一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ノリコとエーフィが家を出た後、ヤマトと談笑していたら思い出したようにブラッキーが言った。

 

「そういや、モモちゃんとタモツのトレーナーのリンが結婚するんだって」

「…え!」

 

びっくりした。

モモ、結婚するのか…。

そして急にミロカロスが結婚式したいとか言い出したのそれだろう。確実に。

式に参加するのは面倒だがご祝儀くらい包まないとな。

 

「僕、知ってたよ」

「え!?」

「そうなのか」

「うん、モモちゃんとリンくんから聞いた」

 

むしろシンヤが知らなくてびっくりしたよ、と笑ったヤマトをブラッキーが驚愕の表情で見つめている。

 

「ヤマト…!お前はそれで良いのか…!」

「な、何が…!?」

「このヘタレ!」

「何がぁ!?」

「そんなだからずっと"良い人"で終わるんだよ!」

「良い人なら良いよね…?」

「良いんじゃないか?」

「モモちゃんにアタックせずに終わるなんて情けない!」

「「……」」

 

ヘーターレー、と喚くブラッキーを見てヤマトがポカンと口を開ける。おっと、私の口も開いてた。

というか、お前達の関係は本当にどうなってるんだ…。あえて口出しはしないつもりだが…。

 

「僕、モモちゃんにアタックしちゃって良いわけ?」

「敗北は決まってるけどな…」

「へえ、良いんだ。そっかー…そっかぁ…」

「なに?」

「いや、別に。まあ言わせてもらうと僕は別にモモちゃんのこと好きじゃないからね」

「えぇ!?」

「別に好きな子が出来ちゃった!」

「マジかー!」

 

軽いなお前、とブラッキーに少し冷たい視線を貰ってヤマトがショックを受けていたが放って置いた。

お茶冷めたなぁ…。夕食の前に風呂に入ってしまおうかなぁ…。

 

「心変わり早い男ってなんかなぁ…」

「ちゃんと好きになったら一途に愛すつもりだけど」

「ふぅーん」

「だから、ツキくん、僕とちゃんと恋愛してみない?」

「ぶっ…!」

 

飲んでいたお茶が変な所に入った!

ごほごほ、と噎せる私を見てヤマトが大丈夫かと首を傾げて聞いてくる。大丈夫、私は居ないものとしてくれて大丈夫だから…!

 

「ガチで?」

「ガチで」

「…けほっ、」

 

湯のみ片手に静かに立ち上がりキッチンに向かう。

私の居ない所で言ってくれれば良いのに、気まずいじゃないか。

 

「ご主人様、夕食はもう少々掛かりますよ?」

「ああ、ゆっくりしてくれ…」

「シンヤ、お茶のおかわり入れます?」

「ん」

 

トゲキッスに湯のみを手渡して小さく溜息を吐いた。

 

*

 

シンヤがリビングから出て行ったのを見送って、ヤマトは向かいに座るブラッキーへと視線をやる。

 

「今は、そういうの無理だ…。オレ、」

「だろうねぇ。ツキくんの気持ちが変わった頃また伝えることにするよ」

「い、意外とあっさり…!」

「だって分かってたし」

 

ツキくんがシンヤを好きだって、

にこりと笑って言ったヤマトの言葉にブラッキーは固まった。

ああ、やっぱり、あの時に名前を呼んでしまったのを聞かれてた…。

 

「あのさ…」

「うん」

「ミロとかフィーみたいに可愛くないのに、なんでオレなわけ?オレが相当惨めで可哀想に見えたから…同情とか、」

 

じわ、とブラッキーの目元に涙が溜まった。

今にも泣き出しそうなブラッキーの顔にタオルを押し付けたヤマトは笑みを浮かべる。

 

「優しいツキくんがとっても愛しくて可愛くて、好きだなぁと思ったんだ」

「……優しくない」

 

オレは優しくない、上っ面ばっかりで根本的な部分は結局自分のことばっかりな嫌な奴だ。

 

