「おーす、ヤマト!」
「おはようー」
鋼鉄島で合流したヤマトとジャッキー。
今回のミッションは鋼鉄島内部で崖崩れが起こったらしく封鎖されてしまった道を開通する作業だ。
よし、まずはイシツブテかゴローンを探そうと二人で頷いて鋼鉄島内部へと入る。
「ゴローン!待ってー!僕に協力してー!」
「早くキャプチャしろよー」
「分かってるよ!」
すでに作業に入ってるジャッキーに出遅れているヤマトはゴローンに逃げられてその場に膝を付いた。
そんなヤマトの前にしゃがみ、顔を覗き込んだトレーナーが居た。
「ヤマトさん、なにやってんの?」
「…はっ、カズキくん…!」
シンヤの実の弟、カズキだった。
実はかくかくしかじかミッション中と説明したら、かくかくしかじかじゃ分からねぇと両断されたヤマトは再びガクリと項垂れた。
「ほらあそこ、崩れて道が塞がってるでしょ?あそこを直しに来たんだよ」
「あー、ほんとだ。オレも手伝おっか?」
「いや、これはレンジャーの仕事だから!」
「リングマとキノガッサの良いトレーニングになるし」
「よろしくお願いしまーす!」
パワー戦力大歓迎です、ありがとうございます!と頭を下げたヤマトにカズキは苦笑いを返す。
「ジャッキー!知り合いの子が手伝ってくれるって!」
「はあ!?一般人になに助けてもらってんだ!」
「だって、リングマとキノガッサ貸してくれるって…」
「よし!この辺をお願いしよう!」
ポケモンレンジャーってこんな感じの人ばっかなのかな、と思いつつカズキはボールからリングマとキノガッサを出した。
岩を砕いて退ける、そんな作業を繰り返して封鎖されてしまっていた道を元の状態に戻す。
「こんなもんで大丈夫だろ」
「はぁー、疲れた」
「リングマー、キノガッサー、お疲れー」
カズキがボールに二体を戻したのを見てヤマトがカズキにお礼を言う。
予定よりずっと早く終わったとジャッキーも喜んだ。
「ポケモンレンジャーってこんな仕事ばっかりなの?」
「えー、仕事は色々だよね?」
「ああ、こういう些細な事だけど必要な仕事は近くに居るレンジャーで早急に対処されるんだよ」
「へー」
「で、オレは次のミッションが入ってるから出発させてもらうぜ!」
びし、とポーズを決めたジャッキーにヤマトが「ええ!」と声をあげた。
僕は次のミッションまだ入ってないのに…と落ち込んだヤマトを無視してジャッキーはカズキにお礼を言う。
「協力ありがとうな、カズキくん!」
「どういたしましてっす」
「じゃ!」
また連絡するからなー!と颯爽と去っていくジャッキーにヤマトはヒラヒラと手を振る。
同じように見送ったカズキが「ジャッキーさんはレンジャーっぽい」とぼそりと呟いてヤマトはショックを受けた。
「はぁー…、まあ僕もさぁ、最近思うんだよねぇ…、ポケモンと仲良くなるのそもそも下手だし…!」
「キャプチャ、下手くそだもんなー」
「グサッと来たよ」
海を眺めながら並んで座ったヤマトとカズキ。
ガクリと落ち込んで頭を抱えるヤマトに何を言うわけでもなく思い出したカズキが言った。
「そういや、今日の朝刊見た?ニュースもやってたけどさ」
「え、見てないけど…なに?」
「兄ちゃん尽くし!」
キランと目を輝かせたカズキがカバンから新聞を引っ張り出した。
新聞の一面記事に映るシンヤとツーの姿にヤマトは「わあ」と声を漏らす。
「二人共、横顔が綺麗だなー」
「そこ?」
「だって昨日、事故があったっていうのは聞いたもん」
