一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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「なんか、さっきキッスが怒ってるとこ見た」

「まあ…ミミローさんったら、受付当番中に居眠りなんていけませんわねぇ…」

「夢じゃねぇよ!!」

 

怒るミミロップを訝しげに見るサーナイト。

サーナイトからすればトゲキッスが公衆の面前で怒ってるところなんて想像すら出来ない。

全く信じられませんわ、とサーナイトは首を横に振った。

 

「いや、なんか泊まりのトレーナーにキレて泣いて無理やり引っ張って連れて行ったんだけど…」

「それ絶対にキッスさんじゃありませんわよ…」

「……キッスじゃ、なかったのか…?」

 

いや、でも見たよな…?。あれ?マジで…ワタシ、寝てた、のか…?と自分の目と先程の事が現実だったのかも疑いだしたミミロップ。

 

「あ、でも泊まりのトレーナーさんならここにまた戻って来ますわね…。その時に聞いてみたら良いんですわ!」

「おお!そうだな!戻って来たら、キッスだったか聞こう!なんかやたら綺麗な顔した男だったから覚えてる!」

「え…!イケメンさんでしたの!?それを先に言ってくれないと…!」

「言った所でなんだよ…」

「きゃっ!」

「キモイ!」

 

ミミロップとサーナイトが話をしていると不機嫌顔のジョーイが二人を睨む。

 

「こら!二人共、何お喋りしてるの!」

「良いじゃん、休憩くらい…」

「私を混ぜてくれないなんて!」

「そっちかよ!」

「で、何の話なの?」

 

二人の間に立ったジョーイがにこにこと笑う。

 

「ミミローさんも認めるイケメンの方がいらっしゃるそうですの!」

 

そっちの話題かよ、とミミロップは呆れたように小さく溜息を吐いた。

嬉しそうに笑うサーナイトを見てジョーイの笑みが引き攣った。

 

「サナちゃんってやっぱりイケメンが好きなの?」

「そうですわねぇ、イケメンは見てて楽しいから好きですわ~。でもミミローさんみたいに可愛らしい系も好きですの~」

「可愛らしい系って言うんじゃねぇよ…」

「私のことは好き?」

「ジョーイさんのことは勿論、大好きですわよ!」

「イケメンとどっちが好き!?」

「え…、まあ、他人のイケメンとジョーイさんでしたらジョーイさんの方が好きですわよ?」

「身内のイケメンとならイケメンの方が好きなのね…!」

「えぇ、まあ…」

 

シンヤとか?とミミロップが首を傾げた。

ううん、と考え込むジョーイ。どうしたのかとサーナイトがジョーイの顔を覗き込む。

 

「ジョーイさん?」

「サナちゃん、そもそも女の子は好き?」

「女の子、好きですわよ?」

「サナちゃん、結婚するならどっちと結婚したい!?」

「ええ!?やっぱりドレスが着たい気持ちがありますから、男性ですわね…」

「……そう…」

 

しゅん、と落ち込んだジョーイを見てサーナイトが困惑する。

え。マジか。とミミロップがジョーイとサーナイトを交互に見比べた。

 

「私、タキシード似合うかしら…」

「ジョーイさん!?何、言い出しますの!?」

「逆パターンもあって良い気がしない!?」

「せっかく女性に生まれてドレスを着ないなんてそんな勿体無いこと言わないでくださいまし!」

「……」

「……」

 

え?え?マ、マジで…?とミミロップは狼狽え始める。

沈黙の中、ラッキーが「患者様がいらっしゃいましたー」と声を掛けて来た。

 

「お、おう!」

「ええ、すぐに準備するわね!」

「……」

 

椅子に掛けていた白衣に袖を通しながらチラリとミミロップはサーナイトを見る。

何事も無かったかのように仕事に戻ったジョーイとは真逆にサーナイトの表情は深刻だった。

 

「サ、サナ…仕事すんぞ」

「分かってますわ…」

「大丈夫か…?」

「………大丈夫ですの」

 

若干フラつきながら部屋を出て行ったサーナイトを見て、ほんとかよ。とミミロップは眉を寄せた。

 

*

 

ううーん、と伸びをしたヤマトの関節がバキッと鳴った。

その凄い音が聞こえたブラッキーがびっくりして食べかけのケーキを皿に落とした。

 

