「はい、どーぞ」
「ありがとう、ギラティナくん」
先に家へ着いたカナコ、イツキ、カズキ、ノリコ。
おかえりなさい、と出迎えたチルタリスがニコリと笑った。
「あれ?ご主人様は?」
「ああ、シンヤは外でジョーイに捕まってる」
「怒ってらっしゃいましたもんね…」
苦笑いを浮かべるチルタリスにノリコが声を掛ける。
「今、フィーさん居ます?」
「はい、ニ階に居られますよ」
「よっしゃ、カズくん、ちょっと来たまえ」
「お前、先に知ってたからって偉そうだぞ」
「ふふん」
カズキの手を引いてニ階へと上がっていくノリコを見送ってから、チルタリスはカナコとイツキに頭を下げた。
「改めまして、いらっしゃいませ、ご主人様が来られるまでゆっくりお寛ぎ下さい。席はこちらです」
「おー、ありがとう!しかし、出来た子だなー、賢いなー」
「ちょ、ちょっとイツキさん!頭グリグリしちゃダメよ!」
頭を激しく撫でられたチルタリスは照れたように笑う。
「大丈夫ですよ~、チル達は丈夫な生き物ですから」
「チル…?」
「はい、チルはご主人様のチルタリスです」
「まあ!じゃあ、シンヤにご飯作ってくれてるって言ってたあのチルくんなのね!」
「え?」
「そうかー、チルタリスかー、可愛いなぁ!」
「え、どうも…」
知らない所で何故か知られていたことに戸惑いつつ、イツキとカナコを席に座らせてチルタリスはお茶の用意をしにキッチンへと向かった。
「で、噂のミロちゃんは何処にいるのかしら…」
「母さんはせっかちだなぁ」
「だって気になるじゃない!」
「シンヤのミロカロスなら今までにも会ったことあるじゃないか」
「それはポケモンの姿ででしょ!人の姿よ!しかも男の子なのよ!息子のお嫁さんが男の子だなんて…ど、どんな子かしら…」
「ミロカロスだから相当な美人だろうなー、楽しみだなー」
「もう!」
チルタリスの用意したお茶をゴクゴクと飲み干したカナコはチルタリスに詰め寄る。
「チルくん!ミロちゃんは!」
「えっと…」
そろそろだと、とチルタリスが時計をチラリと見た時にリビングの扉が開いた。
「おまたせー」
「ギラティナくん!」
部屋へと戻って来たギラティナが扉を開けて廊下に居るらしい誰かに手招きをした。
「入れ入れ」
「シンヤは?」
「まだジョーイと戦ってんだろ、先にお披露目してやんな」
「おかあさんとおとうさん居るの?」
うん、とギラティナが頷くのを見てカナコは両手をぎゅっと握り締めた。
あの壁の向こうに我が子の嫁が居る、男の子のお嫁さん…。息子が選んだとはいえ、男の子を我が娘として思えるだろうか…。
カナコの心の中には色々な葛藤が生まれる。
そして、部屋へと入って来たミロカロスは真っ白なドレスを身に纏い。
カナコとイツキの前で恥ずかしそうに頬を染めて笑った。
「こ、こんにちは…」
「やったぁああああ!お嫁さん可愛いぃいいい!!!」
「うぉお!?母さん落ち着け!?」
飛び上がったカナコに驚いたイツキが椅子から立ち上がる。
「ミロちゃん、よろしくねミロちゃん!うちの息子をよろしく!!」
「え、あ、うん…。おかあさんどうしたの?大丈夫?」
「大丈夫よぉおお!超元気ぃいい!」
「うちの女房がすまん…」
「おお、めっちゃびっくりした…」
男の子って聞いてたからどんな子が出て来るかと思ったらそこらの女の子の何倍も可愛いじゃない!やるじゃないシンヤ!とカナコはにまにましながらミロカロスを抱きしめた。
シンヤのオカアサンこえー、とギラティナがドン引きしている横でイツキが苦笑いを浮かべた。
*
「お前の相手をしてたせいで疲れた!」
「一発くらい殴らせなさいよ!」