「なんだ。兄ちゃんとこ行ってたんだ」
「うん、昨日泊まらせてもらったからね。知り合いの結婚式行ってたからさー。でも本当に凄い事故だったんだねー」
「……ヤマトさん結婚しないの?」
「………急に何…」
「いや、兄ちゃんはミロさんと結婚してるようなもんじゃん?ヤマトさんはどうなのかと思って」
「……」
黙り込んだヤマトはごそごそとカバンを漁った。
そしてボールを取り出してユキワラシを出す、片手にめざめいしを握り締めてカズキへ視線をやった。
「ユキワラシをね!進化させてあげようと思ってたんだ!」
「凄い勢いで話逸らして来たこの人」
「はい、ユキワラシ!これで可愛いユキメノコに進化してね!」
急に押し付けられた石に困惑しつつも受け取ったユキワラシが眩い光と共に形を変える。
見事、ユキワラシはユキメノコに進化した。
「わあ!ユキメノコ…、色違いー!…だけど何処が違ってる、の…?」
「ユキィ…」
え?と姿形の変わったユキメノコを観察するヤマト。
ユキメノコは自身の手で口元を押さえて困ったように目を細めた。
「ポケモンレンジャーの癖に違いが分からないなんて…」
「え、だって…!他のユキメノコそんなに見た事ないもん…!」
「帯っぽい所がピンクで可愛いだろ!通常だと赤!」
へー、とヤマトが相槌を打った。
可愛いと褒められたユキメノコが嬉しそうに笑うのを見て、ヤマトとカズキもつられて笑う。
「ユキメノコ、可愛いなー」
「うん、これは可愛い!ヤマトさん、レンジャーでポケモン要らないじゃん。オレが貰って良い?」
「えぇ!?僕とユキメノコの友情を引き裂くの!?」
「女の子だって最近まで知らなかったくせに、なー」
「ユキィ…」
それについてはごめんなさい、と落ち込んだヤマト。そんなヤマトの頭をユキメノコが撫でる。
「優しい…!さすが僕の相棒…!」
「あ、じゃあ、ヤマトさん!ユキメノコお嫁さんにすれば?」
「その話、ぶり返すんだ…」
「オレはヤマトさんの将来を切実に心配してあげてるんだよ」
「……」
再び黙り込むヤマト。
カズキはユキメノコの両手を掴んで揺らす。手持ち無沙汰。
せっせっせーのよいよいよい、と心の中で歌いながらカズキがユキメノコの手で遊んでいると黙り込んでいたヤマトが口を開いた。
「僕…、好きな子が居るんだよね…!」
「え?じゃあプロポーズすれば?」
「大人はそんな簡単にプロポーズしたりしないの!色々とあるの!大人には!」
いや、オレもそこまで子供じゃないけど…、とカズキが眉間に皺を寄せる。
ぷらぷらとユキメノコの手を揺らしながらカズキは口を開く。
「ヤマトさんはもっと相手をしっかり見てあげるべきだと思うな」
「え!?」
「昔から知ってるから言うけど、ヤマトさん誰にでも優しすぎ。好きな子が出来たー!って兄ちゃんに相談してる所も見たことあったけど、ヤマトさんってちゃんと好きな人と向き合わないじゃん?
まあ、根掘り葉掘り聞かなくて優しく接してくれるヤマトさんって良い人なんだけど。良い人過ぎてダメっていうか、相手の気持ちとか察してあげられないよね?みたいな…」
「……」
チラリとカズキがヤマトに視線を向ける。
目が合った瞬間、ヤマトはビクリと肩を揺らした。
「兄ちゃんみたいに素直にずばずば言ってくれる人、珍しい方だと思うわけよ。ヤマトさんのその好きな子がヤマトさんに何でもずばずば言ってくれるか、って言ったらそうじゃないじゃん?