「すげぇ音鳴ったな!」

「え?これぐらい鳴らない?僕、腰捻ったりしたらもっとバキバキ鳴るよ?」

「オレ、全然鳴らない」

 

ミッションを終わらせて休憩におやつタイム。

人間とポケモンは体の造りが違うのかなぁとヤマトはのほほんと笑った。

 

「でも、今回は本当に楽だった!ツキくんのおかげ!」

「んー…、ミッションで迷子のポケモン探しってそもそもなんだよ…」

「僕、迷子探しわりと多いんだよねぇ…なんでだろ…」

 

うーん、と考え込むヤマト。

重要な仕事させるの危ないから迷子探しでもさせておけ、とか思われてんじゃねぇの?とブラッキーは思ったがケーキと共に飲み込んだ。

 

「迷子探しは本当に大変だもん、街で聞き込みしても知らない人ばっかりだからさ~。やっぱりポケモンのことはポケモンに聞かないと駄目なんだね、僕もポケモンの言葉が分かったらなぁ…」

「分かってもどうだろーな。野生ポケモンに逃げられまくってたし」

「……何がいけないんだろう」

 

がく、と落ち込むヤマトを見てブラッキーが笑う。

今回のミッション、迷子のポケモン探し。ブラッキーが野生ポケモンに聞いて回り早々に無事発見されたのであった。

 

「ポケモン見つけたら目輝かせてガン見するからだよ。怪しいし、人間慣れしてない野生からすりゃ怖いって」

「じゃあ、素っ気なくしておけば良いの!?」

「普通にしとけば良いんだよ、普通に」

「僕はいつだって普通なのに!」

 

じゃあ、普通の時点で怪しいんだな。という言葉もブラッキーは飲み込んだ。優しさである。

溜息を吐いたヤマトを見てブラッキーは残ってるケーキにフォークを突き刺した。

 

「ほら、ケーキ分けてやるから」

「え?」

「あーん」

「あー」

 

口元にケーキを持って来られて口を開けたヤマト。その口にケーキを押し込んでブラッキーが満足げに笑った。

 

「んー、ここのケーキ美味しいね!」

「うん、美味い」

「ミッションも終わったし、お土産買って帰ろっか~」

「は!?ここまで来てすぐ帰るの!?」

「え?行きたい所、コガネ以外にあったの?」

「いやいや!行きたい所とかそういう問題じゃなくて!せっかく来たのに…!」

「?どういう意味?」

 

ブラッキーの機嫌が一気に急降下する。

え、本当に急にどうした!?とヤマトが混乱する。

コイツ、マジでムカツクな。と思ったものの、こういう奴なんだ、オレが素直にいけば多少ムカつきはするものの上手くいくはずだ。とブラッキーはぐっと堪えた。

 

「ヤマトの方から一緒に行こうって誘っといて、仕事だけやって帰るんですか…ってこと」

「??コガネで今おやつ食べたけど?」

「オレ達、今マジで二人なのに…。おやつだけ食って帰るって…?」

「………あ!」

「分かった!?」

「そうだよね、せっかく来たんだから晩ご飯も美味しいの食べたいよね!」

「殴りたい」

「!?」

 

はぁぁぁ…と溜息を吐いて、明らかに不機嫌なブラッキー。

理由が分からず狼狽えるヤマト。いや、ここは素直に何故怒っているのか聞こう、僕は言ってくれないと分からないって開き直らなければいけないんだ!とヤマトは心の中で気合を入れた。

 

「分からなくてごめん!考えても分からないから教えて下さい…」

「……」

「何か、したいことあるの?」

「あるよ」

「何々?教えて?」

「デートっぽいことしたい」

「……」

「……」

 

黙り込んだヤマト。

二人きりってそういう意味か…!とぐるぐると考えるヤマトは「分かった!」と頷いた。

 

「おお!」

「ジョーイさんにオススメのデートスポット聞いてくるね!」

「あぁぁぁぁ、ダメ男め~…!」

 

*

 

「あぁ!?誰連れて来てんだよ!?」

 

怒るギラティナ、無理やりシンヤに連行されて来た男は周りの景色に固まった。

 

「知らん!」

「えぇぇ!?知らないのに連れて来たのかよ!?」

「私、なんか悪夢の世界に連れて来られた。素敵」

 

