一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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おはよう、と迎えに来てくれたノリコに挨拶を返す。

とうとうこの日が来てしまったな、と借りた衣装に袖を通して小さく息を吐く。

 

「お兄ちゃん、それで行くの?」

「ああ、着替えるのめんどくさいからな」

「似合うねー、タキシード!」

「ありがとう」

 

カズくんが昨日の晩に帰って来て、喋りたくてうずうずしちゃった!と笑うノリコに苦笑いを返す。

反転世界を出てノリコと実家までの道を歩いていれば、こちらに気付いたらしいツバキが大きく口を開けていた。

 

「シンヤ、おはよー。着替えが面倒だからってそれで出歩くのってどうなの?」

 

苦笑いを浮かべたヤマトには見透かされていたらしい。

 

「シンヤさん!結婚するの!ミロちゃんと!おめでとう!」

「話があるって呼んだんじゃないの?結婚式なら、僕らも相応の格好して来たのに」

「そういう訳じゃないんだが、ミロを紹介するのにな家族写真でも撮ろうと思って」

「結婚式に撮れば良いじゃん!?」

「結婚式なんて面倒なものをわざわざすると思ってるのか?」

「えー!」

「まあ、シンヤさんの挙式ってなると取材とか来て確実に面倒だろうね」

 

エンペラーの言葉にツバキがああと頷いた。

 

「有名人は大変ですねぇ」

「自分もそこそこでしょ」

「…! いやぁ、天才美女博士だなんて!そんな!照れる!」

「耳、腐ってるんじゃない?」

 

エンペラーの胸ぐらを掴んだツバキをノリコが止める。

 

「助手コラァ!」

「ツバキ!やーめーなーさーいー!」

「で、シンヤさんの話って何?」

 

胸ぐらを掴まれた状態で顔をこちらへ向けたエンペラー。

お前、慣れてるな。

 

「話は纏めて話す、家に入ってくれ」

「イツキさん久しぶりだな」

「カズくんは?」

「昨日の晩に帰って来てまだ寝てると思うよ」

 

お邪魔しまーす、と家へと入って言ったツバキ達を見てから隣に居るヤマトへ視線をやる。

 

「何から話すの?」

「そうだな、私が生まれた頃の話から」

 

いらっしゃーい、という母の声を聞きながら家へと入れば。母さんは目を丸くして私を見た。

 

「まあ!素敵な格好しちゃって!」

 

*

 

さて、今から話をするが……。

ハッキリ言って今から話す事は信じられないような内容だ。でも、私が嘘を吐いてない…ということだけは信じて欲しい…。

 

…良いか?…ん、よし、ありがとう。

 

…皆が知っていると思うが、シンヤという人間は複数の職種に付き複数の職種を極めた。

でも、それはシンヤであって、私では無い。

皆は覚えているか?ポケモントレーナーからコーディネーターに、コーディネーターからブリーダーにと変わった時の私の経緯と変化を。

ぼんやり、なんとなく、いつの間にか、そんな感じだと思う。

 

皆も知っている、神と称されるポケモンが居るだろう?

その中でディアルガとパルキアが居る。ディアルガは複数の時間を繋ぎ合わせ、パルキアは複数の別世界である空間を繋ぎ合わせた。その繋ぎ合わされた存在がシンヤだ。

ここに居る私は本来、ここに居ないシンヤだった。

トレーナーのシンヤ、コーディネーターのシンヤ、ブリーダーのシンヤ、三人のシンヤが築いた時間に組み込まれここに存在する事が出来るようになった私。ポケモンドクターであるシンヤだ。

 

私は元々、ポケモンの存在しない世界から来たイレギュラーな存在だった。

そんな私を拾ってくれたのは幼い双子の兄妹で私に居場所をくれたのはその双子の両親。見知らぬ世界へとやって来た私を家族として迎え入れてくれた大切な人達。

そして、その世界で過ごす間に出会った研究員の友人にトレーナーの少女…沢山の人達に、いつの間にか集まってしまったポケモン達。

私はこの世界で生きていこうと思っていたが、所詮はイレギュラー。存在していてはいけない、この世界に留まれば私の身も危険になると言ったのはパルキアだった。

パルキアの空間の歪みに引き込まれやって来てしまっていたらしい私は元々居た、ポケモンの存在しない世界へ戻される。その時にユクシーに記憶も消され、何もかも忘れてしまった。

 

