一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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「ゲンとかいう奴と仲良くし過ぎだろ」

「良い友人だしな」

「えー、友人…?まあ、友人…ってそんなもんなの、か?」

 

出迎えてくれたギラティナがうーんと唸り出す。

普通に遊んで昼食食べてルカリオのブラッシングとかして来ただけなんだが…、何か問題でもあったのだろうか。

 

「友人ってそもそも居た事ねぇから分かんねぇ…」

「居るだろ良い友人が。随分と気が合ってるみたいだし」

「…………え、誰?」

 

チル?とか言って首を傾げたギラティナ。

まあ、チル達も友人といえば友人かもしれないが…。

 

「ミュウツー」

「ツー!?……良い友人?アイツ、マジで何処見せろだの、あれは何だのとうるせぇよ?」

「仲良しだな」

「えぇぇぇ…、嘘ぉ?仲良しってそんなもんなの…?……あ、比べる基準も知らないから分からない。仲良しなのか俺ら…」

 

うーん、と唸るギラティナ。仲良しである事に少々不服らしい。

家に帰るぞ、と声を掛けようとした時に噂をすればな張本人がこちらへと歩いてくる。

 

「シンヤ、出掛けていたのか」

「ああ」

 

そうか、と頷いたミュウツーはギラティナへと視線をやって眉を寄せる。

 

「何を唸ってる」

「えー…、なんか…うーん」

「まあ、そんなことはどうでも良い。遺跡を見に行きたいから繋げろ」

「……お前、本当にムカつくなぁ」

「シンヤと同じように言ってるつもりだが?」

「違う。なんか違う。俺の気持ち的に違うんだ。お前じゃなんか違うんだって…!」

「良いから早くしろ」

「シンヤは良くてもやっぱり違うんだよ…、なんだこれ、なんか凄い…腹立つ…」

 

ブツブツと文句を言いながらギラティナが踵を返して歩いていく。そのギラティナの背を追うようにミュウツーが歩き出した。

 

「明日に戻る」

「悪さするんじゃないぞ」

「気分次第だ」

 

ニヤ、と笑ったミュウツー。アイツこの前に持ち出し厳禁の書物を勝手に持ち帰って来たからな…。

読みたい連中で回し読みした後にジュンサーさんに返しに行ったが、凄い怒られた。

さて、帰ろうと歩き出した時に後ろから大きな声で呼び止められた。

 

「シンヤー、そういやヤマト来てるー」

 

了解という意味を込めて手を振って返すと両手を振り返された。

ヤマトか、アイツまた夕食でも食べに来たのだろうか…。

 

*

 

「ただいま」

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 

カバンをチルに手渡してソファに座るミロカロスの横に座った。

そして向かいのソファに座るヤマトへと視線をやる。

 

「お前、なんで目が腫れてるんだ?」

「色々と…ありまして…」

「おかえりシンヤ!何処行ってた?誰と行ってた?」

「痛い痛い痛い!」

 

ぎゅーっと手を握られて思わず声が出る。指の骨が折れたらどうしてくれるのか。

おーしーえーろーと迫って来るミロカロスの頭を押し返して少し距離を取る。

 

「ゲンと昼食を食べに」

「ゲーン!アイツか!畜生!」

「友人と出掛けただけだ」

「友人~…、じゃあゲンと俺様どっち大事?」

「勿論、お前だ」

「…えへへー!」

「うわぁ!びっくりするくらい簡単だ、この子!!」

 

簡単で単純な所が楽で良いんじゃないか…。余計な事言うな、という意味を込めて睨んでやればヤマトは慌てて私から視線を逸らした。

 

「俺様はシンヤが居なかった時、チルの手伝いでお使い行ったよ」

「良い子だな」

「だろー!今日はおでんだってさー」

「じゃがいも入ってるか?」

「じゃがいもは買ってない…、家にあるかも。でも、入れるかは知らない」

「言ってこい」

「分かったー!」

 

自分で行きなよ!とヤマトに怒られた。

 

「っていうか、食べたい物が言うだけで出てくるって良い生活だね」

「お前も上手に良い子に育てれば良い」

「僕はそんなポケモンを扱き使うようなことしないから!」

「自主的、うちは放任だからな」

「くっそ…本当に良い子ばっかり…くっそぅ!」

 

チルくん頂戴!、嫌だ。と言い争っているとミロカロスが戻ってきた。

 

「じゃがいも入れるって」

「ありがとう」

「良いよ良いよ、お礼はチューで良いよ」

「お前それ何処で覚えた!」

「ツキ」

 

あいつー!