オレは好きだって気持ちがあるなら相手のことを知る努力をするべきだと思う。ヤマトさん、相手が言ってきてくれたら受け入れますーみたいな感じだし…。昔っから」
「!?!?」
「っていうか、自分のことを好きなんじゃないかな?って思う所から基本入るよな。あと明るくて健気に尽くしてくれそうな子が好きっていう」
ぷぷぷ、とカズキが笑う横でヤマトは口元を手で押さえてぷるぷると震えた。
自分の胸にザクザクと突き刺さるのは図星だったからである。
「ヤマトさん、良い人なんだけどなー」
なー?とカズキがユキメノコに向かって首を傾げる。両手を掴まれた状態のユキメノコは困ったように笑って同じように首を傾げた。
「………いや、まあ、なんか全然分かってないとか言われたけど、何が分かってないのかそもそも分かってないから、分かってないんだけど、あれ僕は何を言ってるの…?でも、その後、普通に接してくれてるし、今はこの状態でいることがベストなんじゃ…」
「(なんか横でブツブツ言い出した…っ)」
考えてるらしいヤマトが頭を抱えて何やら独り言を言っている。
カズキとユキメノコはチラリとそんなヤマトに視線をやる。
「カズキくん!」
「お、おう!」
「考えたけど何を言えば良いのか分からないよ…!」
「(年下のオレに聞くのか…!)」
大人だって言う癖に、と思いつつも自分の兄がこういう手の話はバッサリ切り捨ててどうぞご勝手に派なのでカズキは頑張って答えることにした。兄に代わって。
うーん、と考えたカズキはキリッとした表情を作って掴んでいたユキメノコの手を両手で握り締めた。
「大好きなキミのことが知りたい!」
「ユ、ユキ!?」
「みたいなのって良くない?」
どう?とユキメノコからヤマトに視線をやったカズキ。
いや、どうって言われても…とヤマトは眉を寄せる。
「だからもう率直に!ドストレートにさ!自分は鈍感だから全部言ってくれないと分からないんだ、って素直に言うも良し。僕のことどう思ってるか聞いても良い?ってのも良い。とりあえず、今のままで何とかなるんじゃないかなぁ…な気持ちじゃなくて、向き合う!」
「…でも、それで言っちゃって気まずくなると…」
「気まずくなったくらいで好きな気持ちって消えるの?」
「…!」
カズキの言葉に顔をあげたヤマト。
だろ?と首を傾げたカズキを見てヤマトは深く溜息を吐いた。
「僕、常々頼られたいなぁと思ってたんだよ」
「え…!?あ、そう、なんだ…」
「うん、こんな情けない男には頼ろうと思っても頼れないよねぇ…」
「…」
「とりあえず、この後、予定無いか聞いてデートに誘ってみる…!」
「手、震えてるけど…」
だって、断られるの想像しただけで怖いんだもん。と再び俯いたヤマトの背中をカズキはバシンと思い切り叩く。
痛い!と叫んだヤマトは涙目になりながらカズキへと視線をやった。
「オレの兄貴の親友やってるヤマトさんに怖いもんなんかねぇよ!」
「…うわぁ…!、カズキくん、カッコイイ…っ!」
「オレを誰の弟だと思ってんだ」
フフン、と笑ったカズキにヤマトは笑顔を返す。
「ありがとうカズキくん!僕、頑張ってみるよ!」
「おう!」
年下のオレに慰められてる時点でどうかと思うけどな!という気持ちはカズキの心の奥底にしまっておくことにした。
よーし、ミオのポケモンセンターから反転世界行くぞーと立ち上がったヤマトが空を見上げて固まった。
「……」
「「?」」
黙り込んだヤマトを見てカズキとユキメノコが首を傾げる。
「飛行タイプ見当たらないね…」
「…オレのエアームドで送ってやるよ…」
「うん、ごめん…」
