一日千秋の思い   作:ささめ@m.gru

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ミッションが無事終わり、ブラッキーに少し文句を言われつつも楽しくデートをしてお土産を両手に帰って来たヤマトには理解出来なかった。

 

「ユキメノコー!マジ可愛いじゃん!え!?カズキと結婚すんの!?決断早ぇな!カズキ!カッケェ!おめでとう!」

「ツキさん、ありがとうございますー!」

「ツキさん、人間とポケモンの間に産まれる子供ってどんなのか情報無い?」

「いや、知らねぇ。そもそも産めんの?」

「何事も挑戦してみたら良いんですよ!ね!」

「ツバキ喜びそうだなー」

 

あはは、と笑うカズキとユキメノコ。そしてブラッキー。

え、この状況についていけてないの僕だけ!?とお土産を持ったままオロオロするヤマト。

 

「はあ!?カズキとユキメノコが結婚!?すげぇカズキ、さすがシンヤの弟だな。思い切ったな」

「おめでとうございますわー!ユキコちゃんはやっぱり、白無垢ですわね!」

「そうね!絶対に白無垢よね!サナちゃんはマーメイドドレスなんて良いと思うわ!」

「ジョーイさん…まだその話しますの!?」

「私、本気でサナちゃんお嫁さんに貰おうかと思ってるの」

「…そ、そう言って下さるのは嬉しいですけど…!ワタクシ、ジョーイさんには幸せになって欲しいんですのよ!?」

 

何モメてんの?とブラッキーが聞けばミミロップが眉を寄せる。

 

「ジョーイさん、サナと結婚したいらしい」

「マジかよ。結婚ラッシュじゃん!」

「なんか話がややこしいことにさー。サナはドレス着て結婚したい願望があるからジョーイさんがサナにドレス譲るって言い出したんだけど。サナはジョーイさんにドレス着て幸せな結婚して欲しいと思ってるらしくて結婚するの断ってんの」

「……はあ?」

 

なにそれ?と首を傾げるブラッキーにワタシも分からんとミミロップが眉を寄せる。

話を聞いていたカズキがジョーイとサーナイトに声を掛けた。

 

「サナさん、ジョーイさんのこと嫌いなの?」

「とんでもない!大好きですわよ!?」

「じゃあ、二人でドレス着て結婚すれば良いんじゃないの?」

「……」

「…で、でも、ワタクシ、ポケモンでこんな…」

「ちょい待ち。そういうサナさんの事を嫌いな奴なんて誰も居ないから」

 

びし、と言い放ったカズキの言葉にサーナイトが固まる。

驚き固まっていたミミロップがぷふっと笑いを零す。

 

「確かに、むしろジョーイさんの幸せ第一に考えて他の男に譲ってやるようなサーナイト。逆に気持ち悪ぃわ。お前、自分第一だろ」

「ワタクシだって自分だけのこと考えてるわけじゃありませんのよ!だって、ワタクシじゃ…ジョーイさんのこと幸せにしてあげられないかもしれませんわ…」

 

サーナイトの言葉にジョーイが笑った。

 

「私はサナちゃんを幸せにする自信あるわよ!お嫁に来なさいサナちゃん!幸せにしてあげるわ!」

「!!!」

「ジョーイさん、カッケェ!」

 

アハハ!と笑ったブラッキー。

 

「ジョーイさん、大好きですわー!」

「私もサナちゃん大好きよー!」

 

マジに結婚ラッシュだな、とカズキが笑えば隣でユキメノコが嬉しそうに頷いた。

お土産を両手に持ったヤマトは呆然とその光景を眺める。

え?ユキメノコが結婚するんじゃなくて、ジョーイさんが結婚するの?え?なにこれ、どういうこと?