タダじゃ動かなくなったらどうしてくれる、めんどくさい!

 

「シンヤ、顔にめんどくさいって書いてるけど大丈夫…」

「おっと、しまった」

「え、何処?何処に書いてるの?」

 

あはは、とヤマトが笑った。

 

「ミロちゃんは可愛いねー」

「おっさんみたいな事言ってるぞ」

「ヤマトおっさんかー」

「僕がおっさんだったら同い年のシンヤもおっさんだからね!?」

「ははは。何を言っている、私はもう年を取らないぞヤマト」

「ぐぉおおおお!そうだったぁあああ!」

 

しまったー!なんて頭を抱えて叫んでいるヤマト。

阿呆は放って置こうと再び隣に座ったミロカロスの頬にキスをする。

 

「お」

「お礼のチューとやらはこれくらいで良いか?」

「えへへ、良いよ!」

「うー…リア充、爆発しろ…」

 

しくしくと泣き出したヤマト。

というか、夕食を食べに来たんならチルの手伝いでもしてこい。

 

「あ、そういえば!ミロちゃん、シンヤに言わないと!」

「何が」

「タモツくん!」

「ああ、そのうちぶっ殺しとくから良いよ良いよ。シンヤに近寄らせたくないし」

「やめてあげてぇえええええ!」

 

うわああん、と凄い勢いで泣き出したヤマト。

不気味だ…。

 

「シンヤ!ミロちゃんがね!タモツくんって子に告白されたんだよ!シンヤにだって負けないーって言っててさー」

「は?なんだソイツは…」

「シンヤからミロちゃんを奪ってみせる!ってカッコイイ事を言ってたんだよ!」

「………そうか、まあ早めに行動に移すようにな、ミロカロス」

「おっけー」

「こらこらこらこら!タモツくんって人間じゃないよ?メタモンくんだよ?」

「メタモンくんだから何だ」

「可哀想でしょ!?」

「ヤマト、ポケモン同士の争いに人間は関わらない方が良いんだ」

「いやいや、トレーナーがしっかり止めようよ!」

 

めんどくさい。

 

「…………」

「返事しなさい」

「…めんどくさい」

「ハッキリ言うな!ミロちゃんが本当にタモツくんに怪我させちゃったりしたらどうするのさ!」

「怪我させないよ、上手く殺るから」

「やるの変換が不思議と"殺"で聞こえるのは僕だけ?」

「いや、私も聞こえてる」

「あーあーあーあー!もうそんなの絶対にダメ!平和的に話し合いで解決しよう!シンヤ!ちゃんとタモツくんと会ってミロちゃんを諦めさせてあげられるように言って!」

「諦めさせてあげられるように…?どうやって?」

「分からない」

「「………」」

「死んだら忘れるよ」

「とりあえずー!!!二人は好きあってて別れる気がありません、って事をタモツくんに知ってもらおう!」

「そんなの言葉で説明出来るのか…?」

「言葉で説明出来なくても、ほら、やって見せたら…」

「なっ、何をさせる気だお前…!!」

「な、何を想像したのシンヤ!?顔赤いよ!?」

「顔が熱い!」

「変な意味で言ってないよ!?さっきみたいにほっぺにチューとかさ!ね!」

「……ああ、」

「本当に何を想像したの…」

「……」

「ほっぺにチューとか子供でもするけどな!」

「ミ、ミロちゃん…!」

「お前たまに正論言うよな」

「ぶっ殺しとくから任せてシンヤ!」

「じゃあ、私はロストタワーの予約を取っておけば良いのか…?」

「医者このやろぉおお!」

 

*

 

夕食は何時くらいに致しますかー?とチルタリスが声を掛けてくれるまで言い争っていた私達。

平和的平和的と喚くヤマトにうるさい、熱湯ぶっかけるぞ!と怒るミロカロス。

 

「ただいまー」

「あ、ツキさんおかえりなさいませ」

「ただいまチルー、ただいまシンヤー」

 

おでんだから各々で食べても良いんじゃないか?と思った所でブラッキーが帰って来た。

ソファに座る私に飛びついて来たブラッキーはただいまを連呼する。

 