「断る!」
ジョーイとシンヤが喧嘩しつつ家へと向かう後ろで何故か何発か殴られたヤマトがツバキに手を引かれていた。
「なんなの、ヤマトさんの特性ひらいしんなの?」
「え!そうだったの!?」
「そんなわけないでしょ…」
もう僕は心身共にボロボロだよ。と落ち込むヤマト
そんなことはどうでも良いツバキは反転世界にあるシンヤの家を見て目を輝かせた。
「素敵!シンヤさんと仲良くて良かったぁああ!」
「僕は?」
「エンペラー!お邪魔させてもらおう!」
「うん」
「僕はー!」
ただいまー、とジョーイが玄関の扉を開けた。
出迎えたサーナイトがにこりと笑顔を浮かべる。
「おかえりなさいませ~」
「一発も殴れなかったわ!」
「だから無理だって言ったじゃないですの!」
「悔しいわ…」
「ふふ」
ミロさんのご用意出来てますの、と言ったサーナイトの言葉にシンヤが頷く。
「エンペラー、ギラティナと仲良くなる作戦立てようよ」
「良いよ。これからツバキだけ空気椅子ね」
「はぁ!?」
「ツバキの席が無い方がギラティナに好印象な気がするから」
「はぁ!?」
お邪魔しまーす、と家へ上がっていったエンペラーを睨みつけながらツバキはその後に続いた。
丁度、ニ階から降りてきたブラッキーが玄関に居るシンヤに「おかえりー」と声を掛ける。
「みんな、リビングか?」
「いや、上に居るよ。カズキとノリコも上」
「写真撮るから声掛けといてくれ」
「おっけー」
声掛けに戻るかー、と踵を返そうとしたブラッキーが立ち止まった。
「え、ヤマト。なんでちょっとボロボロなの?」
「…苛められた」
「おー、可哀想にー、オレがなでなでしてあげようかー?500円で~」
「ツキくんまで苛めるー!」
手をわきわきと動かしながら笑ったブラッキーにヤマトはがくりと肩を落とした。
「ヤマトも一緒にニ階くれば?写真撮るのに服汚れちゃってるじゃん。貸してやるよ服」
「あ、優しい」
「シンヤの出してきてやるよ」
「やめて!足の長さ違うからホントにやめて!」
「ぷふー!」
*
ブラッキーとヤマトがニ階へと向かった頃、リビングに入ったシンヤは自分の母に手を握られてうろたえているミロカロスを見つけた。
手を握り、それはもう早口に可愛いだのお料理を教えてあげるだのとミロカロスに言っている、実母を見てシンヤは見なかったことにしようと思った。
「おー、ミロ、すごく綺麗だなー…、チル、お茶ー」
「シンヤ…!なんでキッチン行くの!おかあさんが放してくれないよシンヤ!ねえ!」
「関わるのがもの凄く嫌だ」
あー、ヤダヤダとソファに座ったシンヤはミロカロスを助ける気が無いらしい。
そのシンヤの横にどんと座ったイツキが親指を立てて言った。
「父さんはもう気にしないことにしたぞ!」
「さすがだ、私もそうしよう」
おい、とギラティナが二人にツッコミを入れる。
「シンヤが来ても止まらないマシンガントーク、止めて来いよ。ミロはもう限界だ!あとオレも限界だ。お昼寝したい」
眠いから早く写真撮ろうよー、という事らしい。
「母さん、写真撮るぞ」
「だからね、…え?なあに?」
「写真、撮るから…そろそろ嫁を返せ」
「まあ!ヤキモチ!お母さんにヤキモチ焼いちゃうなんて!シンヤったら!」
ドレスも白だが顔も蒼白だ。
「イツキさん!写真撮るんですって!」
「ほぼ母さん待ちだったよ」
「あらあら?」
「シンヤ、俺様なんかもう疲れた…」
「ああ、お疲れ…」
*
カズくんにお兄ちゃんのポケモン達を一人ずつ紹介して、フィーさんの腕を掴んだ。フィーさんがあからさまに嫌そうな顔をしたけど気にしない!
