一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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「なんだとぉおお!?シンヤに敵!?何処のどいつだ!すぐ殺ろう!今すぐに!吐け!何処のボケだぁああ!!」

「ミミロー…頭痛いから叫ばないでくれる…?」

 

朝方、ツバキの所から帰って来たミミロップが結局泊まったヤマトに話を聞いてブチ切れた。朝から元気だな。

そして床に突っ伏して倒れるブラッキーは空腹で起きて来たものの、二日酔いで頭が痛いらしい。まあ食欲があるなら放って置いても良いだろう。アイツ、酒弱いな。

 

「平和的解決を僕は求めるよ!タモツくんが可哀想でしょう!?」

「平和的に行動してないソイツが悪い。シンヤになんか負けないって言ったんだろ?メタモンごときがッ…!くっそ許せん!マジでボコボコにしてやる…!」

「ミミローくん、落ち着いて…お願い!」

「これが落ち着いていられるかぁああ!場所を吐けぇえええ!」

「あ、頭ガンガンする…!シンヤ、助けてぇ…」

 

ヤマトをボコボコにする勢いで飛びかかるミミロップをトゲキッスが止める。

とりあえず、私は足元で唸るブラッキーに鎮痛薬でも飲ませてやろう。

 

「チルー、水持って来てくれー」

「はーい」

 

*

 

何処のどいつだ、と怒るミミロップにスーパーの店員だよ、と言ってしまったミロカロス。

本当にロストタワーの予約をとらないといけなくなりそうなのでミミロップにとりあえず座れと命令して床に座らせる。

 

「シンヤ!後は任せて!ワタシちゃんとぶっ殺して来るから!」

「よせ…、冗談で言ったものの本当にロストタワーの予約を取りたくない」

「ワタシが取っとくから!全部任せてくれれば良いから!シンヤはノータッチで!ワタシたちで上手く抹消しとくから!」

「隠蔽する気だこの子たち…!」

 

ガクガクと震えるヤマト。

ミミロップなら本気でやりそうでこわいな。

 

「あのさー」

 

薬を飲んで寝転がっていたブラッキーが言った。

 

「そのメタモンってオスなの?メスなの?」

「は?メタモンなんだから両方になれんじゃねぇの?」

「あー、でも男の人の姿してたよね」

「うん。いっつも男だ、そういえば」

 

ヤマトの言葉にミロカロスが頷いた。

上半身を起こしたブラッキーが髪の毛をくしゃくしゃと掻いて「ああ」と小さく呟いた。

 

「じゃあ、そいつ多分勘違いしてるわ。ミロのこと絶対にメスだと思ってる」

「ふーん」

「オスだって言えば納得させられるんじゃね?」

「オスでも良いって言われたらどうすんだよ」

 

ミミロップの言葉にブラッキーが溜息を吐いた。

 

「…、メスの方が良いに決まってんじゃん」

「なんでそんな残念な目で見られなきゃならねぇんだよ、腹立つなお前。蹴り飛ばすぞ」

「まあ、オレが説明して来てやるって。頭めっちゃ痛いけど」

「ワタシが行く」

「蹴り殺すだろ」

「蹴り殺すけどなに」

「大人になろうぜ、ミミローくん」

「お前に宥められると凄いムカつく!」

 

凄いムカつく!と悔しかったらしいミミロップがサマヨールの腕を掴んだ。サマヨールはうんうんと頷いてミミロップの頭を撫でる。

 

「ツキくんが平和的な解決が出来る子だったなんて!僕は感動だよ!」

「オレ、絶対にこの中じゃまともな方だと思うけど」

「え…うん、まあ、そうかな」

 

え…、私ってまともじゃないのか…?

なんか黙って聞いてたけどちょっとショック…。

 

「あー、頭痛い。さっさと行ってさっさと帰って来ようぜ」

「俺様も行くの?」

「当たり前だろー。ミロとシンヤは一緒に来て。他は留守番」

「シンヤは置いて行けぇええ!」

「主に危害を及ぼされたらどうする」

「うちの最強、連れて行くから大丈夫でしょ」

 

あれ、と指差されたミロカロスが首を傾げた。

 

「主に何かある前に必ず仕留めろ…」

「神秘の雫、持って行け」

 

ミミロップがミロカロスの手に神秘の雫を握らせた。無駄に威力を上げさすんじゃない。

 

「朝食のご用意出来たんですけど、如何いたします?」

「食べてから行こう」

「「さっさと行け」」

「シンヤ、気を付けて下さいね」

「そんな心配してくれなくても大丈夫だろ…」

 

トゲキッスが私の手を握る。

なんで私そこまで心配されてるんだろう。

 