「オレは嘘吐きだ、みんなの事を騙して、フィーのことだってずっと傷付けて…」

「…」

「…、最低だ…っ」

 

タオルを顔に押し付けて呻るブラッキーの頭をぽんぽんとヤマトの手が撫でる。

 

「涙が出るくらい心が痛むのはキミが優しいからだよ」

「…っ」

「みんなのことが大好きだから誰よりもみんなの気持ちが分かってる、だから苦しいんだよね?」

「…そんなこと、」

「分かるよ、僕はポケモンが大好きだから。キミの中に僕っていう存在が"大好きなみんな"の中に入ってないことも」

「……」

「僕のこともみんなと同じように好きになって…ちゃんと見てて欲しいな。僕がツキくんの"大好きなみんな"の中に入った時、きっと僕の気持ちがちゃんと伝わると思うから」

「…、ヤマトは分かってない」

「分かってるつもりだけど…」

「全然分かってねぇ!バカ!」

 

バーカ!と怒って部屋を出て行ったブラッキー。

入れ違いでリビングへと入って来たミロカロスがぎょっとしながら出て行ったブラッキーの背を見送った。

 

「な、なにやったの…!?」

「…ううーん」

「ツキを苛めるな!」

「苛めてないよ~…」

 

嘘!苛めた!とミロカロスが怒りながらキッチンへと走っていく。

シンヤに報告するのだろう。

苛めてないけどなぁ、と思いつつヤマトは冷めたお茶に口を付けた。

 

「頼られる男になりたい…」

 

*

 

二階の部屋へ入ったブラッキー。

部屋へと入ってきたブラッキーの姿をチラリと確認したミミロップ、サマヨール、サーナイトは各々で行っていた作業へと戻る。

そんな三人に声を掛けるわけでもなくブラッキーは自分のボールの中に戻ってしまった。

 

「…え、あれ?ツキ、飯まだじゃね?」

「食事を待ってリビングに居たはずだが…」

「ツッキーさん、どうしたんですのー?」

 

サーナイトがボール越しに声を掛けてみても反応は無い。

どうしたんだろう、と三人が顔を見合わせた。

 

「主に確認を取ろう…」

「だな」

「ですわね」

 

*

 

ノリコを送り届けて帰宅したエーフィは眉を寄せる。

 

「ヤマトがツキを苛めてた!」

「…」

「アイツが苛められるような奴かよ…」

「しかし、ボールに逃げ込んだのは事実…」

「何があったんですの!?」

「…」

 

無言のヤマトとシンヤの周りでミロカロス、ミミロップ、サマヨール、サーナイトが騒いでいる。

一体これは何事ですか、とエーフィは深く眉間に皺を寄せた。

 

「ツキがどうかしたんですか?」

「フィー!ヤマトがツキを苛めたんだ!そしたらツキがボールに入って出て来なくなった!晩ご飯の前なのに!晩ご飯の前なのにだ!」

「二度言わなくて良いです」

 

ぷぅとミロカロスが頬を膨らませた。大事なことだから言ったのに。

何があったんですか、とエーフィがシンヤに問いかける。

少し考える仕草をしたシンヤは眉を寄せて言った。

 

「大丈夫だ」

 

何がよ!とミミロップが声を張り上げたがシンヤは何も言わない。

 

「…まあ、シンヤさんが大丈夫と言うのでしたら大丈夫なんでしょう」

「良いんですの?」

「構いませんよ、お腹が空いたら出て来ます」

「確かにその通りだ…」

 

うんうんと頷いたサマヨール。少し納得がいかなそうではあるがミミロップも諦めたらしく溜息を吐いた。

 

「ヤマトが苛めた…」

「苛めてないってば~…」

 

じと、とミロカロスがヤマトを睨む。

小さく溜息を吐いたシンヤはパンと手を叩いてから立ち上がった。

 

「よし、風呂入って来よう!行くぞ、ミロカロス!」

「…え?……お風呂!?やったぁ!シンヤとお風呂ぉおお!」

 