「で、この人がフィーさん!」
「エーフィだろ…もう分かったって、放してやれよ。嫌がってるだろ…」
「嫌がってませんー」
「いえ、嫌がってます」
「本人が言ってるじゃん!」
フィーさんにぴっと手を払われた。悲しい。
やれやれと呆れたように溜息を吐いたカズくん。
「あ、みんなー、そろそろ写真撮るらしいよー」
ヤマトさんが部屋の扉を開けながら言った。ヤマトさんの言葉に「へーい」と書類仕事をしていたミミローさんが返事をして、ヨルさんがテキパキと片付けを始めた。
「ヤマト、それツキの服ですね」
「うん、着てたの汚れたから貸してもらったんだ。似合う?」
「…………ええ、まあ」
「その間、なに!?」
行きましょうか、とフィーさんに声を掛けられてカズくんが頷いた。
「ヤマトー、やっぱこっち着てくんない?こっちのが良いと思うんだ」
「え゛!?僕、何回着替えさせられるの…!もうこれで良いでしょ…」
「いや、やっぱネクタイした方が良いかなって」
「えぇー…」
「そんでヤマト、髪の毛茶色だからこっちの色の方がさー」
「もう下でシンヤ達が待ってるのに…」
ツキさんがヤマトさんの首元にネクタイを合わせて首を傾げる。うーん、これだとシャツの色がなぁ…なんて言いながらヤマトさんの着ていたジャケットを脱がしていく。
まだ着替えさせられるみたいだね、と隣に居るカズくんに言えばカズくんはケラケラと笑った。
「ヤマトさん良いじゃん!」
「え?やっぱこっちの服で良い?」
「服じゃなくて、なんか良いお嫁さんもらったみたいで良いなって」
はあ!?とツキさんが声を上げた。
いや、うん、カズくん、イケメンなお兄さんに良いお嫁さんって例えは…のんはどうかと思うなぁ。
「お嫁さんだってさー、じゃあネクタイ締めてもらおっかなー」
「締めてやらぁ!くらえぇええ」
あはは、と笑いながらヤマトさんが冗談を言えばツキさんは顔を赤くしながらネクタイでヤマトさんの首を絞めた。
「ぐえええええっ」
「締め上げてる」
「締め上げてるね」
「遊んでないで早くなさい!」
*
何故か咳き込みながらニ階から下りて来たヤマト。
「どうした?」
「え、…ちょっと反撃にあって」
はあ?と思ったが後ろに居たブラッキーが満足げにニヤニヤと笑っていたので犯人はアイツだろう。
「それ誰の服だ?」
「これツキくんの。誰かさんのせいで服が汚れたからね!」
「自分のせいだろ」
誰かが避けるから、とソファに座っていたジョーイがぼそりと言った。
ああ、こいつのせいだった。
さて人数は揃ったか?と聞けばギラティナがハーイと手を挙げた。
「ツーが居ねぇ」
ギラティナの言葉にミミロップが手を挙げた。
「アイツ、屋根の上で本読んでる」
ミミロップの言葉にトゲキッスが手を挙げた。
「じゃあ、俺が呼んで来ますね」
なんでうちの子、挙手制なんだろうか…。大変良い子だ。
シンヤさんの家、凄い躾がなってるね。とエンペラーが関心したように呟いたが特に躾はしていない。
「うちも見習わないとね」
「うちの研究所の子はみんな良い子だけど?」
「うん、アナタ以外ね」
「………ギラティナ、うちのエンペラーが虐めてくるんだけど!どう思う!」
「とても愉快です」
「なん、だと!?」
エンペラーとギラティナにニヤニヤと笑われて悔しそうなツバキを眺めているとトゲキッスがミュウツーを連れて部屋へ入ってきた。
「人が多いな」
写真撮るの外の方が良いですよね?なんてミミロップに相談しているトゲキッスにヤマトが口を挟む。
「家の中にカメラセットして庭に並べば丁度良いんじゃない?」
「綺麗に入りますかね…、テストしてみます!」