「みんな、シンヤに過保護だなー…」

「…とりあえず、行って来る」

「俺様がシンヤを守る!」

「気を付けてな!」

「いってらっしゃい」

 

「朝飯食いたくて起きたのに、食えないとか拷問だわ…」

 

*

 

家を出たものの辺りを見渡してブラッキーが呟いた。

 

「ギラティナ居ないじゃん」

「アイツはミュウツーと遺跡に行ってるはず」

「仲が宜しいこった」

 

大きく欠伸をしながらブラッキーが言った。

やっぱり仲が良いように見えるよな。私も見える。

 

「スーパーはこっちー」

「詳しいね、ミロちゃん」

「よく行くからな」

 

ギラティナ不在だが通れるらしい出入り口を通って外に出ればスーパーの近くに出た。

朝の空気が気持ちいいな。

 

「まだ開いてないんじゃない?」

「裏口行ってみようぜ」

 

裏口は向こうだね、と言ってヤマトが歩き出した時、ドサと何か落ちる音がした。

 

「あ、タモツ!」

「ミロちゃん…!」

 

出勤して来たらしい確かに人の姿をしたメタモン。

その隣に居るのは人間だから、トレーナーか?

 

「お、おはようございます…!」

 

トレーナーが挨拶をしてくれたので私も挨拶をして返そうと思ったが両手を差し出された。

え、何…?

 

「シンヤさんですよね…!ファンです!握手してください!」

「あ、ああ…ありがとう…」

「うわー、朝からテンション上がるー!タモツ!お前も握手してもらえ!」

 

トレーナーに手を握られたまま、トレーナーがメタモンのタモツに視線をやる。手、離せ。

しかし、視線をやるもタモツはトレーナーと私なんて無視してビシリとブラッキーを指差した。

 

「確かに何百倍もカッコイイかもしれないけど…!」

「はぁ?何の話?」

「確かにツキくんも男前くんだよね…、なんで僕だけ傷つけられてるんだろう。胸が痛い」

「いや、違う。そっちじゃない」

 

違う違うとミロカロスが首を振った。

何の話だ。

 

「は…!確かにこっちは悪タイプ…!」

「オレは悪タイプだけど、それが何?」

「俺様の世界一カッコイイ彼氏はこっち!」

 

トレーナーに手を握られたままミロカロスに腕を掴まれた。

いや、本当に何の話だ。呆ける私とトレーナーに気付いたミロカロスがベシンとトレーナーの手を叩き落とした。

 

「いつまで握ってる!」

「ああっ、すみません…!」

 

こら、叩くな。

 

「シンヤさん…?」

「え、何の話?」

 

よっしゃ、とブラッキーが手を叩いた。

 

「タモツのトレーナーは仕事に行け」

「え、…はい。え?おれだけ?」

「ヤマトもうるさいから一緒にタモツの分、手伝ってこい」

「はい。って、えええ!?僕!?」

 

良いから行け、とブラッキーに背を押されてヤマトとトレーナーが店の方に歩いて行く。

なんかすみませんねぇ、いえいえーなんてのほほんと会話してる二人を見送って私はタモツへと視線をやる。

なんか間抜けな顔で見られてるんだが、その開いた口を閉じなさい。

 

「さーて、タモツくん。本題と行こうか」

「えっと、アナタはなんですか」

「オレはシンヤの手持ち代表だ」

「…本当に、ミロちゃんの彼氏がシンヤさんなんですか…!」

「うん、そう。それで納得してくれれば一番なんだけど」

 

ブラッキーとタモツの会話を眺める私とミロカロス。

なんだか蚊帳の外だが、まあ解決するなら良いだろう。

 

「納得なんてできません!人間とポケモンなんですよ!?」

「よし、じゃあそんなタモツくんに教えてあげよう」

「なんですか」

「ミロちゃんはオスです」

「…」

「脱がして確認させてあげても良いけど、どうする?」

 

黙り込むタモツ。

脱がして確認させてあげるのは私的によろしくないのだが…、

その辺はどうしよう。頷かれたらどうしよう…。

 

「オスだったとしてもボクはメスにだってなれますから!性別なんて関係ありません!ボクはミロちゃんが好きです!」

「はっはっはー!残念なことにミロちゃんはメスが好きじゃないんだなぁ!」

「む、ボクはオスでもありますし!」

「オスであっても、そんなお前がシンヤに勝ってる所が何処にある!言えるもんなら言ってみろ!」

「……種族的にボクが有利ですよね!?」

「いや、シンヤはほぼもう人間じゃねぇし。どっちかっていうとポケモン寄り」

「なんですかそれ!」

 