ボールからエアームドを出したカズキに背を押されてエアームドの背に乗ったヤマトはさっきまでの元気は何処に行ったのかしょんぼりと肩を落として情けない。
めっちゃ不安だな、と思いつつカズキは小さく溜息を吐いた。
「ユキィ…」
「あ、ヤマトさん、ユキメノコをボールに…」
「なんて言って誘ったら良いかな…、っていうか、家に居るかな…」
全然聞いてねぇ。
ぶつぶつと何か考え込んでいるヤマトを見て仕方がないとカズキはエアームドの背から手を伸ばしてユキメノコの体を抱き上げた。
「落ちないように捕まってろよ」
「ユキ!」
「ヤマトさーん!飛ぶからなー!よし、エアームド、ミオまで頼んだ!」
*
ポケモンセンターで黙々と仕事をしていたミミロップがこの辺りでは聞き慣れない音に顔を上げた。
向かいに座って同じように仕事をしていたサーナイトがミミロップに視線をやる。
「どうしましたの?」
「バイクの音した」
「バイク?」
この辺には少ないがまあバイク乗りも居ないことも無いのではないかとサーナイトが首を傾げる。
外の様子を気にするように見ていたミミロップだったが、少しして視線をテーブルへと戻した。
「ま、良いや」
「別に大丈夫だとは思いますけど…、一応、受付の方を見て来ますわね」
「んー」
ひらひらと片手を振ったミミロップを見てからサーナイトはポケモンセンターの受付の方へと向かう。
ちらっと見て、ついでに飲み物でも貰おうかしら~と呑気に来てみれば受付にずらりと並ぶ強面の連中。
ソファにドカリと座った一人の男の傍でジョーイが腰に手を当て仁王立ちで怒っている。
「タバコは外で!吸って下さい!」
「うるせぇ!すぐそこに窓あるんだから良いじゃねぇか!お宅がさっさとうちのドガースの治療を終わらせてくれりゃ帰るからよぉ!」
「ドガースの治療はしますけど!タバコはダメです!」
このズイに暴走族襲来ですわ…!と驚くサーナイト。
そしてジョーイの強さに唖然としていると、男はあまりにも腹が立ったのかジョーイを突き飛ばした。
「しつけぇ!」
「きゃっ…!」
慌ててサーナイトはジョーイと男の間に割って入る。
「ジョーイさんに何をするんですの!」
「るせぇ!さっさとうちのドガース治して連れて来やがれ!」
「治して下さるジョーイさんにそのような態度…!ワタクシが直々にアナタを瀕死にさせて差し上げましょうかぁ?」
「あぁん?んだとぉ?」
「喧嘩なら買いますわよ…?」
睨み合う男とサーナイト。
胸ぐらを掴まれたサーナイトは男の胸ぐらを掴み返す。
「サナちゃん…!」
「舐めた口聞きやがって!女だからって許してもらえると思ってんじゃねぇぞぉっ!」
ぶおん、と男がサーナイトめがけて拳を振り下ろした。
殴られる、そう思ったジョーイの口から「ひっ」と悲鳴が零れる。
「…っ!?!?」
「…」
殴りかかって来た男の拳を片手で受け止めたサーナイトは男を睨み付ける。
人間が発することの出来ない異様な雰囲気に男がたじろぐ。
「か弱い女性であるジョーイさんに暴力を振るったこと、後悔させて差し上げますわ…、ワタクシを…、
――舐めんじゃねぇ…!」
「え゙!?おと…!?」
ゴッ、と鈍い音と共に男が後方に吹っ飛ぶ。
ポケモンであるサーナイトからすれば人間の男など敵では無い、軽く吹っ飛んだ男を見た周りの仲間達に動揺が走る。
そして、もう一人、騒がしすぎるとやって来てみればサーナイトが見事に人間をぶっ飛ばす瞬間だったミミロップはポカンと口を開ける。
「サ、サナー!お前なにやってんだぁあ!」
「きゃぁん!ミミローさん!野蛮な人達が来てるんですの~!追い払って下さいまし~!ワタクシ、こわいですわ~!」
えぇっ!!!こわいのはこっち!!!