シンヤなりの精一杯のフォローだった。

ミロカロスを連れてリビングを出て行ったシンヤの背を見送ったヤマトは助かったと息を吐く。

 

「で、苛めたんですの?」

「苛めてないって…!」

「ミロさんがあそこまでしつこく言うなんて珍しいですもの、シンヤのこと以外で!」

 

鋭いな…。とヤマトはサーナイトの言葉に内心冷や汗をかく。

 

「後でツキに聞けば済む話ですよ、この話はもう終わりです」

「むぅ…、フィーさんがそう言うなら良いですわ…。ツッキーさんの口から苛められたって言葉が出た日には、許しませんわよ…!」

「苛めてませんっ!」

「夕食の用意を手伝いに行くか…」

「今日の飯なんだろ」

 

腹減ったなぁとお腹をさするミミロップを見てサーナイトが笑った。

 

「ミミローさん可愛いですわ!」

「は!?何が!?」

「うふふ!」

「きもっ!」

 

やっと話題が逸れた、とヤマトが息を吐く。

静かに部屋を出て行ったエーフィの後ろ姿を横目で見てからテーブルに突っ伏した。

 

「…」

 

*

 

二階の部屋へとやって来たエーフィはコツコツとブラッキーのボールを指でつついた。

 

「起きてますよね、聞いてほしいことがあるんです…。そのままで良いので聞いてください…」

 

私、シンヤさんと最後の最後まで一緒に居たいはずなのに、

…このまま、シンヤさんと一緒に居ることが自分にとって本当に良いことなのかって…思って、しまいました…。

シンヤさんが二度とあのコンテストの舞台に立たないことなんて分かりきっていたのに、コンテストの舞台にもう一度…立ちたくてたまりません。

諦めようと、思ってたんですよ…?

でも、さっき、ノリコに言われたんです。

お兄ちゃんのエーフィがコンテスト大好きだって知ってるから、私をコンテストに誘うんだって…。

そう言われた時、思い描いてしまったんです…!

あの舞台に立つ自分の姿と、ノリコを…。

 

「私、最低です…!シンヤさんを裏切るようなことを…!」

 

エーフィが手で顔を覆った時、ブラッキーがボールから出てきた。

人の姿になったブラッキーはエーフィを抱きしめる。

 

「フィー、それは裏切りじゃない。お前が良い方向に変わってる証拠だ。最低なんかじゃない…!」

「シンヤさん以外の、主の姿を思い描くのが良い方向なわけないです…!」

「オレなんて…、」

 

オレなんて、と言った後に黙り込んだブラッキー。

次の言葉が出てこないことにエーフィは俯いていた顔を上げた。

 

「ツキ…?」

「オレ、なんて…っ、ミロカロスの立場がオレのものだったらなって!ずっと、ずっと思ってたよ…!」

「……、」

「届かない受け取って貰えない、そんな気持ちをずっと一人で持ってんのが苦しくて苦しくて…!オレが、どうしてたと思う…?」

「ツキ、」

「フィーが、オレのこと想ってくれてるって分かっててずっとはぐらかしてたんだよ。嫉妬に歪むお前の顔見て喜んで安心してたんだ…。最低っていうのはオレみたいな奴のことだよ…!」

 

ごめんな、ごめん…本当にごめん…。と泣きながら謝るブラッキー。

そんなブラッキーにエーフィはごつんと頭突きを食らわせた。

 

「痛っ」

「馬鹿ですか、貴方は」

「…え、」

「確かに、嫉妬していました」

 

貴方が好きだから。

それでもそれが、ツキがシンヤさんを想っていたように好きなのかと聞かれるとハッキリと答えられません。

でも、嫌だったんです。ツキが私の傍から離れて行くこと、ツキの考えていることが分からないこと、

ツキの心を自分に向けたかったのは事実です、でもこうして考えると…、私はツキに嫉妬していたのかもしれませんね…。

 

「私は、逞しくてカッコイイ…そんなツキが羨ましくて…」

 

貴方のようになりたかった。

エーフィの口から出た言葉を聞いて、ブラッキーの目からぼろぼろと涙が零れ落ちる。

 