「たーだーいーまー」

「お前どうした」

「ただいまー、シンヤー」

「ああ、おかえり。で、どうした」

「なんかぐるぐるしてて良い気分」

 

コイツ、どこかで酒を飲んできたな。

ほろ酔い状態らしいブラッキーが苦しいくらい抱きついて来る。別に酒臭い程飲んではないみたいだが、体温高すぎて暑い。

 

「ツキ!離れろォ!」

「嫌でーす、シンヤにくっつきたい気分だから嫌でーす」

「あっち座れ!」

「やーだよー」

 

あはは、と笑いながらミロカロスと喋ってるブラッキー。

酔っ払ってる?とヤマトが首を傾げて聞いてきたので頷いて返す。

 

「ツキさん、夕食は召し上がります?」

「食べるよー、ご飯なにー?」

「おでんです」

「おでんかー、チルの好きな具は何ー?」

「え、…ちくわ?」

「可愛いな!チル可愛いな!チューしてやるよ!」

「え!?いいです、ご遠慮します!」

「ご遠慮すんな!」

 

チルが襲われている…!

逃げるチルタリスを追いかけて行ったブラッキー、アイツ酔っ払うと絡むタイプなんだな。鬱陶しい。

 

「仕事片付けてから夕食にするかな…」

「ちょ!チルくん押し倒されたよ!?良いの!?あれ良いの!?」

「チルー!待ってろー!俺様が今助けてやる!」

「ポケモン同士の争いは放っておくのが一番だ」

「手持ちの争いは止めようよ!?」

 

*

 

別に良い、と言ってテーブルの上に置いてあった新聞を開いたシンヤ。

僕の幼馴染なんか一気に歳取ったな。なんだこの些細な事で動じない感じ。腹括ったのと同時に広すぎる心も手に入れたの…!?

 

「ただいま戻りましたー」

「キッスくーん!良い所に!ツキくんが酔っ払ってるんだ!止めて!」

 

タイミングよく帰って来たキッスくんに助けを求めればキョトンとした表情のまま押し倒されるチルくんとそのチルくんを押し倒すツキくんを見た。

 

「ツキさん、酔ってますね」

「そうなんだよ!」

 

ツキくんをげしげしと蹴るミロちゃん。蹴られてることには無反応なツキくん。

 

「ツキさーん」

「キッスー!おかえりー」

「はい、ただいまです。チルが嫌がってるから離れましょうねー」

「キッスにキッスするぜー!ちゅー!」

 

よいしょ、とツキくんをチルくんから離したキッスくん。

ダジャレみたいなことを言いながらツキくんが笑顔でキッスくんに抱きついてそのまま……。

 

「……」

「ちゅっちゅっちゅー!」

「お酒の味がしてまずいです!」

 

苦いー、と顔をしかめながらキッスくんはそのままツキくんを抱き上げてリビングから出て行った。

 

「……ちゅーしちゃったけど!?」

「ふーん」

「キッスくんが餌食になっちゃったよ!?」

「トゲキッスはそんな些細な事を気にする奴じゃないから大丈夫だ」

 

そういう問題じゃないでしょ。

放任にも程がある、と僕が怒ろうとした時にのそりとチルくんが起き上がった。

 

「チル…頬っぺた噛まれました…!」

「なんだと!?見せてみろ!」

「痛いです~」

「赤くなってるな、口の中は切れてないか?」

「……はい!大丈夫みたいです!」

「よしよし、一応…湿布だけ貼っといてやるからな」

「ありがとうございますー」

 

治療はするんだね、シンヤ。心配するならまず止めようよ。

 

「チル、俺様が仕返ししといてやる!」

「痛い事はダメですよ!」

「ツキのおやつを食べてやろう!」

「……隠し場所はチル知ってます!」

 

きゃっきゃっと仲良くキッチンへと向かうミロちゃんとチルくん。

そんな反応…?

 

「…慌てた僕が馬鹿みたいな、些細な出来事だったの…?」

「だから放っておけって言っただろ」

 

ちなみに、と言って続けたシンヤの言葉で僕はポカンと口を開けた。

 

「うちじゃチルタリスを怒らせるとご飯抜き。サマヨールを怒らせると精神的にやられるらしい」

 

私は怒らせたことないけど、と続けたシンヤが新聞をめくった。

 

「キッスくんは?」

「アイツは怒らない」

「温厚な子だもんねー…」

「でも、ミロカロスと同じくらい強いぞ」

「……あ、そうなの?」

 

うん、そう。とシンヤが頷いた瞬間。

ぎゃぁああああ!とツキくんの悲鳴が聞こえた。

 

「……」

「……」

「え、悲鳴」

「私は知らん」

 

ガチャリとリビングの扉が開いた。

部屋に入って来たのは当然、キッスくん。

 

「ツキさん寝ちゃいました」

 

何をして寝かせたの…!?そんな疑問はとても口に出して聞けない僕。だって怖い!