トゲキッスとミミロップとサマヨールが庭へと出て、ここからここまでーと目印を置いてせっせと準備をしてくれている。
「私は何故呼ばれたんだ」
「ツーくんも一緒に写るからでしょ?」
「は?何故?…というか、ヤマト、ネクタイ曲がってるぞ」
ヤマトとミュウツーの会話に視線をやれば、つんとツバキにつつかれた。
「あの人、前にシンヤさんの家に来た人だよね?」
「ああ、ツーか?」
「ツーさん?」
「ミュウツーだ」
「へー、ミュウツーなんだー」
えええええええ!と声を荒らげたツバキがエンペラーに拳骨を食らった。
「痛い!ちょ、だって、ミュウツーだよ!?」
「シンヤさんの所なんだから何が出てきてもいい加減慣れなよ。ほんとにうるさい」
「えええええ…、理不尽…!」
ツバキがショックを受けているのを他所に父さんがミュウツーに食いついた。
「ミュウツー!今度、ミュウ紹介してくれ!」
「あいつの居場所なんて知らん」
「わははは!なんだこいつ!シンヤに似てる!」
わしゃわしゃと頭を撫でられたミュウツーは始終無表情だ。やめなさい!と父さんが母さんに怒られた。
「ねえ、ツーくん、ネクタイ真っ直ぐになった?」
「曲がってる。どんな締め方をしたんだ…」
「いや、締め上げられたんだよ…」
「?」
髪の毛がくしゃくしゃのままミュウツーがヤマトのネクタイを締め直す、あいつネクタイなんて締められるんだな。と密かに関心した。
「ツーくんは髪の毛ぐちゃぐちゃだから直してあげる」
ミュウツーがヤマトのネクタイを締め、ヤマトがミュウツーの髪の毛を手櫛で整える。
なんだあの微笑ましい光景。
「ツーくん、髪の毛サラッサラ!」
「…終わったぞ」
「ありがとう!でも、本当にサラサラでヤバイ…!なにこれ、何のシャンプー使ってるの!」
「うちはみんな同じシャンプーです、よっ!」
ヤマトの膝裏を蹴ったエーフィの攻撃。膝カックンされたヤマトが悲鳴をあげた。
「い、今のはエーフィの…ローキック!?」
「違うでしょ」
ツバキがうるさい。
わいわいと賑やかでうるさいので本日の主役の傍に行くと、ミロカロスが母さんとイロに挟まれていた。
「ミロカロスって本当に綺麗な子ばっかりなのね~」
「次は私も素敵なドレスを着たいです~」
「……」
ミロカロスがぐったりしていた。
さすがに助け舟を出してやらなければならないだろう。
「母さん、写真撮る準備がもう少し掛かるみたいだ」
「そうなの?」
「ああ、だからそれまで私の花嫁を独り占めさせてもらって良いか?」
「あら!あらあら!」
勿論よ!ごゆっくり!と母さんとイロが同時に立ち上がってミロカロスから離れた。
隣の席に座ってやればミロカロスは小さく溜息を吐く。
「なんか、俺様の想像してた結婚式と違う…」
「ドレスが着たかったんだろ?」
「そうだけど~…」
「綺麗だぞ」
「…一番?」
「勿論」
「えへへ!」
相変わらず簡単な子だな、とぐりぐりと頬を撫でてやる。
ミロカロスとの談笑中に「内緒なんだけどな!チルがでっかいケーキ作ってくれてるんだって!」とこそっと言ってしまう辺り、まだまだ頭の弱い子だと苦笑いを浮かべる。
聞かなかった事にしておこう。
暫くして用意が出来たー!と声を張り上げるミミロップの言葉にわらわらとみんなが庭へと出る。
「えーっと、お父様とお母様どちらがシンヤの隣に立ちますの?」
「俺だな!」
「じゃあ、私はミロちゃんの隣に行こうかしら~」
「フレーム内に入ってりゃ良いんだろ?あー、ギラティナもうちょっと右寄ってー。そんでエンペラーはもうちょい左な!そこ!そこ両端!残りの奴らその間に入れ!」