「オレも、…っ、なりたかった…!綺麗で可愛い、フィーみたいに…っ」

「…!」

 

ぅえええ、と泣き崩れたブラッキーを抱きしめてエーフィは苦笑いを零した。

 

「やっと、…やっとツキの考えていることが、分かりました…っ」

 

私達はずっとお互いを求めあって、自分の持っていない部分を見て嫉妬しあっていた。

全く似てないと思っていたけどこんなに似ていたんですね、私達…。

 

*

 

 

「…、ヤマトに…」

 

泣き止んだブラッキーにそれとなく話を聞けばヤマトに告白されたと予想外の答えが返ってくる。

そして、ヤマトとの関係も聞いたエーフィは皺が寄らないように眉間を指で押さえた。

 

「それで、オレの"大好きなみんな"の中に自分が入ってないって…」

「あの男は馬鹿なんですかね…」

「ムカつく…っ」

 

えぐえぐと再び泣き出しそうになるブラッキーの背を撫でてエーフィは溜息を吐いた。

あのクソ野郎、私の大事な片割れの初めてを奪っておいて…。自分がブラッキーに好かれていないと…、

 

「確かに勢いだったけどっ、オレが何とも思ってないどうでも良い奴と…ッ、ヤるって本気で思ってたらどうしたら良い!?」

「出てる所、全部ちょん切ってやれば良いんですよ。上から下まで」

「え、えぐい…っ」

「自惚れるとか何故しないんですかね、あの男は…。何処までもお人好し、いやもうここまで来ると馬鹿以外の何者でもないですが…」

「うう…、オレはヤマトのこともちゃんと好きだし…っ」

「そんなこと言わなくてもみんな知ってますよ。でも、言わなければ伝わらないし分からないことがある、っていうことですよね…」

「…」

 

私達のように、と言えばブラッキーは困ったように笑った。

 

「そうだな…、でも今はちょっと気持ち的に無理だから…」

「ええ、時間が経てば気持ちも変わるかもしれませんしね!」

「変わるの期待してる…?」

「はい、ヤマトごときにツキを渡したくないので」

「わー、きゅんとするー」

 

嬉しそうに笑ったブラッキーにエーフィは笑みを返す。

そろそろ夕食かな、とエーフィが時計の方へ視線をやった時にブラッキーが「あ」と声をあげた。

 

「フィーはどうすんの!?」

「何がです?」

「いや、ノリコ…」

 

オレの話聞いてもらってフィーの話聞いてねぇわ、とブラッキーが眉を寄せた。

 

「ツキが良い方向に変わってると言ってくれましたし…考えてみようとは思ってます。シンヤさんの性格上、反対はしないでしょうけど。やっぱり私にとって唯一認められる主はシンヤさんだけですから…」

「そう、だよな…」

「それに、まだツキと一緒に居たいです。今まで知らなかったツキのことをこれからもっと知っていきたい、貴方は私の唯一の"兄弟"なんですから」

「フィー…ッ」

 

好きっ、とブラッキーがエーフィに抱きつけばエーフィもブラッキーを抱きしめ返す。

 

「フィーがこんなにカッコイイことを言ってくれるなんて…!」

「ふふ、私もツキにこんな可愛らしい一面があったなんて知りませんでした」

 

―オレ達の進化するタイミングがもし、逆だったらオレはフィーみたいになれたのかな。

―私達の進化した時間がもしも、逆だったなら私はツキみたいになれたでしょうか。

 

((こんな自分は大嫌いだけど、お前/貴方のことは好きでたまらない))

 

 

*

 

ご飯ですよー、とトゲキッスがにこやかにテーブルに食事を運んでくる。

リビングの扉へと視線をやったサーナイトがちらりとヤマトを盗み見る。ヤマトはせっせと取り皿をテーブルに並べていた。

ソファにぐったりと横になるシンヤをミミロップが引っ張る。

 

「シンヤ、飯~」

「のぼせた…。あつい…。」

「風呂で何遊んでんだよ!」

 