もっともな反論だ、タモツ。

 

「シンヤ、もうポケモンなの?」

「まあ、人間離れはしてしまってるよな…」

「ミロちゃん、ボクじゃダメですか…!女の子になってもダメなんですか…!」

「シンヤじゃないと無理」

 

ぐすぐすと泣き出してしまったタモツ。

人間ならまだしもポケモンに泣かれるとなんだか胸が痛い。何か声を掛けてやりたいが私が声を掛けるのも違うだろうし…。

 

「タモツ、メスになれ」

「え…?」

「良いから今すぐ!」

 

ブラッキーの言葉にタモツはおろおろしながらも男の姿から女の姿へと変わった。

一瞬で変われるものなんだな、さすがメタモン。

女の姿に変わったメタモンをブラッキーは抱きしめて頭を撫でた。

 

「元気出せ!」

「…は、はい…」

 

よしよし、とタモツを慰めるブラッキー。

お前が言葉で追い詰めといて自分で慰めるのか…。まあ、私が慰めるのも違うし仕方ないけれど…。トレーナーに任せて良かったんじゃないのか。

 

「メスにさせたのはなんで?」

「え、野郎をハグして慰める気なんて起きないから」

「えー…」

「お前ってやつは…!」

「男より全然、女バージョンの方が可愛い~。体やわらかーい、メス最高ー!」

「…やっ、変な所、触らないでくださいっ」

「可愛い~」

 

あれ、セクハラじゃないのか。

もう帰ろう。とミロカロスに言われたので小さく頷いて返す。

ああ、でも…、

 

「タモツ」

「な、なんですか…?」

「ミロは私が一生幸せにする、譲ってやれなくてすまないな」

「…」

「シンヤ…!」

「帰るぞ」

「うんっ!」

 

*

 

手を繋いで歩いて行くシンヤとミロを見送るオレ。

抱きしめた状態のままだった男の姿より一回り小さくなったタモツは細い指で目元を拭った。

 

「カッコイイなぁ…」

「だろー?オレらの自慢のご主人だからなぁ」

 

タモツの頭を撫でながら考える。

ミロカロスはハードル高いよなぁ、シンヤの為だけに存在してるような奴だし。この先、どんな奴が現れたってシンヤ以外を見ることなんて無いだろう。

でも、笑えた。

ミロちゃんを脱がして確認させてあげても良いけどーって言った時のシンヤのあの顔。

 

「……いやぁ、珍しいもん見れた」

「…え?」

「いやいや、こっちの話」

「?」

「それより、元気出た?もっと元気出るように遊びに連れてってやっても良いけど?」

「もう大丈夫ですっ、あんまりお腹触らないでください!」

「触ってないもーん、添えてるだけだもーん」

「顎乗せないで!重い!」

 

あはは、と笑っていたら「ツッキーだ!」と名前を呼ばれた。

 

「きゃうきゃう!」

「ポチちゃーん!おはよー」

「ポチちゃんと知り合いだったんですか…」

「友達だもん」

 

ふーん、と頷いたタモツ。

主人が同じスーパーで働いてる者同士だからタモツとポチちゃんも知り合いらしい。

 

「男女がこんな所で抱き合ってるなんてハレンチです」

「モモちゃん…ハレンチって…」

 

今時、そんなこと言う?

しかも真顔で言うし。女の子はもっと表情豊かな方が可愛いのにさ。

 

「そういえば、ヤマトが仕事手伝ってるんだけどー」

「それがなんですか?」

「ああ、いや、別に…」

 

ヤマト、全く脈無しなんだけど大丈夫なのか…?

 

「ボクもリンの手伝いしなきゃ!」

 

腕の中でタモツが男の姿に戻った。

やだー、男かたーい。

 

「リンってさっきのトレーナー?」

「うん」

「ふぅーん」

 

チラリとモモちゃんを見れば少し表情が変わった気がした。おやおや、これはオレの勘としてはヤマトは蚊帳の外だぞ。

 

「タモツくん、なぜ女の子に?」

「え、まあ色々あって…、ボクもう仕事に行きます!モモさんも一緒に行きましょう!リンも待ってるだろうし!」

「そ、そうですね!」

 

声が上擦ったモモちゃん。

タモツは気にしてないみたいだけどやっぱりかー。残念だな、ヤマト…。

女心の分からない男はダメだわ。

 

「じゃあ、オレはヤマト回収しに行くかー。その後、遊びに行こうね、ポチちゃん」

「きゃう!」

 

*

 

「シンヤ、先に帰ったの!?」

「うん、ヤマトも帰ろうな」

「え、なんで?僕もうちょっとモモちゃんの手伝いしていく」

「お前、そんなだからモテねぇんだよ」

「何、急に!?」

 