あははは、と笑う男を見てトゲキッスが苦笑いを浮かべる。

あ、そういえばお名前を聞いてませんね。とトゲキッスが聞けば男は綺麗な顔に笑みを浮かべた。

 

「エイゴ」

「エイゴさんですね!反転世界は少し歩き難いので足元を気をつけて下さいね」

「キッス、マジ良い子だなぁ。悪い子にさせたい…」

 

溜息を吐きながらそう言ったエイゴを「おい…」とシンヤが睨み付ける。

 

「ああ、ギラティナ。このエイゴとかいう男、今日泊めるからな」

「はあ!?」

「そっちの金髪も嫌いじゃねぇな、苛められるの好き?」

「好きなわけねぇだろ!?なんかコイツ怖い!!」

 

ニヤニヤと笑うエイゴにドン引きするギラティナ。

シンヤが「なんて面倒な奴なんだ…!」と吐き捨てればトゲキッスが「マスターも言ってましたー」とのほほんと言う。

 

「ギラティナさん!エイゴさんは手持ちをみんな育て屋に預けてて明日まで一人なんです、泊めてあげてください!」

 

お願いします。とトゲキッスが頭を下げればギラティナも頷くしかない。

私の為にお願いしてくれるなんて優しいーとケラケラ笑うエイゴの頭をベシンとシンヤが叩く。

 

「痛ぇ!医者に叩かれた!」

「お前の異常行動はユキメノコから聞いてるからな!お前にはこれから説教だ!」

「はぁ?」

「ムウマ達から事情も詳しく聞くからな…」

「ポケモンから何が聞けるって言うんだよ…」

「キッスは私の手持ちのトゲキッスだ。それもふまえて後で説明してやるから来い!」

「キッスがトゲキッス?何、ダジャレ?」

 

そんな可愛い系のポケモン好きじゃなーい、とうるさいエイゴを引き摺るように連れて行ったシンヤを見送ったギラティナ。

追いかけようと歩き出したトゲキッスの腕を掴んで引き留める。

 

「何、アイツ?」

「エイゴさんですよ?」

「いや、名前は聞いたけど。説教ってなに?シンヤはなんで怒ってんの?」

「エイゴさん、ポケモンと仲良くなるのが苦手なんですかね…?手持ちのムウマが言うには暴力や暴言を受けたりするらしくて…、シンヤが来る前に仲直りはしてもらったんですけど…。なんでシンヤが怒ってるのかは分からないです」

「……」

 

あ、アイツ、ヤバイ系の奴なんだな。と察したギラティナは黙り込む。

本当はポケモンセンターに泊まるはずだったんですけど寂しいらしくて、俺が一緒にご飯食べる約束したんです!夜も怖くて眠れないそうなので付き添ってあげようと思って!と笑って言うトゲキッス。

 

「怒ってんのそこだ」

「どこですか?」

「お前、疑うってこと覚えた方が良いぞ。マジ危ない」

「?」

「これからはすぐ助けに行けるようにキッスの事もちゃんと見ておくようにするからな…!」

「???」

 

*

 

"ポケモントレーナー初心者!育成について!"なんて書かれた表紙の本を手渡して来たシンヤにエイゴは首を傾げる。

 

「なにこれ、シンヤが書いた本?サインくれる?」

「そこには基本が書かれている!まず読んで!自分の行動とどう違うか理解しろ!」

 

椅子に座らされ本を読むように言われたエイゴは顔を歪める。

不思議な場所に連れて来られたかと思ったら、あの有名人のシンヤの家で基礎本を読めと言われてる。なにこれ、カオス。

エイゴが本を開くのを確認してからシンヤはキッチンへと向かう。

本を開いたエイゴは文字を眺めて小さく息を吐いた。

 

「…誰だ?」

「!」

 

背後から掛けられた声にエイゴが振り返れば真っ白な髪の毛を揺らして男が首を傾げる。

見知らぬ人間が居ると気付いて寄って来たミュウツー。そんなミュウツーを見て固まるエイゴ。

 

「シンヤの友人か?」

「友人ってわけじゃねぇけど…、まあ連れて来られた者です…」

 

ふぅんと頷くミュウツー。

 

「汚したくなる白さ…!良い…!」

 