何をしていたのかとサマヨールがミロカロスに問えばミロカロスは大きく両手を広げた。

 

「泡風呂にしたらすげぇ泡になったんだ!こーんな!こーんな凄ぇの!」

 

もっこもこ!と楽しげに笑うミロカロスを見てサマヨールは「ああ…」と小さく言葉を漏らした。

泡風呂に悪戦苦闘する主の姿が目に浮かぶようだ…、と。

トゲキッスがシンヤの頭に濡れタオルを置いた時、ガチャリとリビングの扉が開いた。

 

「腹減ったわぁ」

「…シンヤさん、どうしたんです…?」

「え、うわっ!シンヤ、顔赤っ!」

「風呂でのぼせた…」

「「遊ぶから」」

 

ハモッて言うな、とシンヤがソファに再び横になる。

 

「泡なー、もこもこになったんだ!」

「オレの入浴剤また使った!?しかも大量に使ったなお前!」

「あー、テンション上がったから」

「そっかー、テンション上がってたらしょうがねぇなぁ…」

「どういう理屈ですか…」

 

やれやれと肩を竦めながらエーフィが席に座る。

あら、と首を傾げたサーナイトがブラッキーに声を掛けた。

 

「ツッキーさん、ヤマトに苛められたんじゃないんですの?」

「は!?そうだ!ヤマトがツキ苛めた!」

「え?別に苛められてないけど?」

 

キョトンとしながら首を傾げたブラッキーに釣られてミロカロスが首を傾げる。

 

「じゃあ、なんで引き篭ったわけ?」

「えー、内緒ー。あえて言うならオレの可愛い一面だわー」

「いや、意味分かんねぇし。キモイ」

「ミミロー、マジ冷たい。悲しい」

 

テンポ良く絡んでよ、と言ったブラッキーにミミロップがうざいと言葉を返す。相も変わらず辛辣である。

 

「つまんねー」

 

不貞腐れながらブラッキーが席に座るヤマトの横に座った。

少し驚いたヤマトを見たブラッキーは「べ」と舌を出してからニヤリと笑った。

 

「(な、なんだろう…、この翻弄されてる感じ…)」

「ご飯っ、ご飯っ」

「はい、ツキ。お箸」

「さんきゅー」

 

*

 

わいわいと食事をしている途中、ソファで横になっていたシンヤがむくりと起き上がった。

ご飯食べますか?とトゲキッスが問い掛けたがシンヤは無言のまま、眉間に皺を寄せて頭を押さえてしまった。

 

「シンヤ?頭、痛いんですか?」

「……」

 

ご飯を食べていた他の連中もピタリと動きを止めてシンヤの方へと視線をやる。

 

「シンヤ?」

 

返事の無いシンヤの顔をトゲキッスが覗き込む。

虚ろな目でギロリと睨みつけられたトゲキッスはビクッと体を揺らした。

 

「…ッ!?!?」

 

な、なんだか不機嫌です…!と怯えながらトゲキッスはもう一度、シンヤの名前を呼んだ。

 

「シンヤ…、どうしたんですか…?」

「……え?」

「シンヤ…?」

「トゲキッス…?ああ、なんだ?」

 

瞬きをしたシンヤは先程とは一変して、少し寝ぼけているのか眠たい目を擦りながら返事を返した。

 

「頭とか痛いんですか?」

「…いや?」

「少し様子が変でした…」

「…そう、か?うーん、変な夢を、見たような気がするんだが…」

「変な夢?」

「…思い出せない」

 

うーん、と考え込むシンヤを見てからトゲキッスはちらりと背後の皆の方へ視線をやった。

 

「とりあえず、シンヤさんもご飯にしましょう」

 

エーフィの言葉にブラッキーがうんうんと頷いた。

どんな夢だったのか、と考えながらもシンヤは定位置であるテーブルの席についた。

 

「俺様のこれあげる!」

「ピーマンくらい食え」

 

 

 

――ダモス、何故…裏切った…!

 

*

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