「ツキ、タイマーセットして走って来て下さいね」
「オッケー、じゃあカズキの横行く」
「え!オレのとこくんの?ここ?」
「そこ行くけど、なんだよ!」
「オレ、ノリコかツバキと並びたい!」
「え!カズくん、なにその主張!」
「どうしてもって言うなら良いよ!カズくんってば大胆ね!きゃ!」
「いや、男前なツキさんと並びたくねぇから…中の下辺りと並んどこうかと…」
「「…カズくん…っ!」」
喧嘩するな。
私も写るのか、と不満げなミュウツーをギラティナに押し付けて私とミロカロスが父さんと母さんの間に入る。
「えー、じゃあ、オレはジョーイさんの横行くか」
「ワタクシが並ぼうと思ってましたのに!」
「サナ、ジョーイさんの後ろで良いじゃん。身長あるんだからさ」
「あーん、酷い!キッスさん!横並んで下さいまし!」
「え?じゃあ、俺そっち行きますね」
「ワタシ、後ろで良いけど」
「いや…前だな…」
「くっ…!せめて、チル…ワタシの横に…!」
「かしこまりました~」
「ツキさん!ワタクシ、こちらの向きとこちらの向き!どっちが綺麗に見えてるか教えて下さいまし!」
「いつまで経っても押せねぇじゃん!正面で良いよ!正面で!」
………。
「ノリコ、そこ?オレもそっち行って良い?父さんの隣行く」
「え、ちょ!フィーさんの前陣取ってたのに!くそっ」
「フィーさん、ここ良い?」
「ええ、勿論」
「のんが聞いた時無視だったのに…!?」
「うわー!ワタシ、端っこ!?それもここ!?」
「良いじゃないか…。な、チル…」
「良いと思います!なんで嫌なんですか?チルと代わります?」
「代わったって一緒だぁぁ…うわぁぁああ、ワタシの後ろにクソデカイ二人が居るぅうう!お前ら縮め!すぐに!」
「うるせーうるせー。オレ、もう眠いから早くしてくれよ」
「゛小さくなる゛は不可能だが、私に名案がある。私がお前をこう肩に担…」
「うわああああ!やめろぉおお!」
「うるせーっての!ツー!もうやめとけ!」
「ツー、それだと、見切れてしまう恐れが…」
「チルはこう前に抱っこする方が安全だと思います!」
「そういう問題じゃねぇえええええ!」
「ちょ、ちょっと!そこ端で何モメてるの!?」
*
両脇からギャーギャーとうるさい。
父さんと母さんが笑って見ているのでまあ別に構わないが…。
「抱っこ」
「肩車より安全安心です!」
「下ろせぇえええ!」
「ツキ…どうだ…?」
「浮いてる!明らかに別の意味でも浮いちゃってる!」
「もうお前ら追い出すぞ…」
………。
「お父さん!後ろの人、フィーさんだからね!覚えておいてね!」
「シンヤのエーフィか?おぉー、別嬪さんだなぁ!」
「ああっ、見える…!輝かしい舞台で輝くフィーさんとのんの姿が…!」
「まだ一緒に行くなんて言ってません」
「ノリコ、まだエーフィ欲しいってねだってんのかよ」
「お兄ちゃんが欲しかったら頑張って口説き落とせって」
「わはは!ノリコは色気が無いから無理だなぁ!」
「…お父さん…っ!?」
「父さん…そっちの口説き落とすじゃないから」
「ん?ノリコが嫁に貰ってもらえるかじゃないのか?エーフィ!出来の悪い子だがノリコは可愛いぞ!母さん似だからな!」
「ええ、まあ、可愛らしいとは思いますけど」
「フィーさん…!」
「しかし、お母様の美しさとお父様の利発さを引き継いだご長男と比べると、ね!お父様!」
「ちょ…っ」
「こらこら、シンヤと比べるんじゃない!ノリコにはノリコの良い所があるんだ!」
「お父さん…!」
「ほう。是非、教えて下さい」
「……………うん、ある!」
「お父さぁあああん!!!!」
