一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ラッキーにスイクンを任せ、育て屋での仕事も終わり実家に立ち寄るとカズキとノリコがミミロルと遊んでいた。

 

「この辺にミミロルなんて居たか?」

「兄ちゃん!!」

「なんかね、家の中に入って来たんだよ!!」

「ミミー!!」

 

元気よく私に挨拶して来たミミロル。

お前、ツバキの所のミミロルじゃないか……。鷲掴みにして持ち上げればミミロルが足をばたつかせる。

 

「トレーナーを放って何でこんな所まで来たんだ」

「ミィ!!」

「遊んで、じゃないだろ……」

 

地面に下ろしてやればぴょんぴょんと飛び跳ねる。ノリコが真似して同じ様に飛び跳ねた。

これは帰って来て早々だというのにまたポケモンセンターに逆戻りか。溜息を吐けばミミロルが足にくっ付いてきた。

 

「何だ?」

「ミーミーィ……」

 

首を横に振るミミロル。

これはツバキに連絡するなと言う事なのだろうか。行かないでと引き止められてしまった。

 

「……問答無用!!強制送還だ!!」

「ミミッ!?」

「ツバキに連絡するからお前も来い」

「ミミーッ!!ミミロー!!」

「うるさい、大人しくしろ」

 

私がミミロルを掴みあげれば苛めるな苛めるなと言ってカズキとノリコが私を引き止める。

何だ、私が悪者みたいじゃないか。放って置いても良いのに善意でツバキに連絡すると言っているのに……。

 

「というか、お前、ツバキの所に帰りたくないのか?」

「ミミ」

 

コクンと頷いたミミロル。

懐き進化のミミロルをミミロップにするんだと意気込んでいたツバキの悲痛な表情が目に浮かぶ……。全然、懐いてないじゃないか……。

家出をして来たらしいミミロルをとりあえずノリコに預けて私は反転世界へと戻った。勿論、ただの通り道でそのままズイの育て屋へと出る。

ポケモンセンターに来て電話を掛ければ何度かのコールの後に落ち込んで元気の無いツバキが電話に出た。

 

<「……はい」>

「酷い顔だな…」

<「ちょっと事情がありまして……」>

「ミミロルが居なくなったんだろ」

<「な、何故それを!!」>

 

こっちに来てると言えばツバキの顔に笑みが戻った。

 

<「そっかぁ!!見つかって良かったー!!迷子になったみたいなんだよねー!!」>

「いや、明らかに家出だと思うが」

<「……え、何で?あたし何かした?」>

「知らん」

<「毎日、リゾートエリアでエステ受けて。マッサージもして貰って、ブラッシグングも毎日して、可愛いね!!って毎日言ってあげてたのに!!!」>

 

そんな事、私に力説されても……。

 

<「あたしの何が悪かったのぉおお!!!ミミロルちゃぁああん!!!」>

 

画面の向こうで泣き出したツバキ。

仕方なく、凄く面倒ではあるが提案を持ち掛ける。

 

「何で家出して来たのか聞いといてやるから……」

<「うう……、お願いします……」>

 

電話を切って溜息を一つ。

また、実家の方に戻るハメになった。行ったり来たりと今日もまた忙しいな……。

 

 

実家へと帰ってくればミミロルが飛びついて来た。頬を摺り寄せてくるミミロルの耳を掴んで引っぺがす。

 

「お前、何で家出して来たんだ」

「……」

「理由次第では対応が変わるぞ」

「ミ、ミミィ……ミミー、ミミロー……」

 

ポツリポツリと話し出したミミロルの言葉に耳を傾ける。大体の意味を把握すると理由はこうだ。

ゲットはされたものの、ツバキとは根本的に合わない。毎日、毎日、エステやマッサージ。気持ち良くもないブラッシングを毎日されるのは嫌でしょうがないし、甘え声で可愛い可愛いと言われる事にうんざりした……、と……。

 

「まあ、お前オスだしな」

「ミミ……」

 

ツバキのミミロルへの接し方を変えればミミロルはツバキの所に帰ろうと思うんじゃないだろうか。

理由は分かった、と頷いたのは良いが……。またポケモンセンターに行かないと行けないのか、めんどくさい……。しかし、ツバキは私からの連絡を今か今かと待っている……。

 

「ポケモンセンターに行くぞ」

「ミミィ?」

「ああ、勿論、お前もな」

「ミー……」

 

行ったり来たり、今日も忙しそうですねとジョーイさんに笑われた。

ツバキに電話をかければツバキが涙声で私の名前を呼ぶ。適当にあしらいつつミミロルが家出した理由を言うとツバキは顔を蒼白にさせた。

良かれと思ってやった行動が裏目に出ては苦労も水の泡だな……。

 

<「根本的に合わないとか、あれか生理的に無理な女って事かな……」>

「ツバキがやり方を変えるか別のミミロルを捕まえるか、だな」

<「はぁぁぁあ……、あたしトレーナーの才能ないのかな……、ミミロルには嫌われるし、ヨマワルがサマヨールに進化したのは良いけど相変わらずあたしの言う事聞いてくれないし……」>