周りに居た男たちの視線がサーナイトへ集中する。
「いやいやいや!お前の方がこわいわ!」
「そ、そうだそうだ!」
「うちの頭を吹っ飛ばしやがって!」
「よく言ってくれた!ちっこいの!」
ミミロップの言葉に同調して強面の男共からサーナイトへヤジが飛ぶ。
そのヤジを聞いた瞬間にミミロップの視線がサーナイトから周りのヤジっていた男達の方へ変わる。
「オイ…、今、ちっこいのって言ったのどいつだ……」
「「「…え゙」」」
「テメェら全員表出ろやぁああああ!!!」
「「「ぎゃああああああ!!!」」」
オラァ!と勇ましい声と共にミミロップに蹴っ飛ばされた男達がポケモンセンターの外に転がる。
「そもそもポケモンセンターでタバコ吸ってんじゃねぇ!!!このクソ共ぉおおお!!!」
「「「うわああああ!!すみませんでしたぁああ!!」」」
「謝って許すわけねぇだろうがぁあああ!!」
ポケモンセンターの前で強面の男共をボッコボコにするミミロップ。
「ミミローさん…!勇ましくて素敵ですわ…!」
きゃっ!なんて言いながら頬に手を添えて笑うサーナイトはポケモンセンター内に転がっていた頭らしい男を外にポイっと捨てた。勿論、片手で。
「ジョーイさん、怪我はありません?大丈夫ですの?」
「え、ええ、大丈夫よ。すごくびっくりしたけど…!」
「ふふ、力なら負けるわけないじゃないですの!だってワタクシ達、ポケモンなんですのよ?」
「それはそうだけど…」
はい、と手を差し出したサーナイトの手を掴んでジョーイが立ち上がる。
「ありがとう、サナちゃん」
「どういたしましてですの!」
「うふふ、サナちゃんがカッコ良くてびっくりしちゃったわ、ちゃんと男の子らしい声も出せるのね!」
「…え!?い、嫌ですわ、ジョーイさん…!忘れて下さいまし~!」
両手で頬を押さえたサーナイトの顔は真っ赤。
それを見てジョーイはクスクスと笑った。
「っしゃぁあ!完勝ぉお!」
男共が積み重なった上でミミロップが満足げに拳を突き上げたのだった。
*
ミオまで送ってもらったヤマトは反転世界にあるシンヤの家に向かっていた。
先に電話で確認すれば良かったかな、という後悔をしつつも家の前まで来たヤマトは深呼吸をする。
「ヤマトさん、デートするならユキメノコ預かっといてやるよ!ついでにレベルも上げといてやるからさ!」
「ユキー!」
びし、と親指を立てたカズキの姿を思い出してヤマトはガクリと肩を落とした。
そう相棒のユキメノコを奪われた今…、失敗した場合、自分を慰めてくれる子は居ない…。
でも、レベル上げてくれるのは嬉しい、そもそもバトルなんてしないからユキメノコも嬉しいと思う。とヤマトはカズキに感謝もした。
彼の心中は複雑である。
ガチャ、と玄関の扉を開けて中に入る。
チルタリスかトゲキッスが居る場合は声が掛かるのだが二人は不在。静かな家に上がってリビングへと行けばソファに寝転がって雑誌を読んでいたらしいブラッキーと目が合った。
「おお…!」
「え!?ヤマト!?」
慌てて起き上がったブラッキーがパチパチと瞬きを繰り返す。誰か帰って来たと思ったらまさかの人物、無理もない。
「シンヤなら出掛けてるけど?」
「あ、そうなの?いや、でも僕、…」
「?」
「僕…っ、ツキくん目当てで来たからツキくんが居てくれて良かったよ!うん!」
「ぇ、オレ?」
「あの、予定とか無くて、暇なら…その、僕と…デートしませんか……なんて」
うおお、恥ずかしい!!顔が熱い!!と目を瞑ったヤマトがその場で身悶える。
心の中で叫びまくっていたヤマトは返事が無いことに、あれ?と思いつつ目を開けた。
「……………」
「……」
ブラッキーは固まってヤマトを凝視していた。
え、なに、どういう反応?と焦りつつヤマトが首を傾げる。
「ツ、ツキくん…?」
ヤマトが名前を呼んだ途端、ブラッキーの目からぼろぼろと涙が溢れ落ちた。
「…っ!」
「えええええええ!?!?」
「…っ、デートッ、行ぐ~…っ!!」
「!?」
えぐえぐ、と泣きながら言ったブラッキーの言葉に一瞬なんのことか分からずに固まったヤマトだったが、すぐ我に返る。
あれ!?なんかこの状況でオッケー貰った!!
「ありがとう!嬉しいけど!なんで泣くの!なんで泣くの~!僕も泣いちゃうよぉぉお…!」
「っだって、今、めっちゃ…寂しかった、からっ…!嬉しかったんだよぉ…っ」
なんのことか、さっぱり分からなーい!!