「ノリコ、どんまい」
「カズくん…っ!!!」
………。
「あら、ジョーイちゃんも今日聞いたの?やーねぇ」
「そうなんですよ~」
「まあまあ、ミステリアスな男性の方が素敵じゃないですの!」
「ミステリアスなんてダメよー、それにずっと思ってるんだけどシンヤは細すぎるの!男はもっとガッシリ逞しくないと!」
「カナコさん、それは人それぞれだと…」
「あら!よく見たらキミ素敵じゃない!何処の子?」
「え!?俺ですか!?何処の子と言われると、シンヤの所の子ですけど…」
「カナコさん、その子トゲキッスですよ」
「トゲキッス!素敵ね~、男はこうじゃないとダメよ!ジョーイちゃんもアナタもね!こういう逞しい人選ぶと良いわよ!」
「カナコさん…」
「お母様、ごめんなさい。ワタクシ、男ですの…。シンヤのサーナイトですの…」
「……まあ!」
………。
「あっちの端っこで何騒いでるんだろ…、ミミローくんが悲鳴あげてる…」
「後でツーさんの写真撮らせてもらえるかな、どう思う、ヤマトさん」
「え、撮らせてくれるんじゃない?」
「ギラティナさんも撮らせてくれるかな」
「え、うん、大丈夫なんじゃない?」
「どう思う、エンペラー?」
「無理だね」
「……。」
「…え、えっと…、ところで、この美人さんは誰?」
「え!」
「…ああ!ヤマトさん、この姿は初めて見るんだっけ!私の可愛いイロちゃんだよ~」
「あー、あの色違いのミロカロスかー!人の姿になるとこんなに可愛いんだね!」
「え、そんな…!そんな風に言われると照れちゃいます…!」
「「かーわーいーいー!」」
「やだぁ…!」
「髪が幻想的な色だよね~、ここ暗いけど日差しの下で見ると更に綺麗なんだろうな~」
「……っ!
「ヤマトさん、それ以上はやめて!」
「え?なんで?」
「ヤ、ヤマトさん…もしかして、私のこと…!」
「ツバキ、このクソビッチをボールに戻すべきだと僕は思うな」
「はっ…!エンペラーさんが怒ってる…!これは、嫉妬…!?きゃ~!!」
「戻すべきだと!僕は思う!」
「すみませんすみません、どうぞ寛容なお心でお許しくだされ…!ちょっと痛い子なだけで良い子なんです…!良い子なんです!」
「…チッ」
「え、何?どうしたの?」
―ピ、ピ、ピ、
「おーっと、つい手が滑ってボタンを押してしまったー、でもとりあえず写っておこうー!とうっ!」
「痛あああっ!!」
「おーっと、ごめんごめん。足が滑っちゃった!」
「ええええええええ!?」
カシャッとシャッター音。
なんで今撮ったぁああ!とミミロップの怒りの声とヤマトの驚く声が両端から聞こえてくる。
はたして今の一枚はどんな悲惨な写真なのだろうか、絶対に現像しよう。
「今、写真撮った?もう終わり?」
「いや、まだ撮り直すから動くな」
「うん」
ごめんごめん、と謝りながらブラッキーがカメラの傍へと戻る。
「じゃあ、そろそろマジに撮るぞー!笑顔の準備は良いかー!」
押すぞー、とブラッキーの言葉に数人が返事を返す。
「せっかくこんなに賑やかなんだから、カメラじゃなくてビデオを回すべきだったなー」
「ほんとね~」
「(ビデオを…回す…?くるくる…???)」
隣に居る父さんの言葉にミロの隣から母さんが返事を返す。
「この後からでも回すか?ビデオ?」
「いや、ビデオはいい…、」
「押したー!」
「はい、ツキくん、早くここ!蹴らないでね!」
「よっしゃー!」
―ピ、ピ、ピ、
「忘れないから」
――カシャッ
「お、俺様、横向いちゃったぁああ!」
「わはは!俺もだ!」
「私もよ~、ツキくんもう一回お願い~」
「……私のせいか?」
*