ニヤニヤと笑いだした男を見てミュウツーはまた首を傾げた。

開いていた本を閉じてミュウツーの方へと体を向けたエイゴがニコニコとミュウツーに笑みを向ける。

 

「表情無い子もなかなか!歪めてやりたくなるもんだなぁ!」

「は?」

「白い服が好きなの?」

「服…?別に?」

「肌とかも白いなァ!綺麗に赤くなるから色白は超好き」

「……、何故、掴む…」

 

ガシと掴まれた手を見てミュウツーは眉を寄せた。

ああ、嫌がってる…!とエイゴの口がニタァと歪む。

 

「体中真っ赤にしてあげ、」

 

ゴン!とエイゴの頭に拳骨が落ちた。

その音にミュウツーがびっくりして目を丸くする。

 

「あ、その顔も良い…けど、いってぇ…っ!」

「シンヤの拳骨はなかなか痛い」

「ツー、外に出てギラティナと一緒にいなさい」

「…なんでだ?」

「素直に行け!」

 

怒られたミュウツーは少しガッカリしながらもエイゴをチラリと見てから部屋を出て行く。

エイゴは頭を押さえながらシンヤへと視線をやった。鬼の形相で睨むシンヤ。

ゾクゾク…!とエイゴの体が震えた。

 

「今、すっげぇ怖い!でも、なんか…イイっ!」

「何をニヤニヤと笑ってる!ちゃんと座れ!」

「アハハ!マジ怖ぇ!」

 

笑い出したエイゴにシンヤは眉を寄せる。

根本的にコイツにはカウンセリングが必要だと判断したシンヤは怒りを抑えて優しい声色で問う。

 

「エイゴ、お前がどういう環境で育ったのか聞いても良いか…?」

「え?急に何?気持ち悪い」

「……殴るぞ…」

「ちょっと殴られたいと思う私が居る不思議!アハハハハ!」

 

もうコイツ、ダメだ。

シンヤは頭を抱えた。

 

*

 

「おー、ヒロキヨー?もしもしー?」

<「聞こえてるって…、なんか用か?」>

「私、今、シンヤの家に居ます!」

<「……とうとう、頭が…」>

 

エイゴの言葉に電話画面の向こうのヒロキヨと呼ばれた男が眉を寄せた。

ぶっとんだ変人だとは思っていたけど、とうとう現実との区別までもつかなくなったのか。ヒロキヨは悲しげにエイゴを見つめる。

 

「何、睨んでんだ。あぁ?」

<「睨んでねぇよ!?元々こういう目だボケ!」>

 

俺の目付きの悪さには触れてくれるな!と怒るヒロキヨを見てエイゴはケラケラと笑う。

 

「まあ、本題よ本題。聞け」

<「聞くけど…」>

 

腹立つわぁ。と思いつつもヒロキヨは素直に頷く。

 

「私、なんか愛情表現が人と違い過ぎてるらしくてさ」

<「知ってるよ」>

「はぁ?そういうことは教えようぜ?」

<「散々言ってましたけど?」>

 

嘘ぉ?と顔を歪めたエイゴを見てヒロキヨも顔を歪める。

 

「まあ、愛情表現の仕方が悪いって怒られてよ。痛がってる顔とか嫌がってる顔のが最高に可愛いと思うんだけど、ちょっと嬉しそうに笑う笑顔も可愛いなと思えた俺は愛のリハビリ?を受けることになった」

<「…なに、その愛のリハビリって…」>

「なんか良い事と悪い事を交互に繰り返して結果的に私がどう感じるかっていう…」

<「え?それリハビリ…?ごめん、マジで分かんねぇ。エイゴ、何処居るの?」>

「だからシンヤの家だってば」

<「……じゃあ、シンヤさんと変わってよ。説明聞くから」>

 

分かった、待ってろ。と言って画面から消えたエイゴ。

嫌な奴だとは思ってはいるが同期で昔からの友人であるエイゴを心配しないわけではない。シンヤさんの名前を語った変な連中に変な事でもされてるんじゃないのかとヒロキヨは不安を抱きつつエイゴを待った。

少しして画面に現れた人物にヒロキヨは目を見開く。

 