全てを忘れた私が再びポケモンの居る世界へとやって来たのは、私の手持ち達…出会ったポケモン達の力だった。

元々、存在していない者をどうやって存在させ続けられるのか。そこで、最初に言った通り…、繋ぎ合わせて無理やり存在させた。

もしも、シンヤという人間がこの世界に居れば…。そんな世界は複数あるその世界をパルキアが選び繋ぎ合わせ、時間の流れをディアルガが調整してまた繋ぐ。

順々に成長しているように、色々な事に挑戦している人物になるように…。各々のシンヤが築いた経緯の末に今の私が存在出来ている。

だから、私はトレーナーのシンヤのように的確に指示を出して戦えない、コーディネーターのシンヤのように魅せる演技も出来ない、ブリーダーのシンヤのようにポケモンに全身全霊の愛を込めて育てることも出来ない。

各々の影響は受けてはいるが、各々のシンヤは私の中に居る。私が存在出来るようにと私を支えてくれている。

 

イツキさん、カナコさん、カズキ、ノリコ…。

四人の本当の家族はどのシンヤなのかは分からない、でも、世界が繋ぎ合わされる前に私を受け入れてくれた家族は間違いなく四人で…、そんな四人と本当の血の繋がりがある今にとても感謝している。

 

ヤマト、には先に説明してしまっていたが…ヤマトは研究員の友人だった。ポケモンを知らない私に色々教えてくれて、今の世界でも友人…いや、親友として共に過ごせることを嬉しく思う。

 

ツバキはポケモントレーナーの少女だった。世界を知らない私は色々と連れ回された…。振り回された反面、ツバキが居なければ私がポケモン達と深く関わることは無かったと思うし様々な出会いも無いままだっただろう。

そのツバキの最初のポケモン。ポッチャマから進化したエンペルトが…エンペラーだ。エンペラーが居たから、私は更にポケモン達と深く関わる事が出来るようになったと思う。

 

知っている者も知らない者も居ると思う。ポケモンの中に人の姿になれる者が居ることを。

私がその人の姿になれるポケモンと出会ったのはエンペラーが最初だった。

ポケモン達は異世界から来た私を不思議な存在と認識していて、幻、伝説、神と称されるポケモンも例外ではなかった。

アグノム、エムリット、ユクシー、アンノーン達もそうだし、あとはスイクン、エンテイ、ライコウ…。そして、私が存在出来る要となったのがギラティナ。

 

前も、そして今も、私はギラティナの世話になっている。住んでいる場所を言い出せなかったのはそういうことだ…、

反転世界に住んでいる。

ん?ああ、ギラティナも人の姿になるぞ。勿論、私の手持ち達も全員。

見せろって…、まあそれは後でな。

 

それでだ、それで…、繋ぎ合わされた私は各々のシンヤ達の助けもあって、この世界に存在し続けられることになった。私という異端の存在が世界に馴染んだ、ということらしい。

その馴染んだことで、一つ問題が発生した。

 

ディアルガとパルキアの力でシンヤを繋ぎ合わせたと言っただろう?つまり、シンヤを主軸として世界を創ったんだ。シンヤに都合の良い、シンヤの為の世界。

 

その世界に私は認められ世界に馴染んだ。

信じられない話だが…、私自身が世界そのものなんだ。

…、ああ、分からないだろうな。私もイマイチ分からなくて混乱した。それでもそうなってしまったんだ。

私が世界そのものの存在になってしまったことで、このまま私が歳を取って死ねば…世界も終わるのだと…。

そうなってしまっては困るだろう?だから、私はディアルガの力でこのまま時を止めて、世界が終わるその時まで生き続けなければならなくなったんだ。

 

 

「……、悪い、上手く説明出来ないな…。ずっと考えてはいたんだが、言葉にするとどうも…上手くいかない…」

 

 

*

 

ミロの、話をしようか。

この際だからハッキリと言ってしまうと、ミロは。私の所持しているミロカロスだ。

色々と言いたいことはあると思うが、聞いてくれ…。

 

世界を繋ぎ合わせて私がこちらへ来るきっかけを作ったのがポケモン達だ。その私の手持ちだったポケモン達だけはそのまま、繋ぎ合わされることもなくシンヤの手持ちとして世界に組み込まれた。

ずっと、私が戻って来るのを待っていてくれたんだ。長い時間をずっと…。

 

繋ぎ合わされる前に出会った奴らで、私にとってかけがえのない存在だ。

その中で、ミロカロスは…ヒンバスだった頃に出会ったんだが、育て屋に置き去りにされたポケモンで。育て屋の池よりも仲間の居る生息地に放してやろうと、譲り受けたポケモンだった。