お土産を両手にふらふらとシンヤの所へと向かうヤマト。書庫部屋のドアを開けたヤマトはシンヤの背に声を掛ける。

 

「シンヤ…!聞いて…!大変なことが…!」

「ああ、ヤマトか。後にしてくれ今は忙しいんだ」

「私、全然後回しにしてくれて良いですけど…」

「後回しにしたらお前反省しないだろうが!」

「悪いことしてないだろぉ!」

 

シンヤに怒られている男を見て、誰?と首を傾げるヤマト。

怒られている男は床に座り両手で頭を押さえる。何度か拳骨をもらったせいで頭を第一に守ることにしたらしい。

 

「ツーに近寄るの禁止だ!次、近付いたらツーに正当防衛を許可させるからな…!」

「私から近寄ってねぇし!向こうから近寄って来たから手、出したんだよ!」

「手を出すな!」

 

え、見知らぬ男にツーくん、何をされちゃったの!?と慌てるヤマトはどさとお土産の紙袋を落とした。

 

「ちょ、シンヤ…!何が起きてるの!?」

「は?何が起きてるって別に大したことは起きてないと思うが…?」

「いや、起きてるよ!そこら中で僕の理解が追い付かない自体が起きてる!」

「大袈裟な…」

「そもそも、その人は誰!?ツーくんに何があったの!?」

「こいつはエイゴだ。諸事情で今リハビリ中でな。目を離した隙にツーの首元に数箇所の鬱血痕を付けて、今は隔離中だ」

「首元ざっくり開いたシャツ着て寄って来たら良いんだと思うじゃん」

「良いわけないだろうが!反省しろ!」

「痛っ!またゲンコしたー!もぉおー!たんこぶ出来るんだってぇー!」

「笑う余裕が無くなってきて結構な事だ」

 

不敵に笑うシンヤを見て、怯える様子を見せるエイゴ。

少し遠出して帰って来たら親友がサディストになってて見ず知らずのイケメンを殴りつけて笑っています。なにこれコワイ…。

フラフラと部屋を出たヤマトは家の外へと出る。情報は一番の情報通に聞いて確認せねば…。

庭に居たギラティナに声を掛けたヤマトは「おお、おかえり」と笑いかけてくれたギラティナの背にしがみついた。

 

「ギラティナくん…!僕、状況についていけない!ユキメノコがカズキくんと結婚するって言うし、ジョーイさんがサナちゃんお嫁にもらうって言ってたし、シンヤがエイゴさんとかいう男の人、痛め付けて笑ってたんだけど~…!」

「へえー、ジョーイとサナも結婚すんの?めでたいことが続くな」

「軽いよ反応が」

「どういう反応が欲しかったんだよ…」

「分からないよ!もう何もかも分からない!僕に教えて!簡単に!」

 

何コイツめんどくさい。とギラティナは眉を寄せる。でも放置しとくのも可哀想だしな、とギラティナはヤマトに向き直る。

 

「じゃあ、サクッと説明するぞ」

「うん」

「ユキメノコことユキコが、お前とは違って頼りになる男らしいカズキに惚れてプロポーズしました。カズキもユキコが可愛いから結婚しても良いと思ったそうです。これ一個目な」

「……さりげなく貶されたのは分かったよ!」

「事実だろうが、泣かすぞコラ」

「ごめんなさい…」

 

で、二個目。

ジョーイとサナの結婚は初耳。知らね。とサクッと説明したギラティナにヤマトが衝撃を受ける。

 

「三個目ー。エイゴって奴の愛情表現の仕方が異常だってことが判明したらしくてシンヤがカウンセリングとリハビリ治療中」

「……愛情表現の仕方が異常って」

「愛情表現イコール暴力、暴言。それが楽しくてやめられない止まらない状態でエイゴの手持ちが苦痛を訴えているのを育て屋でキッスが発見して判明した。だから、治療中」

 

オーケー?と首を傾げたギラティナに多分とヤマトが頷く。

まあ、手持ちのポケモン達が苦しがっているのなら何とかしてあげないと可哀想だもんね。ととりあえず納得したヤマト。

じゃあ、あのエイゴさん、人間か。とそこで気付く。

 

「ギラティナくん、今何してるの?」

「オレ?さっきまでツー達と喋ってたよ。ちょうどヤマトと入れ替わりでアイツらキッチン行ったから」

 

もう戻って来るんじゃない?とギラティナが言った時、タイミング良くミュウツーが戻ってきた。首元にタオルを巻いているミュウツーを見てヤマトが眉を顰める。

 

「ツーくん…」

「あれ、ポケモンレンジャーの人…?」

「え?あ、うん、こんにちは」

「こんにちは…、お邪魔してます」

 

ペコリと頭を下げた男。若干、目付きの悪い子だなと思いつつもヤマトは笑顔で同じように頭を下げて返す。

 