「ミニリュウもか?」

<「ミニリュウは良い子だけど……」>

「なら性格の問題だろ。ミミロルとサマヨールはツバキの性格と合わないんだ、事実、エンペラーとヨルノズクはちゃんとツバキの言う事を聞いているし。トレーナーとして功績を挙げているんだから自信を持て」

<「シンヤさん……」>

 

小さく頷いたツバキが目に涙を溜める。

 

<「あたし、頑張る」>

「ああ」

<「新たなポケモンをゲットして頑張る!!」>

「ああ」

<「だから、ミミロルとサマヨールはシンヤさんにあずけるね。二匹ともシンヤさんとは性格が合ってるみたいだし!!」>

「は?」

<「はい、サマヨール送った!!ミミロルのボールも送ったからね!!シンヤさんのおかげで、あたしまた新たな第一歩を踏み出したよ!!!ありがとうシンヤさん!!またバトルしようね!!!」>

 

じゃ、と言って電話が切られた。無情にも私の手元にはサマヨールの入ったボールとミミロルのボールが……。

 

「押し付けられた……」

 

そろそろミロカロスをボールから出してやろうかと思っていたのに余計にややこしくなって来た……。

ブラッキー、エーフィ、トゲチックの三匹で、もうすでに自分一人じゃなきゃ嫌だとか言い出してる馬鹿に更に二匹増えたと言うのはどうなんだ……。ギラティナにも自分は連れて行かない癖にとグチグチ言われそうだし……。

 

「ああ、もう、めんどくさい」

 

*

 

家に戻り、ミロカロスをボールから出す。力無く項垂れるミロカロス。

暫くボールの中に居て反省したのか怒られると思っているのか随分と大人しい。

 

「ミロカロス」

 

名前を呼んでやればミロカロスがビクリと肩を揺らす。

別にもう怒ってはいない、呆れてはいるが……。ミロカロスの頬を軽く抓って視線をこちらに向けさせる。不安に揺れる目と視線が合った。

 

「もう置いて行ったりしないから安心しろ。お前も勝手に居なくなるなよ?」

「シンヤ……」

 

ミロカロスが目に涙を溜める。

頭を撫でてやれば大人しく見ていたトゲチックが手を叩いて喜んでいた。

コホンと小さく咳払いをしてボールを二つ取り出す。そうすればミロカロスが目を見開いて、ブラッキーが首を傾げた。

 

「サマヨールとミミロルを押し付けられたので、まあ、私の手持ちとなった……」

 

「はぁああああ!?!?」

 

声を張り上げたのはギラティナ。

エーフィは興味なさ気、ブラッキーとトゲチックは嬉しいのかキャッキャッとはしゃいでいる。

ミロカロスの顔には影が差してブツブツと何か呟きだした……、不気味だぞお前……。

 

「オレは手持ちにいれてくれなかったくせにぃい!!!」

「邪魔者が一匹、二匹……」

「とは言っても」

「「とは言っても?」」

 

顔を上げたミロカロスと眉を寄せるギラティナの声が揃う。

ボールをポケットに戻して私が頷く。

 

「ミミロルはポケモンセンターでジョーイさんの手伝いを、サマヨールは研究所でイツキさん達の手伝いを各々でしてもらう事にした」

「……まあ、それなら妥協しても良いぜ。旅に出るわけでもないし?特別ベタベタ可愛がられるってわけでもないみたいだし?」

「俺様の事をもっと可愛がってくれるなら許してやっても良い」

 

何だお前ら、ムカつくな。

手持ち増やして連れ歩いてたら怒ると思ったからジョーイさんとイツキさんにわざわざ頼みに言ったんだぞ私は……。

あまりにも何故かムカムカと腹が立ったので。

 

「エーフィ、サイケこうせん」

「エー……、フィィイイイ!!!」

「「!?!?」」

 

もう暫く口聞いてやらん。

エーフィに遊ばれているミロカロスとギラティナを放ってスイクンの様子を見に行く。

部屋に入ろうとすればラッキーが入れ違いで部屋から出て来た。

 

「今、寝てるか?」

「ラッキー」

 

ラッキーの返事を聞いて部屋の扉を開ける。返事は起きてますよーとかそんな感じだった。

部屋に入れば見知らぬ美人が居た。包帯の巻かれた腕を擦りながらこちらに視線をやる…。吸い込まれそうな綺麗な目と視線が合い思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「シンヤ、さん……」

 

擦れた、それでも綺麗な声。

しかしその低音は男のもので何だ男かと少しガッカリした。

 

「スイクンも人型になれたんだな」

「長く、生きているから……」

 

ほぅ、やっぱり伝説なんて呼ばれる連中は長命なのか。まあ、ユクシー達なんて神だしな……。

儚げにゆっくりと瞬きをしたスイクン。本当に男なのかと無礼だと分かりつつスイクンの胸に手を当てる。

 