よく分からないけど泣いてるから抱きしめておこう、とヤマトがブラッキーをぎゅっと抱きしめる。
「…ヤマト、」
「え、なに?」
「……」
「…お腹空いた?」
「ぅあああああ!!!ムードクラッシャー!!!!」
「いたたたたたたた!!なんで抓るのぉおおお!!!」
*
暫く居たが結局、マスターとサマヨールが戻って来なかったのでシンヤとミロカロスは家に帰って来た。
今度、ゲンも反転世界に連れて来たいな。そうだねーなんて会話をしながら家に帰れば、
何故か頬を膨らませて不機嫌なブラッキーとそのブラッキーにごめんなさいと土下座するヤマトが居た。
「なんだこれ」
思わず出たシンヤの声にヤマトが顔を上げた。
「あ、おかえりー」
「お前…頬、赤いぞ…」
「なんでなのか、分からなくて…」
それで怒られています。と遠い目をしたヤマト。
何も言わず頬を膨らませたままのブラッキーを見てシンヤは眉を寄せる。
「俺様は分かる!どうせ、ヤマトが悪い!帰れ!」
「ひ、酷いっ…!」
びし、とミロカロスに指を差されてその場でうずくまるヤマト。
そのヤマトの上にミロカロスが座れば「重いよー!」とヤマトが苦しげに声をあげた。
あのバカは放って置こう、とシンヤはブラッキーの隣に腰掛ける。
「で、どうしたんだ?」
ん?と首を傾げながら優しい声色で声を掛けるシンヤ。
そのシンヤにブラッキーはひしっと抱きついた。
「やっぱりシンヤが特上過ぎてツライ!!!」
「……」
何の話か全然分からない。
「重たいよ~、ミロちゃん、退いてよ~」
「立てたー!」
「痛い痛い痛い痛い!」
何をやってるかも分からない。
少し考えた後、シンヤはよしと頷いた。
「私、仕事してこよーっと」
「あ!めんどくさくなった!酷いシンヤ!でもそこが良い!」
「付き合ってられるか」
「あ~、聞いて~、ヤマトが空気読めなさすぎてムカついたんだって~」
「そんなのいつものことだろうが!」
「そうだけど~!」
「………じゃあ、ヤマトを家から放り出すまではやってやる」
「へ!?」
退け、ミロ!とミロカロスを退かしてうずくまるヤマトの首根っこを掴んだシンヤはずるずるとヤマトを玄関まで引きずっていく。
慌てて追い掛けて来たブラッキーはぽいと放り投げられたヤマトを見て「あ~…」と悲しげに声を漏らした。
「ほら、出してやったぞ」
「…うん」
「……お前も、ぐだぐだと鬱陶しいな…」
「え゙」
「頭が冷えるまで帰って来るなっ!」
「うわあっ!」
ぽい、とブラッキーも玄関の外に放り投げたシンヤは二人の靴もぽいぽいと外に投げ捨て玄関の扉を閉めた。
放り投げられたブラッキーを見てミロカロスが大きく口を開けてシンヤを見つめた。
「ゆ、許してあげて…!」
「気にするな、ああでもしないと素直になれないんだ」
「……?」
*
玄関から放り出された二人はチラリとお互いに視線を合わせた。
「……」
「…えっと、」
何を言えば良いのか分からない。
なんで怒ってるの?と素直に聞いて、ますます怒られたヤマトにはもう対処方法は無かった。
「腹減った…」
「え!?」
「腹減ったー!!」
「わ、分かったよ!なんか食べに行こっ!ね?」
「…ん」
素直に頷いたブラッキーを見てヤマトは首を傾げた。
やっぱり、お腹空いてたんじゃん…。なんで僕はさっき怒られたんだろう…。
じゃあ、行こうかと立ち上がったヤマト。足元ではブラッキーがすでに靴を履いた状態で座り込んでいる。
「……」
「……」
何やってるんだろう。
座り込むブラッキーを見下ろしてヤマトは考える。お腹空いてるんじゃないのか、と…。
「ツキくん…?」
「……」
ギロリと睨まれてヤマトはビクッと肩を揺らした。
無言で手を差し出して来たブラッキーの手をヤマトはおそるおそる手に取った。
「よし、行こう…」
「!?!?」
手を取った途端に立ち上がり歩き出したブラッキーに困惑しつつヤマトは手を引かれるままに歩き出した。
そんな二人をたまたま見送ったギラティナとミュウツー。
「や、やべぇ…ッ!!」
「くぅ…ッ、腹がッ…!!!」
抱腹絶倒であった。
*