「キッチンに居たチルさんにタオル温めてもらいました。これで早めに消えるかと思います」

「まあ、オレらすぐ治るからその内消えてると思うぜ」

「…本当にエイゴの奴がすみませんでした…!」

「気にすんな、大したことねぇから」

「なんでお前が言うんだ…」

「大したことねぇだろ?」

「無いけど」

 

ぷく、と頬を膨らませたミュウツーの頬をギラティナが突く。

この人、誰?とこっそりとヤマトがギラティナに聞けばギラティナがああと頷いた。

 

「エイゴのダチのヒロキヨだって」

「あ、ヒロキヨです。エイゴがご迷惑お掛けしてます…」

「僕あんまり関わって無いから分からないんだけど、ヤマトです」

「コイツ、シンヤの親友な」

「そうなんですか…!」

 

すげぇ!と目を輝かせるヒロキヨを見てヤマトが苦笑いを浮かべる。

 

「そういや、ヤマト。お前、どうだったよ?」

「ミッション?ミッションはツキくんのおかげであっさり終わったよ!頼もしかった!」

「……」

「……」

 

ポケモンレンジャーってカッコイイですよねーと笑うヒロキヨに照れたように笑みを返すヤマト。

それを見てギラティナとミュウツーが目を合わせた。

 

「(あいつマジ駄目だな)」

「(ある意味、予想通りだ)」

 

はあ、とギラティナが大きな溜息を吐く。

リビングから窓を開けたシンヤがヤマトを呼ぶ。

 

「ヤマト、土産置きっぱなしだったぞ」

「え?あ、置いて来ちゃった!」

「これ。中身なんだ?」

「お菓子お菓子!ツキくんが味見して美味しいって言ったの買って来たんだ!みんなで食べて!」

「ふーん。ヒロキヨもそこからで良いから上がって来い。エイゴは叱っておいたから」

「あ、はい!ほんとすみません…!」

「そこまで謝らなくて良い、大丈夫だから」

「…なんでシンヤが言うんだ」

「…大丈夫じゃないのか?」

「大丈夫だけど」

 

じゃあ良いだろ。と眉を寄せたシンヤを見てミュウツーが不満げに眉を寄せる。

何故か納得いかないらしい。

ギラティナがケラケラと笑った。

 

「大袈裟に心配してもらえなくて何故か悔しい」

「心配して欲しいなら何か反応すれば良かっただろ」

「どんな反応が正しかったんだ?」

「え?可愛く泣くとか?」

「涙はどうやって出るんだ?」

「…ちょっとそれ難しいな」

 

難しいのか、と眉を寄せるミュウツーに頷いて返すギラティナ。

そんな二人に「玉ねぎ切れば良いんじゃない?」と笑顔で言い放ったヤマト。

 

「そういうのじゃないのは私でも分かる!」

「なんで怒るの!?」

「(後でツキの愚痴聞いてやるか…)」

 

*

 

「え?ジョーイと結婚するのか?……色々と不安だな…」

「どういう意味かしらっ!」

「いててててっ!」

 

ジョーイに耳を引っ張られたシンヤは赤くなった耳を押さえた。結構な熱を持っていてじんじんする。

 

「サナちゃんとジョーイさんが結婚するってもう見た目的にどうなの!?大混乱だよ!?美人二人ってこれ!」

「いやん、褒められましたわ~」

「もうヤマトさんったら~」

「害悪同士がくっついたら未来が不安だ」

「「どういう意味よ!/ですの!」」

「そのままの意味だが?」

 

え?何か間違ったこと言ってる?とわざとらしく首を傾げたシンヤの胸ぐらをジョーイが掴んだ。

そんなシンヤの言葉にミミロップが密かに確かに何か怖い…と心の中で思った。

 

「そもそもポケモンと結婚って出来るんですかぁ~」

 

へーい、とソファから片手をあげたエイゴ。

数日居ただけですっかり寛いでいる友人の姿にヒロキヨが両手で顔を覆った。そんなヒロキヨの頭をギラティナが撫でる。

 

「個人の自由じゃないか…?違法と決まっているわけじゃない」

「あー。つかさ、ポケモンが人の姿になってるってことは世間一般に認知されてんの?私だけ知らなかったとか?」

「人の姿になれるポケモンは少なくない、人として普通に働いてるポケモンも居るくらいだしな」

「まじかよっ!?」

「自分がポケモンだと人間に伝える奴は少ないし、自分の手持ちが人の姿になったと世間に言い触らすようなトレーナーのポケモンは人の姿にならない。

強く繋がりを持ちたいと思ったポケモンが人の姿になれることがある、そしてそんなポケモンに選ばれた人間はそれを公言したりしない人間なんだ」

「あー、私とは縁遠い話なんだってことは理解した」

 

