一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ある日、シンヤが何気なく見た雑誌に見つけた。

 

「ポケモン・バッカーズ、ワールドカップ開催…!?」

 

これは…!と雑誌をテーブルに叩きつけるように置いてシンヤはキッチンへと走る。

 

「チルタリス!出掛ける用意を頼む!」

「え!?は、はい!」

「私はアイツを呼んでくる!」

 

はい!というチルタリスの返事を聞く前にシンヤは走って行ってしまった。

そして返事をしたものの「アイツ?」と首を傾げるチルタリスが取り残されたのだった。

 

*

 

クラウンシティに着いたシンヤは勿論、騒ぎが片付いた後に来た。

グリングス・コーダイが!とわいわいうるさい中でシンヤは手にした本に視線を落とす。

 

「ポケモン・バッカーズ。ルールを見るとサッカーとバスケットボールが混ざったようなスポーツだったんだな」

「シンヤ…、そんなに見たかったんだね…」

 

凄く気になったままだったんだ、と本を手にシンヤは頷く。

出掛けるぞ!と連れて来られたスイクンはシンヤの隣を歩きながらクスクスと笑う。

そしてそのシンヤの反対隣ではミロカロスが頬を膨らませる。

 

「出掛けるって言うからついて来たのに、スイクンも一緒とか…!」

「スイクンも気になってるかと思って声を掛けたんだ」

「私は、忘れてたけどね」

 

そうコイツはすっかりポケモン・バッカーズなんてスポーツの存在を忘れていた。むしろ最初から気にかけてすらいなかった。

セレビィに連れられて行っただろ!と言えば、シンヤと出掛けた時の話ね…とのほほんと返されたのだ。

じゃあ、別について来なくても良いと言えばせっかくのお誘いだから行くと人の姿になってついて来たのだった。

 

「で…、な・ん・で!オレ達まで連れて来られなきゃなんねぇんだよ!周りに人人人っ!虫唾が走るぅうう!」

「喧しい。それに別にシンヤは私達を誘ったわけではなかった、お前がスイクンについて来たんだ。それに私も便乗したそれだけのこと」

「うるせぇ!」

「お前の方が煩い」

 

ギャーギャーと怒るライコウ、それを冷静にあしらうエンテイ。

スイクンを誘いに行ったら、なんか居た。

 

「お前は本当にスイクンが好きだな…人混み嫌いなのに頑張って…」

 

良い子良い子と頭を撫でてやれば真っ赤な顔で「黙れ!」と怒られた。それでも違うとは否定しないライコウ。

 

「パパ、俺様、ちょっとあそこのアイス買って来るから!これ持ってて!チルの弁当だから!」

「……持つのは構わないが、何故あの子は私をパパと呼ぶのだろうか…」

 

私は息子など居ない、と真顔でそう言いながらアイスを買いに走って行くミロカロスを見送っていた。

笑うのを我慢してたらライコウに怒られた。

 

「そんで、何処行くんだよ!」

「当然、ポケモン・バッカーズを観にだ!この時間ならもう私達は帰ってるからな!」

「は?」

「うん、そうだね」

「私達は帰ってるぅ?」

 

何の話だ、と首を傾げるライコウの背をスイクンが押す。

 

「ミロー、行くぞー」

「んー!分かったー!パパ、それ持っててな!」

「構わないが、そのパパは…」

 

*

 

「行けぇえええ!」

 

ポケモン・バッカーズってなんだよ!と不満げだったライコウが一番応援してるってどういうことだろうか。

白熱する戦いに興奮するのは分かるがバチバチするのはやめてほしい。

屋台で売っていたコーヒーを啜るエンテイの隣でポケモン・バッカーズそっちのけで同じく屋台で売っていたワッフルを頬張るミロカロス。

観戦しないのも考えものだ。

 

「入った!入ったよな!?」

「入った、かな?」

「入っていた」

 

まあ、三人ならぬ三犬が楽しそうなら良いか…。

サトシ達も何処かで観戦してるんだろうな、と思いつつ私がコーヒーを啜った時、ポンと肩に手を置かれた。振り返れば会場関係者なのだろう、スタッフの名札を付けた見知らぬ男。

 

「シンヤさんですよね!」

「え、ああ…そうだが、」

「最終、飛び入りしませんか?更に盛り上がること間違い無しですよ!」

 

もう実況アナウンサーの方にはシンヤさん客席に見つけたって連絡済みっす!と笑うこの男は何を言っているのだろうか。

最終、飛び入り?それはあれか?優勝したチームと戦えと?ポケモン・バッカーズで?阿呆なのか?