<「え!?本物!?」>

「何がだ?」

<「ポケモンドクターのシンヤさん、ですか…?」>

「ああ、シンヤだ。エイゴのリハビリ内容が気になるのか?」

<「はい…、ぶっちゃけシンヤさんの名前が出ても変な組織に騙されてんじゃないかなぁってさっきまで思ってましたけど…」>

「変な組織な…、まあ仕方がないな…」

 

その辺に居るもんな。と思いつつシンヤは頷いた。

 

<「それで…エイゴの言う、愛のリハビリ?って言うのは…?」>

「ああ、それはな。リハビリテーション…機能回復訓練である通り、愛情の抱き方を戻そうと思う。エイゴの愛情表現について疑問に思ったことはあるか?」

<「勿論、ありますよ。でも、アイツのポケモンへの接し方って元々ちょっとぶっ飛んでるっていうか、人間に対してもわりと嫌がるような事してましたし…」>

「自分の行動で相手が嫌がり苦痛を訴えるのを見る事で快楽を感じる、そういう行動を繰り返すことで自分は満足出来る、エイゴは相手を苦しめる事で溜まったストレスを発散しているに過ぎないんだ。

元々はきっとそうじゃない、ストレスを発散出来る行動をもっと良いものと変えてやればエイゴの異常行動も無くなると思う」

<「ストレス発散の為ですか…。俺が知り合った時からはすでにぶっ飛んだ感じだったんですけどね…」>

「悩みの無い者なんて居ない。昔からそうならエイゴのストレスの原因となるものは根深くエイゴの心に根付いているのだろう」

<「……」>

「エイゴをこのままにしておけばエイゴの手持ち達も心を病み、お互い更に傷付けあうことになる。そこで強制的ではあるが私の方でカウンセリングをしてリハビリしつつストレス発散方法を変えていってもらおうと思っている」

<「シンヤさん、ポケモンドクターなのに人間も診てくれるんですね…」>

「専門じゃないけどな…。エイゴの手持ち達が苦痛を訴えるのに放置するわけにもいかないだろ…」

<「ご迷惑をお掛けしてすみません…」>

 

大丈夫、と片手で制したシンヤにヒロキヨは小さく頭を下げる。

 

「まあ、リハビリ内容はまず根本的な事から行おうと思っている」

 

ふむ、とヒロキヨが頷いた。

 

「飴と鞭だ」

<「……へ?」>

「エイゴのポケモンへの接し方はほぼ鞭打つばかり、だからエイゴにも鞭を打たせてもらおうと思う。私が鬼となり鞭を打ちエイゴにどう思うか問う。その後、別の者にエイゴへ飴だけをたっぷり与えてもらい、そしてどう思うか問う。これを暫く繰り返してエイゴにはどちらが良いか選ばせる」

<「それが、愛のリハビリ…ですか」>

「躾みたいだけどな。エイゴにはムウマ達が味わった苦しみを体感して貰って、飴を与えられた時にどう思うか知ってもらう。まずは自分の感情をしっかりと理解することから始めるんだ」

 

説明は分かるが想像すると少し鞭が怖い、とヒロキヨは顔を歪めた。

 

「ヒロキヨ、だったか?」

<「あ、はい!」>

「エイゴの愛情表現の仕方は間違ってるが、人間として異常なわけではないと思う。傷ついたポケモンはポケモンセンターに連れて行くのは当然だと知っているし、友人のことを大切に思う気持ちも持ってる」

<「……」>

「時間があればズイのポケモンセンターに来て、ジョーイに声を掛けてくれ。話は通しておくから、友人の様子を見に来てくれて構わない」

<「…はい、お伺いします」>

 

*

 

電話を終えたシンヤがリビングへと戻ればトゲキッスと共に基礎本を開くエイゴが居た。

 

「さて、エイゴ。私は厳しくいくからな?」

「……今、すげぇゾクゾクした」

 

ニヤニヤと笑うエイゴを見てシンヤは溜息を吐く。

 

「マゾヒストとして別の意味でストレス発散されても困るんだがな…」

「エイゴさん!俺、飴担当らしいですので何でも頼って下さいね!」

「何その飴担当って?下の世話とか頼っていいn」

―ゴンッ!

「~ッ!?!?」

「うちのキッスに手を出したら半殺しじゃすまさんぞ…」

 

シンヤ、ガチ切れ。

 

*

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