私にポケモン懐かないもん、と笑ったエイゴを見てシンヤは小さく溜息を吐く。

 

「ヒロキヨ、私のポケモン引き取らない?」

「え!?なんだよ急に!?」

「いや、私の愛情表現の仕方っての?治らないし。でも、ここ暫くシンヤさんに苛められて苛められるのは嫌だな~って思ったわけよ。朝起きてシンヤさんに睨まれた時の怖さハンパない」

「……」

「わざとやってくれてるシンヤさんがこんだけ怖いってことはアイツらからしたら私って相当なんだなって思ってさ。だから、ヒロキヨに引き取ってもらおうかと思って。ヒロキヨが要らないって言うんなら逃がすし」

「…エイゴ…」

 

な?と首を傾げたエイゴを見てヒロキヨは眉を寄せた。

 

「そんな風に考えられるようになったんなら優しく接するようになれば良いだろ…」

「は~?そんなのいつになったら出来るんだよ。出来る気しねぇのに」

「言いきるなっ!お前のことが好きで付いて来てる奴も居るかもしれないだろ!」

「私の手持ちで?居るわけねぇだろ」

「分かんねぇだろ!」

「なんだよっ!出けぇ声出すんじゃねぇよ!」

 

声を荒らげて言い争いになりかけている二人の間に入ったシンヤはエイゴの顔を片手で押さえつけた。

 

「まあまあ、落ち着け」

「むぐっ…!」

「…す、すみません…」

「エイゴが手持ちを手放す件について決めるのはエイゴでもヒロキヨでも無い。手放されても良いかを向こうに確認するから、ここで言い争っても無駄だぞ」

「向こうって…ポケモン達ですか…」

「そうだ。向こうの言い分についてはトゲキッスが聞いてる。エイゴ、お前のもとに残りたいと言う奴が居たらちゃんと接し方を考えていけば良い」

「居たらなァ」

 

お菓子を食べつつエイゴがヘラリと笑った。

そんなエイゴを見てヒロキヨは小さく溜息を吐く。

 

「あ!そういえば俺、エイゴに言ってないことあったんだ」

「ん?なに?」

「俺のクロバット、人の姿になる」

「なにィ!?」

 

背筋を伸ばして目を輝かせたエイゴ。

 

「イタズラは可ですかッ!」

「不可に決まってんだろうがボケエエエエ!!」

「やんのかコラアアアアア!!」

「喧嘩するんじゃない!!!」

 

喧嘩する二人の間に割って入るシンヤを見て、僕の幼馴染は色々と大変だなぁとヤマトはひっそりと思った。

そんなヤマトの横でミュウツーが菓子を頬張る。

 

「このクッキー美味い」

 

隣でもきゅもきゅとクッキーを食べるミュウツーにミミロップが言った。

 

「なんか物食ってるツーって可愛いな」

「ミミローさんがお世辞を言いましたわああああ!!!」

「うわあああ!俺の反転世界に槍が降って来るぅうう!!!」

「別に世辞じゃねぇし!お前ら、ちゃんと見てみろよ!食ってる所なんか面白いんだって!」

「「……」」

 

どれ、とミュウツーにみんなの視線が集まった。

注目されたミュウツーは無言で口を動かす。

 

「……(もきゅもきゅ)」

「普通じゃないですの?」

「ちょっと分からないわねぇ~」

「ツーくん、まじまじと見るとほんと綺麗な顔だね」

「可愛い要素が分からねぇ」

「えぇ!?なんか可愛いじゃん!」

 

分からない。と首を傾げる連中を見てシンヤが額に青筋を立てる。

 

「お前達、人間の世話まで私に押し付けるな…」

「私はツーきゅん可愛いと思う」

「シンヤさん、ちょっとコイツと外で話し合いしたいんですけど」

 

「……(もきゅもきゅ)」

「シンヤの食べ方に似てるんじゃない?」

「あー…」

「結局、シンヤさんの話になるのはどうしてかしら…」

 

本人は蚊帳の外。

 

*

 