 

「いや、…私、手持ち、…ッ!?」

 

断ろうとしたら背中にバチッと軽い衝撃。

え、痛い。と振り返ればライコウが悪い顔で笑っていた。

 

「(とてつもなく、嫌な予感…!)」

「三体元気なのが居るから、参加しまーす!」

「ありがとうございます!盛り上げて行きましょう!よろしくお願いします!」

「…ライコウ…!お前って奴は…!なんてことを…!」

「遊びに来たんだから、遊ばねぇと」

「元気な三体って誰…?シンヤ、ミロカロスしか連れて来てなかったんじゃ?」

「…正気か貴様…」

「なに?なんの話?ワッフル、冷めちゃったよ?」

 

来るんじゃなかった。

後悔しても時すでに遅し、過去の自分がまだこの場に残り、このスポーツを観戦していたのなら、こんな未来訪れなかったのに…!

そもそも、少しでも見れていたのならこんな所わざわざ来ない。

 

*

 

「え?シンヤ、出掛けたの?」

「はい、スイクンさんを誘ってポケモン・バッカーズを観て来ると仰ってました。ミロさんがご一緒してますよ」

 

家に帰って来たブラッキーは主人不在に口を尖らせる。

そうか、前にクラウンシティ行った時期って今かと。ブラッキーはテレビの電源を入れる。

 

「へー、シンヤがスポーツ観戦なんて珍しいね」

 

ヤマトの言葉にチルタリスが笑顔を返す。

 

「あーあ、ヤマトがケーキ食べ放題行こうなんて誘わなきゃオレも一緒に行けたのになー」

「えぇ!?ツキくん、喜んでたじゃん!」

「その時はなー」

「美味しかったでしょ?」

「最高だったけどな!」

 

ぐっと親指を立てたブラッキーを見てヤマトとチルタリスが笑った。

 

「でも、他の奴らも出掛けてたのかー。まあ、シンヤとミロとスイクンで…デートでは無いかもだけど、楽しんでれば良いな」

「ポケモン・バッカーズ、テレビでも放送してるはずだから観ようよ」

 

ヤマトがテレビのチャンネルを変えた。

優勝はテンガンファイターズ!なんて出ているのを見てヤマトが「あー…」と声を漏らす。

 

「終わっちゃってますね~」

「オレ、スポーツ観戦はあんまりなんだよなぁ」

 

ドラマに変えてよ、とブラッキーが言った瞬間にテレビに映ったアナウンサーが声を張り上げる。

 

<「ここでサプラーイズ!テンガンファイターズの諸君!優勝したキミ達にとあるお方からのサプライズプレゼントだ!」>

「「「……」」」

<「ようこそいらっしゃいました!シンヤさーん!なんと伝説のポケモン、エンテイ、ライコウ、スイクンを引き連れて飛び入り参戦!ポケモン・バッカーズでいざ勝負だー!」>

「「「!?!?!?」」」

 

テレビ画面に映ったシンヤはもの凄く嫌そうな顔。

手持ちでもない伝説の三犬を引き連れてワールドカップに登場しているシンヤを見て、ヤマトはぽとりとチャンネルを落とした。

静まり返るリビング、テレビ画面に映る会場は大盛り上がりだった。

 

*

 

翌日、テレビでも取り上げられるほどの盛り上がりを見せたワールドカップだったが当の本人のテンションは低い。

手持ち達からは何をやってるのかと怒られ、身内や知り合いという知り合いから笑われ、褒められ、絶賛されたのだった。

話題に事欠かない男、当分は誌面から名前が消えない。

 

「参加を断れなかったのはね、仕方ないよ?仕方ないけどさ、なんで勝っちゃうの、シンヤ」

「あいつらのチームワークが抜群過ぎたのが悪い…!」

「エンテイ、ライコウ、スイクンね。うん、なんで連れて帰って来てくれないの?僕、まだ会ってないよ?エンテイとライコウに会ってない!」

「…それは良いだろ、別に」

「ワールドカップで優勝チーム蹴落としてきたより重要な事だよ!会わせてよ僕にも!ツバキちゃんの所から電話が鳴り止まないよ!紹介するまで止まらないよあれは!」

「……」

「ヤマトお前うるさい!帰れ!シンヤ、大丈夫だからな!元気だして、な?な?」

「…ミロッ…!」

 

ぎゅ、とミロカロスを抱きしめて拗ねるシンヤにヤマトの猛攻は止まらない。

ちなみにツバキに関しては家に突撃しようとしてことごとくギラティナに放り出される、鉄壁のガードに悪戦苦闘していたのだった。

 

*

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