その道中にツバキと出会ってな、ツバキに助けてもらいながらテンガン山の生息地に辿りつきヒンバスを野生に帰す事が出来た。

 

そのヒンバスとはもう二度と会うことはないと思っていたが、ツバキがな…。逃がしたはずのヒンバスを捕まえて来てしまったんだ。

なんでも、私が野生に帰した後に鳴いていたらしく。可哀想でゲットしたんだと…、結局、私の手元にまた戻って来てしまった。

戻って来たヒンバスは物凄くひねくれて、私に反抗的だった。

 

何故、反抗的なのか何が不満なのか一緒に居ても分からなかった私がツバキの元へ返そうかと言った時に、ヒンバスはミロカロスへと進化して。人の姿になって言った。

もう捨てられたくなかったのに、もう捨てないで

その時の私は暗い考えしか思い浮かばないような奴で、私のような奴は命あるポケモンを育てる資格がないと思っていた。

思いやりとか優しさも無い最低な男だったと思う、でも、そんな私が良いと言ってくれたミロカロス達のおかげで誰かと共に生きていくという勇気の要る一歩を踏み出せた…。

 

ポケモン達のおかげで今の私が出来たんだろうな。生きるのが楽しい。人間らしい感情が持てるようになった、そんな感じだ。

 

ミロとの恋のきっかけ…?いや、そういうのは別に…?

ミロがずっと私のことを好きだって言ってくれてて、無意識に私もミロのことが好きになってたんじゃないか?多分。

……、そういう感情はよく分からない。

私を支えてくれるポケモン達はみんな大事だが、その中でミロに抱く気持ちはまた違うと思う。手持ちのミロカロスはみんなと同じ大事でも、人の姿として向き合った時にミロが私をずっと好きだって想い続けてくれることに安心する。

想い続けて私を待っていてくれた分、私もミロに想いで返してやりたいと思う。

最後の最後まで一緒に居て欲しいとミロが言うから、私はそうしてやりたいし、私も最後の最後までミロと一緒に居たいと思う。

 

性別が同じで種族が違う、母さんと父さんには申し訳ないとは思うが…。

私はこの先、生き続けていても…ミロ以上に私を愛してくれる奴は居ないし、私が愛せる奴もミロ以外には居ないと思う。

…いや、居ない。

ミロが先に逝ってしまって私が世界と生き続けても、ミロはここに居てくれるそうだ。

この左目は、ミロの左目。

 

私が世界と一体となったことで世界への影響、世界を担う神と称されるポケモン達へのダメージを私も背負うことになった。

自然に起こる災害では何とも無いみたいだが、人の手による大規模な災害、稀有なポケモンを狙う者達から与えられたポケモン達のダメージ、そして人とポケモンが関わる事で起きる争い。

それは様々な形で私にも影響がある。

私の左目はギラティナを狙った者が起こした騒動の中で潰れてしまった。影響で、というわけじゃなく瀕死のギラティナを救うのに対価を支払った結果だと思う。

今思えば、あの場でギラティナが死んでしまっていれば私の受ける影響は左目だけでは留まらなかったと思う。ギラティナは世界を裏側で支える存在だ、支柱が無ければ世界は成り立たないということだろうな。

 

今更ながら私の左目が機能していない状態の場合、世界に何らかの影響が起きる可能性があったかもしれないのが恐ろしい…。

私の左目が潰れた時、ポケモン達が私を救ってくれた。気を失っていたのが残念なくらい、見事な執刀をしてくれたそうだ。

そして、その時に自分の目を私にくれたミロには頭が下がる思いだな…。

 

世界と共に生き続けなければならないと知った私は、恐怖に押しつぶされそうだった…。

知り合った人達の死を全て見届けなければならない、結果、私は皆に置いて行かれてしまう。そう思うと恐ろしくてたまらなかった…。

 

生き続ける覚悟が出来なかった…。

そんな私にミロは言ってくれた、寂しくなったら鏡を見てと…。

シンヤの左目にずっと居るからね、寂しくないよ。

 

その言葉と笑顔が嬉しくて、心強くて、どれだけ愛おしかったか…。

 

「…っ、…悪い、…」

「大丈夫だよ、シンヤ…。ゆっくりね」

 

シンヤの背を撫でたヤマトは泣きながらもシンヤに笑みを浮かべて見せた。

はあ、と小さく息を吐いて俯いたシンヤを見てノリコが首を横に振った。

 