数日後、

育て屋に預けられていたエイゴのポケモン達をトゲキッスが連れて来た。

立ち会ったシンヤとヒロキヨはエイゴと向かい合うように立つポケモン達を見守る。

 

「あー…、なんか今までごめんな」

 

主人のその言葉にポケモン達は目を見開き驚いた。

まさかあの主人の口から謝罪の言葉が出て来るなんて予想もしていなかったからだ。

 

「お前達が嫌な思いしたのは理解出来たんだけどさ、私のこの性格はそう簡単に直る気もしないし、そもそも楽しいからそういう風にしてた私は直せる気もしないんだけど…」

 

遠回しに直す気があまり無いらしいエイゴはヘラリと笑った。

 

「私なりに色々と考えてみた結果、お前達への態度を改めないことに決めた。めんどくさいからさ、ヒロキヨん所に行くなり、野生に戻るなり、まあ好きにしてくれ。解散!」

 

エイゴの発言にヒロキヨは大きく口を開ける。

あんにゃろう!結局、開き直りやがった!と今にも飛びかかりそうなヒロキヨをシンヤが制する。

ずし、と足を一歩前に進めたのはバンギラスだった。

エイゴの前に出てその場で頭を下げる。大きな体を一瞬で小さくさせた事に今度はエイゴが驚きで目を見開いた。

 

「好きに選んで良いのならオレはエイゴと一緒に居たい。エイゴにゲットされた時からオレにはエイゴだけ、オレはエイゴが大好きだから。エイゴと一緒に居たい」

 

人の姿になったバンギラスはエイゴにニコリと笑いかける。

 

「好きにしても良いんだよね?」

「あ、ああ…良いけどよ。物好きだなお前」

「物好きじゃない、オレはエイゴが好きなんだ。ずっと…エイゴの命令を聞かないと捨てられると思ってたから、好きにしても良いなら嬉しい」

 

あはは、とヒロキヨの口から小さく笑みが漏れた。

ほらみろ、やっぱり。エイゴの事が好きで一緒に居る奴も居たじゃないか、とヒロキヨが喜ぶ横でシンヤが眉間に皺を寄せた。

 

「昔、見た事のある目だ…」

「え?」

 

ぼそりと呟いたシンヤの言葉にヒロキヨが反応する。

ポカンと立ち尽くすエイゴに抱きついたバンギラスが嬉しそうに笑った。

 

「エイゴの事を嫌がってエイゴの性格も理解しようとしない他のみんななんて要らないよね!好きにしても良いなら!エイゴを悪く思う奴なんてみんなオレが倒してあげる!」

「は?」

 

エイゴを抱きしめたまま、くるりと背後を振り返ったバンギラスは笑う。

 

「ほら、お仕置きされないんだから勝手に逃げれば良い。いつもいつも見逃してあげたかったけれど、エイゴの命令には逆らえなかったからダメだったけどもう好きにして良いんだもん。早くどこかに行って?」

 

ニコリと笑ったバンギラスを見てムウマ達は体を震わせた。

好き好んでエイゴと一緒に居たいわけじゃない、あの暴虐な性格も直してくれるのならまだ付いて行ってやろうかと、トゲキッスの説得で思っていたムウマ達だったが慌ててトゲキッスの背後に隠れた。

 

「んー、やっぱ怯えてる顔が一番可愛いと思うんだけどなァ…」

「エイゴ、ダメだよ。またムウマが欲しいとか言わないでね、オレ、もう好きにしても良いって言われたからムウマ消しちゃうよ」

「えぇ~…」

 

なにこいつゥ…と困ったような視線をエイゴから向けられたヒロキヨはどうしたものかとシンヤへと視線をやった。

シンヤは深く溜息を吐いた。

 

「下手するとうちのより厄介なタイプだな…」

「え?え?シンヤさん…?」

 

嬉しそうにエイゴを抱きしめるバンギラス。

またカウンセリングしなければいけない対象が増えたとシンヤはガクリと肩を落とした。

 

「あ、キッスー。そういえば久しぶりだよなァ?後でお話しよ?」

「え?あ、はい、良いですけど…」

「……」

「おい!うちの子を巻き込むんじゃない!」

「はァ?」

「え?」

 

今までの苦悩から報われたいバンギラスは困ったように笑った。

 

「…キッスくんも好きだけどな、どうしようかな…?」

 

シンヤの苦悩は続く。

 

*

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