クソが、と吐き捨てられて半泣きになるヤマト。

ブラッキーに引き摺られるように店を出た。

 

「ポチちゃんと遊びに行くからユキワラシ出して」

「え、それって僕も行くの?」

「来なくても良いけど」

「いや、行くよ!なんで僕だけ仲間外れにするのさ!」

 

思いっきり戯れるよ!と何故か拳を握って熱弁するヤマトにブラッキーは深く溜息を吐く。

 

「なに?」

「腹減った」

「あ、そういえば朝ご飯食べそびれたもんね。何か食べようか」

「ごちでーす」

「ポケモンからお金は取るような男じゃないからそこは甘えてくれて良いよ!」

 

オレ、小遣いある程度貰ってるから。持ってはいるんだけどね。とは言わずブラッキーはニコニコと笑みを返す。

とりあえず何か食べに行こうと歩き出したヤマトとブラッキーの足元をちょこちょことポチちゃんとユキワラシがついてくる。

通りがかった花屋の店員がひらひらと手を振ったのでブラッキーが手を振り返した。

 

「仲良いの?」

「ラフレシアちゃん」

 

はー、相変わらず分からないなぁとヤマトは呟きながら花屋を振り返った。

 

「ツキくんは女の子と話するの上手だよね」

「ヤマトは下手だな」

「…だってさぁ、なんか照れるじゃん!」

「下心あるからじゃね?」

「え、ツキくんは無いの…?」

「オレ、無いよ。仲良くなりたくて話しかけるだけだし」

「仲良くなりたいイコール下心でしょ!男の子なんだから!」

「この子とキスしたいそれ以上のことしたーいって思いながら話しかけんの?気持ち悪いな」

「いや、全ての女の子にそう思ってるわけじゃないよ?好意を持った相手に対してね、意識しちゃうと上手く喋れないっていうか踏み込めないっていうか…」

 

あ、ここで良いや。とブラッキーが喫茶店の扉を開けた。

 

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

 

店員に案内されて席に座った所でポチちゃんとユキワラシも仲良く床に座った。

 

「すんなりエスコートされてしまった…!紳士過ぎる…!悔しい…!」

「ヤマトはそういう気遣いの出来ない男だからモテねぇんだよ」

「そんな…!」

「すみませーん、ポチエナとユキワラシにポケモンフードと飲み物お願いしまーす」

「気配り上手…!」

 

*

 

軽い朝食を食べながらブラッキーから女性の扱い方を教わるヤマト。

ふむふむと真面目に聞いていたものの、なんでポケモンに教わってるんだとヤマトもやっと気付いた。

 

「ポケモン情報なんて役に立たない!」

「教えてやってんのに!」

「だってツキくんの言う女の子ってポケモンのメスじゃん!」

「そうだけど」

「人間相手には効果が無いかもしれない!」

「女は女だろ」

 

人間の女はオレ的に無しだけど、と笑ったブラッキー。

 

「信用度低い!」

「オレが本気出せば人間の女だって落とせる!仲良し飛び越してゴールインも出来る!はず!」

「はずって何さ!」

「ゴールインしたことねぇもの!」

 

じゃあ、実践してみせてよ!やってやろうじゃねぇか!と意気込んだ二人。

 

「ポチちゃん、ユキワラシ!オレ、ヤマトとデートしてくるから二人で遊んで!」

「きゃう?」

「ユキ!?」

 

なんでそうなった!と驚くユキワラシ。

 

「絶対に落ちない!自信ある!」

「もう最終的にはメロメロだから!」

「無いね!」

 

ぎゃあぎゃあと言い争いながら店を出て行く二人。

今からデートするの?と隣で首を傾げたポチちゃんにユキワラシはさあ?と首を傾げて返した。

 

「あ、お会計してない!」

「オレ、払っといたよ」

「えぇぇー!?初っ端からレベル高い!」

 

*

 

「解決したの?」

「ミロが主にくっついて上機嫌な所を見ると、主が解決してきたんじゃないのか…?」

「良かったですね!」

 

にこにこと笑うトゲキッスを見てミミロップとサマヨールもまあ良いかと頷いた。

 

「え、解決してしまったんですの!?」

「計画が丸潰れですね」

 

タモツを物理で殴る作戦を立てていたサーナイトとエーフィが溜息を吐いた。

 

「どうやって解決したか聞いてきましょうか」

「ですわね」

「二人の問題なのだからこれ以上の詮索は無用、そうだろう…?」

「「う…」」

 