「……」

「……?」

 

ぺったんこだ。男だった。むしろ若干逞しい胸板だった。顔が顔だけに凄く残念だと思う辺りやっぱり私も男だな。

私が胸に触った事が不思議だったらしいスイクンが自分の胸をペタペタと触って首を傾げた。何かあるのかと私に問うように視線を向けてくる。

 

「女かどうか確認しただけだ」

「……私は男だと思う」

「そうだな」

 

凄く残念だ、という言葉は喉の辺りで押さえ込んだ。

 

「……」

「……」

 

私があまりにも凝視し過ぎたせいかスイクンが顔に何か付いているかと聞いて来た。

いや、別に。とそれだけ返せば良かったのに余計な事を言ったと後から後悔する。

 

「あまりにも美人で見惚れるな」

「……それは」

 

口を開こうとしたスイクンの言葉を遮って扉が勢いよく開かれた。

扉の方に慌てて視線をやれば水タイプの癖に何故かメラメラと炎を背負ったように見えるミロカロスが……。

 

「許さない……」

「は?」

「俺様が、俺様が一番美人で綺麗だって言ってくれなきゃ嫌だぁあああ!!!」

「エーフィ、あの馬鹿にもう一発サイケ光線だ」

 

エーフィが楽しげに尻尾を揺らした。

 

*




15話になっての主人公

育て屋で働きつつ、ジョーイさんやユクシーに教えられポケモンの知識は豊富になってきた。
性格は極めてポジティブで明るい思考へと向きつつあるが執着心がゼロで横柄な態度なのは相変わらず。好き勝手する手持ちのポケモンにはイライラしつつも打ち解けてはいる。
ヤマトら曰く表情の変化も分かりやすくなって自分の気持ちを出してくれるようになったらしい。
年齢変わらず25歳、最近の趣味はポケモン観察。

15話現在の手持ち
※技の種類はヤマトが研究の為に勝手に覚えさせたり忘れさせたりしている。

* ミロカロス(人型可能)
進化して自分に自信を持ち何かと一番にこだわる。変にグレて考え方も喋り方も微妙に反抗的(なんちゃって不良)
ミロカロスの世界はシンヤ中心、シンヤの事が好き過ぎて思考が危険。
人型時の見た目年齢は20代前半、趣味はシンヤに構ってもらう事

* ブラッキー
最近はエーフィにべったり、何処に行くにもエーフィと一緒に行動したがる。
頭が足りない子で指示無しだとバトルには弱いが能力はずば抜けて高い。
日課はエーフィと散歩、シンヤにブラッシングしてもらうのが大好き

* エーフィ
最近めきめきと強くなって自信過剰気味、性格の悪さに拍車がかかったらしい。
プライドが高く何かと根に持つタイプ、ブラッキーに対してだけ激甘(過保護)
日課はブラッキーと散歩、ジョーイさんの所に行って手伝うのもわりと好き

* トゲチック
面倒見の良い育て屋のバトルリーダー。個性的な手持ちの中でも順調に素直な良い子に育っている。
おおらかで誰とでも仲良くなれるし嫌われにくい子。凄く良い奴。
じじ様、ばば様に日々可愛がられており。シンヤはわりと何でもトゲチックに仕事を任せている。

* サマヨール
ツバキから貰った。
自分より下の位だと認識すれば一切命令に従わないが自分の認めた相手には凄く忠実に尽くす。
とても頭が良く研究所でイツキらの手伝いをする事になった。

* ミミロル
ツバキから貰った。
可愛がられるのも甘やかされるのも嫌いでツバキとは性格が合わずツバキの元から逃げだした。
真面目なしっかり者、性格は極めて男らしい子である。シンヤに代わりジョーイさんの手伝いをする事になった。


仲の良いポケモン

* ギラティナ(人型可能)
反転世界の主。シンヤの為なら結構なんだってやる。無意識にシンヤが好き過ぎる
自分勝手で自己中な奴だが意外と甘えん坊、シンヤに凄くゲットされたい。
人型時の見た目年齢は20代前半、趣味は反転世界から外界を見る事

* ユクシー
シンヤの話し相手、頻繁に遊びに来てはシンヤに色々な事を教えてくれる。
礼儀正しい紳士的なポケモン

* アグノム
寂しがり屋で自分中心じゃないと納得出来ない。
構ってくれる人はわりと無条件に好き、無視する相手には容赦しない。

* エンペラー(人型可能)
ツバキのポケモン(エンペルト)、プライドの高い僕様。
シンヤの事は色んな意味で凄いと認めている、シンヤには勝てないと本気で思ったらしい。
人型時の見た目年齢は10代後半

* スイクン(人型可能)
捕獲の為か人間に酷い傷を負わされた。若干、人間不信気味。
シンヤも見惚れるほどの美人だがオスらしく性別は男だった。
人型時の見た目年齢は20代後半
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