 

「悲鳴はなんだ」

「あー、部屋に入ったらヨルさんが居たんですよ。そのヨルさんにツキさんが飛び付いちゃって、怒ったヨルさんがツキさんを強制的に寝かせました」

 

多分、ちょっと痛かったと思います。と苦笑いを浮かべたキッスくん。

おいおい君の所のサマヨールは一体何をしたんだい?とシンヤの方に視線をやったがシンヤはそうかと頷いただけだった。

慣れすぎでしょ。

 

「主…おはよう…」

「お前、今起きたのか」

 

こくりと頷いたヨルくんが静かに床に座った。

夕方まで寝てたの…?やっぱりゴーストタイプだから夜行性なのかな…。

 

「そうそう、シンヤに言い忘れてました!」

「なんだ」

「ミミローさんが今日はツバキ博士の所に泊まるそうです」

「そうか」

「それだけです」

 

うん、と頷いたシンヤににこりと笑みを返してからキッスくんはキッチンの方へと歩いて行った。

 

「のんびりしてる場合じゃないよ!それでタモツくんどうするのさ!?」

「ロストタワーの予約をしておくって言っただろ」

「それで良いわけないでしょ!?」

「…タモツ、?」

 

こてんと首を傾げたヨルくん。

ああ、そうだ。ヨルくんに相談してみよう。まともな意見を貰えるかもしれない!

 

「あのね、タモツくんっていうメタモンの子なんだけど。タモツくん、ミロちゃんの事が好きらしくて、ミロちゃんをシンヤから奪ってみせる!シンヤになんか負けない!ってミロちゃんに略奪愛宣言したんだ!

どうしたら良いと思う?みんな平和的な解決の意見くれないんだよ~」

「主に害を及ぼす可能性があるなら、…消そう」

「キミもか!キミもなのか!僕の期待を返せ!」

 

どいつもこいつも!

タモツくんにどうしてそうも苦痛を与えたがるのか!シンヤが全てかこの子たちは!

 

「実際…どうなんだ…?主に害を及ぼしそうなのか…?」

「えー、まあ、シンヤに対してライバル意識があるだろうしねぇ」

「早急に消そう」

「平和的に解決しようよ!」

「……闇に紛れて、」

「そういうのダメ!」

 

シンヤ!シンヤがちゃんと止めてくれればこの子達はちゃんと言うことを聞いてくれるじゃないか!

何とかして!と声を掛けようとしたら普通にソファに横になって寝てた。

 

「こらぁああああ!」

「ぐあっ、耳が痛い!」

「何いい感じに横になってんの!?真面目に考えてよ!」

「ヤマト…貴様、主の鼓膜に痛みを与えたな…」

「え!?なんで怒ってるの!?」

「今日、年甲斐もなくハシャいで疲れた」

「おっさんか!」

「主にその例えはやめろ…」

「ヨルくん!痛い!なんで足踏むの!?」

 

ミロちゃんより鉄壁の守りでシンヤを庇護してくるよこの子!

ヨルくんに掴まれた腕が痛い!なんかミシミシいってる!握力!握力抑えて!

 

「シンヤ、おでんもう用意しちゃいましたけど食べます?」

「用意してくれたなら食べる」

「じゃあ、テーブル開けてくださいね」

「分かった」

「主…自分がやろう」

 

いや、シンヤにやらせておきなよ。みんなしてシンヤに甘いんだから…。

 

「なんなの、シンヤがなんだって言うの。シンヤが全てじゃないよ!」

「主こそ全てだ…、そこを退け片付ける」

「あ、はい…すみません…」

 

ものすごい目で睨まれたんだけどぉおおお!

どういう教育してんの!?宗教なの!?ここはシンヤ教なの!?

 

「…シンヤが絡むと怖いね、みんな」

「なつき度マックスだからな」

「そういう次元じゃない」

「おでん食べて行くのか?」

「……食べる」

 

*

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