サマヨールがエーフィとサーナイトを引き止める。サマヨールに逆らうのは得策じゃないと二人は言葉を飲み込んだ。

 

「つーか、一緒に行ったはずのツキが帰って来ない」

「また遊びにでも行ったんだろう、放っておいて問題はない」

「やれやれ…ワタシも仕事片付けよ…、ツバキの所からパクってきた書類あるし」

「手癖が悪いぞ…」

「読むだろ?」

「無論だ」

 

にや、と笑ったミミロップとサマヨール。

ワタクシにも回して下さい!とサーナイトが手をあげた。

 

「せっかく徹夜で作戦を考えたのに…」

「お肌に悪かっただけですわね~」

「昼寝します…」

「あーん、書類とお昼寝どちらも捨てがたいですわ~」

「ワタシ達が読み終わったら起こしてやるよ」

「ミミローさん優しい!なら、お言葉に甘えてお昼寝しますわ!」

 

読んでいた本を閉じて腕にくっつくミロカロスをべりと引き剥がしたシンヤは目頭を押さえながら立ち上がった。

 

「寝るの?」

「いや、仕事する」

「俺様もお部屋行って良い?」

「ダメ」

「意地悪だ…!一生幸せにするって言ったのに…!」

 

こいつ、このネタをずっと引っ張る気か…。

恥ずかしいな、とシンヤは眉間に皺を寄せる。

 

「三時になったら軽く寝る」

「うん?」

「三時だからな」

「うん…、分かったけど…」

 

だから何?と首を傾げたミロカロス。

シンヤは小さく溜息を吐いてからぼそりと言った。

 

「一緒に寝ないのか」

「!」

「三時な」

「うん!」

 

待ってるね!と笑ったミロカロスにシンヤも笑って小さく頷いて返した。

 

 

*

 

 

そして、その日の夜。

昼寝をしたせいか眠れないシンヤはリビングで本を読んでいた。当然、他の連中はボールに戻ったり二階に居たりとすでに夢の中。

ガチャ、と静かにリビングの扉が開いたのでシンヤは本から扉へと視線をやった。

 

「あれ、シンヤ…?なんで起きてんの?」

「昼寝したから眠れない」

「あ、そう…」

「今の今まで遊んでたのか…?夜遊びはやめろってエーフィに言われてるだろ、また怒られるぞ」

 

シンヤの言葉にブラッキーはしょんぼりと肩を落としながらソファに座るシンヤの横に座った。

 

「こんなに遅くなる予定じゃなかったんだけど…、思ってたより盛り上がっちゃって…」

 

盛り上がったわりにはテンション低いな、とブラッキーの様子を見てシンヤは眉を寄せる。

 

「気が合うってこわい」

「…良いことなんじゃないのか?」

「合い過ぎた…!もう楽しくなっちゃって途中からテンションマックスだったもん!」

 

何の話だ。

シンヤはとりあえず相槌を打ってブラッキーの話に耳を傾ける。

 

「人間でしかも男とか無いわー…、シンヤならまだしも…シンヤ以外とか無いってホント…」

「なにがだ」

「オレ、ヤマトと付き合うかもしれない」

「……」

「……な、なんか言ってよ」

「お前、酔ってるのか?」

「飲んでませんけど…」

 

慌てたシンヤがブラッキーの額に手を当てる。熱は無い!何故か無い!あっても可笑しくないのに熱が無い!

変な病気か、はたまた頭を強くぶつけたのか…。

 

「ちょっと医療道具取ってくるから待ってろ…!」

「診てくれても良いけど、オレ本当に正常だから…」

 

むしろ絶好調だから、とブラッキーはガクリと項垂れた。

 

「……な、なんでだ?」

「気が合ったから」

 

え?意味がわからん。とシンヤは頭を抱えた。

ブラッキーとヤマトの仲は悪くない。ヤマトはポケモン好きだからブラッキーのことは当然好きだとは思うが、ブラッキーがなんでヤマトと?

 

「…それは、本気で愛してる…の、か?」

「あー…」

「そういうことはお前の自由だと思うから、反対とかは別にしないが…」

「あー…」

「生半可な気持ちなら考え直せ。私はお前もヤマトのことも大事に思ってる。傷付けあうことだけはやめてほしい」

 

シンヤの言葉にブラッキーは黙ったまま俯いた。

 

「…、考えて良い?」

「よく考えろ」

 

頷いたブラッキーは黙ってリビングを出て行った。

本を読んで疲れたら寝ようと思っていたが余計に目が冴えた。とシンヤは本を閉じて頭を抱える。

明日、朝一でヤマトの所に行こう。

 

 

「…はあ、眠れない」

 

*

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