「お兄ちゃん…っ、もう良いよ…!もう分かったから…!お兄ちゃんがっ泣い゙てるの゙みたくっない゙よぉっ!」

 

うええええ、と泣き出したノリコに釣られて隣に座っていたカズキも顔を歪めて目からぼろぼろと涙を零した。

泣く双子を見ながらエンペラーはツバキが研究だ!と騒ぐんじゃないかと思っていたが、予想に反してツバキは呆然とシンヤを見つめていた。

この中で一番、関係が薄い僕でもツライ…。シンヤという人間が背負うにはあまりにも大きすぎる責任。

どんな事があっても、さすがシンヤさんだね。シンヤさんだからね。と流して来たけれど…。これはあまりに酷なんじゃないだろうか…。

なんで、どうして…、シンヤさんなの…。

エンペラーがそう思ったのと同じように母、カナコも思った。そして似つかわしくない程に顔を歪めて怒鳴った。

 

「シンヤが他にも居てっ、本当のシンヤはここに居るシンヤじゃないとか!そんな事はどうでも良いのよ!そんなこと言われたってね!分からないもの!でもね!貴方はね!私がっ、お腹を痛めて産んだ私の息子なのよっ!世界になんてっ…!あげないわ…っ!!!」

 

みんなと同じように産んだのに、どうしてうちの子が…!と言ってテーブルに突っ伏したカナコの肩をイツキが掴んだ。

 

「イツキさん…」

「俺達の息子が覚悟を決めて話してくれたんだ。母親のお前が泣いて縋ってどうする。お前が泣いて喚いて怒鳴った所でシンヤが困るだけだ」

「……っ」

 

口をへの字にして黙り込んだカナコは泣きながらイツキを睨む。

イツキはゆっくりと椅子に座り直してシンヤへ視線をやった。

 

「シンヤ…。お前が言った通り、お前が色んな職種に付いてた頃の記憶は曖昧だな。でもな、シンヤはシンヤだ。どのシンヤも俺の息子だ。トレーナーだった時もコーディネーターだった時もブリーダーだった時も、今のお前の事だって愛してる。

そんな愛する息子がもう成長しないって?未来永劫生き続けるって?それは凄く寂しいだろうしツライことだと思う。何があっても世界の為に生き続けるってのは苦行だ。母さんはお前にそんなツライ思いをさせるのが嫌で、泣いてるんだ。決してお前を責めてるわけじゃない。

父さんもな、ツライぞ。息子のこれからの苦しみを想像するだけでツライ。親兄妹や友人知人だけでなくお前は愛する人の死も全て乗り越えて生き続けなければいけない。

腹を括って話してくれたんだと思う、だから父さんも聞くぞ。

シンヤ、お前、それで本当に良いのか?」

 

イツキの言葉にカナコは視線をシンヤの方へやった。

俯いていたシンヤが顔を上げる。

 

「私は…、この世界に存在出来て後悔してない。この世界に居られることを嬉しく思ってる。寂しくてツライ時もあるかもしれないけれど、私はこの世界で最後まで生きる。出会った人達との思い出を胸に、世界が終わるその日まで。

私は、大丈夫だ」

 

困ったようにシンヤが笑えばカナコは顔を歪めてうええええと子供のように泣いた。

シンヤの言葉にそうかと頷いたイツキは笑った。

 

「そうか!お前が大丈夫って言ったら大丈夫だな!老後の心配しなくて良いなぁ!若い息子が最後まで面倒みてくれるぞ母さん!」

「イツキさん…!ふざけないで!」

「ふざけてない。俺は大真面目だ。母さんもぷりぷり怒ってないで笑ってやれ!息子の思い出にそんな顔を残して良いのか?ん?」

「…!だ、だって!」

「俺はなぁ、シンヤが本当は嫌だって言ったら何をしても世界に抗ってシンヤを普通にしてやるつもりだったぞ。でもな、シンヤは大丈夫って言ったんだ。息子の成長と決意を喜んでやれない男じゃないぞ、俺は!」

「イツキさん…」

「でも、そうかぁ…シンヤが世界に神様に選ばれたのかぁ…。俺の息子がなぁ…。それって凄く誇らしいことだよなぁ…。

ディアルガ、パルキア、ギラティナに認められたんだぞ!うちの息子が!……さすが俺の息子だなぁ!そうだろ母さん!」

 

お祝いしよう!ビールだ!とハシャぐイツキを見てカナコはポカンと口を開けたかと思うと、困ったように笑った。

 

