と泣きながら帰って来たイロを見てツバキが悲鳴をあげた。

 

「イロちゃん!!どうしたの!?」

「うう…運命の人だと思ったのに…」

「はい!?」

「鬱陶しいって蹴り飛ばされました…、私って鬱陶しいですか…?」

 

イロにそう問われたツバキはううんと口籠る。

 

「ねえ、ちょっと」

「は、はい…」

「焼けちゃうんだけど」

「え…!!」

「洗濯物干しっぱなしで出掛けてさ、さっさと取り込んで畳んでくれないと…」

「エンペラーさん…!!私、私やっぱりエンペラーさんだけです!!」

「は?」

 

うふふ、と笑ったイロを見てエンペラーは眉間に皺を寄せた。何を言ってるんだこのビッチはと顔を歪めたエンペラーを見てツバキは目を瞑る。

なんとなく察した。

可愛い可愛い自分のイロが…、エンペラーの洗濯物が焼けるとの発言を。

妬ける…つまり、「嫉妬しちゃうんだけど」と捉えた事をツバキはなんとなく察したのであった。

 

「イロちゃん…!!可愛いけど…あたしは悲しい…!!」

「なんかハシャいでて気持ち悪いね、あのビッチ。良い男でも見付けて来たのかな」

「ビッチって言うな!!ただ思い込みが激しくて天然さんで…男好きなだけ!!」

「クソビッチだね」

 

*

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