「もう…、もうっ!そんな風に言われると!私も楽しくなってきちゃうじゃない!真面目な話だったのに!」

「俺も真面目な話してただろー?」

「ばかっ!」

「母さんはすぐぷりぷり怒るなー」

 

わはは、と笑ったイツキを見てノリコとカズキもへらへらと笑った。

 

「父親って偉大だね」

「考え方が男らしい…」

「で、どうするの?」

「なにがよ」

「シンヤさん。ディアルガ、パルキア、ギラティナと知り合いだってさ」

「………け、研究せねばっ!?」

 

うおおおおお!!!シンヤさんばんざぁあああい!!!と雄叫びをあげたツバキを見てエンペラーが予想通りの反応で良かったと笑った。

 

「シンヤ…」

「ん、私の家族最高だな…!」

「だね」

 

*

 

「兄ちゃん!ノリコだけ反転世界に行ってるってマジ!?」

「あ、ああ…」

「ずりぃよ!」

 

それはズルイ!と椅子から立ち上がったツバキがノリコに飛び掛る。

 

「何故言わない!何故すぐにツバキちゃんに報告しない貴様ぁあああ!」

「ふふん、ギラティナさんとも知り合いだもんねー、ふっふーん」

「ここここ、このやろぉおおおお!!!!」

 

怒りと羨ましさで手が震えるわ!と怒るツバキをエンペラーが羽交い締めにして止めた。

オレも行きてぇよ~と喚くカズキにはいはいと適当に相槌を打つシンヤ。

 

「は…!?そういえば、ミロちゃん、紹介してくれるんじゃなかったの!お母さん凄く楽しみに待ってるのに!」

「…そろそろ、用意出来てると思うが」

 

なんの?と一同が言葉を返した所でヤマトが「行こうか!」と立ち上がった。

 

「何処に行くの?」

「反転世界!」

 

ヤマトの言葉にツバキとカズキとイツキが両手をあげた。

 

「「「わーい!」」」

 

*

 

実家から直通の出入り口を通って反転世界へと入ればツバキがハシャぐ。

 

「凄い!凄い!すごぉおおい!」

 

俺様何様シンヤ様、万歳。と褒めているのか貶しているのか。

いらっしゃいませ~と出迎えた人の姿のギラティナにカナコとイツキは頭にハテナマークを付けながら会釈して返す。

 

「ギラティナさん、父と母、そしてカズくんです!」

「知ってる」

「え、ギラティナ!?ギラティナなの!?男前じゃん!」

 

ハシャぐツバキにギラティナは冷たい視線を向ける。

初対面でまさかの冷たい視線にツバキは半泣きになりながらエンペラーの腕を掴んだ。

 

「…なんでだと思う?」

「え。うざいって一目で分かったんじゃない?」

「!?!?」

 

ツバキがショックを受けている横で苦笑いを浮かべたシンヤは慌ててその場にしゃがんだ。

ブオンッと音を立てて分厚いファイルが頭上を通過して行った。

 

―バゴンッ!

 

「痛ぁあああああ!?!?」

「あ、危ない…っ!誰だ…!」

「あああああああ!!!!痛あああああああ!!!」

「ヤマトさぁああん!!!!」

 

当たる所だった!とシンヤがファイルの飛んで来た先へ視線をやれば仁王立ちする天敵の姿。

 

「ジョーイ…!」

「シンヤさん…、ギラティナから話は全て聞いたわ…!!そういう事は逐一報告してくれなきゃ駄目じゃないの!馬鹿!」

「一応、心配してくれたんだな…」

「当たり前でしょう!」

「ありがとう、でも、その第二のファイルを投げるのはよせ…!」

「怒りがおさまらないのよ!!」

 

この馬鹿野郎おおお!と第二のファイルを投げたジョーイ。そのファイルをシンヤが避ければ、地面に寝転んでいたヤマトの腹の上に落ちた。

 

―バスッ!

 

「ぐはぁっ!!!!」

「ヤ、ヤマトさん…!!」

「ちょ、なんで、僕…!」

「避けなよ、馬鹿じゃないの」

 

ジョーイちゃん、今日も豪快だなぁ!とイツキが笑う横でカナコが頬を膨らませた。

 

「ねえ、ちょっと…、ミロちゃんはまだかしら!」

「ミロなら家で待ってるよ、あっち」

「もうシンヤ!お母さん達、先に行ってるからね!ギラティナくん、案内して!」

「はーい」

 

「ジョーイ、やめろ!私のこの服、レンタルなんだぞ!」

「それくらい買いなさいよ!」

 

*

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